群馬精密 オリジナルブランド MONOLITH(モノリス) 詳細レポート&監修の窪田勝文氏インタビュー

 By : CC Fan

ニュースを掲載した群馬精密がお送りする自社ブランド腕時計「MONOLITH」
、ニュースにも少し書きましたが個人的な好みに合致していて、「これだ!」と思う事が多く、またイベントに参加していた監修を務めた建築家の窪田勝文氏の哲学を短時間ながらお話を伺わせていただくことが出来たのでブログと言う形で詳細レポートをお送りしたいと思います。



まず、プレスリリースの時点で「ただものではない」と感じたのはケースバックの様子です。



スペックシート上の直径45mmと言う「数字」だけを見て大きすぎる、という意見も見かけましたが、この形状を見て何か気が付かないでしょうか?
本来であればケースからはみ出ている「ラグ」が無く、ベルトの取り付けがケースの凹部に対してダイレクトに行われています。
そのため、45mmのケースとは言っても、ラグ(相当)間距離はラグ付き39mmケースぐらいになり、装着感を良好にしたままケースを大きくすることが出来ます。
プレスリリースでこの構造を見たとき、是非どういう考えなのか聞いてみたい!と思いました。


窪田勝文氏

監修を務めた窪田勝文氏は建築家であり、時計趣味として好きだが時計作りの慣習やノウハウは分からなかったそうです、しかし、建築家の視点から満足できる時計が見つからなかったことと、群馬精密の協力が得られたことから、自分が満足するための時計作りを始め、5年かけて今回のモノリスに至る時計を完成させました。
今回市販することになった、とはいえ元々は窪田氏の「個人プロジェクト」として進められていたもので、ある意味、氏の「俺のやり方」の集大成だったのかもしれず、この考え方がプレスリリース時点でなんとなく惹かれた理由かもしれません。



さて、上記のラグレスデザインは時計作りの知識と言うより建築で考える構造の必然から生まれたもの、と窪田氏は語ります。
通常の腕時計は懐中時計から進化した時に、「時計本体」からベルトを取り付けるための部品である「ラグ」がケースに生える形で追加され、そこに別部品の「ストラップ」が取り付けられるという構造が作られてから大多数の時計がその構造をそのまま引き継いできました。
窪田氏は「時計本体」と「ストラップ」そして「ラグ」が分かれているという構造が「まとまっていない」と感じていたため、本体からストラップにスムースに繋がり一体のオブジェクト(物体)であるような造形が手首に一体化しているような印象にしたかった、という事からラグレスケースによる45mmケースと言う時計業界の常識から見ると少々常識外れとも言えるケースが出来ました。
しかし、前述したように装着感は39mmケース並みかそれ以下、下手をするとラグの処理が悪いケースよりははるかに良いもので、一方メインの文字盤はベゼルを最少にして45mmケースを使い切っているため視認性は非常に優れています。



オシャレとしての「オールブラック」とされる時計でも、作り手ごとに「機械式時計で時間なんか読めなくてもいい」と開き直っているとしか思えないもの、「時計の本分として最大限ケアしてユーザーからは読めるようにする」と言うものの二種類があると感じ、前者の例はあまり言えませんが、後者であれば最近記事にしたショパール アルパインイーグルの「SHIKKOKU」が例に挙げられます。
モノリスも実機を見た時点で後者であろう、と感じ窪田氏に伺ったところ、「身に着けている自分は読めて、傍から見ている他人は読めない」というバランスを目指したという狙いを語ってくれました。
既に述べたように手首の「オブジェクト」としての造形であり、人に見せつけるためのものではなく、自分だけが分かっていればいい、そして時計を見て時間を確認するたびに「良い時計だ」と自分の心が動いたり、気分が変わるきっかけになればいいという事です。

この”心が動く”、というのがブランド名「MONOLITH」に込めた意味でもあり、一般名詞ではありますが、固有名詞としてはご存じアーサー・C・クラークとスタンリー・キューブリックのタッグによって製作されたSF映画史に燦然と輝く金字塔「2001年宇宙の旅(2001: A Space Odyssey)」に登場する謎めいた石柱に由来します。
映画の中でモノリスに触れた猿(月を見るもの)が骨を道具として使うようになり、月で見つかったモノリスに触れた人間が木星を目指したことから、窪田氏は「触れると何か新しいことが起こるもの・心を動かすもの」の象徴としてモノリスを捉え、ブランド名として名付けたそうです。
もちろん、黒一色の光を吸収する造形と言うイメージもあったと思われます。


「2001年」と続編、「2010年」「2061年」「3001年」(ハヤカワ版)

氏が持つ完成イメージを具現化するためのバランスを調整のために5年間の試作と評価が繰り返され、群馬精密が持つノウハウや信頼と実績のミヨタ、ストラップ製作を行ったジャン・ルソーなどの優れた協力者のサポートがあって形作られました。
窪田氏が時計の専門家ではないがゆえに、「業界では当たり前」とされていること(慣習)も「本当に必要な事か?」と疑い、群馬精密が「不可能です」としたことも「絶対に無理なのか、頑張ればできることなのか」と考えて評価と改善を繰り返してきました。
これは、建築においてより良い空間をクライアントに提供するための考えとして心がけていたことをそのまま時計作りにも応用したそうです。



一例としては針がシャープなエッジを持っていて、N夜光(ルミノーバ)®︎が塗布されていますが、通常の筆で塗るプロセスではシャープなエッジを実現することが出来ず、印刷でエッジを保ったまま開発したそうです。
そのほか、様々な細かい点を「こうしたらもっと良くなる」改良を繰り返していくことで世界観を保った作品として完成させています。
各方面のプロフェッショナルと協力しながら、最終的には全ての要素のバランスを見る(決める)ことが建築家という仕事、と言う窪田氏の「俺のやり方」ウォッチと理解しました。

さて、窪田氏が求めるハイレベルな要求を群馬精密がすべて受け入れて実現してきたのが今回の「MONOLITH」ではあるそうですが、ひとつだけ群馬精密側から「リュウズをつけさせてくれ」という要求があり、市販版にはリュウズが付くことになったそうです。

…という事は、「リュウズなし」があるんですか?と伺ったところ…



ピンボケと映り込みが起きてしまっていますが、「窪田モデル」が登場!
発売予定はなく、窪田氏が日常使いしているそうです。


リュウズが完全にケース内に設けられた凹部に納められていることが分かります。

時間あわせはリュウズを引き出せばよく、自動巻きなので手巻きは基本不要とはいえ、手巻きが出来ないのは流石にやりすぎか…と考えていた窪田氏が、建築模型を作っているスタッフと話しているときに見つけたのが…



六角形の部品!
建築模型用の材料にプラスチック製の六角形の棒があり、そのサイズの穴をリュウズに開けてもらえばいいじゃないか!と思いついた窪田氏が提案してさっそく実行されました。
模型材料として気軽に買えるので「専用ツール」としてカバンに忍ばせておけばOK!柔らかいプラスチック製なので時計ケースを傷つけない、とまさに一石二鳥にも三鳥にもなるスマートな解決策です。

今回、「窪田モデル」を含めて、お話を伺って感じたことは、ひとりの拘りが強く反映し、徹底的に改善を繰り返して満足いくまで繰り返す、というのはいつも言っている「俺のやり方」論そのものではないか!と気が付きました。

この素晴らしさを伝えるしかない!という事で今回ブログを書いています。
特に黒の表現は画面で見るよりもぜひ実機を見てもらいたい!と思いますので、ピピっと来たら是非取扱店で…

MONOLITH:
https://monolith.watch/

KUBOTA ARCHITECT ATELIER:
https://katsufumikubota.jp/




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