チャペック ニューファクトリー 密着(?)取材 With CEO ザビエル・デ・ロックモーレル
By : CC Fanジュネーブウォッチデイズ、本会場以外も取材しよう、と決心し、ジュネーブ空港で入国、チューリッヒ空港から出国で「ジュネーブから移動しないといけない」という制約を課し、3日間はヌーシャテルに滞在する、ということを決めました。
これによりアドホックな「現地交渉」も含めファクトリーを見学することができたのでレポートします。
今回は毎度おなじみのチャペック、ザビエル・デ・ロックモーレル氏と一緒にラ・ショー=ド=フォンに新築されたファクトリーを見学、「CEOの仕事」に密着したレポートです。
「前日」は夕方にバーベキューの約束でしたが、前の取材(関口陽介氏のル・ロックルワークショップ+α)が盛り上がって伸びて、大遅刻。
本当にごめんなさい…
次の日は夕方フライトでチューリッヒまで移動で、ICE(高速鉄道)ギリギリまで…という事をスペアリブをかじりながら交渉。
早朝ピックアップでフルスケジュール、が決定します。
ホテル前でピックアップされ、ラ・ショー=ド=フォンまで移動、「立ってるものは使う」という事で私も手伝い荷物を車から移動させていきます。
出社しながら立ち話ベースで報告と指示を行うザビエル、後述するように風通しの良い組織を心掛けているため、全員がざっくばらんに話し合います。
カフェスペース、コーヒー休憩の他、お弁当などでメンバー同士の交流を図ります。
コーヒーなどは飲み放題ですが、「自分で使ったカップは自分で洗う事」という事で私もコーヒーを飲んだ後は食器洗いを…
出社後、まずは全員集合してスタンディング形式のミーティングを行います。
現在の生産計画、各種サプライヤーの状態、目標と実績などをクイックに共有していきます。
「日本からジャーナリストが来てる(フランス語なので推定)」みたいな紹介もされます。
ザビエルが「ボトルネック・リダクション・ストラテジー」と呼ぶ方法論によって生産を管理します。
ボトルネック、すなわち生産性を低下させる要因をリダクション、減らすように計画を立て、「4人の時計師で年間1000本の時計を生産する」組織を実現させようとしています。
2人のインターンを含め、全社員は僅か27人です。
「何もやっていない(手持無沙汰)のが一番コストが高い」ということから、材料待ちなどで作業が止まることなく待ちなく作業ができること、情報を共有し、それぞれが考えて協調するAutonomous(自主的)な組織の一員として自分の持ち分+αをスムースに実行することを考えて効率の良い生産を目指しています。
ホワイトボードなの?と伺ったところ、リアルタイムに反映できる、みんながいつでも見られるという意味ではこの方式が一番よく、一定期間ごとに集計して電子化するとのこと。
83平方メートルから始まったチャペックのファクトリーは395平方メートルに、そして717平方メートルまで拡張していく、とのこと。
元々は水平分業スタイルで各種サプライヤーから集めた部品をワークショップで組み立てるスタイルでしたが、コロナ禍でサプライヤーの供給が極めて不安定になったことを省みて、ある程度を自社化するようにしたそう。
設計を自社内で行い、パーツ製造をサプライヤーで行っている「自社ムーブ」のSXH5などに繋がります。
こちらは設計部門。
写っているのは「見せてもいい」ムーブ、レベラシオンのSXH7です。
1人1ムーブメントの開発を行い、部品単位の図面まで制作しています。
3Dプリンタで作られたコンプリシテの差動歯車装置の拡大模型。
これがあれば解説が楽ですね…
上下を連結するギアがコニカルギアという事を今更知りました。
内製化に挑んでいるアンタークティックのケース。
機械加工やポリッシュの後に洗浄する設備。
ポリッシャーがアンタークティックのベゼルを磨いています。
ポリッシュ一筋で、大手メゾンで十数年の経験後、いくつかのメゾンを経てチャペックに就職したとのこと。
左が未研磨、磨くことによって右になります。
機械加工を内製化するために加工機を導入、CNCのプログラミングと加工後の検査も社内で行う体制を整えています。
軸物の加工を行う材料フィーダー付きスイス旋盤。
何とシチズン(シチズンマシナリー)製。
直交加工を行う多軸加工機は2台、ムーブメント地板やブリッジ、ケース加工を行います。
アンタークティックのケース(ステンレススティール製)を加工したサンプル。
軸物を加工する旋盤、直交加工を行う多軸加工機に加え、切り離しや微細加工を行うワイヤ放電加工機を導入したい、と語ります。
水平分業でスモールスタートしつつ、実績を積み重ねてきたチャペック、もうすぐ10年が経過するタイミングでの工作機械の導入は興味深いです。
時計師ルームは真ん中にパーツストックと管理用PCがあり、それぞれの時計師机には自然光が差し込むオールドスタイル。
1人の時計師がムーブメントの組み立てからケーシングまで一括して担当するスタイルです。
また、アフターサービスやメンテナンスも組み立てた時計師が行います。
それzそれの時計師ごとに「やりやすい」環境を構築しているよう。
一通り案内が終わったのでコーヒーブレイク、GWDでリテーラーのお土産というデーツ(ナツメヤシ)のドライフルーツが振る舞われます。
コーヒーとクロワッサンで小休止。
フライトは何時だ?ヌーシャテル湖にボートがあるので乗ろうみたいな話題を…
コーヒーの後はザビエルであろうともコップを自分で洗います。
再び時計師ルームへ、ここでザビエルは他の打ち合わせのためしばし離席。
私はデモ用のSXH5(初期型)の分解体験を。
テンワ・アンクル・計時輪列・巻き上げ輪列、香箱ブリッジの順に外していき、次に逆の手順で組み上げるという体験です。
チャペックスタイルは指サックは親指・人差し指・中指の3本。
SXH5はほぼ歯車ごとにブリッジが分離しているので、歯車を入れる→リュウズから力を与えて回転するか確認する、とできるので組み立ては分かりやすく、また「組み立てやすい」工夫も各所に凝らされていると感じました。
紆余曲折ありつつも、何とか組み上げて振動してくれたので一安心…
カレンダーの日送りの仕組みも体験できました。
こちらは展示用の完全にバラバラにしたSXH5。
文字盤のサンプルやリュウズに付けられるカボションも。
組立体験で集中して、疲労困憊状態で午前中が終了。
「お弁当組」はカフェルームでお弁当を。
ハイテンションのザビエルと近くのレストランへ向かいます。
ザビエルと長男のマックス(長男なので「イチロー」と呼んだりしている)。
「リコメンド」の馬肉ステーキとエビのセット。
気合を入れて取り組みます。
レストランからの帰りにワークショップを遠くから。
午後はザビエルの「CEOの仕事」の一つである新製品開発会議に同席させていただきました。
この会議は毎週月曜日の午後に行われており、それぞれの担当者が成果をザビエルと共有、方向性を決定します。
CEOの仕事は方向性を決めること、と語るザビエル、サプライヤーから取り寄せたサンプルや担当者が作ったイメージ図にフィードバックを返していきます。
上の写真ではニュアンス違いで作った文字盤に対し、どれが良いかを判断しています。
この色ならイエローゴールドじゃないか?と実機サンプルに当てて確認。
「会議」と言っても会議スペースの扉は常にオープン、必要そうなら別の担当者を呼んだり、別の担当者が入ってきて議論が展開したりします。
最終目標は「良いものを作る」であり、全員がそれに向かって各々が自律的に作業を行っている、という印象です。
必要であればサプライヤーへの「直電」も…
とにかく、まずは決めてやってみる、ダメそうなら他の方法を考える、という繰り返しで改善していくスタイルと感じ、個人的には好印象です。
新作ピースも、CADでチラ見せでしたが、そちらはエンバーゴという事で…
あまり「取材」っぽくないというか、「横で見てただけ」というか、ある意味ザビエルらしいスタイルなのかもと思いました。
個人的に大きかったのは、ケ・デ・ベルクを購入した時にザビエルと約束した「特別なシリアルとエングレーブ」「夜光レス」「ラバーストラップができたら交換」のうち、 最後の1つがついに成されたこと。
とは言っても結局ケ・デ・ベルク用にはラバーストラップは作られなかったそうなので、ハイテク素材のアルカンターラを使ったストラップに。
よくよく考えるとDバックルも、と言っていた気もしますが、それはまあ…
ケ・デ・ベルクは尾錠で使った方が良さそうというのが分かりましたし…
結局、議論が白熱して時間が押したため、ボートとヌーシャテル湖で泳ぐのは次回、という事で、ヌーシャテル駅まで送ってもらい、少しお茶してICEで移動!
トラブルもなく、日本に帰り着けたのでヨシ!
次はちゃんとバーベキューも…
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