KantharosとQUAI DES BERGUESのバケーション

 By : CC Fan
SIHHに参加した"表"の目的は当サイトの取材ですが、"裏"の目的として手持ちの時計のバケーション(メンテナンス)のためにハンドキャリーすると言う事がありました。
送料の概算の時点で飛行機と宿泊費ぐらいかかると判明、それならば自ら行こうと思い至ったわけです。
今回は新作情報ではなく、二つのピースのバケーションについて書きたいと思います。

まずは、クリストフ・クラーレ(CHRISTOPHE CLARET)のKantharos(カンタロス)です。
去年の6月に工房を訪ねた後、ホームシックからか調子を崩してしまったため、3月のバーゼルワールドまでの間でしばしのバケーションに出かけました。

何度かの里帰りを経るたびに"アップデート"され、だんだん強靭になって来ましたのであと一息ではないかと。
上記の記事内でも書きましたので繰り返しになりますが、私は"調子を崩すこと"については悪い印象はなく、"新機軸の機構だからある程度は起きうる"、"ちゃんと直してくれるならOK"というスタンスです。

今までは自分の特注バージョンとWGケースのものしか拝見したことがなかったため、今回SIHHの会場で他のバリエーションを見せてもらいました。



こちらはRGケース、アントラサイト文字盤のカンタロスです。
おそらく2013年のバーゼルから使われている"歴戦の勇士"のプロトタイプではないかと思われます。
ベゼル・クロノグラフカウンターリング・ブランドロゴがRGに変更されているのに加え、コンスタントフォースの歯車もRGカラーに変更されています。



かなりピントがズレてしまっていますが、ムーブメント側です。
クロノグラフ関係の歯車や巻き上げローターをRGカラーに変更し、ケースとの統一感を出しています。
この表現は結構好みでした。



バケーションに旅立つ前の我がカンタロスです。
きっとより一層強靭になって帰ってくるでしょう…
今回カンタロスに代わる”Accessable Pieace"のマエストロ(Maestro)が出たことで、カンタロスの置かれた立場も微妙に変わった気がします。
カンタロスに対する思いはまだまとめられません…

当初はカンタロスだけのつもりでしたが、出発前にチャペック(CZAPEK Geneve)のケ・デ・ベルク(QUAI DES BERGUES)のバケーションが加わりました。
こちらはジュネーブ到着直後に先方に預け、滞在中に作業完了、そのまま引き取ってきました。

オフィスイベントの記事で少し触れましたが、改めて納品直後と今回の作業後です。



こちらが納品直後です。



こちらは作業後です。

どこが違うかお分かりになりますでしょうか?

正解は、針の白い部分(スーバールミノバ)を除去し、中空の針にしています。
ハンドペイントで塗りつぶしたダイヤル側のスーパールミノバと合わせ、完全蓄光レスということになります。
仕様を決めるときに色々な意見を伺い、個人的にも"白い部分がないとデザイン的に微妙じゃないか"とか"流石に視認性が悪いのではないか"と危惧していましたが、実際には大成功だと思います。

細かい変更で思ったよりも大きく印象が変化し、驚いています。
デザイン的には色が一つ減り、よりモノトーン寄りになりシックになったと思います。
実用的に気になる視認性の悪化ですが、時分針がダイヤルの上半分にあるときはポリッシュの反射によってよく見えるため問題になりません、下半分のサブダイヤルにかかってしまうと中空部分からサブダイヤルの針の針の位置によっては干渉して僅かに見辛いと感じることはありますが、特に問題視するほどではないという結論です。

サンプルを拝見したときのインスピレーションに従って正解だったと思います。
CEOのザビエル(Xavier de Roquemaurel)氏からも、"初めて要望を聞いたときはどうかと思ったが、これはかなり良い"との評価を頂きました。
リップサービスもあるでしょうが、素直に嬉しいです。

ザビエル氏経由で、時計師のセバスチャン(Sébastien Follonier)氏に、日曜日(15日)に渡し、ラ・ショー=ド=フォンの工房へハンキャリで持ち込み、修正・各種検査を水曜日(18日)には完了させるという無茶なスケジュールをお願いしてしまいました、改めて感謝です。

カンタロスがバケーションに出かけたスイス滞在後半から現在まで常用しています。
手に付けていて温度が一定に保たれるおかげか、トレイ置きで初期に測定した時よりも精度が良く、一週間着けていてトータルではほぼ日差0秒/日という高精度を叩きだしました。
より細かく観察するとパワーリザーブの1日目で数秒程度遅れ、それを残りの6日間かけて進みで取り戻しているような感じに見えます。
またゼンマイのパワーリザーブ自体は7.5日ありますが、パワーリザーブインジケータが0に到達すると精度が悪化するようなので、動いていても巻き上げた方が無難なようです。
あとはDバックルが早く欲しいところです。

今回ジュネーブに滞在中に、ケ・デ・ベルクの名前の元となった、"初代"チャペックが工房を構えたベルク通り(ケ・デ・ベルク)を訪れました。



ヨーロッパによくみられる街区表示です。
もしかしたら建物も残っていたかもしれませんが、そこまで気が回りませんでした…



訪れたと言いましたが、実は滞在したホテルの前の通りだったりします。
当然マンダリン・オリエンタルではなく、左隣のホテルです。

ふたつのピースは同じチタンケースですが、性格が真逆です。
じゃじゃ馬のカンタロスを安定したケ・デ・ベルクがサポートするという関係が築けるとよいかなと。

ちなみに、チャペックの38.5mmケースの”Éternité"は日本国内でも結構反響があるようです。
個人的には42.5mmのREVOLUTIONが好みですが、ご興味があれば是非。

関連 Web Site

CHRISTOPHE CLARET
http://www.christopheclaret.com/

CZAPEK Geneve
https://czapek.com/

Noble Styling
http://noblestyling.com/