ヴァシュロン・コンスタンタン 2017新作と実機画像

 By : KITAMURA(a-ls)

※「キャビノティエ」について誤記がありましたため、1/24日に加筆・訂正して再投稿しました。


お待たせしました!

ヴァシュロン・コンスタンタン SIHH2017新作、
満を持してのご紹介です!!



まずはSIHH初日に速報的にレポートした、「レ・キャビノティエ セレスティア・アストロノミカル・ グランド コンプリケーション 3600」(下の画像)と対をなすかのようなドリーム・ウォッチ、「レ・キャビノティエ・シンフォニア・グラン・ソヌリ 1860 」である。



「レ・キャビノティエ・セレスティアル・アストロノミカル・グランドコンプリケーション3600」を"天文時計の王”と呼ぶならば、”時打ちの王”と呼ばれるべき時計が、この「レ・キャビノティエ・シンフォニア・グラン・ソヌリ 1860 」であろう。
下の画像で見るように、フェイスは至ってシンプルなのだが、その中味はタダモノではない。
なにしろ、ヴァシュロン・コンスタンタン262年の歴史で、初めて作られたグランドソヌリ搭載の腕時計なのだ!



この2本は、2015年に発表された、まさに"複雑時計の王”たる「リファレンス 57260」の誇る57ものコンプリケーション機構から、宇宙と音とに関するものを抽出し、それぞれを腕時計に収めた、いわばリストウォッチの奇跡であり、ヴァシュロン・コンスタンタンの誇る技術力と時計製作への情熱が生み出した究極とも言える。

世界的な時計需要の落ち込みを反映してか、各社が非常に現実的な価格帯のモデルを多く投入し、数年前のような驚愕機構モデルの開発が、まさに"鳴りを潜めた”印象のあったSIHH2017において、このヴァシュロン・コンスタンタンだけは、この2本の(たぶん)軽く億越えする時計を、特にこのレ・キャビノティエ・シンフォニア・グランソヌリ1860においては、文字通り"高らかに打ち鳴らせて”みせてくれたのである!

この真のクランメゾンたる姿勢には、喝采をおくりたい。


さて時計の方であるが、ソヌリ機構には、グラン・ソヌリ、プチ・ソヌリ、サイレンスの3モードがあり、それぞれ回転ベゼルを30度回すだけで切り替え可能という前例のないシステムが発明されている。



ケース側面にエングレービングされたモード・インジケーターの記号PS(プチ・ソヌリ)、GS(グラン・ソヌリ)、SIL(サイレンス)に、ベゼルのマーカーを合わせてモードを選択。
また、任意の時間を時打ちで知ることのできるミニット・リピーターの起動は、3時位置のリュウズにはめ込まれたプッシュピースで行う。溝を刻んだ大型のリュウズはつかみやすく、時計まわりに回すと時計用のゼンマイが、反時計まわりに回すとチャイム機構のゼンマイが巻き上げられる。



鳴り物という繊細な機構だけに、使用に際して様々な安全装置が組み込まれているのも素晴らしいが、それに加え、設計上の特筆点として、通例は文字盤の下に置かれているラック、フック、スネイルカムから成るチャイム機構が、この時計ではサファイアクリスタルの透明なケースバックから見えるということが凄いことなのである!
技術や音響、エネルギーに関する先進性が、この精巧なムーブメントに唯一無二の個性をもたらし、同時に途方もなく複雑なものにしている。

ただし、先の 「レ・キャビノティエ セレスティア・アストロノミカル・ グランド コンプリケーション 3600」も、こちらの「「レ・キャビノティエ・シンフォニア・グラン・ソヌリ 1860 」も、世界限定1本で、すでに販売終了という状態のようである。

昨日の第一稿では、この2本が顧客の発注で製作されたような書き方をしてしまったが、それは誤りという指摘をいただいたので、ここでは改めてもう一度、ヴァシュロン・コンスタンタンの誇る、「キャビノティエ」のシステムを学んでみよう。


“キャビノティエ”というのは、18世紀から続く伝統的な発注方法であり、解かりやすくいうと、新たなことに挑みたいマスターウォッチメーカーと、他に例のない時計を所有したいとする時計コレクターとの共同制作(=特注品)であり、ゆえに世界に1本しか存在しない証しとして、《Piece unique》や《Les Cabinotiers》の文字が刻印されたりする。

ヴァシュロン・コンスタンタンの歴史的顧客たち、たとえばロシア皇帝アレクサンドル2世、ニューヨークの銀行家ヘンリー・グレーブス・ジュニア、自動車王ジェームズ・ウォード・パッカード、エジプトのフアード1世やファルークといった王、彼らはヴァシュロン・コンスタンタンが製作したユニークピースの熱心な収集家であり、そしてその注文窓口が「アトリエ・キャビノティエ」であった。

これはあまり知られていないことかもしれないが、他ブランドではほぼ絶滅した「キャビノティエ」部門が、ヴァシュロン・コンスタンタンにはつい最近まで2つ存続していた。

1)「アトリエ・キャビノティエ」
史上最も複雑な時計「リファレンス57260」など、顧客発注ベースのビスポークサービスを受注する部門

2)「メートル・キャビノティエ」
今回の新作2点など、ヴァシュロン・コンスタンタンが、その技術の粋を極めた世界1本の限定モデルを制作する部門

どちらも「世界に唯一の時計を制作する」ということには変わりないのだが、違いは、その主導が「顧客の発注」か、あるいは「ヴァシュロン・コンスタンタン主導」かという点にあった。しかし、今回のSIHH2017のタイミングに伴って、この2つの部門は統合され、「レ・キャビノティエ」という名称に変更された。

というわけで、今回の2点は旧メートル・キャビノティエ/現レ・キャビノティエから、ヴァシュロン・コンスタンタンが主導して製作した、世界限定1本の作品となるのだ!




つまり、言い方を変えるのならば、この個体自体は世界限定1本だが、もしこのモデルに何らかのカスタマイズを加えて、この世にひとつしかない時計として発注し直すのならば、入手の可能性がないわけではないのである!!

また「レ・キャビノティエ」は、ヴァシュロン・コンスタンタン独自の装飾工芸や職人技によって、時計製作の美的側面における特注も可能としている。「メティエダール」として知られるヴァシュロン・コンスタンタンの特別なマイスターたち、ギヨシェ彫り職人、エナメル職人、彫金師、ジェムセッターたちは、自らの仕事の隅々までを習熟した最高の職人で、勘とノウハウが入り混じる昔ながらの職人技の保存と製作に誇りを抱いている。
時計師と工芸職人たちの熟達した業によって、時計は世界に二つとないものに姿を変え、まさにそれは高級時計の極みを体現するのである。
 
「レ・キャビノティエ」は世界各国のヴァシュロン・コンスタンタン・ブティックのみがその窓口に指定されているので、もしあなたが時計へのパッションとアイデアとバジェットとを持ち合わせているのなら、そのドアをノックすることで、まったく新しい世界が広がるかもしれない!


もちろん、今年のヴァシュロン・コンスタンタンの新作が、こうした入手困難品ばかりではない!
言い換えれば、ここからが本番!

まずはパトリモニーだ。
パトリモニー・パーペチュアルカレンダーにPGケースの新色が加わった。


画像中央のPGケースが新作、スレートカラーのオパーリン文字盤。

ムーンフェイズ夜空との対比が美しい一本だ。18KPG、径41mm、厚さ8.9mm、自動巻き。
<予価>835万円
<発売時期>2017年秋ごろ

 また、preSIHH作品として発表された、パトリモニー・ムーンフェイズ&レトログラード・デイトの実機はこちら。
戻ってきたレトログラードには人気が高まる予感。





トラディショナルからは、すでに紹介済みの トラディショナル・トゥールビヨン・ミニットリピーターの他、
トラディショナル・クロノグラフ・パーペチュアルカレンダーにさらなる新色が発表された。


ディスコンとなっていたモデルがリニューアル復活。昨年10月にプラチナモデルが復活され、
このたび18KPGモデルも追加。

18KPG、径43mm、厚さ12.94mm、手巻き、ジュネーブ・シール取得の新ムーブメント搭載。
<予価>時価 <発売時期>2017年夏ごろ。



そして最も詳細が望まれているのが、コチラのオーヴァーシーズ関連ではないだろうか!

まずはオーバーシーズ・スモール・モデル!!
37mm径で9時位置のサブダイヤル。基本レディースなのだそうだが、腕の細いユーザーの多いわが国であれば、メンズ需要も充分にあり得る出来だった。

このブルーダイヤルとクレー御サブダイヤルの組み合わせには、ちょっとヤラれた!
その結果、写真がボケた・・・すみません。。。。





しかし、さらにオーヴァーシーズの快進撃は続く!
ケースはSSだがベゼルはPGなどの、コンビネーションされた新作が、用意されていた。


もちろん、ブレスはラバー・ベルトに簡単に交換可能なので、今年のトレンドとも言える70年代アプローチを時計で先取りし、どこか新しい風を感じさせるファッショナブルな展開はとても爽快。



オーヴァーシーズに関しては、後日(おそらくバーゼル頃)に改めてプレゼンがあるということなので、SIHHでは画像のチラ見せ中心で(笑)、楽しみは後に取っておいてもらいたい。




で、だ!!

今年のヴァシュロン・コンスタンタンは、まだまだ奥が深い。

個人的に完全にノックアウトされたメティエダールの新作、

メティエ・ダール・コペルニク・スフェール・セレスト 2460 RT!!!

太陽中心説というコペルニクスの偉大な発見を讃えたアートピース



・3種類のメティエダールの職人技(グラン・フー・エナメル、ハンドエングレービング、レザーエングレービング)を駆使、
・太陽を地球が回る楕円軌道デザイン
・8000年で1日分の誤差修正しか必要がない複雑機能


さらにだ!!!!

メティエダール・ルミナリーズというテーマで、
ジュネーヴ、パリ、 New Yorkの3都の空から見た夜景を、斬新な手法でグランフー・エナメルに描き上げた新シリーズなど・・・
(つまりこんな感じです・・・)


新たな工芸ピースが目白押しなのである。

この2つのメティエダールについては、もっと詳しく書きたいので、

本日はとりあえずココまでということでご勘弁ください!