SIHH2018 グルーベル フォルセイ GMT アース実機詳細

 By : CC Fan
SIHH2018のグルーベル フォルセイ(Greubel Forsey)の実機詳細、第2弾はGMT アース(GMT EARTH)です。

アースが付かないオリジナルのGMTは、コンパクトなトゥールビヨン24セコンドをベースとし、コンプリケーションとして第二時間帯表示と24時間表示と地名によるワールドタイム、そして特徴的な"地球儀"を追加したモデルです。
GMT アースは基本は同じながら、技術の進歩によって可能となったサファイアクリスタルによるベゼルレス風防や、サファイア文字盤、サファイアドームによる地球の全球の表現など新しい見せ方を取り入れています。

一つずつ見ていきましょう。



まずは文字盤側です。
大きな違いとして、ベゼルが完全になくなり複雑な形状のサファイア風防がケースに直接接着されたベゼルレスのデザインになっています。

オリジナルのGMTは、グルーベル フォルセイが標榜するアシンメトリカル(asymmetrical:非対称)ケースを特徴としており、ラウンド型のケースからサブダイヤルやトゥールビヨン、24時間表示の地球儀がかなり出っ張ったデザインで、個性的ではありましたが人を選ぶデザインと感じました。
対してGMT アースは地球儀以外はラウンドの範疇に収まった比較的おとなしいデザインで、より万人に受け入れられそうです。



簡単に言ってしまえば、このサファイア風防は普通のベゼルに平たいサファイアクリスタルを取り付けたのと同じ形を塊のサファイアから削り出し、一体型の部品にしたものです。
もちろん加工にかかる手間を考えると言うほど簡単なものではなく、膨大な時間と素材と加工に対するノウハウが必要です。
これにより、ベゼルで遮られていた部分からも光が入るようになり、よりムーブメントの詳細に光が当たるようになります。
また、キズのつきにくさを表す表面硬度は、一般的な貴金属やステンレススティールよりもサファイアの方が優れており、スレやすいベゼル部をサファイアにするというのは理に叶っています。
金属に比べると衝撃に弱い(=割れやすい)というデメリットがあるのは事実ですが、サファイヤが割れるほどの衝撃が加わってしまった場合、どちらにしてもムーブメントも無事では済まないので、気にする必要はないと思います。

このベゼル一体型風防は接着によってケースに取り付けられますが、接着面のケース側に"グルーベル フォルセイの碑文"と機能の説明がハンドエングレーブされており、風防を通して鑑賞することができます。



文字盤も半透明のスモークサファイアのリングで、日の裏車などの運針に関わる歯車を積極的に見せていくスタイルです。
可視化されているブリッジは全てブラックポリッシュなので、文字盤で塞ぐよりもはるかに手間がかかっています。
可視化されているとはいっても、隠すべきところは隠し、見せるところは見せたうえで徹底的に仕上げるというコントラストを強調した作りです。



GMTと言えば、この地球儀です。
チタンで作られており、表面処理によって海の青色と大陸の灰色を克明に表現しています。
オリジナルのGMTでもアシンメトリカルケースによって強調されていましたが、GMTアースではベゼルレスサファイア一体型の風防によって開口が広がったため、より広い範囲から堪能することができます。



アースの名前の由来になったという、地球儀の"南極大陸"の部分です。
オリジナルのGMTではここには12時で南中した太陽を模した24時間表示と地球儀の駆動ギアがおかれ、そのギアによって北半球 南半球の約半分の地球儀を動かしていました。
GMTアースでも基本構造は同じですが、見えないようにされたギアの上に南極大陸が書かれた地球の一部を配置し、"地球の全球が時計内に浮かんでいる"という表現を実現しました。
南極大陸が出っ張った分はトゥールビヨン 24セコンド ビジョンで確立したドーム状のサファイヤクリスタルを用いた方法で逃がしています。



ワールドタイム表示は基本的にオリジナルのGMTと変わらず、各タイムゾーンの都市名が24時間で一回転します。
白地に黒文字の地名はサマータイム実施国、黒字に白文字の地名はサマータイム非実施国で、竜巻状になっているのは内側が1時間進んでいる(=サマータイム)ためです。
オリジナルのGMTで地球儀の駆動ギアが太陽を模していたのは正午に南中する太陽をモチーフにしていたようですが、GMT アースでは地球儀になったため、その表現はなくなっています。

また、ローカルタイムとホームタイムの時差を計算するための差動歯車(Spherical differential:球状差動歯車)や、香箱もさりげなく鑑賞できるようにブリッジが肉抜きされています。
もっと簡単な機構で実現できる時差計算に、調整時の抵抗は少ないものの機構が複雑な差動歯車を使う設計はGMTの他には数えるぐらいしか見たことがありません。



ケースサイドには"グルーベル フォルセイの碑文"がハンドエングレーブで彫り込まれています。
細部まで一部の隙もありません。



ちなみに、使い方は大きな文字盤がホームタイム、9時位置の赤いインジケータがローカルタイムで、GMTと書かれたプッシャーを押すことで1時間ずつ修正することができます。
このプッシャーは時合わせの調整にも使い、押してない状態で時合わせをするとホームタイム・ローカルタイム・地球儀・ワールドタイムが連動して動きますが、押した状態ではホームタイムだけを独立に動かすことができるようになります。
一度ホームタイムと地球儀の位相を合わせてしまえば、ホームタイムの変更(=海外への引っ越し)がない限りは合わせなおす必要はありません。

ふと思いましたが、"24"秒で1回転する高速トゥールビヨンと"24"時間で1回転する地球儀が対比しているのかもと思えてきます。



地球儀にも24時間リングが付いているため、世界の時の流れを感じることができます。
開口部の中心は12時、本物の地球が太陽で照らされるように、開口部から取り込まれた光で照らされます。
世界中を相手にし、常に世界の時間を感じながら、自家用機で飛び回るようなビジネスパーソンにこそ相応しい時計でしょうか。



ずっと眺めていたくなります…

次回は素材の変更で新しい表現を得たダブルテンプのレポートをお送りします。

http://www.greubelforsey.com/en/