カール・スッキー & ゾーネ ワルツ No. 1 ブルー・ダニューブ ファーストデリバリー

 By : CC Fan
先日、ニュースを掲載したオーストリア・ウィーン発のスイスブランド、カール・スッキー & ゾーネ(Carl Suchy & Söhne)のワルツNo.1(Waltz No.1)、"ウィーンのエレガンスとスイスの精密性の融合"を掲げ、ウィーンテイストのデザインをスイスメイドとして形にしています。

このブランドはバーゼルワールドでは独立系としてハイペリオンホテルに出展しており、ノーブルスタイリング山口氏があらかじめ目をつけ、ヒストリーのストーリ性とプロダクトの出来を見たノーブルスタイリング葛西氏がその場で扱いを決めて代理店契約と買付けを行い、日本導入が決まりました。
両氏曰く、"これは日本で受け入れられると考えているので取材してほしい"とのことで、その場で撮った写真を先のニュースに使っています。

実機はクレヨン(Krayon)プレビューイベントと同じ日に入荷し、改めて拝見していました。
日本の反応はどうか…と思っていたら、音楽ファンでもありウィーンを何度も訪れているという時計愛好家氏が特にウィーンテイストが強いブルー・ダニューブ(Blue Danube)に惹かれ、ファーストデリバリーと相成りました。
氏はWMOのユーザーでもあり、ご厚意により納品式にご同席させていただきました。



まずは実機の写真を。
モデル名のブルー・ダニューブとは、ヨハン・シュトラウス2世によるウィンナ・ワルツ、美しく青きドナウを表し、ウィーンでは"第二の国歌"とまで言われ親しまれている音楽です。



一見して目を引くダイヤルの特徴は、3時側が横・9時側が縦に細かく切られたストライプ状のギロッシェ。
光の当たり方によって様々な表情を見せ、円形ではない・左右非対称と"ありそうでなかった"ユニークなデザインです。
面白さの他にダイヤルの中心線が一目してわかるので視認性の向上にも役立っていると感じました。

6時位置にはダイヤルをそのまま小さくしたようなワルツィング・ディスク(Waltzing Disc)、1分で1回転するスモールセコンド相当の機能ですが、秒単位では読めません。
これはウィーン文化であるカフェのテーブルと、"ウィーンでは秒単位の時間は気にしない"という時間の感覚を表現したものだそうです。
メインのダイヤルのギロッシェと組み合わさり、次々と表情を変えます。



これはかなりのベストショット。
メインの文字盤とワルツィング・ディスクが対照になっています。



ムーブメントはパルミジャーニ・フルリエ傘下のムーブメントメーカー、ボーシェ(Vaucher Manufacture Fleurier)製のマイクロロータームーブメント。
テンプの緩衝装置を中心に放射線状に伸びるサンレイ仕上げは一分のズレもなく仕上げられています。
エクスクルーシブではないそうですが、ボーシェ社で8年かけて作られたムーブメントとのことでした。
ノーブルスタイリングさんでも各個体にランニングテストを行い、精度を見てみたところ"上々"とのこと。

マイクロローターにはカール・スッキー & ゾーネの銘が入れられています。
オリジナルのベルトには6時側にSöhneのöを意匠化したもの、12時側には菱形の意匠が施されています。

限定番号はボカしましたが、良い番号でした!



ケースを含めたデザインは、"装飾は罪悪(犯罪)である"と宣言したウィーンの建築家アドルフ・ロース(Adolf Loos)を称え、ミニマルなデザインです。
ロースの宣言は過激ですが、全ての装飾が不要と言っているわけではなく、あくまで機能がメインで装飾はそれに従うべき・機能を伴わない装飾は不要(合理主義・機能主義)という考え方です。

ケースサイドは触り心地の良いマット仕上げ、面ごとに仕上げを変えることでメリハリを出しています。



ラグ表面とケースサイドからベゼルにつながる面は鏡面仕上げ、一転してベゼルは再びマット仕上げ、このコントラストにより、"パッと見たときの注目を集めやて文字盤の位置を認識しやすく、なおかつ読み取るときには邪魔をしない"というデザインになっています。
さりげないデザインですが相当考えられていると感じました。

文字盤は平面ではなく、すり鉢状にベゼルに連続的につながっています。
インデックスは全て印刷ではなく鏡面仕上げの別部品を張り付けまたはアプライドしており、手間がかかっています。
同じく鏡面仕上げの針とともに、文字盤に対してコントラストが高く読みやすいと感じました。



12位置のロゴには2匹のグリフォンと紋章、カール・スッキー & ゾーネ銘、そしてウィーン1822と表記、制作地を表す"SWISS MADE"は通常の6時位置ではなく、9時位置に入れられ、これもウィーン流でしょうか。



面ごとの仕上げの違いによりコントラストを表現しているのが伝わりますでしょうか。



標準でDバックルが付属します。
バックルにも2匹のグリフォンが。



ボックスもブルーをフィーチャーした作りです。



内部にはロゴが入っていますが…



外側には金属で作られたワルツィング・ディスクの意匠のみというシンプルさ。



オーナー氏のリストショット。
トレイの上で見るのと腕に乗せたのでは印象が変わります。



現在、ギャラリーのみでの展開ということで、一等地に展示されています。。
入荷したのはブラック文字盤とホワイト文字盤が各1本、そしてブルー・ダニューブが2本で、1本が今回ご成約したので残り1本です。
もう1本のブルー・ダニューブも限定番号がかなり良い番号でグラグラ来てしまいました。

別の日に撮ったブラック文字盤とホワイト文字盤の写真も何枚か。



色によってずいぶん印象が変わります。



ホワイト文字盤で、要素だけ見るとドレスウォッチの文法ですが、それだけに納まらない独自性を感じます。



ブラック文字盤はケースとのマッチングが一番良いと感じました。
色が濃いためか、光の反射による印象の変化は一番大きかったです。



極端な例ですが、角度によってはここまで差が出ます。
ブルー・ダニューブでも感じましたが、このコントラストによりダイヤルの12時から6時を結んだ中心線が一瞬でわかるので実用的にも優れた意匠と言えます。

独自の文字盤は一見する珍しさだけの飛び道具に見えてしまいますが、実用性に優れたデザインであり、良い時計だということがわかります。



ギャラリー内のモニターでは美しく青きドナウに合わせカップルが踊るムービーが。
音楽に詳しいオーナー氏から詳細を伺いましたが、失念してしました。



顔の見える"作り手"たちにはカフェに座ったCEO、ロベルト・プンケンホーファー(Robert Punkenhofer)がの写真(エルメスの右横)も加えられていました。
ついでに、クレヨンのマイヤ氏も…



この後、知人の結婚式というタイトスケジュールだったので早々に失礼しました。
オーナー様、おめでとうございます!

最後に公式(?)動画を。





関連 Web Site

Carl Suchy & Söhne
https://www.carlsuchy.com/

Noble Styling
http://noblestyling.com/