カール・スッキー & ゾーネ ワルツ No. 1 ブルー・ダニューブ セカンドデリバリー(自分用)

 By : CC Fan
バーゼルのニュースファーストデリバリーの様子をお伝えしたオーストリア・ウィーン発のスイスブランド、カール・スッキー & ゾーネ(Carl Suchy & Söhne)のワルツNo.1(Waltz No.1)、記事を書くために写真を整理をして細部を見れば見るほど、各部に"只者ではない"ディティールを感じ、改めて拝見し、是非手元に置いておきたいと考え、購入することにしました。
これはチャペックのケ・デ・ベルクを初めて拝見した時と似た感触でした。

ダウナーな出来事の前には手元にあり、何日か使用しましたが、ダウナーな出来事で凹んでしまい、記事を書けていませんでした。
二コラとの話し合いが非常にうまくいったこと、ダウナーな記事を書くことで自分の中でケリがつけられたので、切り替えてお送りします。



ちゃんとしたカメラを使った写真はファーストデリバリーの記事でお送りしたので、この記事ではiPhone SEのカメラでお気軽に撮った写真でお送りします。

各部のデザインは"装飾は罪悪(犯罪)である"と宣言したウィーンの建築家アドルフ・ロース(Adolf Loos)を規範としています。
もちろん、ロースはすでに亡くなっているので、いわばロース"調"と言ったデザインではありますが、考え方がちゃんと時計デザインとして昇華され、ただの要素を当てはめただけの模倣ではないと感じます。
調べますと、AHCIに所属していた(2017年に退会)時計師Marc Jenniが関わっており、ルースのデザインを"腕時計の文法"に落とし込む作業は彼が協力して行っているようです。
そのため、一見するといわゆる定石を外しているような部分もありますが、全体としては破綻せずちゃんと時計になっています。



さて、使っていてやはり一番素晴らしいと思うのは縦横のストライプ状のギロッシェを備えた文字盤です。
価格を考えると手作業ではないかもしれませんが、文字盤の中心(縦と横の境界部)に一番粗が目立ちやすい掘り始めが位置するデザインにもかかわらず、ルーペで拡大しても粗は見られません。
更に彫り終わりもすり鉢状になった文字盤の周辺に合わせ円形に彫り終わりを位置させなければいけないので、かなり難しいと思われますが、こちらもルーペで拡大しても粗は見られません。

インデックスは張り付けまたはアプライドによって、ポリッシュされたものがすり鉢状になった文字盤に沿うように取り付けられています。



素晴らしいのは5分ごとのインデックスだけではなく、1分ごとのインデックスもポリッシュされたドットが張り付けられており、光を反射するので、視認性に優れています。
この写真のようにインデックスが光を反射することで読み取るデザインのため、ダイヤルは濃色のほうが向いていると感じ、特にブルー・ダニューブの藍色に近い青ダイヤルは光の加減によって印象が変化します。

ドットはすり鉢状になった文字盤の斜面部分に張り付けられており、少し高い位置にあります。
これにより、分針の先端との高さの差(視差)がなくなり、適切に管理された分針先端との間隔と相まってとても読みやすいです。
針も一見するとどうということのない針ですが、針中央で仕上げ?が変えられており、針全体の視認性は太い針で確保し、どこを指しているかは中央の変化部分のコントラストが指し示すという二段構えです。
これにより直射日光の下から、薄暗い時まで周辺光量が変化しても常に読みやすかったです。

特徴的なディスク状のスモールセコンド、ワルツィング・ディスク(Waltzing Disc)は存在感が絶妙で、ふと時間を見たときにはほとんど意識することはありません。
しかし、ちゃんと動いているかな?と思った時や、ある程度の精度で秒単位を知りたいと思って注視すれば縦横のギロッシェによるコントラストで浮かび上がってきて読むことができます。
そしてこれを書いていて気が付きましたが、ディスク表示というのはカンタロスにも繋がるディティールですね…

ここら辺のディティールが"只者ではない"と感じた一番のポイントです。



標準のDバックルは個人的には初めての2つ折りタイプで、観音開きよりも使いづらいかな?と思っていましたが完全な杞憂でした。
本体が軽いこともあり、重厚な観音開きよりも2つ折りのほうが合っています。
ベルトは"シルクマット"レザーで、アリゲーターではないようですが、時計のキャラクターにあっています。

ムーブメントはパルミジャーニ・フルリエ傘下のムーブメントメーカー、ボーシェ(Vaucher Manufacture Fleurier)製のマイクロロータームーブメント、VMF 5401です。
ボーシェは採用例増えていますね…

何気に緩急針がなく、スポーク状のマスロット(偏心錘)で慣性モーメントを変化させる最新のフリースプラングテンプで、額面上のスペックだけなら持っている時計の中で一番優れています。
ストップセコンドもついているので、秒単位での時合わせも行えます。

パワーリザーブは48時間で、カンタロスと交代で2日に1回つけるユースケースでは止まることはありませんでした。
巻き上げ効率が良く、常につけているなら手巻きする必要はなさそうで、リュウズが小さいのも自信の表れかと思いました。
少し気になったのはマイクロローターが片方向巻き上げのため、空転方向で勢い良く回るとベアリングの回転音が結構聞こえることです。
ほとんど気になりませんが、ふとした動きで回転しだすと聞こえるかなと。

総じて"普通の良い時計"で、キャラクター的にケ・デ・ベルクと被るかな?と思ったのですが、似ているようで全然違うので上手く使い分けられそうです。
あちらは手巻きですが、7日巻なので"手がかからない"という点ではほぼ同点です。

普通ではありますが、ウィーンのセンスともいうべき洒落が各部に感じられ、スイス時計とはまた違った独自のキャラクターを確立していると感じました。

カンタロスはなかなか人に勧められませんが、これとケ・デ・ベルクは自信を持って勧められます。
当分はノーブルスタイリングギャラリー専売で、卸は考えていないそうなので、ご興味のある方は是非行ってみてください。

関連 Web Site

Carl Suchy & Söhne
https://www.carlsuchy.com/

Noble Styling
http://noblestyling.com/