アーミン・シュトローム レゾナンス・イン・ギンザ 3日間とデュアル・タイム・レゾナンス

 By : CC Fan
アーミン・シュトローム(Armin Strom)の"レゾナンス・イン・ギンザ"イベント、結果的には土日も開店から閉店までとほぼ三日間フルでご一緒し、日曜日の搬出のお手伝いもさせていただきました。
非常に貴重な体験となり、お越しいただいた皆様、ご一緒させていただいた皆様に感謝いたします。
特に、閉店・撤収作業ではなかなか見られない"裏側"のプロの仕事を間近で拝見させていただき、大変興味深かったです。



まさに"革命"と思った考えに一致していたスローガン。

さて、ユニークピースを紹介した記事の最後に登場した超ド級のマスターピース、デュアル・タイム・レゾナンス(Dual Time Resonance)、個人的には"嗜好にストライク"のコンプリケーションウォッチです。
本格展開は来年のSIHH以降になるそうで、今回のツアーの直前に組みあがって動かしながらツアーを行い、チェックしているとのことで、仕様は最終でないかもしれません。
SIHHのタイミングで改めてレポートしようとは思いますが、本日予期せずテクニカルディレクターのクロード・グライスラー(Claude Greisler)氏からお話が伺えたので実機写真を交えてレポートします。



改めて、正面写真を。
"デュアル・タイム"の名前の通り、ピュア・レゾナンス(Pure Resonance)サイズの文字盤を左右に二つ並べたデザイン、左右対称のためレゾナンス・クラッチ・スプリングはケースの12時位置に置かれ、テンワも対象になるようにしてあります。
それぞれの文字盤の6時位置のディスク上の表示はパワーリザーブインジケータ、古典的なコーンとウォームギアを使ったパワーリザーブ計量を行います。
ケースの12時位置にある2色のギロッシェが施されたサブダイヤルは24時間計、針が重なってしまっているので分かり辛いですが、左右のダイヤルに合わせた色の針があり、二つのタイムゾーンの昼夜を判別することができます。



楕円形のケースサイズは長径59mm・短径43.4mmというビッグサイズ、厚みも15.90mmです。
大きさは感じますが、ケースはチタン製で軽いのでそこまで重くは感じません。
ただ、このピースはピンバックルですが、バランスを考えるとDバックルにした方がいいとは思いました。



4バレル(2バレル×2ムーブメント)、縦の2バレルがそれぞれ連結され、ダブルバレルのムーブメントとして動作します。
ピンぼけてしていますが、それぞれのパワーリザーブ残量を計量するコーンとウォームギアを用いた機構も可視化され、レバーがコーンの斜面を読み取っている様子が見てとれます。



テンワのブリッジはハンドエングレーブによる仕上げが施されています。
ミラード・フォースとピュアでは片方の輪列が逆回転していましたが、このピースでは両方が同じ方向に回転しています。
回転方向は逆ですが、レゾナンス・クラッチ・スプリングとテンワは同じもので、アンクルとガンギ車の取り付けで差異を吸収しているそうです。

ちなみに、レゾナンス・クラッチ・スプリングとテンワに同じものを使っているのも彼らのこだわりで、ミラード・フォースとピュアも同じ設計です。
これは、CSEMとの共同研究などで改善案が見つかった場合、同じ設計であればすべてに適用できるからという理由です。
レゾナンス・クラッチ・スプリングはワイヤ放電加工機で加工し、加工時間は一つ2時間ぐらいで1つずつセットしては切り出しているとのこと。
形状は実用性のみではなく審美性も考慮して決めたそうです。



拝見しながらグライスラー氏に拙い英語で色々聞いていたら、それならばとノートPCを取り出して、即席の"デュアル・タイム・レゾナンス講座"がスタート。



バーカウンターにて、ノートPCを広げるグライスラー氏。
ローカルタイムゾーンが乱立し、GMTからUTCが策定され、世界が37のタイムゾーンに分かれた…という歴史の資料はカメラが間に合わず、未撮影。
これは過去の様々なタイムゾーン表示形式を振り返っているスライド。



回転する24時間ディスクと地名で表示するポケットウォッチ。



おそらくもっとも有名なGMTウォッチにして、"原器"たるロレックス(Rolex)のGMTマスター、1954年にパン・アメリカンエアラインの要望によって作られたとのこと。



直接のインスピレーションの基となったというアンティークのポケットウォッチ。
二つの時分針が並んでいます。



二つの独立した時分表示とそれぞれの時差を直感的に表す24時間のデイ&ナイト表示(少し我がグラン・ウール GMTを感じさせます)。



シンプルに二つのムーブメント連結したという考え方。



よりパワーリザーブを延ばすため、4バレル構造へ。



それぞれのムーブメントのパワーリザーブ残量は独立したコーンとウォームギアを使用したパワーリザーブインジケータによって表示されます。
レゾナンスで連動するならいらないのでは?という質問はもっともで、対称性と片方に異常があった場合にわかり易くするために二つ備えているとのこと。



パワーリザーブ計量機構も可視化され、コーンが上下し、それを先端にルビーが付いたレバーが読み取る様子を直接見ることができます。
巻き上げは向かって左(文字盤側から見て右)のリュウズで行い、すべてのバレルが連動します、右(文字盤から見て左)のリュウズは時合わせ専用、それぞれ自分に近い位置の文字盤の時合わせを行います。

内部的には非対称な部分もありますが、プレートでうまく隠すことによって対称性だけを際立てています。



キーテクノロジーとしてのレゾナンス。
二つのムーブメントは独立に動くのではなく、互いに共振することで精度を落ちにくくします。



巻き上げ輪列の動画(動画は提供待ち)、リュウズに近い左上の巻き上げ車に入力された巻き上げトルクはコハゼを兼ねた中心の中間車で他の3つの巻き上げ車に伝わります。



動力を伝える中間車の機能と逆回転を防止するコハゼの機能が統合された中間車。
ASロゴが印象的です。



こちらも動画のパワーリザーブインジケータの動作を説明する図。
ゼンマイの巻き上げ側に繋がった2本の柱と、計時輪列側に繋がったウォームギアがそれぞれコーンを動かします。
柱が回転するとコーンも回転し噛み合ったウォームギアの歯に沿ってコーンが上昇、逆にウォームギアが回転すると柱によってコーンは回転しないためやはり噛み合ったギアによってコーンが下降します。
やっぱり動画がないと言葉だけではなかなか説明しづらい気がします。

これは古典的な差動装置で、巻き上げと計時でほどけた量の差で上下するコーンの側面をレバーで読みとり、ディスクを駆動することでパワーリザーブを表示します。
同様な機構は古典的な時計作りを行うフェルディナント・ベルトゥーが使用しています。

もちろん部品は内製です。



リストショット。
装着感は写真の印象よりずっといいですが、そもそも印象だけで腕に乗せてもらえない可能性を考えると…難しいです。



厚みはさすがに…



同じく大きさで遠慮されそうな我がカンタロス(Kantharos)と。



マスターピースシリーズということで、箱も通常モデルよりも大きなものが。



8個限定の内の1つという表示。



デュアル・タイム、撮影が難しい…



撤収前、最後の写真。

あらためて、ありがとうございました!

"レゾナンス・イン・ギンザ"イベントの終了に伴い、デュアル・タイム・レゾナンスとツアーのために本国から持ち込まれたタイムピースは旅立ってしまいますが、アワーグラス銀座ユニークピースのエナメル文字盤でブレゲ針のピュア・レゾナンス(WG・RG)とノーマルのピュア・レゾナンス(RG・SS)、ブルーギロッシェ文字盤ミラード・フォース・レゾナンス(SS)は引き続きアワーグラス銀座店で展示されます。

しつこいですが、ユニークピースは白眉の出来栄え、写真だけではなく是非実物をお確かめください!

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