スウォッチ「FLYMAGIC」~新時代に向かう非鉄素ヒゲゼンマイを搭載した機械式時計の登場~  by L'Hiro

 By : Guest Blog

本サイトでも参加者を募集したスウォッチ「FLYMAGIC」のスペシャル・イベント。招待ゲストのおひとりであるL'Hiroさんから、当日のプレゼン内容をまとめたゲスト・ブログをご投稿いただきましたので、掲載いたします。
今回は、非鉄の新素材“ニヴァクロン”製ヒゲゼンマイを史上初搭載した「FLYMAGIC」のお披露目ということで、当サイト読者の中でも、時計機構や素材に興味を持つゲストが多く参加されたようで、「Chronos日本版」広田編集長への質疑応答やイベント後の歓談など、熱心な盛り上がりがとても印象的なイベントなりました!





スウォッチ「FLYMAGIC」

~時代に即した機械式時計の登場~


去る6月11日、WATCH MEDIA ONLINEの読者を招待し、代官山の蔦谷 T-site GARDEN GALLERYで開催された、スウォッチ FLYMAGIC スペシャル・イベント。雑誌「Chronos日本版」の広田編集長のトークショーの内容に、私見も交えてレポートします


スウォッチは移り変わりの激しい現代社会において、個人のライフスタイルに合わせて、時計を臨機応変に付け替えるという文化を世界中に根付かせたブランドです。また一方で、スイスの時計業界で、新しいこと、面白いこと、革新的なことがあったらいち早くそれらを取り入れるブランドでもあります。


●イベント冒頭でスピーチする、スウォッチ グループ ジャパン代表取締役クリストフ・サビオ氏

例えば、1970年後半にムーブメントメーカーであるETAがムーブメントとケースを一体化することで、デリリウム(Delirium)という世界最薄のクオーツを作りましたが、これを転用して、非常にリーズナブルな価格でムーブメントとケースの一体型の時計を開発し発売しました。高級時計しか作らないイメージがあったスイスのメーカーが値段の安い時計マーケットに進出してきたという事実はとてもセンセーショナルでした。

そして、今般、スウォッチは、またお家芸の発揮かと思えるような、将来的な機械式時計のあり方を変えてしまうかもしれない「FLYMAGIC」を開発しました。具体的には、オーデマピゲ社との共同開発によるニヴァクロン(Nivacrhon)という素材を開発して、それを機械式時計の心臓部であるヒゲゼンマイに搭載したのです。

皆さんもご存知のように、従来の一般的な機械式時計の進みや遅れはヒゲゼンマイをはさんでいる緩急針を動かし、ヒゲゼンマイの長さを調節することで補正します。進みがちな場合は長くし、遅れがちな場合は短くします。一般的なヒゲゼンマイには、ニヴァロックス(FeNi)という鉄素が多く採用されています。
鉄は圧力を加えても割れず耐久性があるため、どんな緩急針でものせられ安価で作れるという長所があります。しかし、帯磁しやすく、温度変化によって収縮し、かつ経年により固くなるため調整が必要になるという短所があります。

このニヴァロックスの短所を克服したのがシリコン素材のヒゲゼンマイです。
シリコンは、軽くて温度変化と衝撃に強く、耐磁しないという長所があります。昔はその分子構造から湿気が入りこみやすく、湿度に弱いという弱点がありましたが、今はかなり改善されています。しかし、緩急針を使えません。なぜならば、シリコンはガラス製なので緩急針で、はさんで圧力をかけてしまうと割れてしまうからです。したがって、シリコンのヒゲゼンマイではテンワの小さな補正ネジを回して慣性モーメントを調節(=振り子時計の錘を交換するイメージ)するフリー・スプラング方式を使っています。しかし、値段が高価なため「価格帯が高い」機械式時計にしか搭載できません。

一方で、今回発表された新素材ニヴァクロン(Nivacrhon)は、非鉄素材で作られており、非常に高い耐磁性があります。NbTi47という素材(ニオブとチタンからなる合金)を使い理論上はほとんど磁気帯びしません。
非公式には、48,000A/m以上の非常に高い耐磁性を持っています。(ちなみに日本工業規格〈JIS〉の耐磁指標では、4,800A/mを第1種耐磁時計とし、磁気に5cmまで近づけてもほとんどの場合性能を維持できるレベル、16,000A/mを第2種耐磁時計とし、磁気に1cmまで近づけてもほとんどの場合性能を維持できるレベル、としています)



同じく非鉄素材のヒゲゼンマイを既に使用しているブランドではロレックスがあります。このヒゲゼンマイではパラクロム(NbZi)という素材を使用しています。しかし、このヒゲゼンマイは温度変化による時計の精度を保つことにより重きを置いていて、耐磁性も高いといわれていますが、実測値では10,000A/mぐらいだそうです。ニヴァロックスのヒゲゼンマイは、良くて4,800A/mですから、パラクロムは2倍の耐磁性能しかないことになります。最近ロレックスはシリコンの一種のシロシキというヒゲゼンマイを使うようになりましたが、価格優位性はニヴァクロンに軍配があがります。

 

さらに、非鉄素材のニヴァクロンは温度変化が起因のヒゲゼンマイの変形による時間の遅れや進みもありません。また、ニヴァクロンは、ニヴァロックスと同じように、時間の進みや遅れを、価格優位性のある緩急針で調節できます。ガラス性のシリコンと違い、緩急針ではさんでも割れない耐久性があります。 おまけにシリコンと違って加工しやすいため、巻き上げひげも作れます。したがって、見た目は巻き上げひげを使ったクラシカルなトゥールビヨンも、ニヴァクロンを使うだけで非常に耐磁性能があるものができてしまいます。

 

しかしながら、ある程度トラック・レコードがあるシリコンもフリー・スプラングでの使用で、どのくらいの期間、変質せず当初の性能通りに動き続けられるのかまだ誰にもわかりません。したがって、今回、新しく出たニヴァクロンも経年耐性について保証はできませんが、スウォッチグループとオーデマピゲが共同で開発したぐらいですから、経時変化のテストは充分に実施したと思われます。また、時間の経過と共に材質が固くなるというニヴァロックスの短所もないということですから、かなり期待してよい素材だと思います。


その意味で「FLYMAGIC」は、「値段の高さ」「磁気帯びのしやすさ」「温度変化による進みや遅れの発生」という機械式時計のイメージを根本的に変える起源となる時計になるかもしれません。





●大盛況の会場ではイベント終了後も招待ゲストの多くが歓談を続けていた。




※WATCH MEDIA ONLINE編集部よりの追加情報

FLYMAGICには、下記に3モデルがあり、それぞれ世界限定500本ですが、日本では各15本、合計45本のみの限定販売となります。一本一本にシリアルナンバーが入ります。
ステンレススチールまたはステンレススチールPVDの45 mmケースは、無反射サファイアクリスタルによって、心を奪う逆さまのムーブメントを覗かせています。すべてのモデルに、ラバー製ストラップ1本、高級カーフスキン製ストラップ2本が付属します。

 

<商品情報>


YHG100S 
BLACK SUSPENSE
¥180,000 (税込)



YHS101S
REDSURPRISE
¥180,000 (税込)


YHS100S
BLUE HAWK
¥180,000 (税込)

●日本展開は各モデル15本、合計45本のみ(世界各500本限定)
●革新的ともいえる非磁性Nivachron™製バランス スプリングを採用
●耐衝撃性に優れ、湿度変化に強く、磁気の影響を大幅に低減
●ムーブメント中央のリングにシリアルナンバーを刻印
●SISTEM51のムーブメントベースに15個のパーツを追加
●反時計回りに回転するスモールセコンド
●シースルー仕様のローター
●上から見える19石のルビー
●最大90時間パワーリザーブ
●5件の特許を出願中


径:45mm
高さ:5,8 mm
100% スイス製



問合せ先:スウォッチ コール     0570-004-007

スウォッチ オフィシャルサイト:     http://www.スウォッチ.jp

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