ドルンブルート & ゾーン カスタムオーダーイベント レポート
By : CC Fan毎週、魅力的な”作り手”からダイレクトにお話を聞くことができ、”ワガママ”なオーダーを直談判することができる日本橋三越のトークイベント。
先週はドイツ時計のドルンブルート&ゾーンのディルク・ドルンブルート氏が来日しました。
個人的に興味があった技術的なポイントをメインにレポートしますので、先立って行われた小柳時計店さんで行われたイベントをharuさんがお伝えしたレポートもあわせてご覧ください。
”ゾーン(息子)”のディルク・ドルブルート氏、お父さんのディエルテ氏とともに時計作りを行っています。
ちなみに、ランゲのゾーネは息子たち(複数形)でゾーンは息子(単数形)です。
歴史についても少し、”今年は20周年ですが、50周年でもあります”という話からスタート。
もともとの工房はお父さんのディエルテ氏が1969年に創業した修復の工房で、修復のキャリアからスタートしています。
1999年にディルク氏がプレゼントとして自作の腕時計を作り、それを販売しようと考えたことから腕時計メーカーとしてスタートします。
修復の延長として、手持ちの古い工作機械を使って作る方法を選び、投資を募って高価なCNC設備を揃えるのではなく、自前の資金でできる範囲でスタートしたそうです。
ディエルテ氏は”師匠”として何人もの時計師を育てており、ディルク氏は最後の弟子になったそうです。
会社としては小さいながら1年に150本の生産を行っています。
ベースムーブメントを拡張する方法でバリエーションを増やしており、最初に作られたユニタスベースのキャリバー99、ETA問題に対策するために自社化を行ったキャリバー2010、小型時計用のキャリバー2016があります。
現在も使っている古い歯切り旋盤による歯切りの様子。
断面が歯車曲線になっている、薄い円形のノコギリを半径方向に切断して1歯分の隙間を開けた螺旋のような形をしています。
これを回しながら真鍮の円盤に押し当てると、切りながら1歯ずつ進めていくような動きになって歯が切れていきます。
言い換えると、1歯のウォームギアにかみ合わせて歯を切りながら進んでいるような動きです。
今回、説明のために歯切り旋盤を持ち込んで実演も行われました。
キャリバー99に円形パワーリザーブを加えたキャリバー99.9。
ド直球のマリンクロノメーターデザインにセンターセコンド。
パワーリザーブはマリンクロノメーターに範をとったフル巻き上げ後の動作時間を表示します。
ジャーマンな意匠が加えられたキャリバー99.9。
センターセコンド用のブリッジとパワーリザーブ計測用の中間車が加えられていることがわかります。
個人的には一番良いなと思ったレギュレーター。
一般的なレギュレーターと違い、分と秒が同軸(センターセコンド)になっています。
あいまいに考えていた”そもそもの目的である読み取り精度を考えると、一番細かい分解能が必要な秒こそ大きい表示にすべきでは?”と思っていた疑問が見事に解決されています。
ムーブメントの仕上げもオーダーで変えられ、先程の梨地仕上げのイエローゴールドに対し、ストライプ仕上げのローズゴールド。
サプライヤーに任せることが多いダイヤルについても内製していることで、作る過程を説明してくれました。
左から。
これを社内でやっているとは思いませんでした。
また、古典的なダイヤルに加え、”現代の高級時計”にふさわしいダイヤルを求めて作られたセラミックダイヤルもあります。
曰く、古典的な高級と言えばエナメルですが、紫外線などに対する耐久性は高いが衝撃によって割れるというリスクもあるので、より良い素材を求めた結果、医療用に使われるセラミック素材にたどり着いたそうです。
焼成(高温)によって固まるエナメルに対し、UV(紫外線)による反応によって固まる素材で、液体の状態で金属表面に塗布したのち、専用の光源を照射することで硬化します。
医療用に使われ、体内に埋め込まれることもあることから非常に耐久性も高く、色の自由度も高いそうです。
古典的なダイヤルと同様の機械加工でデザインを作ることもでき、サブダイヤルは別パーツ。
サブダイヤルは熱ストレスのリスクがある溶接やはんだ付けではなく、ピンのカシメで固定されています。
剥離のリスクが少なく、修理も容易でしょう。
クリームセラミックとブラックセラミックのレギュレーター。
個人的なベスト。
20周年記念で、20本限定のキャリバー2010。
専用のシルバー仕上げムーブメント。
興味があったキャリバー2010の巻き止め機構についても詳しく聞きました。
巻き芯の回転数(巻いた量)とバレルの回転数(放出量)の差を上側の歯車が数え、ゼネバ機構を回転させます。
フル巻きまで巻き上げると、ゼネバ機構の真にあるカムがレバーを押し、丸穴車の脇にあるコハゼ状の部品が丸穴車をブロックしてそれ以上巻けなくします。
同様の機構を香箱の上に設けるよりも、同じレイヤーに配することで薄くすることができ、また相対的に一番トルクが弱い丸穴車の部分でブロックすることでオーバートルクによる破損のリスクも減らしています。
31mmと古典的なサイズのキャリバー2016。
小径ながらドイツらしい3/4プレート形式のムーブメント。
総じて、日常的に使うための時計を丁寧に丁寧に作っている…と言う印象を受けました。
オーダーも非常に細かくすることができ、まさに自分だけの一本ができる!という印象。
結構惹かれましたが、ここまで来たらカルベの工房を訪ねてから…と言って一旦ペンディングに(予算もあるので)。
恒例ともなったサインの儀。
ラング&ハイネのイエンス・シュナイダーのサインを見つけ、彼は友達なのでその隣に書こう!とのこと。
この机はすごいことになっていますね…
ハブリングの存在感も…
ありがとうございました。
次はカルベで!
D. Dornblüth & Sohn
https://www.dornblueth.com/en
先週はドイツ時計のドルンブルート&ゾーンのディルク・ドルンブルート氏が来日しました。
個人的に興味があった技術的なポイントをメインにレポートしますので、先立って行われた小柳時計店さんで行われたイベントをharuさんがお伝えしたレポートもあわせてご覧ください。
”ゾーン(息子)”のディルク・ドルブルート氏、お父さんのディエルテ氏とともに時計作りを行っています。
ちなみに、ランゲのゾーネは息子たち(複数形)でゾーンは息子(単数形)です。
歴史についても少し、”今年は20周年ですが、50周年でもあります”という話からスタート。
もともとの工房はお父さんのディエルテ氏が1969年に創業した修復の工房で、修復のキャリアからスタートしています。
1999年にディルク氏がプレゼントとして自作の腕時計を作り、それを販売しようと考えたことから腕時計メーカーとしてスタートします。
修復の延長として、手持ちの古い工作機械を使って作る方法を選び、投資を募って高価なCNC設備を揃えるのではなく、自前の資金でできる範囲でスタートしたそうです。
ディエルテ氏は”師匠”として何人もの時計師を育てており、ディルク氏は最後の弟子になったそうです。
会社としては小さいながら1年に150本の生産を行っています。
ベースムーブメントを拡張する方法でバリエーションを増やしており、最初に作られたユニタスベースのキャリバー99、ETA問題に対策するために自社化を行ったキャリバー2010、小型時計用のキャリバー2016があります。
現在も使っている古い歯切り旋盤による歯切りの様子。
断面が歯車曲線になっている、薄い円形のノコギリを半径方向に切断して1歯分の隙間を開けた螺旋のような形をしています。
これを回しながら真鍮の円盤に押し当てると、切りながら1歯ずつ進めていくような動きになって歯が切れていきます。
言い換えると、1歯のウォームギアにかみ合わせて歯を切りながら進んでいるような動きです。
今回、説明のために歯切り旋盤を持ち込んで実演も行われました。
キャリバー99に円形パワーリザーブを加えたキャリバー99.9。
ド直球のマリンクロノメーターデザインにセンターセコンド。
パワーリザーブはマリンクロノメーターに範をとったフル巻き上げ後の動作時間を表示します。
ジャーマンな意匠が加えられたキャリバー99.9。
センターセコンド用のブリッジとパワーリザーブ計測用の中間車が加えられていることがわかります。
個人的には一番良いなと思ったレギュレーター。
一般的なレギュレーターと違い、分と秒が同軸(センターセコンド)になっています。
あいまいに考えていた”そもそもの目的である読み取り精度を考えると、一番細かい分解能が必要な秒こそ大きい表示にすべきでは?”と思っていた疑問が見事に解決されています。
ムーブメントの仕上げもオーダーで変えられ、先程の梨地仕上げのイエローゴールドに対し、ストライプ仕上げのローズゴールド。
サプライヤーに任せることが多いダイヤルについても内製していることで、作る過程を説明してくれました。
左から。
- 素材となる真鍮のブランク材
- 治具に固定するための基準穴と外周を削った状態
- パンタグラフ(機械的に縮小しながらマスターを写す機械)を使ってインデックスを彫り込み、センターセコンドの穴をあけた状態
- 外周から切り離し、仕上げを行った状態
- 銀ペーストのこすりつけによる白色仕上げを行い、インデックスに墨入れをした状態
- 同様の製法で製造したサブダイヤルを装着して完成
これを社内でやっているとは思いませんでした。
また、古典的なダイヤルに加え、”現代の高級時計”にふさわしいダイヤルを求めて作られたセラミックダイヤルもあります。
曰く、古典的な高級と言えばエナメルですが、紫外線などに対する耐久性は高いが衝撃によって割れるというリスクもあるので、より良い素材を求めた結果、医療用に使われるセラミック素材にたどり着いたそうです。
焼成(高温)によって固まるエナメルに対し、UV(紫外線)による反応によって固まる素材で、液体の状態で金属表面に塗布したのち、専用の光源を照射することで硬化します。
医療用に使われ、体内に埋め込まれることもあることから非常に耐久性も高く、色の自由度も高いそうです。
古典的なダイヤルと同様の機械加工でデザインを作ることもでき、サブダイヤルは別パーツ。
サブダイヤルは熱ストレスのリスクがある溶接やはんだ付けではなく、ピンのカシメで固定されています。
剥離のリスクが少なく、修理も容易でしょう。
クリームセラミックとブラックセラミックのレギュレーター。
個人的なベスト。
20周年記念で、20本限定のキャリバー2010。
専用のシルバー仕上げムーブメント。
興味があったキャリバー2010の巻き止め機構についても詳しく聞きました。
巻き芯の回転数(巻いた量)とバレルの回転数(放出量)の差を上側の歯車が数え、ゼネバ機構を回転させます。
フル巻きまで巻き上げると、ゼネバ機構の真にあるカムがレバーを押し、丸穴車の脇にあるコハゼ状の部品が丸穴車をブロックしてそれ以上巻けなくします。
同様の機構を香箱の上に設けるよりも、同じレイヤーに配することで薄くすることができ、また相対的に一番トルクが弱い丸穴車の部分でブロックすることでオーバートルクによる破損のリスクも減らしています。
31mmと古典的なサイズのキャリバー2016。
小径ながらドイツらしい3/4プレート形式のムーブメント。
総じて、日常的に使うための時計を丁寧に丁寧に作っている…と言う印象を受けました。
オーダーも非常に細かくすることができ、まさに自分だけの一本ができる!という印象。
結構惹かれましたが、ここまで来たらカルベの工房を訪ねてから…と言って一旦ペンディングに(予算もあるので)。
恒例ともなったサインの儀。
ラング&ハイネのイエンス・シュナイダーのサインを見つけ、彼は友達なのでその隣に書こう!とのこと。
この机はすごいことになっていますね…
ハブリングの存在感も…
ありがとうございました。
次はカルベで!
D. Dornblüth & Sohn
https://www.dornblueth.com/en
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