A.ランゲ&ゾーネW&W新作「トリプルスプリット」~その機能&用途と構造美

 By : KITAMURA(a-ls)


Watches&Wondrs 2021も無事に終了。
A.ランゲ&ゾーネについては、W&W開幕前の新作予想記事に始まり、新作発表後からは、
1)A.ランゲ&ゾーネ2021年新作速報 
2)「ランゲ1・パーペチュアルカレンダー」実機画像&技術解説 
3)A.ランゲ&ゾーネ 2021新作発表会レポート+リトル・ランゲ1・ムーンフェイズ・インプレッション  
4)アントニー・デ・ハス開発部長インタビュー、ランゲ1・パーペチュアル・カレンダーについて 

と、ご紹介してきたが、ふと、新作のうち「トリプルスプリット」にあまり触れていないことに気づく。
昨年のツァイトヴェルク・ミニッツ・リピーターでも採用されていた高級感のある深いブルーの文字盤になったとはいえ、機械自体は2018年のオリジナルと同じもので、限定100本。もしかしたら今後は、ランゲのハイエンド精密計測ピースがこの限定青文字盤を継承していく方向性なのかもしれない。



しかし、このモデルにおいて、時計愛好家ならば誰しもが認める素晴らしい点がある。
それが裏側の構造美だ。



なのでここでは、バックショットをメインとする実機画像と、なかなか身近な使用用途がみつからない機能説明を記したプレスリリースを併せてお届けすることにする。




 


(以下A.ランゲ&ゾーネ資料より/ただしバックショット画像と時分針がランゲタイムではない画像はWATCH MEDIA ONLINE)
トリプルスプリット~独創性あふれるクロノグラフが新たな装いで登場

A.ランゲ&ゾーネが 2018 年にトリプルスプリットを発表したとき、世界中の時計専門誌で世界初の時計として高い評価を受けました。このモデルは今日まで、計測タイムを最長 12 時間まで積算し比較できる唯一のスプリットセコンド・クロノグラフとして、独自の地位を確立しています。そのトリプルスプリットに今年、ブルーのダイヤルをピンクゴールドケースに収めたモデルが仲間入りします。



●ピンクゴールドケースにブルーのダイヤルを組み合わせたトリプルスプリット



2018年に発表されたトリプルスプリットは、中間タイムと基準タイムを最長12時間まで計測できる世界で唯一の機械式ラトラパント・クロノグラフです。今回、グレーのダイヤルをホワイトゴールドケースと組み合わせた初代エディションと同じく製作数100本限定で、ブルーのダイヤルにロディウムカラーのサブダイヤルを組み込み、ピンクゴールドケースに収めたモデルが登場します。考え抜かれた素材・カラーコンセプトにより、表示要素の多さにもかかわらず、合計10本の針がそれぞれどの機能に割り当てられているのかを明確に把握することができます。



世界中を見回しても、トリプルスプリットに比肩する時計は見当たりません。A.ランゲ&ゾーネは2004年、プレシジョン・ジャンピング・ラトラパント・ミニッツカウンターを搭載したダブルスプリットを発表しました。その機構は当時すでに、先進的なラトラパント機構の開発分野において紛れもなく画期的な技術でした。それをさらに発展させた成果が、トリプルスプリットなのです。



さまざまなシーンで活躍するトリプルスプリット
トリプルスプリットは12時間までのタイムを計ることができます。それだけでも、機械式クロノグラフとしては希有なことですが、ラトラパント機能に時積算針軸を追加したことにより、計時の可能性がさらに広がりました。トリプルスプリットなら、例えばF1レースや、ツール・ド・フランス、あるいはマラソンで競い合う2人のタイムを比較することができます。さらに、同時に開始するのではない2つのイベントや長時間におよぶイベントに要した時間を計って記録できます。例えば、トライアスロンのアイアンマンレースで種目別タイムと合計タイムを求めることができます。計測タイムを積算する一方で、何度でもラップタイムを計ることができるのです。


トリプルスプリットは、スプリットセコンド・クロノグラフの潜在能力を余すところなく引き出す時計です。トリプルラトラパント機能により、最長12時間までラップタイムを何件でも計測できるようになりました。



ラトラパント・クロノグラフ機能を搭載するトリプルスプリットは、計測タイムを最長12時間まで積算し、比較できる時計です。2018年に発表されたトリプルスプリットは、A.ランゲ&ゾーネのダブルスプリットが打ち立てたブランド記録を塗り替えました。ダブルスプリットは、同時に2件のタイムを計測して最長30分までのタイムを比較できる初めての時計として2004年に発表されて以来、クロノグラフの雄として不動の地位にあったのです。そのダブルスプリットにスイープ運針式ラトラパント時針を増設したトリプルスプリットは、ラトラパント機能の可能計測時間を一気に24倍の12時間に拡げます。


 1. ラトラパント時針

 2. 時積算針

 3. ラトラパント操作ボタン

 4. 分針

 5. スモールセコンド

 6. ラトラパント秒針

 7. パワーリザーブ表示AUF/AB

 8. クロノグラフ始動・停止ボタン

 9. タキメータースケール

 10. 時針

 11. 分積算針

 12. ラトラパント分針

 13. クロノグラフ秒針

 14. クロノグラフリセットおよびフライバック操作ボタン





トリプルスプリットでラップタイムを計測
計時をスタートする時点では、3本のロディウム仕上げのラトラパント針はそれぞれ対応するクロノグラフ針に重なって静止しています。2時の位置にあるクロノグラフ操作用ボタンを押すと、計時が始まります。3組のクロノグラフ針とラトラパント針は重なったまま動き、ラップタイムを読み取るために10時位置にあるラトラパント用ボタンを押すと、クロノグラフ針とラトラパント針は動きを異にします。この操作により3本のロディウムカラーの針は静止し、ラップタイムを指し示します。その間に、ラトラパント針の下に隠れていたゴールドプレート仕上げのスチール製クロノグラフ針またはピンクゴールド製クロノグラフ針が表われ、計時を続けます。ラトラパント用ボタンをもう一度押すと、ラトラパント針が再びクロノグラフ針に追いついて一緒に周回を始めます。
ムーブメントにはさらに、前述した3組の針すべてに作用するフライバック機能も搭載されています。これは、計時中に4時位置にあるボタンを押すとクロノグラフ針を帰零させる機能です。ボタンから指を離すと間髪を入れずに、次の計時が始まります。


用途
ラトラパント機能で時単位も積算できるようになったため、計時の面白みが増し、用途が格段に多様になります。トリプルスプリットなら、例えばF1レースや、ツール・ド・フランスの1区間、あるいはマラソンで競い合う2人のタイムを比較することができます。さらに、連続して開始する2つのイベント、例えば長距離飛行の往路と復路の所要時間を計って記録できます。また、例えばアイアンマンレースのように何時間にもおよぶ複数のイベントの計測タイムを積算できます。計測タイムを積算する一方で、何度でもラップタイムを計ることができるのです。



クロノグラフ針とラトラパント針
トリプルスプリットにはタイム計測用の針が3組、すなわち6本あります。クロノグラフ用の3本の針の上に重ねてラトラパント用の3本が取り付けられています。2本の長い細身の秒針は6分の1秒刻みで計時します。4時の位置にあるライトグレーのサブダイヤルで、プレシジョン・ジャンピング・ミニッツカウンターが経過した分数を示し、12時の位置にある小さめのサブダイヤルでは連続して稼働する時積算針が経過した時間数を示します。




クロノグラフ用ボタンとラトラパント用ボタン
ケースの右側にゴールド無垢のボタンが2個付いています。上のボタンはクロノグラフ針のスタート・ストップ用で、下のボタンはリセット用です。クロノグラフ機能、すなわちストップウォッチ機能作動中に下のボタンを押すと、フライバック機能が作動します。これにより、タイム計測中にボタンを1回押すだけで、その計測を中断してクロノグラフ針を帰零し、間髪を入れずに次のタイム計測を開始できます。
クロノグラフ機能作動中にケース左側のボタンを押すと、3本のラトラパント針が停止し、最初のラップタイムを読み取ることができます。それまでラトラパント針の下に隠れていたクロノグラフ針が姿を表し、止まらずに動き続けます。そして同じボタンをもう一度押すと、ラトラパント針が瞬時にクロノグラフ針に追いついて、再び一緒に動き始めます。




軸の構造
スプリットセコンド・クロノグラフには2本の針があり、その軸は二重構造になっています。トリプルラトラパント機構ともなると、この構造が三つ共存することになります。文字盤中央から長く伸びる2本の秒針に加え、分積算計と時積算計に針を2本ずつ取り付ける軸が必要になるというわけです。以下に解説する秒針軸の構造は、分積算針軸と時積算針軸にもあてはまります。クロノグラフ秒針は、外側の筒状のクロノグラフ・センター軸(1)に取り付けられています。この軸を動かすた
めの動力は、クロノグラフ・センターホイール(2)を介して伝達されます。この軸は、クロノグラフ・センターホイールのゼロリセット・ハートカム(3)とラトラパント・ハートカム(4)にしっかりと接続されています。

ハートカムは、針を最短距離(場合により時計回りまたは反時計回り)でできるだけ速く帰零させる働きをします。ラトラパント針と連結するハートカムはさらに、ラトラパント針をラップタイム計測の停止後に再びクロノグラフ秒針と同期させる役割を果たします。クロノグラフ秒針上に重なっているラトラパント針は、内側のラトラパント・センター軸(5)に取り付けられています。この軸の下端にはアイソレーター・ホイール(6)とラトラパント・センターホイール(7)があり、ラトラパント・センターホイールには自由に回転できるハートカムレバー(8)が付いています。


ラトラパント針の始動と停止
初期状態では、ラトラパント・センターホイールのハートカムレバー(8)がスプリングでラトラパント・ハートカム(4)に押し付けられています。これにより、ラトラパント機能が起動すると同時にラトラパント・センターホイール(7)が動き始め、本来は独立して動くはずのクロノグラフ・センター軸(1)とラトラパント・センター軸(5)が連結されます。クロノグラフ機能を起動すると、3組のクロノグラフ針とラトラパント針が一斉に動き始めます。
ラトラパント用ボタンを押すと、このボタンと連結しているラトラパント切替えレバー(10)がコラムホイール(11)を1歯分だけ進めます。すると、ラトラパント・クランプ(12)が閉じてラトラパント・センターホイール(7)の回転を止めます。その結果、ラトラパント秒針が停止します。
それと同時に、分針停止スプリング(13)と時針停止レバー(15)がラトラパント分針および時針を止めたまま保持します。その間、3組のクロノグラフ針は動き続けます。ラトラパント操作ボタンをもう一度押すとラトラパント・クランプ(12)が開いて、分針停止スプリング(13)および時針停止レバー(15)を押しのけます。ラトラパント針が瞬時に、クロノグラフ針に追い着きます。




アイソレーター機構
振幅の低下を回避しつつラップタイムを計測することを可能にするのは、特許を取得したアイソレーター機構です。ラトラパント針が停止している間にクロノグラフ針が動き続けるとき、従来の構造ではラトラパント・センターホイールのハートカム(4)上で動くハートカムレバー(8)が摩擦を生じさせるため、歩度が不安定になってしまいます。トリプルスプリットでは、ラトラパント針が停止している間に、ラトラパント・センターホイールとラトラパント・ミニッツカウンター・ホイールに取り付けられている2個のアイソレーター・ホイール(6と6a)を回り続けるハートカムから切り離すことにより、摩擦を回避しています。時針にはこのような装置は不要です。なぜなら、時針は大きなトルクと比較的ゆっくりと回転する機構により、摩擦損失は極めて小さいからです。



プレシジョン・ジャンピング・ミニッツカウンター
プレシジョン・ジャンピング・ミニッツカウンターは、60秒を経過するごとに一目盛りずつ進む設計になっており、進む瞬間に計時を停止した場合にも、間違いなく動作します。これに似た装置は、20世紀になってから作られた複雑な腕時計のムーブメントはもとより、往年の懐中時計のムーブメントにも搭載されていました。しかし、A.ランゲ&ゾーネの設計技師たちはそれに満足することなく、この便利な機構の改良・開発を進めました。その結果、分積算計を進める調節式切替えレバーによ
って、クロノグラフ秒針がゼロを通過する瞬間に合わせてミニッツカウンターの針が正確に進むようにタイミングを調整することを可能にし、しかもムーブメントを組立てた状態でも設定できる仕組みを完成させました。この機構は特許を取得しています。


タキメータースケール
ダイヤルの外周にあるタキメータースケールには時速70~400キロメートルの目盛りが付いており、1000メートルを走行する際の時速を求めることができます。この目盛りは、計時を開始してから経過した秒数の1時間に占める割合の逆数です。例えば、1000メートル走行で計測したタイムが30秒であったとします。この時、クロノグラフ秒針は時速120キロメートルを指しています。これは、1時間の120分の1が経過したことを意味します。


パワーリザーブ表示AUF/AB
トリプルスプリットを完全に巻き上げると、55時間のパワーリザーブが蓄えられます。パワーリザーブの残量を知りたい場合は、6時位置にあるパワーリザーブ表示AUF/ABを見れば分かります。ダブルスプリットではパワーリザーブ表示を上部に配置していましたが、ランゲ自社製キャリバーL132.1では下方に移動しました。これは、文字盤の水平中心軸よりも下にスモールセコンドと分積算計のサブダイヤルを配置し、時積算計の配置スペースを上部に確保した結果です。


●キャリバーL132.1


自社製キャリバーL132.1*の特色
ランゲ自社製キャリバーL132.1は、その立体感、複雑さ、見た目にも美しい構造で魅了するムーブメントです。部品の一つひとつに施されたランゲ特有の装飾模様が華を添えています。相互に完璧に調整された微小な部品の数は567個におよびます。この複雑さは、見せるためのものではなく、他に類を見ないタイムスプリットを機能させるために技術的に必要なのです。
3組の針の動きを同期させたり、別々に動かすための機構を実現するのは、ランゲの開発技師たちにとって途轍もない難題でした。単純なラトラパント機構ですら、2本のクロノグラフ針を固定する軸が二重構造になっているのです。キャリバーL132.1には、その構造が同時に3つ組み込まれています。これらの多重軸をムーブメントに組み込んでゆく作業には、最高度の正確さと指先の繊細な感覚が求められます。
サファイアクリスタルのシースルーバックからは、ランゲ最高品質基準に則って施した仕上げ装飾をまとうクロノグラフムーブメントの歯車、クラッチ、ロッカーアーム、レバー、バネ、裏押さえが緻密に連係して動くのが見えます。そして、グラスヒュッテストライプが美しい受けに伝統技法でビス留めした5個のゴールドシャトンとハンドエングレービング入りテンプ受けが、卓越した美しさを持つムーブメントを完成させています。このように、トリプルスプリットは機構だけでなく工芸美においても、クロノグラフ搭載機の中で独自のカテゴリーを築く希有な時計なのです。





【仕様】
トリプルスプリット
Ref. 424.037F

[ムーブメント]
ランゲ自社製キャリバーL132.1、手巻き、ランゲ最高品質基準準拠、手作業による組立ておよび装飾、五姿勢調整済み、素材の特性を生かした洋銀製の地板および受け、ハンドエングレービング入りテンプ受け
ムーブメント寸法:直径:30.6ミリ/高さ:9.4 mm
ムーブメント部品数:567
石数:46
ビス留め式ゴールドシャトン:5
脱進機:アンクル脱進機
調速機:耐震機構付き偏心錘付きテンプ、自社製ヒゲゼンマイ、毎時21,600振動、スワンネック形バネと側面にある調整用ビスにより微調整可能な速度調整装置
パワーリザーブ:完全巻上げ状態で55時間
[機能]
時、分およびストップセコンド機能搭載スモールセコンドによる時刻表示/トリプルラトラパント機能搭載フライバック・クロノグラフ(6分の1秒~12時間までの積算タイムおよびラップタイム計測に対応、プレシジョン・ジャンピング・クロノグラフ・ラトラパント・ミニッツカウンター、連続駆動式クロノグラフ・ラトラパント・アワーカウンター付き)/タキメータースケール/パワーリザーブ表示AUF/AB
[操作系]
ゼンマイ巻上げおよび時刻調整用リューズ/クロノグラフ操作用ボタン2個/ラトラパント操作用ボタン1個

[ケース]
18Kピンクゴールド
風防ガラスおよび シースルーバック
ケース寸法:直径:43.2 mm、高さ:15.6 mm
反射防止加工サファイアクリスタル、モース硬度9
[ダイヤル]
シルバー無垢、ブルー/サブダイヤルはロディウム
アプライドインデックス:ピンクゴールド/3時、6時、9時、12時に夜光インデックス
[針]
夜光時針および分針/ピンクゴールド製秒針、パワーリザーブ針およびクロノグラフ分積算針/ゴールドプレート仕上げのスチール製クロノグラフ秒針および時積算針/ロディウム仕上げのスチール製ラトラパント秒針およびラトラパント時針/ロディウム仕上げのゴールド製ラトラパント分針
[ベルト]
レザーベルト、ダークブルー(縫い目グレー)
[バックル]
18Kピンクゴールド製フォールディングバックル
限定数:100本




【お問合せ】
A.ランゲ&ゾーネ
TEL 03-4461-8080