ラング&ハイネ ヘクトール 実機レポート

 By : CC Fan

少し遅くなってしまいましたが、あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いいたします。

さて、新年早々、ラング&ハイネの初の「ラグスポ」的作品、ヘクトールが入荷した…という連絡があったので早速レポートします。
本来は去年末入荷予定でしたが、ドイツも新型コロナウィルスの影響で遅れが発生、2022年に…という事のようです。
この個体は既にご成約済みだそうですが、ブレス調整に合わせて今回のレポートの写真撮影の機会を頂くことができました、ありがとうございます。

今回はスモールセコンドのUWD33.1を採用したジンのMeisterbundと比較もできましたので合わせてレポートします。



まずは一枚、今回到着したのグレー文字盤。
オフィシャル写真では結構目立っていな文字盤中心部のヘクトールの頭文字Hを図案化した模様はほとんど主張せず、いわば「透かし」のような効果を生んでいます。
カンタロスらしさ、を感じた6時位置の筒カナ・筒車を両持ちにするブリッジも光が当たらない状態では主張せず、デザインとして溶け込んでいます。

「ペチコート」デザインコードの針はダイヤルの同心円の区画分けにぴったりと沿い、それぞれのアワーインデックス・ミニッツインデックス・セコンドインデックスと針先が重なるように指しています。
6振動に合わせて、セコンドインデックスは1秒を3分割しています。



光の当たり方次第では、Hマークがはっきりと見えます。
ブリッジの開口部から筒車、日の裏車の頑丈さを窺い知ることができます。
リュウズガードと対称になる、9時位置にクッション型のデザイン、これは円形のケースをラグから続く逆Rの曲線で取り除いたデザインと見做すことができそうです。

センターセコンド針をゴールドにすることでセンターセコンドであることを強調しています。



手巻きの利便性を考えたのか、ねじ込みなしの比較的大きめのリュウズはクッション型のリュウズガードにてガードされ、5気圧防水の性能。
リュウズにはLHのロゴも。



しなやかな5連ブレスレットは時計本体のデザインからの連続性を感じさせます。



ポリッシュとヘアライン仕上げを交互に施し、ヘクトールのテーマであるコントラプンクト(対位法)を思わせる仕上がりに。
可動はなめらかで日常的な装着感は良さそうと感じました。



調整済み、バックルは両開き、誤解除防止のボタンがあるタイプ。



ボタンが無い側はセラミックボールによって凹部に引っかって仮固定、最終的にボタンが無い側の凸部をボタンが有る側が押さえ込んで全体を固定する方式。



スモールセコンドとセンターセコンドの「両立」をはじめから考えて作られたであろうLH 33.2ムーブメント。
通常のスモールセコンド輪列の2-4番車の重なり方を再構築し、3番車を最上位に持ってくることで追加の出車なしで2番車同軸のセンターセコンドピニオンをドライブるすることができます。

これはダイレクトセンターセコンドのマルコ・ラングZweigesicht-1(ツヴァイゲズィヒト)と共に 「マルコ・ラングらしさ」を感じる設計です。
(「手段と目的」論はここらへんで…)



こちらはジンのマイスターブンドに使われているUWD 33.1ムーブメント。
数字からも分かるように、実質的な「兄弟機」と言って良いムーブメントでしょう。

3番車が一番上に配置されて独立したブリッジで支えられていること、3番車の外周が2番車軸にいい感じで近づいていることが分かります。
ここにピニオンとガタツキ防止バネをつければセンターセコンドになるわけです。

LH33.2の同じ箇所を見ると片持ちのブリッジが追加されていることが分かります。



マイスターブンドのスモールセコンドは偏ることもなくど真ん中に。
「一つのムーブメント設計でセンターセコンドとスモールセコンドを高いバランスで両立する」ことが実現できていることが分かります。



文字盤側からは同じ基礎設計のムーブメントを使っているとは一見して分からない2作品。
個人的にはセンターセコンドとスモールセコンドを「両立」する方法ではかなり理に適っていると思います。



ムーブメント側から見ると、同じ考え方を持つムーブメントであることが分かります。

UWDの供給ノウハウなどはあったとしても、初めてのセンターセコンド機、初めてのステンレスブレスとは思えない完成度でまとめてきたヘクトール。
ぜひ「普段使い」してほしいと思える作品でした。

ボックスもヘクトールのHを意匠化したロゴでまとめられています。



付属品はシンプルなルーペ…ですが、ある点が面白かったので紹介します。



一見するとロゴ入りの普通の金属筐体のルーペ(キズミ)ですが…



「わかってる」空気穴の大きさ。
ルーペを長時間使っていると人から出た湿気で結露し曇ってしまうため、湿気を抜くための空気穴をあける改造をする、というのは比較的メジャーですが、それをはじめからやってあるのは、ノベルティ用の金属筐体のキズミではあまり見かけない印象です。
「オマケ」ではなく、ちゃんと使える物を、というラング&ハイネの心遣いと受け取りました。



今までのクラシカルなラインとは全く異なる方向性のヘクトール。
初めてだし、どうかな?と思いましたが、きちんとまとめた「製品」にしているのは流石のラング&ハイネ、と改めて確認できました。
昨今の状況で「即完売」に近い状況みたいですが、ぜひ実機を見てほしい!と思える作品でした。



関連 Web Site (メーカー・代理店)

Noble Styling
http://noblestyling.com/

Lang&Heyne(本国サイト・日本語)
http://www.lang-und-heyne.de/ja/