ローマン ゴティエ 新作「 コンティニュアム チタン エディション ツー」についてタカシマヤ ウオッチメゾン 東京・日本橋コーナーで語る

 By : CC Fan


タカシマヤ ウオッチメゾン 東京・日本橋にブランド初となる世界観を再現したコーナーをオープン
し、コンテニュアムのチタン エディション ツーも好調なローマン ゴティエ(Romain Gauthier)。
更なる躍進を目指して投入された戦略的なコンテニュアムシリーズについて創業者ローマン ゴティエ本人からお話を伺いましたのでレポートします。



新しくオープンしたコーナーの前で説明するローマン。
スイスから運んできた石膏ボードはスイス在住のアーティストによる作品で、ブランドの所在地であり、故郷でもある「ジュウ渓谷」の山脈をリアルに再現しています。
ズバリのタイミングは撮れませんでしたが、「ここら辺にワークショップがある」と言う説明も。



愛用のMacBookを使い、ディティールを紹介します。
身振り手振りを交え、ダイナミックに時計作りに対する情熱を伝えます。

まず、「なぜコンティニュアムというシリーズを作ったのか?」と言うお話から。

2005年の創業以来、徐々に評価され確固たる地位を築いてきたローマン ゴティエ、今までの作品であるHMとHMS、ロジカル・ワン、インサイトはどれも「基本の仕様」自体は存在していましたが、顧客ごとに要望を聞いては1から再設計を行う「オートクチュール(オーダーメイド)」な作り方が基本となって、どうしても年間の生産本数には限りがあり、価格もそれ相応に高価になっていました。
また、需要の増加により、注文が積み重なり、納品までの「待ち時間」がどんどん増えてしまっているのも心苦しく思っていたそうです。

「オートクチュール」自体はもちろん重要と考えており、これからもこの作り方のシリーズは続けていくそうですが、より増加していく需要に応えるため、またより「アクッセサブル」な価格で幅広い層に自身の魅力を知ってほしい、と言う思いから「プレタポルテ(オートクチュールに対する既製服の意味)」として、コンティニュアムシリーズを立ち上げ、既存のオートクチュール担当時計師とは別に専業の時計師も雇用しました。
「プレタポルテ」の考え方として、基本的にはカスタムオーダーは受けず、「標準仕様」を決めて販売、着て(腕に付けて)帰ることができるよう在庫が持てるような供給を目指すという事で、オートクチュールが年間40本程度の生産量だったのに対し、先ずは100本程度、更に安定して本数を増やしたいとのことです。

もちろん、数を作る、と言ってもクオリティを下げるではなく、オートクチュールとはまた別の方向性で高いクオリティを維持することを目指しており、ブリッジのデザインなどはオートクチュールシリーズの「アイコン」を取り入れながらも新しい方向性を模索と挑戦しているそうです。
上のPCの画像で見せているのはブリッジ・歯車の仕上げについて、エッジ部分の研磨と平面部分にハンドエングレーブで入れられた凹凸面のコントラストを強調する、と言う説明です。



「ジュウ渓谷」的な曲線のエッジのブリッジだったオートクチュールシリーズのブリッジに対し、より「現代」的と感じるブリッジの分割。
歯車のスポークや、曲線溝のネジなど踏襲されているディティールも見られます。
文字盤・ケースデザインを含めたトータルパッケージをローマン本人が設計しているため、ムーブメントの4番車(秒針軸)は大胆にオフセットされ文字盤でもスモールセコンドは7時位置に置かれ、リュウズも2時位置に配置されていますが、全体として「調和」していると感じます。



装着感をよくするために薄くし、曲面のベゼルを平面で断ち切ることによって独特の表情を与えた、と説明するローマン。
ラバーベルトはケースに沿って固定角度で固定されているため手首の動きで時計が暴れず装着感を向上させます。



円状のベゼルを6ヵ所、直線状にカットしています。
「原理」はシンプルではありますが、どうやって加工するんだ…というような形状を歪なく作ることができるローマンだからできるデザインではないでしょうか。
7時位置にオフセットさせたスモールセコンドも一見すると違和感を感じるかもしれませんが、全体として調和している、と感じました。



表(文字盤側)を見てから、再び裏(ムーブメント側)を見ると、スモールセコンドを7時位置にオフセットさせたおかげで相対的に大きな歯車を無理なく収められているという設計上のメリットも見えてきます。
またリュウズを2時位置にし、テンプのレイアウトを工夫することで後述する「スネイルカム」ストップセコンドも無理なく収まっています。



ムーブメント側の立体感に対し、文字盤側はクリアランスを詰めて視差を減らし、読み取り最優先!と言うデザインなのも素晴らしいと思います。
オフセットしたスモセコ・時分表示も全体の調和として慣れると思います。



より幅広い層へ訴求するコンティニュアム、現在は生産体制の立ち上げと共にメンテナンス体制の構築も行っており、よりブランドとして高みを目指すというローマン ゴティエの新時代を象徴する作品ではないでしょうか。
今後も様々な展開があるそうで、目が離せません!



什器の前でポーズを決めるローマン。
見られること自体が珍しいローマン ゴティエの実機が展示されています!



ロジカル・ワン!



ここにアーティストのサインがあるんだ!という遊び心も…

さて、最後に個人的に気になっていたのは去年のオディション・ワンのファーストレポートでも書いた「スネイルカム」に対する疑問をやっと本人に直接伺う機会が得られました。
前回のレポートでも「推測」したのですが、これは機械要素としての「カム」ではなく、「カムの形をしたスプリング」だよね?と聞いたところ「その通り」という回答が得られました。


再掲:「スネイルカム」によるストップセコンドが動作している様子。

狙いもほぼ「推測」通りで、スネイルカムの形でロジカル・ワンの「アイコン」を取り込むこと、通常のストップセコンドのように直線運動でテンワを押さえるではなく、カム状が回転運動で押さえることで解除時に回転力で「蹴る」のでテンワに初速(初期エネルギー)を与えより速く定常状態に到達させることを目指したそうです。
これは特に高Q値なテンワを持つ高振動機では重要な特性だと考えられます。

また、リュウズの位置とテンワの位置を工夫することでリュウズからストップセコンド機構までの距離を最少にし、ダイレクトな操作感を得やすくしています。

最後の謎として、「この形状、難しそうだけど切削で作れるの?」という疑問に対しては「LIGAプロセスの金属積層で作っている」との回答があり、「それは社内で?」には「ノウハウと設備を持っているミモテックにお願いしている」と隠すことなく正直に答えていただけました。
何でもかんでも「自社製」にする昨今、この姿勢は素直に素晴らしいと思います。



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ローマン・ゴティエ日本総輸入代理店
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