ローマン ゴティエ 新作「コンティニュアム」のエディション・ワンとオンリーウォッチバージョンをレポート

 By : CC Fan

10月28日に情報解禁となった、ローマン ゴティエの新作「コンティニュアム」
、ブランドにとって新しい領域を広げるフリーダムコレクションの新作として登場したシンプルな三針手巻きスポーツウォッチです。

公開に合わせて早速実機が日本に到着し、拝見させていただきましたのでレポートします。



ローマン ゴティエの名を知らしめることになった初作プレステージHMとプレステージHMS、そして彼の「父親」のような存在であるフィリップ・デュフォーの代表作シンプリシティのようなシンプルで美しく、オーナーが常に身に付け、寄り添う様な存在を改めて作り出したい、という意味で「初心にかえる」ような作品と読み解きました。

コンティニュアム(連続性)という名前に込められたように、時計作りの伝統(過去)だけではなく、現代と未来につながるデザイン、全ては切れ目なく繋がっています。
特にデザインはデザインだけではなく、ムーブメント自体の機能にも関わる要素となっている、と理解しましたので詳細に見ていきましょう。



ケース及びムーブメントの大部分は強度と耐蝕性に優れ軽量なグレード5チタンで作られ、それぞれの面に異なる仕上げを施すことで単一素材ながらコントラストを生み出しています。
特徴的なダイヤルもチタンで作られ、チタンの素材感を活かした色味をサテンブラストで仕上げています。

オフセンターの時分針と7時位置のスモールセコンドは調和を良しとする一般的なダイヤルデザインから見るとかなり異端となるデザインです、これは「囲まれて閉じた円形」より、より開かれて風通しの良いデザインを求めた、というのはローマンの言葉ですが、同時にこのデザインによってムーブメント側にもメリットが生まれます。



それがこの軸配置。
デザインにあわせて軸位置が最適化されることで、時分針(2番車)及び7時位置のスモールセコンド(4番車)に大きな歯車を使うことができ、その中間の3番車も同様に大きくすることができます。
部品が大きいことによる頑丈さに勝る耐久性は無いわけで、32.10mm径のムーブメントとは思えない大型の歯車を収め、2番車を香箱の下、地板内に埋め込んだ上で3枚の歯車の重なりを最適化することで厚み5.50mmに抑えています。

ムーブメンント地板と香箱を支えるブリッジ、巻き上げ輪列と主輪列を支えるフィンガーブリッジはケース同様グレード5チタン製、脱進機のブリッジは真鍮、テンワのブリッジはジャーマンシルバー製ですが、仕上げと質感は統一されており素材の差は感じ取ることができませんでした。

歯車のスポークはローマンのアイコンとなっている5つの円を重ねたような形、ロジカル・ワンで使われた応力集中を最適化した三角形形状のアンクルも引き続き採用されています。



公式のムーブメント図を。
ムーブメントに対し、歯車が大きいこと、重なりを有効に使っていることは読み取れますでしょうか?
設計の優位性だけではなく、ルビーの大きさや、それを収めるブリッジの縁の仕上げもローマン ゴティエの名に恥じない仕上げが施されています。



もう一度デザインを見てみましょう。
時分のインデックスと、スモールセコンドのインデックスはそれぞれ異なる長さですが、全体としては調和しているようなバランスを生んでいます。
このデザインはローマン自体がまとめたものだそうで、一見すると「散らかっている」ように見えて全体としては「釣り合っている」という絶妙さです。

ベゼルは六角形?と思いましたが、これはラウンドケースの角を平面でカットしてファセットを作った物だそうです。
カット面はポリッシュ、それ以外をサテンで仕上げることでコントラストを生み出す独特のデザインです。
これも、金属加工を得意とし、高級時計へのチタンの使用を推進してきたローマンが考えるチタンによる高級時計の外装への方法論を反映したものでしょう。

リュウズはロジカル・ワンなどと同様に2時位置に配置され、ひっかけるリスクを低減しています。



リアベゼルもフロント同様、ラウンドの角をカットした意匠を持ちます。
ケースサイドはサテン仕上げ、ラグとケースが連続的に繋がる美しいフォルムを作り出しています。



ラバーベルトはベルトとケースの形状をキッチリ合わせることで、ベルトが回転せず、ケースに対して一定の角度でベルトが出るようにしています。
これによって時計本体が手首の動きによって動くことが無くなり、装着の向上を狙ったデザインで、本体が軽く、ラバーベルトもしなやかなためラグに対して角度が固定されているとは言っても窮屈さはありません。



ベルト表面には編み込みのようなテクスチャーが造形されています。
チタンによるムーブメントの作成や、ラバーベルトには過去のユニークピースの経験が活かされている…のではないでしょうか。



本体の軽量さと薄手のラバーベルトの軽快さを活かすために尾錠が採用され、ベゼル同様、角をスパッと落としたような意匠と面ごとに異なる仕上げが与えられています。

さて、今回このシンプルながら美しいムーブメントに対し、ひとつの新要素「スネイルカムによるストップセコンド機構」が与えられました。
これはローマン ゴティエの作品で、初めてテンワを停止させて秒単位の時合わせを容易に行えるようにするものです。

なぜスネイル?という問いかけに対しては、象徴的なロジカル・ワンの意匠との「連続性」を生み出すことだけではなく、機能的にも単純なレバーよりも優れた再始動性を得ています。



スネイルカムが停止させている図。

スネイルカムではありますが、いわゆる「カム」でイメージするソリッドな形状ではなく外周ギリギリまでくり抜いた形状になっており、通常のストップセコンドレバーのような「バネ性」も持たせ、テンワを優しく止めようとしていることが分かります。



通常のストップセコンドレバーが「押さえる」ことによって止めるのに対し、スネイルカムは90度回転することでテンワに対するカムの半径が変化、外周に触れることで停止させます。
この、回転によって止めるというのがミソで、停止解除時にレバーはそっと離れるだけなのでテンワは速度0の停止状態からスタートしますが、スネイルカムであれば振れている間に停止時と逆方向に回転するスネイルカムがテンワを「蹴る」ことで初速(初期エネルギー)を与えることで定常状態に到達するまでに必要なエネルギーを少なくします。

レバーは衝撃によって振れやすい形状なので「誤爆」防止のため、ある程度テンワとのクリアランスを設ける必要がありますが、スネイルカムは相対的に振れにくい形状をしているためテンワ近くに設置することができ、また全体のレイアウトを最適化することでストップセコンド機構とリュウズの位置も近づけ、全体を見ごたえのあるデザインに仕上げています。



元々生産本数が少ないローマン ゴティエですが、この作品専門の時計師を雇用し、既存のコレクションと並行して取り組んでいくそうです。
今回の「エディション・ワン」は28本の制作になり、ブリッジには「1 OF 28」(28本のうちの1つ)と記されます。

さて、この発表に先立ち、「お披露目」はチャリティーのオンリーウォッチオークションにて行われました。
昨今のF.P.ジュルヌが得意とした、「オンリーウォッチで完全新作ムーブメントを使用したユニークピースを発表、その後仕様を変更してレギュラーピース化」という方法論をローマンも行ってきたことになります。



こちらがオンリーウォッチバージョン。
赤の挿し色が控えめなエディション・ワンに対し、今年のテーマカラーであるオレンジとイエローをより大胆に取り込みました。
ルミノバ自体も専用のオレンジとイエローのルミノバです。



ムーブメントには「1 OF 28」の表記がありません。

エディション・ワンと共に、こちらも注目です!

クリスティーズによる詳細ページ

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ローマン・ゴティエ日本総輸入代理店
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