【連載】WATCH MEDIA ONLINE スイス時計製造現場視察ツアー レポート④~エナメル作家 アニタ・ポルシェ氏アトリエからヴティライネン工房へ

 By : CC Fan

WATCH MEDIA ONLINE主催の海外工房を巡るツアーのレポート・連載第4回目


少し時間が空いてしまいすみませんでしたが、WATCH MEDIA ONLINE読者有志と一緒にスイス独立系の工房、ローラン・フェリエローマン・ゴティエヴティライネンの工房などを訪ねた旅のレポート、第4回目です。
今回のメインは、高名なエナメラー、アニタ・ポルシェ氏の工房への訪問です。アニタさんの工房見学は基本的にはプライベートな訪問のみで、通常は団体の見学を受け入れていないのですが、ゴティエさんのお口添えとWATCH MEDIA ONLINEを評価いただいたことで、お迎えいただけることとなりました。いろいろな方に助けていただいたこと、本当に感謝いたします。
ただ、自宅を工房とされているため「写真の掲載は遠慮してね」ということで、文字中心のレポートとなってしまうことをご理解ください。
それからサプライズ的な出来事として、6月に東京で開催され話題となったパテック フィリップの「ウォッチアート・グランド・エキシビション」で発表されたレア・ハンドクラフト のうち、アニタ氏が手掛けたエナメル文字盤のミニット・リピーターを購入された方もツアーに参加されていたので、A4サイズで出力した画像に直筆でサインして記念撮影をするなど、うらやましくも微笑ましい光景もあり、アニタさんの暖かなお人柄もあって、とても印象的な訪問となりました。

[これまでのツアーレポート]
■第一回:https://watch-media-online.com/blogs/7669/ (ローラン・フェリエ)
■第二回:https://watch-media-online.com/blogs/7700/ (アクリビア)
■第三回:https://watch-media-online.com/blogs/7781/ (ローマン・ゴティエ) 

それでは、CCFan氏のレポート本文をどうぞ!




ローマン・ゴティエ氏とのディナーの後、時計師ホテルに宿泊してからの4日目、この日の午前中もローマン・ゴティエ氏と一緒にスタートします。



午前中は今や様々なエナメル技法の大家として知られることになった、アニタ・ポルシェ氏のアトリエを訪問します。
通常は見学や取材が難しいアニタ氏のアトリエですが、今回訪れることができたのは、ツアーにローマン ゴティエのユニークピースとして「アニタ・ポルシェとのコラボレーションによるアートピース」をお願いしている方が参加しており、その縁からローマン氏の交渉によって実現できたそうです。

アトリエがご自宅を兼ねていることもあって、写真の掲載が難しいため、文章のみでお伝えします…



高度の高いジュウ渓谷の朝は冷え込み、空は晴れ渡っています。
ここからバスに乗り込み、アニタ氏のアトリエを目指します。

アニタ氏のアトリエは氏の氏の自宅の一角、外観はいかにもな「スイスの民家」といった印象です。
氏ともう一人のエナメル作家が作品制作に取り組んでいます。

いまでこそ、その名前が知れ渡って、名前を出すことがアピールになるアニタ氏ですが、昔はそこまで表に出ず、一流ブランドの黒子として、様々なエナメル細密画のピースを手掛けてきており、それらの作品をまとめたファイルを披露してくれました。

しばらく歓談とワンちゃんとの触れあいの後、いよいよ工房にお邪魔します。
足を踏み入れると飛び込んでくるのは壁一面の瓶! 大量のエナメル材料がストックされています。
エナメル技法の経験はもちろんですが、製造元が廃業してしまって二度と手に入らない材料など、貴重なものが大量にあり、このコレクションも唯一無二の氏の表現力を支えているようです。

エナメルは材料だけではなく、焼成時の条件(温度や時間)や複数の種類の材料の重ね方などで色の出方が変化してしまうため、細密画を描くときにはどのエナメルをどの順番でどう焼くか、と言う事を緻密に計画しないといけないそうで、それを支えるのが氏の経験、そして大量のテスト片です。


アニタさんの色エナメルのテスト片(エルメスのパンフレットより複写)

マス目状に条件を変えてエナメル材料を塗布、それを焼成させて目的となる表現が可能な条件を見つけ出します。
これを必要な色や表現の数だけ行い、更にテスト片では独立していたそれぞれ色を一つの文字盤上にどうやって焼き付けるか…と試行錯誤した結果、極小サイズの細密画をすべてエナメルで表現するという信じられない偉業が達成されます。


作業中のアニタさんとローマン・ゴティエのおふたり(ローマン・ゴティエのHPより転載)

細密画の他、金線を使うシャンルヴェエナメルやプリカジュールエナメル、金箔を型抜きしたモチーフをエナメルの中に閉じ込めるパイヨンエナメルなどにも取り組んでおり、特にパイヨンの金箔は現在は作ることができないオールドストックのものを大量にお持ちでした。
「どれぐらいあるんですか?」と伺ったところ、「もう一回生まれ変わっても一生分はある」とのこと…

瓶に入ったエナメルの材料も何があるかはちゃんと覚えているそうです。
現在は廃業してしまった高品質な材料メーカーから最後に買ったものもあるとか…
瓶は特別なものではなく、ジャムなどが入っている普通の広口瓶(ホテルなどで見かける食べきりサイズの小さいもの?)だそうで、「このためにたくさんジャムを食べた」と言うジョーク?も。

いろいろな質問にも丁寧にお答えいただき、また、先に述べたコラボレーションの「完成予想図」も披露され、とても素晴らしく印象的な訪問でした。
個人宅で「まるで家のよう」と言うのもおかしいのですが、本当に温かく迎えていただきました。
参加を受け入れてくれたアニタ氏と交渉してくれたローマン氏にあらためて感謝です。

ここでいったんローマン氏とはお別れ…なのですが、この後は2時間ほどのバス移動となるため、ランチはローマン氏が手配してくれたスペシャルなランチボックスをバスに積んで、ヴティライネン工房へ向かいます。



トラヴェール渓谷のヴティライネンの工房は山の頂上にあり、元々はレストランだった建物を買い取ってたものだそうです。なので、レストランで使っていたという大きなテーブルをお借りして、山頂からの絶景を眺めながらのランチです。


絶景!



山に突き出したベランダのような場所にてランチを…
あんまり下は見たくないかもですね…



ランチボックス!



美味しかった!

そしていよいよ、ヴティライネン工房へ。



レポートは次回!

どうぞお楽しみに!!