ペキニエ 「ロワイヤル サフィール ペルラージュ」の18金ケースモデルを拝見、フランス ブザンソン天文台によるクロノメーター認証付き!

 By : CC Fan

今年、ペルラージュ装飾を前面に打ち出した「ロワイヤル サフィール ペルラージュ」を発表したペキニエ、ステンレススティールケースの時点で「予告」されていたものが届いた…との連絡をいただいたので拝見してきました。

それが…



ロワイヤル サフィール ペルラージュのK18RGケースバージョンです。

ロワイヤル サフィール ペルラージュのアクセントカラーが暖色系のカラーだったため、金色の方がよりマッチするのでは?という予想通り、統一感が出て好ましいと感じました。



通常の金ケースのロワイヤルと並べて拝見。

ロワイヤル サフィール ペルラージュ全体が20本限定で、18KRGケースはそのうち3本だけ作られます。
さらに金ケースだけの特別仕様として…



フランス ブザンソン天文台によるクロノメーター検定を通しており、手書きの検定証が付属します。
これは、カリブル ロワイヤルの技術的優位性を第三者の評価によって証明しよう、という日本側からのリクエストで行われたことだそうです。
それぞれの個体の測定結果が記された証明書は時計と共に購入者に送られます。

ストレーラ先生がT0に対抗してトランスアクシャルの測定結果データを画像として送付してきたりしましたが、実物を見たのは初めてかも?



紙スリーブから取り出すと手書きでケース番号・ムーブメント番号・日付が記録されています(念のためボカしています)。



開くと16日間の検査条件と測定結果の統計処理方法、そして結果が記されています。

測定結果について、ストレーラ先生の記事に書いた内容を少し修正して再掲します。

クロノメーター検定は国際規格ISO 3159によって規定されており、ブザンソン天文台のものは測定条件がフランス語で記載されていますが、過去に日本時計学会誌78巻(1976年)に掲載された日本語訳が、JSTのJ-stageで閲覧することができるのでこちらから引用して説明します。
なるべく平素に説明すべく、式を使わずに文章で書き下しますが、かえってわかり辛いかもしれないので、オリジナルもあわせてご覧いただければと思います。

試験は、J(Jour:フランス語で日)0からJ15までの16日間にわたって行われ、それぞれの日の姿勢と気温が規定されています、1日(24時間)ごとに正確な標準時間に対しどれだけズレたかの測定値Ei(iは日付)を測定します。

このEiの1日ごとの差を取って、1日当たりの増減にしたものが日差Miになり、単位は(秒/日)となります。
Miは増減を表すので、正負の値を取り、進んでいるときにプラス、遅れている時をマイナスとします。
この15差分のMiを特定の方法で統計処理したものが各基準項目になります。

M:気温23度における5姿勢の平均日差
最初の10日間は気温が一定で姿勢を変えたときの日差を測定します。
この10日分の平均値が0に近いほど、正確度(精度ではない)が高く、基準値(誤差0)に近いことを示しています。
基準値は-4秒/日から+6秒/日なのに対し、ロワイヤル サフィール ペルラージュは +0.93秒/日になっています。

V:気温23度における5姿勢の平均日較差
Mは基準値に対する正確度(どれだけ近いか)は表していますが、厳密には精度ではありません。
これは、2秒進んで2秒戻ると、5秒進んで5秒戻るを比べた場合、Mの値は同じになりますが、どちらが正確か?と考えると明らかに前者だからです。
更に、進んだり戻ったりする時計は日がたつにつれてズレがあやふやになりますが、必ず進む時計は合わせてからの日数を数えていればズレの値を計算で求めることができ、より精度は高いといえ、すなわち、精度というのは、基準値から離れていてもいいので、値がばらつかないことが重要と言えます。
この「バラツキ」を示しているのが日較差で、5姿勢で1日ごとに日差がどれぐらい変化するか、すなわち日差の差を示しています。
この値は絶対値で平均化しているので符号なし、基準値は2秒/日に対し、ロワイヤル サフィール ペルラージュは1.43秒/日です。

Vmax:気温23度における日較差の最大値
Vは平均値ですが、1姿勢で極端に精度が悪化することがあると平均値が良くても実際の使い方によっては精度が悪化してしまうことが考えられます。
そのため、日較差が一番大きくなった場合の最悪値を規定し、極端に悪い値が無いようにしています。
基準値は5秒/日に対し、ロワイヤル サフィール ペルラージュは2.02秒/日です。
平均に対する割合は、基準値が2.5倍に対し、1.41倍なので相対値でも少なくなっています。

D:気温23度における垂直と水平の姿勢差
6H(6時上)とCH(文字盤上)の差で、天真にかかる重力の方向によって振り角が変化することで日差がどのように変化するかを示しています。
基準値は-6秒/日から 8秒/日に対し、ロワイヤル サフィール ペルラージュは―5.80秒/日です。

P:気温23度における最大姿勢偏差
VとVmaxの考え方と同様に、平均値が良くても特定の姿勢で極端に悪くなるのは好ましくありません。
平均日差Mと各日の日差を比較し絶対値誤差が最大になる値を制限することで平均からの乖離を規定します。
基準値は10秒/日に対し、ロワイヤル サフィール ペルラージュは7.74秒/日です。

C:気温38度と8度から求めた文字盤上の温度係数
11日目以降は温度を変化させ、気温による歩度の変化を求めます。
温度によって寸法が変化したり、弾性率がわずかに変わることによる影響を示しています。
基準値は±0.6(秒/日)/℃に対し、ロワイヤル サフィール ペルラージュは+0.29(秒/日)/℃です。
腕時計の場合は腕に巻かれているので人間が恒温槽になって特に問題ないという意見と、重要だという意見の両方を聞くのでこれがリーズナブルかは断言できません。
絶対値で基準値の2分の1と考えれば優秀ではあると思います。

R:クロノメーター検定前と後の日差の変化(復元差)
姿勢・気温が等しい最終日の日差と最初の2日の日差を比べ、クロノメーター検定によって日差が悪化していないかという事を示す…と理解しました。
基準値±5秒/日に対し、ロワイヤル サフィール ペルラージュは+1.71秒/日です。

このように、クロノメーター検定の要求値をすべて満たして通過しており、「高精度」の面目躍如です。



ペキニエ提供のブザンソン天文台の様子。



測定の様子、原子時計(原子周波数標準+カウンタ)に接続されたパソコンで対象となる時計を撮影、針の角度を測定することでEiを求めているようです。
測定値が有効数字2桁(10ミリ秒)単位で出せるのは測定はそれ以上の精度で行っている、と言う事でしょう。



天文台の取り組みとしてのクロノメーター検定について説明するポスター。



今回、クロノメーター検定を通すことでムーブメントの設計上の優秀さを「客観的」に証明した、と言うのは素晴らしいと思います。
私は参加できませんでしたが、ツアーも良い反響が得られた、とのことで何より…



こちらも改めて拝見しました。



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