ヴァシュロン・コンスタンタン 「レ・キャビノティエ・ウェストミンスター・ソヌリ-ヨハネス フェルメー ルへ敬意を表して-」~オート・オルロジュリーとクラフトマンシップの真髄

 From : VACHERON CONSTANTIN (ヴァシュロン・コンスタンタン )




特注のユニークピース「レ・キャビノティエ・ウェストミンスター・ソヌリ-ヨハネス フェルメー ルへ敬意を表して-」~オート・オルロジュリーとクラフトマンシップの傑作



■レ・キャビノティエ部門が依頼主の要望に応じて製作したポケットウォッチ。
■トゥールビヨンを装備する新しい自社製のグラン・ソヌリー・ウェストミンスター・ムーブメント、キャリバー 3761。
■凝った彫金装飾を施したケース、手彫りによる2つのライオンの頭で飾ったボウ。
■エナメルの巨匠アニタ ポルシェがミニチュア・エナメルでヨハネス フェルメールの作品『真珠の耳飾りの少女』を描いたオフィサータイプのケースバック。


2013年にプロジェクトがスタートした「レ・キャビノティエ・ウェストミンスター・ソヌリ -ヨハネス フェルメールへ敬意を表して-」ポケットウォッチは、ヴァシュロン・コンスタンタンの時計製作技術と工芸の職人技が鮮やかに融合した特注品です。この時計に搭載されたグラン・ソヌリとトゥールビヨンが備わる新しい自社ムーブメントのキャリバー 3761は、「リファレンス 57260」を設計した時計師たちによって特別に開発されました。

時計を装飾する職人技もまた並外れています。ケースは、ベゼルをはじめ、裏面と側面にさまざまな手法を駆使した手彫りの彫金が施され、ボウもライオンの頭を手で彫刻した2つのモチーフで飾られています。オフィサータイプのケースバックには、ヨハネス フェルメールの有名な絵画『真珠の耳飾りの少女』をエナメル職人のアニタ ポルシェがミニチュア・エナメル(エナメル細密画)で再現されています。

「レ・キャビノティエ」は、ヴァシュロン・コンスタンタンのマニュファクチュールでは、ユニークピースの創作を専らとする部門とされています。啓蒙主義時代にキャビノティエの名で知られていたジュネーブのマスター・ウォッチメーカーたちの足跡を辿って同じ道を歩むチームは、熱心な時計コレクターの夢を実現するための挑戦に取り組みました。彼が望んだのは、時計技術と美的デザインのどちらも傑出していて、18世紀のオート・オルロジュリーの最も高貴な伝統を反映したポケットウォッチでした。



266年以上に及ぶ熟達の技術と8年に及ぶ開発によって生まれた「レ・キャビノティエ・ウェストミンスター・ソヌリ -ヨハネス フェルメールへ敬意を表して-」ポケットウォッチは、芸術と美、卓抜な機構と技術への精通を体現しています。
新たに作られたこの時計は、「理論上は入手不可能なものを絶えず求めることに情熱を注ぐ」という依頼主のコレクターが最も心に秘めていた期待に応えたものです。
1点もののユニークピースを愛好するコレクターによって生まれたこのプロジェクトの製作期間は8年に及び、挑戦や研究調査、絶え間ない意見交換に満ちあふれた冒険によってオート・オルロジュリーの本物の傑作が誕生しました。


時計技術の妙技 キャリバー 3761
「レ・キャビノティエ・ウェストミンスター・ソヌリ -ヨハネス フェルメールへ敬意を表して-」ポケットウォッチを駆動するのは、806個のパーツから成る新しい手巻きムーブメントです。このキャリバー 3761は、トゥールビヨンで調速し、グランおよびプチ・ソヌリにミニット・リピーターが組み合わされています。
時計のさまざまな複雑機構の中でも、グラン・ソヌリを搭載するモデルは、常に特別なオーラを放っています。その理由は、複数のゴングを叩く複雑なストライク機構が本来備わっているだけでなく、音楽的な特性も要求されるからです。


ヴァシュロン・コンスタンタンとグランド・ソヌリ
グランド・ソヌリは、ヴァシュロン・コンスタンタンでは何世紀もの伝統をもっています。年代が記録に残る古い時計の中でこのような複雑機構を備えた最初のトラベルクロックは、1820年に遡ります。

●トラベルクロック (Ref. Inv. 10709) 1820年

ポケットウォッチでグラン・ソヌリとプチ・ソヌリが備わる最古のものは、ヴァシュロン・コンスタンタンのヘリテージ・コレクションに収められた1827年のモデルです。

●グラン・ソヌリとプチ・ソヌリが備わるポケットウォッチ(Ref. Inv. 10715) 1827年

以降も同様の機構を搭載するいくつかの時計が続き、中には1918年に発表された「パッカード」や、1929年に完成したエジプト王フワド1世の時計のように最高峰の複雑機構をいくつも搭載し、時代を代表する象徴的なモデルもあります。

●ジェームズ ウォード パッカードのために製作されたポケットウォッチ (Ref. Inv. 11527) 1918年

●エジプト王フワド1世に捧げられたポケットウォッチ (Ref. Inv. 11294) 1929年

ごく最近の例は、メゾンの260周年を記念して2015年に発表された世界で最も複雑なポケットウォッチ「リファレンス57260」 です。この時計は、傑出した時計製作の領域におけるヴァシュロン・コンスタンタンの熟達した専門技術をあらためて証明しました。

「私は、グランおよびプチ・ソヌリを搭載し、5本のハンマーによって5本のゴングが連なるミニアチュア・エナメルで装飾した本物のウェストミンスター・チャイム・ポケットウォッチを自分のコレクションに加えることを長らく夢見ていた」。
注文した依頼主は、このようなことを考えていて、それが直径71㎜、厚さ17㎜のキャリバー 3761の創作へと結びつきました。時計の規則正しい動きを律するトゥールビヨンは、ムーブメントの下部で堂々と威厳を示し、ケースバックからその姿が見えます。
このトゥールビヨンは、2.5Hz(毎時1万8000回)で振動し、1分間で1回転します。ウェストミンスター・チャイムを搭載するモデルは、最も製造が複雑とされるストライク機構がムーブメントに組み込まれています。この機構は、5本のゴングが連なり、4つのラックで制御される5本のハンマーによってゴングの音が完璧に調和して響くように求められるからです。
腕時計の場合、グラン・ソヌリの機構を制御するのはふつう1つのラックです。主な理由は小型化にあるからです。時とクォーターを打つために4つのラック、ミニット リピーターのために1つのラックを用いるこの4つのラックとスネイルによる仕組みによって、メロディの連続が引き立てられ、クォーターを経過する毎に微妙な異なるメロディを奏でることができます。


ウェストミンスター・チャイム
「ウェストミンスター・チャイム」という言葉は、音程の異なる4つの音によって4小節のメロディを奏でる世界的に有名なビッグベンの鐘、すなわちイギリス国会議事堂に用いられているロンドンのウェストミンスター宮殿の大時鐘を指します。
この時計の「グラン・ソヌリ」モードでは、毎正時に時間数を打ち鳴らし、15分経過する毎にクォーターを打ち鳴らし、15分、30分、45分の際には時間数も繰り返して打ち鳴らします。つまり5時45分の場合、ウェストミンスターの鐘のメロディを3小節奏で、続いて時間数をシングルトーンで5回打ち鳴らします。「プチ・ソヌリ」モードでは、毎正時の時間数とクォーターを打ち鳴らすものの、15分、30分、45分の時に時間数を打ち鳴らすことはありません。ただし時間が変わる毎に4番目のクォーターを打ち鳴らし、時間を告げるカリヨンを演じます。ストライク機構はケース側面のスラードレバーでいつでも作動状態にすることができるので、時刻をクォーター、分、時間の順で打ち鳴らすミニット リピーターとしても機能します。

9時位置に設けられたモードセレクターによって次のような3つのモードに切り替えられます。
「ソヌリ」モードでは、クロックと同じく15分、30分、45分の際に自動的に作動します。このモデルの特徴になっている「ナイト・サイレンス」モードは、特にキャリバー 3761のために開発された機能で、依頼主が設定した時間帯に適応する仕組みになっており、午後11時から午前9時の間はアラームは起動しません。したがって、動力の節約に役立ち、夜間を静かで安らかに過ごせます。3番目の「サイレンス」モードでは、すべてのストライク機能を停止します。
10時と11時の間に設けられたもう一つのセレクターは、グラン・ソヌリとプチ・ソヌリのどちらかに切り替えるためのものです。
香箱を2個備えたこの時計は、「グラン・ソヌリ」モードで約16時間、時刻表示だけの場合は80時間連続して駆動します。いずれもパワーリザーブが尽きる限界まで安定したトルクを保持します。

キャリバー 3761は、連続するチャイム音の間隔を完璧に保ち、それぞれの音が明瞭に聞き取れ、耳に心地よく響くようにする求心性ストライク・ガバナー(フライング・ストライク・ガバナー)が組み込まれています。この機構の特徴は、調速を司るガバナーの軸に対して、香箱から伝わる動力を均等に配分され、求心力によって一種の「エンジン・ブレーキ」の効果を生むように工夫された非常に特殊な形をした一対のウェイト(慣性ブロック)です。
このオリジナルの独創的な装置はまた、作動音を発せず完全に無音です。また別の特徴は、針の動きに関するもので、キャリバー 3761には、隙間を調整する二重の歯車機構が備わっています。針のサイズを考えた場合、6時位置に置かれたスモールセコンドに生じうるぎこちない動きを避けるために、この歯車機構は、噛み合う歯車どうしの遊びを排除するスプリングと連携した同軸の2つの歯車がシステムの基本になり、それによって滑らかな針の動きを実現しています。


比類ない仕上げから繊細な組み立てへ
数少ない才人たちの技が集大成されたこの「キャビノティエ」のモデルは、ムーブメントの仕上げの点でも高水準に
達し、細部まで注意が行き届いています。あらゆる部品が手作業で仕上げられ、全面に彫金装飾が施されたテンプ受けをはじめ、ダイヤモンドペーストとバフでミラーポリッシュ仕上げされたブリッジ、コート・ド・ジュネーブ模様を彫りガルバニック
処理されたプレート、そしてソフトなシャンパンカラーなど、これらすべてが崇高な時計を製作する伝統を想起させる効果
を発揮しています。

入念な作業の素晴らしい例は、角穴車や2つの香箱車に施された仕上げです。まず歯車の表面にサンドブラスト処理とサンバースト仕上げを加え、次に歯の5箇所すべてに艶出しが行われました。歯の面取りと、その平滑面のミラーポリッシュ仕上げから成るこの種の仕上げは、かつての時計製造で用いられていた技術であり、メゾンはこれを守ることを努めています。これら3つの部品の装飾仕上げには、1週間に及ぶ根気強い入念な作業が求められました。

ゴングのチューニングにも完全主義の精神が必要です。
ゴングはケース入れの組み上げに先立ってテストを行い、それぞれが正しい音階で鳴るように調律されます。この必須の作業では、完璧な音が得られるまでヤスリによる修正が行われます。



しかし、ストライク機構が組み込まれると、驚くべきことが起こります。このモデルでは、もとの5本のゴングのうちの2本は、ハーモニーの関係で置き換えざるをえなかったのです。スティール合金を加工した2本の新しいゴングの音には、他の3本に合わせて一段と透明感にあふれ、クリアな音が求められました。



このチューニングは、グラン・ソヌリもケース入れに至る一連の行程でも必要になります。ソヌリ機構のいわば「慣らし運転」中に何度か調整のために機構を取り外さなくてはならないからです。もちろんそれらは、さまざまな段階で修正を加えて組み立てられるムーブメントの唯一の要素ではありません。だからこそ、ケースに装飾が施される直前でさえ行われるのです。



この1点製作のユニークピースの場合、完成したムーブメント全体をそのままケースに入れるのが不可能で、最終組み立ての部分はケース内で行わなくてはならないというさらなる困難も加わりました。ケースを含む各部品の仕上げや装飾のレベルや、さらにそれらの取り扱いによっては品質を損なうおそれがあるという事実を考えて、キャリバーをケースにセットするのに10回の作業が行われ、キャリバーの修正も10回を要しました。そして最終組み立てには、極めて器用なタッチが求められました。結局このキャリバー3761の製作は、開発や各部品の製造と仕上げから最終組み立てとケーシングに至るまでがごく小規模の専門的なウォッチメーカーのチームで実施されました、





「ジュネーブ・エナメル」という細密画の技法
依頼主は、このプロジェクトの当初からオフィサータイプのケースバックにエナメル職人のアニタ ポルシェによるミニチュア・エナメル(エナメル細密画)を希望してしました。選ばれた作品は、1665年頃に描かれたヨハネス フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』でした。巨匠の作品を再現する挑戦に加え、挑戦をさらに難しくさせたのは、描く面のケースが直径98㎜という桁外れに大きいことでした。ポケットウォッチというよりは歴史的なキャリッジウォッチに匹敵するこの時計のサイズでは、ごくわずかな違いも明白に目立つため、いっそう厳密に描く器用な技が求められます。


完成した作品には、ジュネーブが専門にしてきたミニチュア・エナメルの偉大な伝統が見事に反映されています。



16世紀後半以来、高品質のエナメルの製作で認められてきたジュネーブは、実際にエナメル職人の作品の特色を言い表すいくつかの言葉に用いられてきました。当時から一般に使われている「ジュネーブ・エナメル」という言葉は、描いたエナメル画を「フォンダン・ド・ジュネーブ」という名で知られる溶材で覆うことを指します。この技法は、ガラス質になったエナメルの層に対して、最終的に透明で無色の保護コーティングを施すことから成り、それによって職人の作品に輝きと深みが生まれます。この発明は、当時の時計、すなわち繰り返し摩擦を受ける当時のポケットウォッチに非常に有益でした。



このような技法に熟達したエナメルの達人は今もほんの一握りしかいません。このモデルのサイズの場合、少女のターバンにエナメルで1層描くだけで少なくとも2週間を要するという事実を考えただけでもその難しさが想像できるでしょう。カラーパレットも同様に複雑です。



とりわけブラックを得るのに7色が組み合わされ、色の定着に20回も窯の炎で焼かなくてはならないことがその例です。このポートレートを作り出す作業にはトータルで7カ月が費やされました。とくに使用する顔料とエナメルに関する研究と開発の作業は、2018年に始まり、最終結果を得たのは2020年でした。



さまざまなエナメル技法が用いられたポケットウォッチやクロックの装飾は、18世紀にあらゆる時計製造や宝飾業を包含するファブリーク・ド・ジュネーブ(ジュネーブ製)の評判を高めるのに大いに貢献し、中でも「ジュネーブ・エナメル」という言葉がエナメル細密画を指すようになりました。



その工程は、薄い銅や金の下地にホワイトエナメルでコーティングを施し、そのエナメル層の上に、金属酸化物を砕いた粉末を油性の溶剤に混ぜた釉薬を絵具にしてモチーフを描くことで成り立っています。



熟達のエナメル職人は、グワッシュ水彩画や油彩画とまったく同じようにしてカンバスに釉薬で最も細かなディテールまで精細に描画します。この作業は、近年では双眼マイクロスコープのもとで行われます。描画の各工程毎に窯に入れて順々にエナメルの色を焼成していきますが、その際に修正する機会はまったくありません。
メインのダイヤルは、グラン・フー・エナメルでエッグシェルカラーに仕上げられ、ブルーのエナメルによるローマ数字が配されています。


彫金と彫刻
ケースに施す彫金装飾のスタイルは、フェルメールの絵画との調和を図るため、ヴァシュロン・コンスタンタンの彫金職人によって入念に研究されました。依頼主への複数回にわたる提案やディスカッションを経て、女性のエングレービング職人がメインの装飾テーマに選んだのは、渦巻きを成すアカンサスの葉と中心にパール状の模様を添えた花でした。
このモチーフは、クラシカルで女性的な装飾が『真珠の耳飾りの少女』のテーマに呼応しています。
ヴァシュロン・コンスタンタンの熟達した彫金職人の才能は、目を見張る素晴らしい成果を新たに生みました。彼女の作業
はまず、けがき針で装飾モチーフの輪郭を描くことから始まりました。次にモチーフの周囲を平たく掘り下げてシャンルヴェのような効果を作り出し、ビュラン(彫刻刀)でモチーフを立体的に描き出しました。
金属に彫り込む前に、量感を理解するためにパターンの観察と分析は不可欠です。付随するラインに沿ってアカンサスのリズムとしなやかな姿を保つには、カーブを広げる必要があります。続いて切削した面や線を清掃して磨きます。この作業には時間と根気を要します。もちろんこの磨きには、金属の輝きと彫刻の量感との的確なバランスを見出すのに繊細な作業が必要です。それらを磨いて丸くしすぎると、ダイナミックな魅力が損なわれるからです。陰影を際立て、葉や花に細かなタッチを加えるために、それぞれに細い窪みのラインが施します。これには、金属に切り込みを入れて空洞を作る技術を含む細線彫金の技法が用いられます。


最終工程では、背景の一つ一つを手作業で浮き彫にして、マットに彫られたシャンルヴェの表面と研磨したモチーフとのコントラストを際立てます。この作業は、外観に輝きをもたらすことでモチーフがはっきり見分けられるようにし、装飾を強調します。彫金でも、素材を削り取るエングレービングとスカルプチュアとは違い、チェイシング(浮き彫り)は素材を鏨で打って彫ることによって装飾やきめを作り出します。
ミドルケースの装飾は、ヨハネス フェルメールの絵画にちなむ二重の「パール」状の縁取りによって一段と強調されていま
す。この縁取りは、ベゼルやケースバックを取り巻くスクエアの彫り模様と一緒に始めます。次に彫金職人は、ビーズ細工用の工具を使ってこれらのスクエア模様をハーフビーズに変えます。この作業では、金属にハーフビーズの玉飾りを作り出す刻み部分を残して先端が空洞になった特殊な工具で行い、その扱いには、安定した規則正しい動きが必要です。
0.8㎜という小粒のビーズは、ダイヤモンドペーストを塗ったブラシを使って手で磨きます。同じように見えてユニークな輝きを最終的にもたらす個人の器用な手さばきを保持しながら、その効果は均一でなくてはなりません。ビーズ飾り、すなわち「パール」装飾は、とりわけ20世紀初頭に流行しましたが、それには正確無比な熟達の技と器用さが求められます。



ミドルケースに施されたこの繊細な職人技の延長のように、ボウを飾るのは、それ自体が芸術作品と呼べる咆哮する2頭のライオンです。依頼主の要望により、ロンドボス(丸彫り)によるこの立体的な彫刻は、古典的な彫像から着想しました。
ゴールドのブロックから彫られた驚くほどリアルなライオンのモチーフには、希少な達人の技が表現されています。ヴァシュロン・コンスタンタンの彫金職人は、素材に取り掛かる前に彼女の芸術的技量を表現する的確な量感を決定するために、3Dプリンターで何回か試作しました。一見よく似ていても、たてがみの部分が異なる2頭のライオンの頭を作るために、彼女はけがき針を使って2つの面、すなわち頭の正面と頭頂部の輪郭をトレースしました。事前に描いた基準点が彫り進めるにつれて消失していくため、彫刻を始める前からライオンの頭の立体的な造形を十分に理解していていることがなにより重要です。彫刻に生き生きとした表情や個性を付与するために、動物の頭は全行程を通じて確実な基準点として彼女の頭に刻まれていなくてはなりません。強く彫りすぎると表現が完全に台無しになるおそれのあるこの種の動物彫刻の製作には、注意深い観察と正確さが不可欠です。
彫金職人は、まずフライス盤で素材を大まかに切削し、次に何本ものビュランを駆使して徐々に細かく正確に彫り進めます。サテン、マット、ポリッシュの細かな質感を出すには特別な工具を用い、そのいくつかは今回のために新しく作られました。このポケットウォッチの彫金装飾と彫刻のために、全部で5か月に及ぶ細心の職人技が費やされました。



細部まで行き渡る格別な感覚
ヒンジでつないだオフィサータイプのケースバックのデザインについては、安全の観点から特に注意が払われました。リュウズに組み込まれたプッシャーを押すとケースバックが半開きになり、ケース内部のメカニズムに接近できるようになっています。ヒンジの役を担うのは円錐型をしたチタンで、ゴールドのスクリューで隠されています。また約90度開くケースに用いられたスプリングによって、エナメルと彫金で装飾したケースバックがゆっくり閉じるようになっています。
分針が35㎜にも達する異例の長い針も難題でした。特に表面にポリッシュ仕上げを施し、均一に仕上げるのは容易ではありませんでした。針の輝きを際立たせるために、ニッケルとスズを含む銅合金のPfinodal(高性能銅合金)で作り、のちにメッキ処理を施しました。



【作品概要】
2013年にプロジェクトが始まった「レ・キャビノティエ・ウェストミンスター・ソヌリ - ヨハネス フェルメールへ敬意を表して-」は特注品のユニークピースで、オート・オルロジュリーから装飾美術に至るまで、ヴァシュロン・コンスタンタンが培ってきた多彩な専門技術がふんだんに盛り込まれています。
搭載する新しい自社ムーブメントのキャリバー 3761は、「リファレンス 57260」を担当した時計師のチームよって特別に開発されました。806個のパーツから成る手巻きムーブメントは、トゥールビヨンで調速し、ウェストミンスター・チャイムによるグラン・ソヌリとびプチ・ソヌリにミニット リピーターが組み合わされています。時計のさまざまな複雑機構の中でも、グラン・ソヌリを搭載するモデルは、常に特別なオーラを放っています。その理由は、複数のゴングを叩く複雑なストライク機構が本来備わっているだけでなく、音楽的な特性も要求されるからです。
オフィサー・タイプのケースバック カバーには、ジュネーブ技法で繊細に描かれたミニチュア・エナメルが配され、オランダの画家ヨハネス フェルメールが1665年頃に描いた『真珠の耳飾りの少女』が再現されています。
巨匠の作品を再現する挑戦に加え、それをさらに難しくさせたのは、直径98㎜という桁外れのサイズです。ケース側面は、アカンサスの葉とチューリップから成るフリーズ模様で飾られ、巨匠の絵画に合わせて「パール」、すなわち真珠のような粒状の縁取りが添えられています。また、ボウは、ゴールドのブロックから彫り出された2頭の咆哮するライオンの頭で飾られています。
266年に及ぶ熟達の専門技術とレ・キャビノティエ部門における8年の開発を経て誕生した「レ・キャビノティエ・ウェストミンスター・ソヌリ - ヨハネス フェルメールへの敬意を表して-」は、「理論上は入手不可能なものを絶えず求めることに情熱を注ぐ」というコレクターの期待に応えました。





【技術データ】
レ・キャビノティエ・ウェストミンスター・ソヌリ-ヨハネス フェルメールへ敬意を表して-
リファレンス・ナンバー :9910C/000J-B413
ジュネーブ・シール:取得
キャリバー・ナンバー : CAL.3761(ヴァシュロン・コンスタンタン自社開発製造)・機械式手巻き
ムーブメント・サイズ :直径71MM × 厚さ17.05MM
パワーリザーブ : 約80時間
振動数 :2.5HZ(毎時1万8000回振動)
部品数 :806
石数 :58
表示 :時、分、スモールセコンドによる秒
機構   :トゥールビヨン、ミニット リピーター、ウェストミンスター・カリヨン(グランおよびプチ・ソヌリ)
ケース :18K(3N)イエローゴールド
ケース装飾:側面にアカンサスの葉とチューリップから成るフリーズ模様、ベゼルとケースバックの縁取りに「パール」状のモチーフ。2頭のライオンの頭を彫刻したボウ。
オフィサー・タイプのカバーにグラン・フー・ミニチュア・エナメルでヨハネス フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』をアニタ ポルシェが手描き
直径  :98MM × 厚さ32.6MM
文字盤  :エッグシェルカラー、グラン・フー・エナメル。ブルーのエナメルによる数字
針   :銅合金PFNODAL(高性能銅合金)に金メッキした針
付属ボックス :この時計のために特別開発されたレ・キャビノティエ・モデル 
ユニークピース :時計裏面に《LES CABINOTIERS》、《PIÈCE UNIQUE》、《AC》の文字を刻印



【お問い合わせ】
Vacheron Constantin
0120-63-1755(フリーダイヤル)




[ヴァシュロン・コンスタンタン]
1755年に創業したヴァシュロン・コンスタンタンは、265年以上にわたり一度も時計づくりを中断したことがない、時計製造の分野で世界最古のマニュファクチュールです。何世代にも渡る名工たちによって培われた時計づくりの卓越した技術と洗練されたスタイルを途切れなく代々継承し、そこに根差す輝かしい遺産を守り続けてきました。メゾンが創作する時計は、控えめで気品豊かなスタイルに高級時計の素晴らしい価値が体現されています。その一つ一つに、最高峰の職人技と仕上げを維持しながら、ヴァシュロン・コンスタンタンならではの技法や美意識が表現されています。
ヴァシュロン・コンスタンタンを代表するコレクション「パトリモニー」や「トラディショナル」、「メティエ・ダール」、「オーヴァーシーズ」、「フィフティーシックス」、「ヒストリーク」、そして「エジェリー」などでは、つねに比類ない伝統と革新の精神が一体になっています。さらにメゾンでは、時計に精通した顧客の方々の難しい要望に応え、“レ・キャビノティエ”部門を通じて特注によるユニークピースの提案も行っています。
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