SIHH2018 グルーベル フォルセイ ダブルテンプ実機詳細

 By : CC Fan
SIHH2018のグルーベル フォルセイ(Greubel Forsey)の実機詳細、第3弾はダブルテンプ(DOUBLE BALANCIER)です。

これは2016年にホワイトゴールド・シルバーのゴールド製文字盤で発表されたモデルのバリエーション違いではありますが、文字盤の色とケースが変わったことにより表情がかなり変化しています。
素材の違い以上に印象がずいぶん違うこと、心臓部である《ディファレンシャル スフェリカル コンスタント》の機構がおぼろげながら理解できたことから詳細をレポートします。



ケースがローズゴールドに、文字盤がブラックアントラサイトカラーのゴールドになっています。
文字盤は大胆な斜めのカットで断ち切られ、ムーブメントの心臓部、《ディファレンシャル スフェリカル コンスタント》を中心とした二つの脱進機を鑑賞することができます。
これは、ほかのグルーベル フォルセイのタイムピースと共通のデザインテーマ、建築的な立体構造を時計内部に表現するというテーマに沿っています。



中心部がディファレンシャル スフェリカル コンスタントで、香箱からのトルクを二つの脱進機に分配します。
香箱からのトルクを入力する歯車と脱進機にトルクを出力する歯車2枚の3枚が重なっており、上部のサブダイヤルが示すように全体は4分で一回転し、これはダブルトゥールビヨン30°のアウターケージの回転周期と同じです。

以前、差動歯車による分配だと結局トルクが偏るのでは?とステファン氏に質問したところ、"これはコンスタントディファレンシャルなので、トルクも均一化する作用も兼ね備えている"という回答をいただきましたが、具体的な実装がいまいち理解できていませんでしたが、写真を眺めていたら唐突に原理が閃いたのでこれを書いています。

ポイントは微妙に見えているヒゲゼンマイで、これが入力歯車と片方の出力歯車をつないでいます。
この構造の差動歯車では、完全にバランスした状態では入力歯車と二つの出力歯車は完全に位置・速度・トルクが同期して動きます、しかし実際にはバランスが崩れるため、入力歯車に対し出力歯車の速度は片方が速く、もう片方が遅くなり、トルクもアンバランスになります。
このままでは、速度の差によって位置がズレ続けてしてしまいますが、ヒゲゼンマイでつながれているので、位置がズレるほど、打ち消す方向にヒゲゼンマイの張力が働き、トルクが減少し、速度のズレを打ち消すような働きをします。
これにより、位置はズレ続けずどこかで釣り合い、その後は位置のズレはあるものの、速度とトルクはつりあった状態で動く…とふんわりとした定性的な理解をしました。



もう片方の出力歯車に対するヒゲゼンマイはケースバック側から観察できます。
この機構についてはより詳細に解析してみたいです。

各脱進機はトゥールビヨンではないですが、テンワをそれぞれ異なった方向に35度傾け、姿勢差の影響を少なくするように設置してあります。



ブラックポリッシュとサンドブラストによって仕上げられたブリッジと地板、磨き上げられた歯車は光の当たり方で表情が目まぐるしく変わります。
脱進機までの輪列に目を奪われますが、針を取り付けた筒カナを支えるブラックポリッシュのブリッジに大きな石を設け、強固に支えているのも素晴らしいです。



機構が文字盤側にあるため、ケースバック側は極めてシンプルです。
サンドブラストで均一に仕上げられた地板にシャトン付きのルビーが映えます。
心臓部であるディファレンシャル スフェリカル コンスタントを支えるブリッジはブラックポリッシュで仕上げられています。



こちらも光の当たり方で全く違う表情を見せます。
個人的に控えめで自己主張をしないながら、実はとんでもなく難しいというサンドブラスト仕上げは大好きです。



このピースのケースには、"グルーベル フォルセイの碑文"は彫られておらず、アシンメトリカル(asymmetrical:非対称)ケースでもないため、シンプルな見た目です。



標準でDバックルが付属します。
ボケてしまっていますが、GFのロゴがきちんと入れられています。



思わずリストショットを、斜めにテンワを入れている関係か、厚みは13.38mmで厚めです。
ケース径も43.00mmなので、人によってはかなり大きいと言われてしまうかもしれません。

3回に分けて新作を紹介してきました、次回は公式にアナウンスされていなかったものの強烈なインパクトを受けたTourbillon 24 Secondes Contemporainのフル・チタニウムバージョンをご紹介します。

http://www.greubelforsey.com/en/