Manufacture Royale 1770 Micromegas Revolution Premiere Event

 By : CC Fan
9月20日の台風が接近した東京、時を同じくして二つの旋風(Tourbillon)を備えた時計が上陸しました。
マニュファクチュール・ロワイヤル(Manufacture Royale)の新作で他には類を見ない"異速度"ダブルトゥールビヨンを備える、ミクロメガス・レヴォリューション(1770 Micromegas Revolution)の発表&公開イベントが世界に先駆けて恵比寿のノーブルスタイリング ギャラリーで行われました。

ブランドManaging Partner & Co-FounderのDavid Gouten氏が自ら新作を含めたコレクション10本以上をハンドキャリーで持ち込んだという気合の入ったイベントでした。
今回は生憎の空模様でしたが、ギャラリーは恵比寿駅から恵比寿スカイウォークと地下道を通れば濡れることなくアクセス可能です。
今回はGouten氏に他に類を見ないダブルトゥールビヨンのシステムにまで突っ込んで伺うことができたので、レポートしたいと思います。


1770 Micromegas Revolution RGケース

ミクロメガス・レヴォリューションは前作ミクロメガスの特徴であった異なる速度を持つダブルトゥールビヨンという特徴をさらに視覚的に訴えるように進化させた(Revolution)モデルです。
前作と比較します。


前作 1770 Micromegas(右)と 共にRGケース

私の写真の腕のせいで分かり辛いですがミクロメガスは時分針が中央同軸にある通常の2針モデルです。
ブランドに共通する針形状は剣(Sword)を表現しており、ブランドのロゴにも使われています。
これに対し、レヴォリューションは針で時間、ディスクで分を表示するレギュレーター表示で、さらに自動巻きのマイクロローターを文字盤側に配しています(ミクロメガスも自動巻きだがムーブメント側のビッグローター)。
フライングトールビヨンの周りも大きくくり抜くことでより浮いている印象を強くし、遮るものがないためいつでも動きを堪能できます。

角度をつけるとよりわかりやすいかもしれません。


1770 Micromegas Revolution Tiケース

立体的なマイクロローター、時の文字盤、分ディスクの重なり具合で立体感を表現しています。
また、クッションの赤色が透けているように、トゥールビヨン周りは大きく抜いてあり、フライングトゥールビヨンの浮いている感を強調しています。

トゥールビヨン部分をさらに拡大します。


1770 Micromegas Revolution "異速度"ダブルトゥールビヨン

ガンギ車・アンクルは特徴的な紫色で分かりやすいシリコンで作られています。
よく見るとトゥールビヨンの細部が微妙に異なり、これにより左側が6秒で1回転、右側が60秒で1回転するという"異速度"を実現しています。
最高回転速度こそフランク・ミュラーのサンダーボルト・トゥールビヨン(5秒で1回転)に及びませんが、異速度のダブルトゥールビヨンというのは今までにない機構です。

キャリッジの回転数に加え、さらにテンプ自体の振動数も異なり、左(6秒で1回転)が28,880振動/時(8振動/秒)、右(60秒で1回転)は21,600振動/時(6振動/秒)です。
Gouten氏曰く、"誤差の打ち消しという目的はあるが、なにより面白い"とのことで、確かに見ていて飽きません。
また、誤差の最大値が同程度であれば、なるべくパラメータが異なっていた方がトータルの誤差は蓄積しにくく、外乱にも強いはずです。

このような脱進機を複数持つ時計では一般的に差動歯車機構(ディファレンシャルギア)を使ってトルクの配分と回転速度の平均化を行う手法が使われますが、ミクロメガスはディファレンシャルを使っていない世界初の機構とのことです。
詳細は現在特許申請中なので、まだ全ては明らかにできないと言う事でしたが、触りだけですがお話を伺ってきました。
特許公開が行われたらより詳細を見てみたいと思います。

香箱からのトルクは中央車(Center Mobile)を経由し、二つのトゥールビヨンに並列に供給されます。
この輪列はすべて直結で、ディファレンシャルのような回転数を平均化する機能は備えていません。
このままでは、トルクが流れやすい方にだけ流れてそちらが脱進動作を行い、もう片方は引っ張らっれているだけという状態になってしまうと思われます。

この問題に対し、メインの輪列とは別にトルク・スタビライザー(Torque Stabilizer)輪列が二つのトゥールビヨン間のトルク差を監視し、伝わるトルクが一定の割合になるように補正を行い、両方のトゥールビヨンに適切なトルクが供給されるようにします(曰く、一種のコンスタントフォース)。
これにより、両方のトゥールビヨンは適切な設計時に想定したトルクを受け取り、正しく脱進動作を行うことができるというわけです。
トルクスタビライザー輪列は2つのトールビヨンの平均化と時分針の駆動も担っており、筒車(Hour wheel)と日の裏車(Minute Wheel)は香箱からの輪列ではなくこちらに配されています。

考えてみると、ディファレンシャルは回転数の平均化は行えますが、トルクの平均化は行えません。
これは車に使われるディファレンシャルを見れば明らかで、片方のタイヤが浮いて無負荷状態になるとそちら側にトルクがすべて流れて空転してしまいます。
この特性が問題になる悪路走行やレースでは別途デフを直結化するデフロックやトルクや回転数に感応してロックをかける差動制限装置(Limited-slip differential:LSD)備えています。
時計の場合は故障でもしない限り無負荷になることはありませんが、二つの脱進機が同じ負荷になるかは製造公差や調整任せです。
また、"負荷が軽い方にトルクが流れ込む"というのは、逆を言えば負荷が重い、本来はトルクを必要とする方へトルクが供給されなると言う事でアンバランスを補正できないと言えます。
おそらくディファレンシャルを使った場合、ミクロメガスのような二つの脱進機の条件が異なる輪列はまともに動かないのではないかと思われます。
ここまで書いて実はかなり革新的な機構なのでは…と思えてきました、平均化するのは回転数ではなくトルクという考え方はとても理にかなっていると思います。

可能であれば輪列図なども見て理解したいです。

もう一つの目玉としてミニッツリピーターOperaのユニークピースも来日していました。
長くなってしまったので、一旦区切りたいと思います。

関連 Web Site (メーカー・代理店)

Manufacture Royale
http://www.manufacture-royale.com/

Manufacture Royale Facebook Page (2016年9月22日現在 ミクロメガス・レボリューションのツアー情報がトップ)
https://www.facebook.com/ManufactureRoyale/

1770 Micromegas
http://www.manufacture-royale.com/micromegas/

Noble Styling Inc.
http://noblestyling.com/