SIHH2018 グルーベル フォルセイ グランドソヌリ 実機詳細

 By : CC Fan
SIHH2018グルーベル フォルセイ(Greubel Forsey)実機詳細の第5弾は、去年のSIHHではプロトタイプということで撮影ができなかったグランド ソヌリ(GRANDE SONNERIE)、銀座イベントのレポートではプロトタイプのレポートをお送りしましたが、今回のSIHHではフォトセッションにてプロダクション版を拝見させていただけたのでレポートします。
銀座イベントのレポートでも機構の詳細に触れていますので、併せてご覧ください。



グルーベル フォルセイの特色であるアシンメトリカル(asymmetrical:非対称)ケースでトゥールビヨン24セカンド部分とソヌリのパワーリザーブ表示がわずかに飛び出しています。
ソヌリのゴングは10時と11時位置に配されていますが、ゴング全体を見せるような大きな開口部は設けられておらず、あくまで控えめです。

初公開となった去年のSIHHでは専属の時計師以外は触るのもNGといった感じでしたが、今回は隣に"お目付け役"の時計師が座っているものの、好きに操作してよいという破格の条件でした。
これは好機と色々試しましたが、コンプリケーションにありがちな、嫌な感触からの"これ壊れるんじゃないか?"という怖い感じはなく、日常的に安心して使えると感じました。
これを支えているのは特許取得も含む11ものセキュリティシステムで、同時起動してはいけないパッシングソヌリとミニッツリピーター、ストライキング機構動作中に引いてはいけないリュウズや切り替えてはいけないソヌリのモード切替など考えうる全ての組み合わせについて動作中に禁止された対象を切り離すまたはロックする仕組みになっています。
また、ソヌリなので計時輪列用の香箱とソヌリ用の香箱は分かれており、それぞれ別のパワーリザーブを持ちます。
2時位置に大きく表示されているのがソヌリ香箱の残量、5時位置の控え目な表示が計時輪列のパワーリザーブです。
時計の上半分がソヌリ機構、下半分が計時輪列ときれいに分かれており、その境目にソヌリのモード表示と時分針が配置されています。

ソヌリ側の香箱にはパワーリザーブに対する安全機構が設けられており、ソヌリが起動後に途中で力尽きる残量しか残っていない場合はそもそも起動しなくなっています。



リュウズ同軸のプッシャーはミニッツリピーター起動ボタン、4時位置の角形のプッシャーはソヌリモード切替で、GS(グランソヌリ:正時とクオーター通過時に打ち鳴らす)、PS(プチソヌリ:正時のみ打ち鳴らす)、SL(サイレンス:時間経過では打ち鳴らさない)の3モードを切り替えることができます。



計時輪列が下半分ということは、トゥールビヨン24セカンドのみのピースに比べると、半分ぐらいのスペースにコンパクトに輪列が収まっていることになります。
ダブルハンドのスモールセコンドは長さの違う両端の針で0-30秒と30-60秒を別々に表示する仕組みです。
この写真では見辛いですが、トゥールビヨン24セカンドの周囲にも1/6秒(21,600振動/時)のインデックスが刻まれ、トゥールビヨンの正確さを示します。



バックビューは絡み合うレバーを見せるソヌリの機構部と"グルーベル フォルセイの碑文"が書かれたプレートで覆い隠された計時輪列がコントラストを見せます。
何気に、トゥールビヨン24セカンドの軸石のビス止めシャトンはグルーベル フォルセイでは初めての採用ではないでしょうか。

この時計はグルーベル フォルセイとしては初となる自動巻き機構を持っていますが、これはあくまでソヌリ香箱のみを巻き上げるというユニークなもので、計時輪列は手巻きを貫いています。
これは、オーナーと時計は巻き上げのタイミングで対話してほしいというグルーベル フォルセイの姿勢の表れであり、それを示すかのように、リュウズ同軸のプッシャーがあっても巻き味は最高でした。

また、実用的に考えると単純に残り時間を表示すればよい計時輪列と異なり、ソヌリは鳴らすノートの長さによって消費するパワーリザーブが異なり、パワーリザーブインジケーターだけではあと何時間ソヌリを鳴らすことができるのかという真の残量はわかりづらいという問題があります、さらにはソヌリのパワーリザーブはGSモードの場合、公称値で20時間と1日以下になり、日に2回巻いてくださいというわけにはいかないでしょう、そのため自動巻きにして"身に着けている限りソヌリは大丈夫"という解決策に至ったのではないでしょうか。
リュウズを計時の巻き上げとは逆回転させることで切り替え機構によってソヌリ香箱を手巻きすることもでき、こちらも自動巻き機構があるためか、わずかに違和感はありますが、巻き味は素晴らしかったです。



ケースサイドの開口部からはトゥールビヨン24セカンドとゴングを眺めることができます。
"グルーベル フォルセイの碑文"はムーブメントのプレートに書かれているため、このピースではケース側面はシンプルな造りです。
ケースは音響特性を重視したというチタン製、内部には音響特性を向上させるチタン製の共鳴ケージを加え、カテドラルゴングの響きを放出させます。
ソヌリは防水なし、または湿気のみ対応というものも多い中、このピースは3気圧防水を実現しています。
ケースサイズは高さ43.5mm、厚さ16.13mmと特に厚さが大きめではありますが、非現実的な大きさというほどではありません、"是非、日常的に使ってほしい"というフォルセイ氏の言葉は本心でしょう。



オフセットローターとソヌリ機構の眺めは独特です。

グランドソヌリほど突き抜けてしまうと手に入れるという発想にはなかなかなりませんが、存在するだけで"象徴"として"あんなに素晴らしい時計がある"と力を与えてくれるような存在だと思いました。
特に徹底した安全対策を施し、技術デモンストレーションや"打ち上げ花火"に終わらずちゃんと"使える時計"として仕上げるという姿勢は非常に素晴らしいです。

最後に公式の動画とチャイムのサウンドをどうぞ。





グルーベル フォルセイ、今回のSIHHでは特に魅力的なピースが多かったこともあり、詳細に見てきました。
最終回となる次回では秘密のベールに包まれたメカニカル・ナノの実機と+αをお伝えします。

http://www.greubelforsey.com/en/