製作の現場を旅して(前編)~スイス、H.モーザー編
By : Guest Blog今回、本サイトの読者の方から、スイスからドイツへ至るいくつかの時計工房見学をされた際のレポート記事を、ゲストブログとしてご投稿いただきました。ありがとうござました。
まずはスイス編をご紹介します。普段は立ち入ることのできない神秘の空間、制作工房から、スイス現地でのフレンドリーなおもてなしぶりまで、貴重なレポートをお楽しみください。
今回スイスとドイツの時計工房を見学する機会を得て、実際に見た彼らの時計作りに大いに感銘を受けました。
大きなブランドではないので、少しでも彼らの事がご紹介できればと思いウォッチメディアオンラインさんに投稿することに致しました。
それでは少しの間お付き合いいただければ幸いです。
まずはスイスのH.モーザー(H.Moser&Cie)。
チューリッヒ着が夕方でしたのでシャフハウゼンのホテルで一泊し工房へと向かいます。
翌朝、ホテルに車でさっそうと迎えに現れたのはエドゥアルド・メイランCEO(以降エドさんと略)⁉
社長自らとは凄まじくアットホームです(笑)。
そんなこんなで車に20分程揺られますと工房がありますノイハウゼンに着きます。
工房は森の中にあり、とても環境がよさそうでした。
ワールドのマーケティングをされているニコラス氏(以降ニコさんと略)からH.モーザーの歴史を、下の写真にも写っている新入社員ロビン君と学んでいきます。
雑誌クロノスなどにもたびたび紹介されているかと思いますが、H.モーザーを立ち上げた、初代モーザーのシャフハウゼンに対する貢献度はもの凄く、近代における街の発展の礎を築いたとも言えるかと^^
H.モーザーの歴史をしっかり学び、工房見学へと移ります。
まずはCADでの設計です。
本当に見てもいいのかと思うようなことまで見せていただけます。
後でお聞きすると、『製造する上で何も隠すことない』と。かっこいいです‼
またMoserといえばヒゲゼンマイを作るこのできる数少ない会社ですが、その制作部門がPrecision Engineeringです。
自社でヒゲゼンマイとテンワを作ることができるので、マッチングはよさそうです。
元の素材から引き延ばされた物を熱処理してから丸めてゼンマイの形にするのですが、これが非常に難しい‼
私もやらせていただいたのですが全く形になりませんでした^^;
あまりの難しさに煮詰まってきたあたりで、エドさんがお昼ご飯に連れて行ってくれました^^
シャフハウゼンの名所も案内していただいたのですが、古い砦の跡やライン川と本当に綺麗で見どころの多い街です。
お腹もいっぱいになり、腹ごなしのお散歩もしたところで工房に戻り見学の再開です^^
地板を削り出す機械のようです。
多くの部品を自社で製造しており、スイスメイドの強い誇りを感じました‼
これはかなり古い機械で、ヒゲゼンマイの形が正確かを見るもののようです。
この部屋では先にも触れた、テンワとヒゲゼンマイのマッチングをしておりました。
技術者の方に聞くと、『人間の合コンと同じだよ』と笑っていましたが、簡単に言うと重いテンワと強いゼンマイ・軽いテンワと弱いゼンマイのような形で合わせていっているようでした。
しかしそこは、強い弱いといっても小さな差であり、一律にはいかない様で、職人技なのかと^^
もう日本でもデリバリーが始まったベンタブラックの試作なども見せていただきました。
工房見学も落ち着き、恒例の『飲みに行くぞ‼』となりまして、ホテルから歩いてお店へ向かいます。
いろいろと説明していただいたのですが、シャフハウゼン市内にはいたるところにモーザーの名を冠した、
「モーザー公園」、「モーザー通り」などがあり、初代の影響力に驚かされます。
そんなこんなしているうち、倉庫をリノベ―ションしたお店に到着^^
とてもかっこいいお店でした。
そして二日目にはモーザー博物館を見学に。
初代モーザーが奥さんのために建てた建物を博物館にしています。
キュレイターのマリーさんから説明を受けます。
モーザーが使っていた机。
初代モーザー氏はクオリティーを重視する経営方針でロシアでの信頼を得て大成功をおさめ、一時期はヨーロッパでも有数の富豪になったようなのですが、破天荒な息子がお金を使い果たす話などもありとても面白いです(笑)。
完全にダメ息子なのですが、説明を聞いていると、この時代に中央アジアを旅行して多くの友人を作るなど、破天荒なだけではなく人間としてはとても魅力に溢れている人物なのかな~と思えてきました^^
初代モーザー肖像画。
この後昼食で名物コルドンブルーをいただいたのですが、エドさんとニコさんがチーズトンカツ―と日本語で言っていたのが印象的でした(笑)。
その後、店のセントバーナードと戯れるニコさん^^
凄くスイスらしい光景です。
名瀑ラインの滝。
奥に見えるのは初代モーザーが誘致した車両を作る会社だとか。
シャフハウゼンにはモーザー由来の会社が多くあり、かのIWCもその一つで、川の近くに巨大な社屋があります。
観光後はチューリッヒまで送っていただいて、チーズフォンデュを食べることに。
チーズからチーズにつなぐヘビーでギルティ―な食事が^^;
チーズフォンデュの食べ方を力説するニコさん。
『水は絶対に飲んじゃダメ‼』と、迷信のようなことを言っているのかと思いましたが、皆同じことを言うので急に真実味が・・・。
『これめっちゃ臭くね?』みたいに笑わせてきますが凄くおいしいです^^
しかし着ている服は確実にやられます(笑)。
こんなユーモアにあふれ笑いに包まれた彼らですが、時計作りに対する思いは熱く、
『H.Moserもあの復刻ブランドが乱立した時代に復活したが、名前だけの復活ではなく、初代が大切にしていたクオリティーを重視して時計を作っていく』と話してくれ、とても信頼できる会社だと感じました。
CEOのエドさんも若く、時にはとんでも企画を打ち出したりしますが、よくよく考えてみると理にかなっていたり納得できることなので、それを周りが何とか形にしていくのがこの会社の在り方なのかな~と納得しました。
H.Moserまだ小さく知らない方も多いかと思いますが本当に真剣に物づくりをしている良い会社です。
仕上げなどまだ至らぬ所はありますが、どんどん良くなっている(ダメな所はダメと言えば真剣に受け止めていただける稀有な会社です‼)と思いますので、まだ実際の時計を見たことの無い方がいらっしゃいましたら、是非一度見てみていただきたいです‼
長くなりましたがこの後のドイツ編などもございますので宜しくお願いいたします。
H.Moserのみなさま、暖かく迎えていただきありがとうございました‼
◆
いかがでしたでしょうか。
この後ゲストブロガー氏の旅は、ドイツ時計のメッカ、グラスヒュッテへと続きます。
後編のドイツ編も、どうかお楽しみに!
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