パリス ダコスタ ハヤシマ コンペキ(紺碧)
By : CC Fanパリス ダコスタ ハヤシマ(Parris daCosta Hayashima)という新しい独立系ブランド、時計に情熱を傾ける3人がスイス・フルリエの時計製造と日本・九州のクラフトマンシップと協力し、理想とする時計を作り出そうとしています。
いつものノーブルスタイリング葛西氏経由でご縁があり、拝見させていただいたのですが、個人的な好みにかなり合致したので緊急レポートします。
ブランド名は3名のファミリーネームを並べたもの、もともと全員が時計やラグジュアリー業界出身ではなく、他の本業をお持ちだそうですが、愛好家としての時計に対する強い情熱から自分たちの理想とする時計を作り出すため、休日や空き時間を使ってプロジェクトを進め、職人や工房と協力しながら2年の時を経てついに初めての作品を作り上げました。
時計の名前はコンペキ(Konpeki:紺碧)、日本古来の深く濃い青色を表す色の名前で、真夏の空の色のような色です。
名前が表す青色(コンペキブルー)をアクセントとし、毎日使えるような薄型のステンレススティールの時計です。
奇をてらわない、オーソドックスな毎日使えるような時計といった佇まい。
時計本体とバックルはスイスのフルリエで、ストラップは日本の福岡で作られています。
ムーブメントはヴォーシェ(VAUCHER Manufacture Fleurier)の薄型ムーブメント、VMF5401ベースのPdCH01、ケースはLAB(Les Artisans Boîtiers)、ダイヤルも同様にパルミジャーニグループの文字盤工房コートロンで制作しているとのこと。
伝統的な水平分業スタイルです。
コンペキブルーの針とインデックス。
針はPVDによる着色、青焼きでないのは磁気帯び対策のためとイメージに合う青を作り出すため。
青焼きできる鉄素材は強磁性体で、磁気帯びしやすく、針の間隔が狭い薄型時計では特に問題になりやすい…というのは伺うまで気が付きませんでした。
さらに、PVDのほうが色のコントロールがしやすく、イメージに合う色が作れること、針とアプライドインデックスを同じ方法で着色でき、統一が図れるというのも理由とのこと。
わずかに外周部が高くなったインデックスと特徴的な細身の針。
針の白い部分は青く発光するスーパールミノバです。
磨き上げられたケースの映り込みを見ていただければ歪みがないこともわかるでしょう。
大きめのスモールセコンドといい、(天文台)クロノメーターっぽい印象を受けました。
その印象をさらに強くしたのがブランド名のレター、一般的にイメージするサイズに比べ小さいことがわかりますでしょうか?
この小ささときれいなプリント!
主張しすぎないように小さくしたそうです。
当然、文字が小さく線が細い方がプリントが困難で技術が必要となります。
文字盤が完成するまでに3回の転写とオーブンによる乾燥が必要になるそうです。
過激派として、日常的にはレターは邪魔でしかないと主張していましたのでこのような取り組みは賛同します。
これは少しでもアピールしたいという売り手の理論からは出てこない発想ではないでしょうか。
梨地の文字盤のベースはシルバーパウダーをこすり透けて仕上げる伝統的な手法によりアイボリーとホワイトの中間の色合いに仕上げられています。
この話を伺ったときに私の脳裏に浮かんだのはこれです。
こちらもクロノメーター(Chronometre)と書かれていますが、注視しないとわからないレベル、時計の読み取りを邪魔しません。
文字盤も同じ技法で仕上げられているように見えます。
尾錠も同じ考え方、ブランド名は普段見えない側に書かれており、表側は無銘になっています。
VMF5401ベースのムーブメント、PdCH01。
カスタムとしてマイクロローターのデザインを変更、ネジをコンペキブルーにしてアクセントを加えています。
ケースバック、ケースサイドも歪みがありません。
写真写りがよい針角度に。
改めて、控えめなレターが素晴らしい。
6時位置はSWISS MADEではなく、フルリエ スイス(FLEURIER SUISSE)、こちらもかなり控えめです。
ブルーがいい感じに出たリストショット。
名刺サイズのスペックシート、日常使いに充分なスペックです。
キーとなる場所の緯度と経度が記されています。
右の写真はCGだそうです。
気合の入っているBOX、こちらも福岡県八女市の職人が伝統技法で楠から仕上げたものです。
コンペキブルーのスエード、これも福岡県で作られています。
BOXは高級感を盛り上げるのには役立ちますが、最近は"大型化"が進んでおり、特に数多く所有するコレクター目線で見ると"邪魔"に見えてしまうこともあったという自身の経験から、"箱だけでも使ってもらえるような箱にしたい"として考えたそうです。
ブランド名は見えないところに忍ばせる美学は箱でも踏襲されています。
スエードも完全に取り外すことができ、貴重品入れや小物入れとして活用できそうなサイズ感。
蓋が完全に分離するため、開けた状態でも不安定になりません。
時計の定位置として使っても優秀そうです。
箱を包む袋にはさすがにブランド名が入っています。
一作目でこの完成度を作り上げたというのは驚愕に値すると思います。
このようなレポートを書いている時点で、"期待以上"だったわけですが、それはノーブルスタイリング葛西氏も同じだったようで、より多くの方にご覧いただくためにイベントを行うことを決めたそうです。
2019年1月22日、3人の創業者を招いてプレゼンテーションとお披露目会を行う!とのこと、詳細は決まり次第告知されるとのことです。
また、コレクター寄りの目線で"これはコンペキとしては完成形、全く新しいモデルは出すかもしれないが、細部を変更しただけのマイナーチェンジは出さない"といった姿勢も信頼できます。
限定で出したものを小変更してまた出したりしますよね…
生産数は25本、現在は6本ほど成約しているそうです。
イベントに先立ち、ノーブルスタイリングギャラリーでも見られるように現在調整中とのこと。
さて最後に…
"ヴォーシェ仲間"、カール・スッキー&ゾーネ(Carl Suchy & Söhne)のワルツNo.1(Waltz No.1)とのツーショット!
ヴォーシェどころか、ベースムーブメントが同じです…がここまで印象が変わるのかと。
カール・スッキーも青色がテーマですが、こちらはブルー・ダニューブ(Blue Danube)、すなわちドナウ川の流れのイメージです。
ワルツNo.1はアート寄り、コンペキの方がより実用時計寄りと言えるのではないでしょうか。
個人的には、ワルツNo.1を使っていてヴォーシェのムーブメントの信頼性に特に問題は感じませんでした。
ワルツNo.1はスモールセコンド代わりに重たいディスク回さなければいけないため、負荷が大きめだと考えられます、その状態で問題ないのであれば、コンペキのようなスモールセコンドは全く問題はないでしょう。
ちなみに価格も一緒、120万円です。
【関連Web Site】
Parris daCosta Hayashima
https://www.parris-dacosta-hayashima.com/
https://www.instagram.com/parris_dacosta_hayashima/
Noble Styling
http://noblestyling.com/
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