カール・スッキー&ゾーネ ボーシェのムーブメントとLABのケースについて

 By : CC Fan
日本上陸ファーストデリバリー自分用に購入、そしてオーストリア大使館商務部 商務参事官邸でのレセプションをお伝えしてきたオーストリア・ウィーン発のスイスブランド、カール・スッキー & ゾーネ(Carl Suchy & Söhne)のワルツNo.1(Waltz No.1)、自分で購入するにあたり、一番惹かれたのは"装飾は罪悪(犯罪)である"と宣言したウィーンの建築家アドルフ・ロース(Adolf Loos)を称えた、ウィーンのセンスとでもいうべき、ミニマルなデザインでしたが、ムーブメントやケースも見てみたいと思います。

まずはムーブメントについて。
個人的に好印象なのは下手な"自社ムーブ"という表現ではなく、使用しているエボーシュのメーカーと型番を隠さずにそのまま表記していることです。
パルミジャーニ・フルリエ傘下のムーブメントサプライヤー、ボーシェ・マニュファクチュール・フルリエ(VAUCHER Manufacture Fleurier)の薄型マイクロロータームーブメント、VMF 5401を使っています。



同じくボーシェのムーブメントを使っていることを公言しているチャペックの新作レポートでも触れましたが、ボーシェはバーゼルワールドのアトリエ(LES ATELIERS)に出展しており、興味本位で色々拝見させていただきました。



ピンボケですが、VMF5401.



スケルトンバージョン。



スケルトンにムーンフェイズを加えたバージョン。

型名で検索すれば見つかるので、隠すこともないと思い出してしまいますが、Web上のカタログでスペックも確認できます。
恐らくワルツNo.1に使われているのはSEED VMF 5401 / H,M,S6Hで、スラッシュの後ろはH(時)・M(分)・S6H(6時位置のスモールセコンド)です。

公式の紹介動画も。
100%スイスメイドを強調してるのは100%じゃないスイスメイドがあるんでしょう…



カタログの一覧を見ると様々なスペックが選べ、永久カレンダー付ビッグデイト付まで選ぶことができます。

カタログには、From 25 pieces in its Seed VMF 5400 version, with personalisation of the oscillating weight. と書かれており、25個以上でマイクロローターをブランドに合わせてカスタマイズできると言うことがわかります。
更に、From 250 pieces in its S-VMF 5401 version, with personalisation of the bridges (shapes and decorations) and of the oscillating weight. すなわち、250個以上であればブリッジの形状や仕上げも変更して更にオリジナリティのあるムーブメントにすることができます。

これを踏まえて観察すると、ワルツNo.1はマイクロローターのカスタマイズにボーシェの標準仕上げということがわかります。
標準仕上げですが、テンプの中心から放射状に伸びるようにつけられたカッターマークの装飾はブリッジ間でズレもなく、それなりにユニークなので、個人的には普通のコート・ド・ジュネーブより好きです。
錯覚でまるで本当に凹になっているように見える深いカッターマークです。

ボーシェのムーブメント集合の図も。



バーゼルワールドは展示・商談会なので、ボーシェはここでクライアント(=ムーブメントを使ってくれる時計ブランド)を探していたということのようです。

5Hz(10振動/秒・36,000振動/時)で65時間のパワーリザーブを誇る先進スペックのムーブも。



噂レベルですが、VMF 5401はプンケンホーファー氏とメンバーが作品にかける意気込みで採用、時計本体の価格に占める割合はかなり大きいとのことで、ある意味、"お得"なのかもしれません。
ちなみに、パルミジャーニ・フルリエでVMF 5401相当のムーブメントはPF701という名前が与えられていますが、各部の造形・仕上げはより伝統的な意匠になっています。

次はケースについて。
目ざとくムービーから設計図を見つけ、同じくパルミジャーニ・フルリエ傘下のLAB社が作っていることがわかりました。



LABとは、レ・アルティザン・ボワティエ(Les Artisans Boîtiers:フランス語で外装の職人の意)の略で、ラ・ショー=ド=フォン(La Chaux-de-Fonds)にあるケースメーカーです。

こちらもチャペックが貴金属ケースの製造を依頼しており、ザビエル氏と葛西氏が訪れた話を伺いました。
曰く、かなり有名な独立系マニュファクチュールの高額ピースのケースも作っていたそうで、実力は折り紙付き。

チャペックでは貴金属ケースのみLABで、スチールとチタンは別のサプライヤーですが、ワルツNo.1はSSにもかかわらずLABを使っているようです。

他のサプライヤーまでは不明ですが、ダイヤルや針も出来栄えを見る限り、そんなに変なところは使っていないでしょう。
信頼のおけるサプライヤーとユニークなアイディア・デザインを組み合わせて作る伝統的な水平分業のほうが良い…ということまで含めチャペックと同じことを言っている気がしてきました…

これから様子を見ていきますが、まずは、ケ・デ・ベルク同様、"初物買い"で良かったかなと。

P.S.
ちなみにボーシェはVaucher Private Labelというワンストップ(ボーシェがすべて対応してくれる)製造サービスもやってたりします。

関連 Web Site

Carl Suchy & Söhne
https://www.carlsuchy.com/

Noble Styling
http://noblestyling.com/

ADVANTAGE AUSTRIA TOKYO
http://www.advantageaustria.org/jp/oesterreich-in-japan/Buero-Tokio.ja.html

VAUCHER Manufacture Fleurier
http://www.vauchermanufacture.ch/en#1

VAUCHER Manufacture Fleurier Movement catalogue
http://www.vauchermanufacture-catalogue.ch/en/

Les Artisans Boîtiers
http://www.labsa.ch/