ラング&ハイネ、バーゼルワールド2019新作情報 + マルコ・ラング氏の離職によって開発部長に就任したイエンス・シュナイダー氏インタヴュー

 By : a-ls



“我が陣営の重鎮”ーー名立たるメジャー・ブランドに一歩も引けを取ることなく、ドイツ時計界において重要な存在感を放つブランドであり続けているラング&ハイネだが、今年のバーゼルワールド新作をご紹介する前に、ひとつ大事なお知らせがある。

●バーゼルワールド2019新作はゲオルグのガルバニック・ブラック・ダイアル・バージョン


A.ランゲ&ゾーネの復興に始まる、コンテンポラリー・ジャーマン・ウォッチの壮大な物語において、常に大きな役割を担い、もはや“生きる伝説”的な存在となりつつある時計師&設計士、イエンス・シュナイダー氏が、ラング&ハイネからの要請によって同社の開発部長に就任した。重要な点は、この人事がブランド創業者であるマルコ・ラング氏がブランドから去る決断をしたことを受けて行われたことである。

●イエンス・シュナイダー

マルコ・ラング氏がブランドを離れた理由についての具体的情報は得ていないが、WMOの取材によって、ラング&ハイネがUWD※1(UhrenWerke Dresden=ドレスデン時計工房)と統合した際に、マルコはラング&ハイネの持ち株を売却しており、その時点でアート&クリエイティヴ部門の雇われ社長となっていたことがわかった。もしかしたら、この段階から氏は次なる展開を模索していたのかもしれない。。。。


●現在、ラング&ハイネ(左)とUWD(右)の工房は同じ建物の左右にある

※1 UWD(UHREN-WERKE-DRESDEN GmbH&Co. KG):ドイツ機械式時計市場の前向きな発展にインスパイアされ、ドイツの伝統にこだわった高品質なムーブメントを低価格で安定的に供給することを目的に、2013年初めにTempus Arte Groupの傘下に設立されたドイツのムーブメント供給会社。時計ブランドSinnやケースメーカのSUG(ザクセン時計技術社グラスヒュッテ)なども深く関与する一方、ラング&ハイネも技術協力として貢献していたこともあってか、2018年にラング&ハイネを統合した。https://www.uhren-werke.de/de/
参考→ https://watch-media-online.com/blogs/1825/



一方のイエンス・シュナイダー氏は、モリッツ・グロスマンを退社したのちに、
自らのブランドを創設して“振り子時計”の製作に動き出し、昨年の6月には来日もしていた。
参考→ https://watch-media-online.com/blogs/1597/ (シュナイダー氏の経歴なども掲載されているのでご参照ください)


とりあえず、今回の大きな異動について、バーゼルワールドの会場でイエンス・シュナイダー本人に話を訊いた。



ーーまず、今回の経緯について教えてください。
「振り子時計のブランドを立ち上げて独立した後も、実はいくつかの時計会社と、設計やアドバイザーとしての契約をしていたのだけど、このラング&ハイネも、そうしたクライアントのひとつだった。個人的にも、ラング&ハイネの独創性や若い時計師が着々と育っている環境などをみて、“良い組織だなぁ”と思っていた。若い時計師たちもよく自分に教わりにきてくれていたりしたしね。そして、マルコが会社を去るという危機にあたって、会社のほうから開発部長を務めてくれないかというオファーがきたんだ。これまでの関りから、若い人たちに対する責任も感じていたし、個人のノウハウやラング&ハイネの時計作りの継承に自分が役立てるならと、それを受けたというのが経緯で、2月から開発部長を務めている」

ーーオファーされた具体的な仕事内容は?
「3つある。まず若い才能の育成。次が全体的なオーガナイズ、これは20名のスタッフのオーガナイズだけではなく、これまでのデータや、リファレンス番号とかも含めた全体の組織化。で、3つ目がムーブメントの設計だ」

ーー現在制作中のプロジェクトの引継ぎなどは?
「それはなかった。アントン・トゥールビヨンの次のプロジェクトはなかったんだ。ただ、マルコの最大の置き土産といえる、伝統的なドイツ懐中時計からプレートを取って、その中を見せていくという手法、この方向性は続けていく。」

ーー新作の構想はすでに持っているのですか?
「先ほども言ったように、基本的な方向性を尊重しつつ、ただし、テンプをもう少し大きくして脱進機周りを改良したり、香箱芯のところを変えたりするアイデアなど、プロジェクトのアイデアはたくさんあるのだけど、知っての通り、個人として受けた振り子時計の注文を済ませてからでないと、なかなか取り掛かれない(笑)。新作がどのようなものなのか、それは頭の中にはあるが、プロトを作り、テストしてからなので、発表できるのはたぶん2年くらい先になるだろう」

ーー聞きにくい質問をあえてしますが、これまでマルコ・ラングの時計だからという理由でファンでいた人々も多いと思うのです。そういったコレクター、ユーザーに対して、どのような対応をしていくのでしょうか?
「そうだね。ラング&ハイネの時計を好きで買ってくれていたユーザー、すでにその時計を持っている方々が、嫌な気持にならない作品を考えるということだね。そうでないと信頼がなくなってしまうから。今までのラインは活かして、そのうえで新しいライン考えることになる、しかも基本通りにね。手仕事、職人技、カスタマイズに柔軟、それらは絶対に崩さない。これを徹底して、ユーザーをがっかりさせたり、失わないように努める、それしかないだろうね。いきなり文字盤がミッキー・マウスになったりはしないから(笑)」

ーー振り子時計など、クロックの仕事はどうするのですか?
「個人的には、まだ仄かな望みを持っているので、“やめる”とか“やらない”とは言わない。クロックを作り続ける要望やニーズもあってほしい。ただ立場上、個人名で作ることはできない。もしかしたらだけど、数年後にラング&ハイネ銘のクロックがでるかもしれない(笑)」



ーーUWD本社とラング&ハイネの開発部長としてのあなたの関係はどのようなものですか?
「この2社の株主は同一だが、彼らと直接に関わることは今はない。万一、なんらかの技術的な相談などがあった場合は、ラング&ハイネの開発部長の立場で、裏で協力することになるだろう」

ーーでは、日本のユーザーに向けて、これからの抱負とかメッセージみたいなものがありましたら。
「現在ウォッチメーカーは5名、仕上げなどに携わる職人も5名いますが、いずれも若く熱心で、彼らに宿題を投げかけると、彼らなりに研究してレポートしてくる。そのような環境で時計作りができるのは、ほんとうに素晴らしいことです。だから個人的には、チームが集結した時計を作りたいと考えています。誰かひとりがフォーカスされるのではなく、ラング&ハイネというチームに属するひとりひとりの手によって出来上がってくるということを大事にしたいと考えています」



このインタビュー後、ラング&ハイネ日本代理店であるノーブルスタイリング山口氏とも話したが、将来有望な若い才能を育成・指導し監督する立場というスタンスにおいては、「ドイツ時計の宝」ともいうべきイエンス・シュナイダー氏はまさに適任であり、UWD(Uhren-Werke-Dresden)と一緒になったことで施設、組織も大きくなったラング&ハイネが、今回のイエンス・シュナイダー氏の加入によって、組織的にも資金規模的にも良い意味でのパワーアップとなれば、今まで以上に素晴らしい作品がもたらされるのではないかというところで落ち着いた。
もちろん、UWDの投資家集団がビジネスライクなコントロールを始めるという悪いパターンも想像の範囲にないわけではないが、A.ランゲ&ゾーネがリシュモン・グループに属することでブラッシュアップしたという先例もある。

いずれにしろ、今後の作品やスタンスには、充分に目を光らせていかねばなるまい。


というわけで、バーゼル2019発表のラング&ハイネ新作は、創業者の退去という混乱の中なので、完全な新作は望むべくもなく、12・3・6・9時位置をレッドまたはブルーの菱形アクセントで装飾したゲオルグのガルバニック・ブラック・ダイアル・バージョンの発表にとどまった。
(以下、プレスリリースを引用する)


ブルーの菱形のアクセントが⼊ったブラック・ダイアルのモデルの⼤きな特徴は、ポリッシュ仕上げ、ランセット・スタイルの時分針のコレットもブルーに仕上げられ、それが菱形と対になって、魅⼒的なアークを形成します。私たちのウォッチメーカーは、想像を絶するものを超えていくための勇気を示しました。
Lang & Heyne、新しいGeorg のガルバニック・ブラック・ダイアルは、18K ローズゴールド・ケースにランセット・スタイル
ローズゴールドの針と、960 プラチナ製ケースにポリッシュ仕上げ ランセット・スタイルの針にブルーのコレット、2 つのバージョンがあります。サイズが40 x 32mm、カーベックス・シェイプのケースに続くラグにより、すべてのリストに快適にフィット
します。



Model GEORG
【ケース】
サイズ : 40(ラグを含まず)x 32 x 9.4 mm 、トップとボトムはサファイア・クリスタル
ストラップ : アリゲーター・ストラップ(裏地はシャーク・スキン)
バックル : ピンバックルまたはフォールディング・クラスプ
防水性 : 3 気圧日常生活防水

【ムーブメント】
手巻き、キャリバーVIII、約55時間のパワーリザーブ、時・分表示
大型のオフセンターにセットされたスモールセコンド(14.5mm)、秒針停止装置

【ダイアル】
ガルバニック・ブラック、アールデコ・スタイルのアラビアン・インデックス
ブルーまたはレッドのアクセントが入ったレールウェイ・スタイルのミニットマーカー

【価格】
18K ローズゴールド製 4,600,000.-(税別)
プラチナ製 6,200,000.-(税別)


以下は実機写真。









人気のゲオルグの新たな選択肢として、さすがの仕上がりではある。


関連 Web Site (メーカー・代理店)
Lang&Heyne(本国サイト・日本語)
http://www.lang-und-heyne.de/ja/

【お問合せ】
Noble Styling(ノーブルスタイリングギャラリー)
東京都目黒区三田1-4-1 ウェスティンホテル東京1F
株式会社 ノーブルスタイリング 
TEL : 03-6277-1604
http://noblestyling.com/