アンデルセン・ジュネーブ、バーゼル2019新作は「Vita Vinum」~ワイン醸造家とワインを愛する人のための時計

 By : KITAMURA(a-ls)


アンデルセンおじさんのバーゼル新作であるが、ここまで紹介をうっかりしていたので、ごめんなさい、取り急ぎの掲載である(汗…



「アート&カルチャー コレクション」という欧州文化を賛歌する新たに立ち上げられたシリーズの最初の作品で、ワインへのオマージュとなる「Vita Vinum」(=ワイン醸造家とワインを愛する人のための時計)というコンセプト。

文字盤はアンデルセン・ジュネーブの巧みな職人技と芸術性を結集したとして知られる、21金「ブルーゴールド」+ギヨーシェ彫りを施したもの。そしてその背景にあり、一年周期で一回転するサブダイヤルは、ワイン収穫までの一年の歳時記を12等分して手書きで描いたという、中世の教会時計にも似た牧歌的なイディオムを活かした作品。

アンデルセン師いわく
「紳士の生活に欠かせないのは言うまでもないワインです。本モデルは過去、現在、そして未来のワインの醸造家とワインを愛する人へ捧げるものです」

●以下はバーゼル会場で撮った実機画像(ちょっとテカってしまってすみません)




●細密画のもととなった原画


このように、ワイン醸造のステップを、中世に描かれた実際の12枚の絵を使用して表現するだけあって、限定本数も12本。

ただ律義なことに、資料にはこんな注意書きも!
“同様のプロセスは、フランス、アルゼンチン、またはアメリカのワイン生産者などにも適用されますが、同じ月には発生しません。 たとえば、ボルドー地方の収穫はスイスよりはるかに早いです”。
あしからずご了承くださいという感じ(笑)。

ま、この時計があれば、腕の上で今の時期に行なわれているワイン醸造の過程を瞬時に知ることができるうえ、ケース裏面には、お好みのワインの産地またはお気に入りのワイナリーの名前を刻印してユーザー独自のデザインにすることが可能とのことだ。

●裏面のデザインサンプルも見せてくれた。


しかもこのレッドとホワイトゴールドのケースは、CNC旋盤を使用せず、40年以上にわたりケース作りに携わってきた熟練の職人が、伝統的な技術を駆使して製造したものとのこと。
2019年秋デリヴァリー予定。

 

TECHNICAL DATA】

ムーブメント: 自動巻き。時計機能の調整用と12ヶ月ディスクを動かすための2つリューズ
振動数: 3Hz (21’600A/h)
石数:25
パワーリザーブ:36時間
ケース:レッド・ゴールともしくはホワイト・ゴールド。伝統技法によるエンパイア・スタイル。ケースバックには手彫りでおひとりおひとりのお好みのアートワークをエングレーヴ。
:42.5 mm 
:11mm
ラグ幅 (between lugs): 21 mm
ダイヤル:ギョーシェによる「タピスリー」パターンに21金「ブルーゴールド」を施した時分のための固定ディスク。
サブダイヤル: アクリル・ペインティング技法による細密画で描かれたスイスのワイン醸造家基準のワイン完成までの12の工程が、365日で一周する駆動ディスク。 
:ホワイトゴールド
ストラップ: 手縫いのアリゲーター革。18金バックル付


さて、遅くなってしまった罪滅ぼしというわけでもないけれど、日本では意外と知られていないアンデルセン師こと、独立時計師スヴェン・アンデルセン(それはすなわち、あの有名な“独立時計師協会、AHCI”を立ち上げた人物なのである!)について、その足跡をオフィシャル資料などから引用しつつ、この機会にまとめておく。


Svend ANDERSEN
スヴェン・アンデルセン(1942~ )

■誕生から独立まで
1942年にデンマークに生まれたスヴェン・アンデルセンは、ごく若い時から時計職人を目指し、デンマーク時計学校で4年の学習を終えた後、コペンハーゲンの王立工業専門学校に進む。1963年にスイス入りし、翌1964年にルツェルンの時計宝飾店の老舗ギュベリンに入店。優れた語学力を発揮してセールスを担当。生涯の伴侶を得たのも、ここルツェルンであった。
1965年にギュペリンのジュネーブ店に移り、セールスとアフターサービスを担当。そして1969年、見たところ不可能と思われる“ボトル時計”(Bottle Clock)を発明してスイスの『モントルー時計宝飾展』に出品。そのことが彼の名を一躍世界に知らしめることになった。ボトルの中に入れた時計部品を、ボトルの中で組み立ててるというユニークなこのアイデアによって、彼は時計業界だけでなく、国際的なコレクターたち、そしてプレスの耳目を集めたばかりでなく、この発明に着目したパテック フィリップス社によって、同年にスヴェン・アンデルセンは、同社の“コンプリケーション工房”に招かれることになるのである。そしてこの映えある伝統の高級時計ブランド、パテック フィリップス社での9年間の後、彼は独立し、ついに自分自身の時計工房である“アンデルセン・ジュネーブ”を立ち上げる。
最初は古い懐中時計の修復、続いてイタリアのコレクターたちを中心とする腕時計ムーブメントの修復依頼にこたえ、間もなくそれは、世界に一つしかない“ユニーク時計(Pièce unique)”という注文商品の分野へと発展、世界中のコレクターの注目を集めるようになる。
アンデルセン・ジュネーブでのキャリアにおいて、彼は百個以上のピース・ユニーク時計を作り出し、年次カレンダー(Annual Calendar)、永久カレンダー(Perpetual  Calendar)、世界時計(World Time)、ジャンピングアワー(Jumping hour indications)など、 数々の発明を発表、コンプリケーション・ウオッチの分野でアンデルセン・ジュネーブは世界的な名声を獲得する。中でも最小のカレンダー時計(Calendar Watch・6.5 x 17.4mm)は、マッチ棒の頭ほどのサイズで、かつて人間の手によって作られた最小の時計として、1989年ギネス
ブックに登録され、また世界時計のムンドゥス(Mundus)は、世界でもっとも薄い時計として1994年に表彰された。

■独立時計師協会の設立と職人の育成
1985年、スヴェン・アンデルセンは、独立時計師アカデミー(AHCI)を立ち上げる。
いまやこの団体は世界中にメンバーを持ち、ハイグレード時計を企業に属さずに製作する独立時計職人たちのスタンダードな世界的基盤となっている。
また、アンデルセン・ジュネーブは、最高の技術を持つ時計職人を常に受け入れており、たとえばフラ
ンク・ミューラーは7年間同社のアトリエで働き、フェリックス・バウムガルトナーは4年間、そしてフィリップ・カンタンは16年もの長い間、アンデルセンの元で働いた。アンデルセンの持つ哲学と高い技術力は、共にジュネーブの工房で働く多くの時計職人のマイスターたちに受け継がれ、生き続けていると言える。

■40年のハイレベル時計製造術を誇る作品の数々
【400年永久カレンダー】
アンデルセン・ジュネーブ社が開発した最も複雑な時計は、『永久カレンダー(Secular
Perpetual Calendar)』を内蔵した『コンプリケート・ウォッチ(Complicate Watch)』といわれる。実はグレゴリオ暦の閏年には「2つの例外ルール」がある。それは「西暦年が100で割り切れる年は平年とする」、「西暦年が400で割り切れる年を閏年とする」というものだ。現在作られている永久カレンダーウォッチのほとんどは、この例外ルールに対応しておらず、100年ごと、具体的に言えば、次の2100年にはマニュアルでの修正を必要とする。つまり400で割り切れない3つの年、西暦2100年、2200年、2300年を閏年にできず、マニュアルで調節しなければならないのだが、アンデルセン・ジュネーブが開発したコンプリケ
ーション・システムなら、2400年までマニュアル調整が不要なのである。

●400年パーペチュアル・カレンダーの裏面と表面


【コティエ式ワールドタイムの普及】
1882年、カナダの鉄道技師であるサンドフォード・フレミングが24時間制を提案し、それは1884年にワシントンで行われた「第1回国際子午線会議」で採択された。これによってタイムゾーンという概念が生まれるのだが、1930年代にジュネーブ近郊・カルージュ出身の時計師ルイ・コティエが携帯用時計に異なるタイムゾーンを表示する複雑機構を開発。1950年にこの機能を腕時計にも搭載した。スヴェン・アンデルセンがパテック フィリップ社で働いていた70年代、彼はこのルイ
・コティエの作品に出会い、この機構を同社の腕時計に採用することを推し進めた。パテック フィリップ社製「ワールドタイム」の生みの親こそ彼、スヴェン・アンデルセンなのだ。
これまでに製作された世界時計機能搭載腕時計の中でも最も美しいとされているデザインを生み出したコティエは、パテック フィリップを皮切りとして、ヴァシュロン・コンスタンタン、アガシなど数々の時計メーカーにこの機構を供給し、大きな成功を収めることとなる。
パテック フィリップを離れた後もアンデルセン・ジュネーブは、1989年にこのコティエ式を「コミュニケーション 24」として知られるモデルとして製作。以来、アンデルセン・ジュネーヴはコティエ氏の功績を称え、素晴らしい方法で世界標準時を知らせるこの「コミュニケーション」の新モデルの製作を続けている。




その他、アンデルセン・ジュネーブの広く知られている作品には「GRAND JOUR & NUIT」などがあるが、最近では、ロシアの時計師、コンタンティン・チャイキンとのコラボレーション・ウォッチ「オートメーション・ジョーカー」が話題になったことなども記憶に新しい。



アンデルセン・ジュネーブ
http://andersen-geneve.ch
アンデルセン・ジュネーブ社は、世界中のコレクターの注文に応じ、世界にただ一つに
して、持ち主のプライドを高める“ユニークな一品”を作ることをモットーにしています。
すでにこうした製品は100個以上作られ、納品されています。どうぞいつでもアイデアを
お寄せいただき、共に世界に二つとない時計を自分のものにするという、あなたの夢を実
現させませんか?