グルーベル フォルセイ 「QP イクエーション」を司るメカニカルコンピューターの仕組みをグラフで理解する

 By : CC Fan

2020年8月2日追記:下記の内容は原理が一部間違っています、詳細は最新の解析結果をご覧ください。

以前に、カレンダー機構を司る「第7の発明」メカニカルコンピュータ(Le Computeur Mécanique)を解読したグルーベル フォルセイのQPイクエーション(QP à Équation)。
前回の解説では文章を主体として説明しましたが、より分かりやすく表現する方法はないか…と健闘した結果、私の記事で何度か登場している「グラフ」と言う形で表現すればいいのではと考え作成しました。



QPイクエーション、文字盤の4時位置にあるのが永久カレンダーを司るメカニカルコンピュータで、同軸に歯車が重なったような構造になっています。

永久カレンダーの基本的な構造は通常の日送りに加え、月末に適切に数日分「早送り」をすることで、30日しかない小の月と平年は28日で閏年は29日の2月を自動的に処理するというものです。
この基本原理はメカニカルコンピュータも同じで、月末にメカニカルコンピュータが制御する追加の日送り爪が通常の日送り爪に加えて噛み合う事で早送りします。
追加の日送り爪は最大3歯で、通常の日送り爪と合わせて4歯分、すなわち28→29→30→31→1という4日分を一気に送る平年の2月末を処理することができます。

この動作を実現するために現在の月(1年で1周)と閏年(4年で1周)を記憶しておく必要があり、古典的な永久カレンダーではそれぞれをそのままの形で歯車の回転角として記憶しているのに対し、メカニカルコンピュータでは回転の差として記憶しているというのが読み取った結果でした、もう一度見てみましょう。



1か月で1回転する月歯車(日送り爪で送られる入力歯車と回転を出力する出力歯車、月末に月表示を送るケージの3層)とそこから減速して年歯車と閏年歯車が駆動されており、年歯車と閏年歯車に設けられたカムで月末追加送り歯が出たり入ったりして月末の送り量を制御します。
これだけだと何がメリットなのかわかりにくいので古典的な永久カレンダーとグラフで比べてみることにしましょう。



古典的な永久カレンダーの4年分(2017年-2020年)の月歯車(1月で1周)、年歯車(1年で1周)、閏年歯車(4年で1周)の日付に対する角度をプロットした図です。
12か月カム・48か月カムや閏年の表現方法で細かい差異はありますが、基本的には1日ごとに動くのは月歯車のみで年歯車と閏年歯車は月末・年末に一気に動く動きになっています。
これは、月末・年末のみ噛み合うレバーまたは歯車で実現されており、月末・年末以外は噛み合っていないので保持のための規制バネが必要になります。



同じ表現をメカニカルコンピューターで行ったものがこれです。
1年周期を記憶する年歯車と4年周期を記憶する閏年歯車も月歯車とほぼ同じ速度で回転しており、干渉しているような濃淡が見えます。
この干渉(近い周期のものを重ねるとより別の周期のものが見える)と言うのがメカニカルコンピューターの原理の一つとなった差動装置の本質で、二つの歯車の差(月‐年と閏年-年)に1年で1周と4年で1周の周期が現れています。

1年分を拡大してみましょう。



ここまで拡大すると2月と小の月、大の月で月歯車の「早送り」量が違うために凸凹していることが分かります。
年歯車は月末に一気に送られ、閏年歯車は年末に送られるため、一定です。
これは減速比が大きいことと等価なので、歯車の遊び(バックラッシ)が問題になりやすくなります。


 
対してメカニカルコンピュータでは3つの歯車は1に近い(11/12と45/48)減速比でほぼ同じ速度で回転するため、バックラッシの問題は相対的に小さくなります。
また、差は連続的に増加しており月末・年末に一気に動かす必要もありません。

さらに拡大します。



月末に月歯車の「早送り」と同時ですが、 年歯車は一定の角度、30度回転している様子が分かります。



こちらは月末の「早送り」に比例した量だけ回転している様子が分かります。

より詳しく見るために2月部分を拡大してみましょう。





2月28日から3月1日の点で、月歯車のから変速して駆動されている年歯車・閏年歯車そしてその差にも「早送り」で折れていることが分かります。

グラフで改めてメカニカルコンピュータ内の歯車はほぼ1月で1周の周期で回転しているが、その差を見ると1年で1周・4年で1周の周期が表現できている…という事を見てみました。
前回のグラフ同様、差動装置という機械要素を応用した仕組みです。

この構造のメリットは前回も述べたように変速比が1に近いことによって歯車の遊び(バックラッシ)によるガタが少なく、規制バネを年歯車と閏年歯車に入れなくてよいことと、連続的に駆動されるため月末に0-3日追加日送りの重さがある以外は、極端に負荷が重くなることもないと考えられます。
また、全ての動作が連続的かつ可逆なので両方向に日付調整が可能で、「全連動なので今日にあわせれば終わり」と「進めすぎたら戻せばいい」という性質を両立してつかいやすくしています。

更に優れた安全装置でガードし、誤操作に対して盤石の体制によって、「止めないのが一番だけど、止めてしまっても気軽に合わせされる」と「止めないためのワインダーのために自動巻きにする必要がないので、手巻き」とグルーベルフォルセイらしい実用するコンプリケーションとしての面目躍如です。

何度見ても素晴らしい…


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