グルーベル フォルセイ 「QP イクエーション」を司るメカニカルコンピューターの仕組みを探る【間違い修正】

 By : CC Fan


仕組みを探る
グラフで理解する、と機構的な素晴らしさを伝えてきたグルーベル フォルセイのQPイクエーション(QP à Équation)。



カレンダー機構を司る「第7の発明」メカニカルコンピュータ(Le Computeur Mécanique)がどのように月末処理を行っているか?という事を分析し、「回転角度そのものではなく、回転角度の差に情報を持たせる差動装置の応用である」と言う原理と、「減速比が小さいことによってバックラッシ(歯車の遊び)が問題になりにくく、規制バネが要らない」と言うメリットを読み解きました。

グラフの記事を書いてからふと解析の時に使ったThe WatchesTVから製作した理解用の「非合法資料」を眺めていて、自分の理解の誤りに気が付いたので改めて修正版の資料を作りました。

What Beauty Means At Greubel Forsey, Featuring The Quantième Perpétuel à Equation

まずは見てみましょう。


前回使った解説用の資料です。
この時、月出力歯車から年歯車と閏年歯車への変速比は正確に測ることができなかったため、大小関係と「差で情報を表現する」と言う構造から、45/48と11/12と解釈しました、これは1年で1周する情報は月と年の差、4年で1周する情報は年と閏年歯車の差で表現すると理解したからです。
 
しかし、よく見ると3つの追加送り爪は全て月歯車に取り付けられており、閏年歯車と年歯車は重なっているだけで相対的に何かやり取りしたり噛み合う様な構造にも見えません…
改めて考え直すと、わざわざ年歯車と閏年歯車間でやり取りしなくても、全部月歯車を基準とすればよりシンプルなのでは?と思い、非合法資料を漁った結果その推測が当たっていることが確認できました。

 

修正と追記を行ったものがこれです。
今回、よく見るとそれぞれの追加送り爪の機能についても解読することができたのでそれを書き足してあります。

月歯車の回転は11/12に減速されて年歯車に、47/48に減速されて閏年歯車に送られます。
これは、前回の11/12と45/48の組み合わせと大小関係は同じになります。

1年で見ると、月歯車が12周するのに対し、年歯車は11周、その差は1周なので、月歯車を基準に見ると年歯車は相対的に1年で1周していることになります。
4年も同様で、月歯車が48周するのに対し、閏年歯車は47周、その差は1周なので、月歯車を基準に見ると閏年歯車は相対的に4年で1周していることになります。

閏年歯車には2月末を処理するための2つの溝(2月溝)が彫られており、2つの2月末用の追加送り歯を制御します。
平年(28日)は平年2月追加送り歯と2月追加送り歯、そして年歯車から制御されている2月・小の月追加送り歯の3本が突き出すことにより、通常の1日送りに加え、追加の3日分送ることで、28→29→30→31→1と言う4日分の「早送り」を行います。
閏年(29日)の場合は2月追加送り歯と同じく月・小の月追加送り歯の2本で、3日分の「早送り」です。
2月末以外はこの歯は突き出さないので、4年で4回のみ動作し、溝は外側が4年で3回突き出し、内側が4年で4回突き出すような形になっています。
突き出し・引き込む動きは1か月かけてゆっくり行われるような形になっており、この動作によるトルクロスが少なくなるように配慮されています。

年歯車も同じで、溝が彫られており小の月(2月、4月、6月、9月、11月)に追加送り歯を突き出させるように制御します。
溝の形状はどちらの方向にも動くことができるように作られており、これによって両方向の動作が可能になっていると考えられます。



グラフにプロットしました。
全く同じに見えますが、前回は4年で1周するグラフは閏年-年でした。



こちらは前回のグラフ。
同じことを表現しているので同じなのはある意味当たり前ではあります。



1年分を拡大。
通常の永久カレンダーで年歯車に相当する月‐年と閏年歯車に相当する月-閏年の「差」が滑らかに増加していく様子が分かりますでしょうか?
月末のみ・年末のみの動作ではなく日々の日送りで連続的に変化していくためトルクロスの変動が少なくなります。

 

3か月分、同じく滑らかですが、2月末に「早送り」の影響が見えます。



1月は大の月なので傾きの変化はなく、平年の2月は4日早送りする最大の早送りなのでグラフが非連続になってます。

レバー式永久カレンダーのように一定方向を前提とした不可逆な動作がないため、両方向に合わせられるのはもちろん、歯車式と比べても減速比が1に近いためにバックラッシの問題が発生しづらく各歯車に入れる規制バネが要らないというのはメリットになります。
また、「コンピュータ」と言う名前があらわしているかのように、比較的各部の機能がきっちり分離されており、他の暦システムに適合させるのも古典的な永久カレンダーで同様の事を行うよりも楽にできそうです。

何回も書いてきましたが、メカニカルコンピューターについては今回本当にしっかり理解できたと思います。
やはりとても素晴らしい。


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