ベルナルド・レデラー セントラル インパルス クロノメーターでカムバック! クロノメーターの極限

 By : CC Fan
2020年8月26日追記:公式の写真アップデートで写真を差し替えました。
2020年9月28日追記:レデラーとのメールのやり取りで、パワーリザーブに誤りがあったことが分かったので修正しました。

BLU(Bernhard Lederer Universe)で日本でも知られたAHCI所属の独立時計師、ベルナルド・レデラー(Bernhard Lederer)、昨今は自身の名前を冠した作品よりもサプライヤー業の方をメインにしている印象でしたが、すさまじい作品と共にカムバックした…と言うリリースメールが届いたので抄訳・意訳のブログとして速報レポートします!



一見するとクロノメーターの高精度を主張する大きなスモールセコンドこそ備えていますが、スモールセコンドの位置がユニークな以外はオーソドックスな3針の時計にしか見えない「羊の皮を被った」フェイスに対し…



このムーブメント!
(写真は後述するWGバージョンです)

主役は、なんと言ってもブレゲが考案し、ジョージ・ダニエルズが改良に取り組んだ、両方向から直接ガンギ車のダイレクトインパルスでテンワを駆動するナチュラル脱進機をさらに進化させたセントラル インパルス エスケープメントです。



この機構については独立した記事にて細かく見ていきたいと思うので今回はサマリーだけ。
  • ガンギ車の回転のほとんどをテンワの駆動に使えるように動作角度が設計されている
  • ガンギ歯先が「こじる」のではなく、「押す」ようにインパルスを与え、ロスが少ない
  • アンクル同様、ローラー安全装置によって振り過ぎを抑制できる
  • アンクル同様、幾何学的にガンギの歯は1歯ずつしか進まないため安全
  • それぞれのガンギが独立に動き、反転用の中間車がない
個人的な理解としては「ロビン脱進機を両方向用に鏡像配置して融合させた」と認識しています。
更に、角度設定を最適化することでロビンと違い「空回り」で捨てるエネルギーを安全性を保ったまま最小にするようにしています。
ここら辺は以前、グランドセイコーの「デュアルインパルス脱進機」を推測した時に求めた最適化と同じ方向性です。
理論的な優位性に加え、チタン素材や高精度加工により慣性を抑えより理論通りに動作するようにしています。

更に、輪列内の3番車にトルクを一定化するための10秒ルモントワールを加え、ガンギに伝わるトルクを一定化しています。
このルモントワールはジョン・ハリスンが1756年に発明したものと同様のデザインを腕時計用にアレンジしています。

ルモントワールで必要なコンスタントトルクを与えることと、脱進機自体の効率が良いため、効率よくエネルギーがテンワに伝わり、その効率の良さを表すように脱進音(≒テンワに伝わらず音として消費されるエネルギー)は極めて静かになっています。


並外れたムーブメントを堪能できるよう特別なケースバックがデザインされました。
ドーム状のサファイアクリスタルがムーブメントを全方向から眺めることを可能とします。



文字盤側はシンプルながら計器であるクロノメーターの読み取りやすさを考慮したデザイン。
スモールセコンドを8時位置に配することで一般的な対称性を良しとするデザインへの挑戦を図っています。

ローズゴールド、オパーリン文字盤は「ミニマリスト」ともいえるデザインですが、これに対する「テクニカルバージョン」のホワイトゴールド版も用意されます。



大胆な開口部からは対称の輪列、ルモントワール機構を余すところなく見ることができます。



4番車に設けられたルーローの三角形型のカムがルモントワールを制御している様子も観察できます。
もちろん、ムーブメントの仕上げレベルは技術的な困難さと同様、最高レベルです。



ムーブメント、キャリバー9012は直径39.3mmと非常に大型、ケースも44mmあります。
対称的な輪列、ルモントワール脱進を行うためのガンギとアンクル…すべての構成要素を余すところなく堪能できます。

香箱の巻き上げ方向が逆になるため、片方には反転用の中間車が入っているため、テンプのブリッジはわずかに非対称です。
これは、ブランドロゴの頭文字Lをイメージした仕上げに見えました。

この作品だけでもとんでもないですが、これは「エスケープメントの巨匠へのトリビュート」コレクションの最初の作品で、ベルナルド・レデラーが長年研究してきた脱進機の研究の成果を今後も発表していくようです。

公式のスペックを。

BERNHARD LEDERER
CENTRAL IMPULSE CHRONOMETER

Technical Details

Name: BERNHARD LEDERER CENTRAL IMPULSE CHRONOMETER
Reference: 9012
Functions: Hours, minutes, small seconds at 8 o’clock

Case:
Version 1: rose gold 5N 18K
Version 2: white gold 18K

Diameter: 44 mm
Thickness: 12.2 mm
Case back: Open, sapphire glass with double anti-reflective coating
Water resistance: 3 ATM, approx. 30 metres

Dial:
Version 1: solid dial, silvered opaline
Version 2: openworked, slate grey sunburst

Movement: Mechanical, hand-wound
Number of components: 208
Number of jewels: 44 rubies
Frequency: 21'600 vibrations per hour (3 Hz)
Diameter: 39.3 mm
Thickness: 5.98 mm
Special features:
Double barrels
Two independent gear trains
Two constant-force remontoires
Natural escapement with central impulses

Winding & setting: Two-position winding stem:
Position 1: manual winding
Position 2: setting the time

Finishing: Satin, shot-blasted
Bridges diamond-beveled and drawn out

Power reserve: At least 38 hoursAt least 58 hours

Strap: Brown satin alligator (rose gold version)
Black satin alligator (white gold version)
Pin buckle made of rose gold or white gold



1958年にドイツで生まれた、ベルナルド・レデラーは1985年に設立されたAHCIの最初のメンバーの一人です。
過去の作品には3つの軸で回転し、BLUブランドで発表したトゥールビヨンが時刻表示を行うMajestyTourbillon MT3、世界初の宇宙飛行を時計の上で表現したTourbillon Gagarinが特に有名でしょう。

2014年から歴史の専門家と協力し、既知の脱進機の研究を始め今回のセントラルインパルスクロノメータを含むいくつかのアプローチの基礎になりました。

YouTubeで検索すると過去の作品のプロモーションムービーを見つけることができます。
言葉で設制するよりも分かりやすいので引用します。



2007年に発表された、3つの速度の異なる速度で自転しながら公転するオービタルトゥールビヨンで時刻を表示するBLU MajestyTourbillon MT3。
12時間で1周する最外周が時間、1時間で1周する中間ケージが分、そして1分で1周するトゥールビヨンが秒を示す…と言う表示と機能が融合したシステムです。



2011年のThe Gagarin Tourbillon。
その名前の通り、1961年に人類で初めて宇宙へ行ったロシアのユーリィ・ガガーリンの宇宙飛行から50周年へのオマージュです。

トゥールビヨンをガガーリンが乗ったヴォストーク(VOSTOK)宇宙船に見立て、彼が宇宙に滞在した時間108分で文字盤上を一周するオービタルトゥールビヨンです。
ブリッジもソ連のモニュメントを模したような形になっています。

このような驚くべき作品を作っていたものの、しばらく表舞台から姿をけしてしまいました。
しかし「裏方」として働くとともに、エネルギーをため、今回カムバックしたベルナルド・レデラー。
注目です!

まずは、セントラルインパルスエスケープメントは週末に何とか…

https://bernhard-lederer.com/