レデラー「トリプルサーティファイ オブザバトリークロノメーター」の意義~44mmケースCICの「最終章」

 By : CC Fan

実機の速報をお伝えしたレデラーによる独立した3つの機関によるクロノメーター検定に合格して精度を保証した「トリプルサーティファイ オブザバトリークロノメーター」

先の取材の時点では「シリーズの1バリエーション」に過ぎないものである、という認識でしたが、当初の目標である偉大な脱進機の発明者に捧げる「トリビュート・トゥ・マスターズ・オブ・エスケープメント」シリーズの第一作、という性質を持っていたCICという脱進機の最終章として、そして39mmのバリエーションであるCIC39が完成したことにより、44mmのCICの「有終の美」を飾る作品であるという意義が説明されました。



44mmケースのCIC、4色のダイヤルごとに25本、合計100本の限定として制作しています。



ONLYWATCHオークションで初公開されたユニークピースを祖とし、18本限定のアップサイドダウン構造のInVerto。

これらの44mmのCICはこれからも作り続ける、と思っていたら実はムーブメント100個程度でのディスコンを決めており、その「最終章」を飾るのにふさわしい作品は?と考えた末の結果として「トリプルサーティファイ オブザバトリークロノメーター」が製作されることが決定されたそうです。

脱進機と作品そのものに「クロノメーター」を冠する機械として高精度を公的に証明する、という観点から高精度の象徴であった天文台で行われるクロノメーター検定を取得、しかも1つではなく国から違うグラスヒュッテ、ブザンソン、ジュネーブの3つの天文台で取得することでより公平にされるはず、というアイディアをベルナルドが提案、3つの天文台で認証されたクロノメーター、という意味の「トリプルサーティファイ オブザバトリークロノメーター」が製作されることが決まりました。



古典的なクロノメーター機やマリンクロノメーターにインスパイアされたダイヤルはスターリングシルバー製、曇りなく均一なダイヤルを作り出す技法を修復などを得意とする時計師より習得し、レデラーのファクトリー内で製作されたそう。
LEDERERのレター以外の文字情報はできる限り時刻の読み取りを邪魔しないように仕上げられ、「トリプルサーティファイ オブザバトリークロノメーター」の銘はサークルの一部として、3つの天文台の名称は墨入れをしない緯度・経度の数字という形でスモールセコンドにさりげなく配置されています。
象徴的なオブセルヴァトワールのVと12時から6時に伸びる二重線は経度の基準である本初子午線をイメージしたディティールです。



ムーブメントはノーマルのCICと同じもの、ということはすでに説明しましたが、「同じもの」であるということに大きな意味があります。

もし特別なチューニングしてクロノメーター精度を出した!としても、調整のおかげでは?ということになってしまい、CICという機構そのものの優位性を示していることにはならない、と開発チームは考えました。
逆に今までに出荷したものと同様の調整・基準で調整したものを検定に出して通過するのであればそれまで行っていた調整はクロノメーターの基準に耐えるクオリティを備えていた、ということができます。

すなわち、「トリプルサーティファイ オブザバトリークロノメーター」にとって3つの天文台でクロノメーター検定を通過することは「目標」ではなく「結果」であり、通過したという結果によって、44mmのCICムーブメントを使用したコレクション全体のポテンシャルを証明することが本当の目標である、と理解することができました。

ノーマルなCICでもCOSC認証はとっており、「トリプルサーティファイ オブザバトリークロノメーター」もCOCS認証は取得しているため実際には4つのクロノメーター認証ではあるのですが、あくまで「天文台」は3つ、ということのようです。



8本限定、という数字にも意味があります。

従来の数字ベースのシリアル番号ではどうしても「好き嫌い」で余りがちな数字がありました。
何かいい方法はないか…と考えた結果、クロノメーターを使用する船乗りのタリスマン(お守り)としてのコンパスローズ(羅針図)から東西南北及びその中間の八方位をそれぞれのシリアルナンバーとして採用しました。
確かに数字よりも好き嫌いはなそうです。



また、個人的に大きなトピックとして「推測」ベースで議論していた「ムーブメント構造の変化」は存在するということがオフィシャルに認められ、それぞれの世代のムーブメントプロトタイプが展示されていました。

可能であればこれも実機を見ながら議論したい!とお願いしましたが、ムーブメントむき出しで破損リスクなどでNG。
高精度画像やCAD図を使ったプレゼンテーション資料などをリクエストしているので、届いたら改めて発展を見ていきたいと思います。

44mmは大きすぎる、という意見から小型化に挑戦し39mmのCIC39の開発に成功、44mmは終了、という物語の最終章を飾る「トリプルサーティファイ オブザバトリークロノメーター」という作品。
39mmの個数限定は?という質問には今のところ考えていないとのこと。



会場でお会いした他媒体の方にも「見に来てくださいヨ」とお願いしたのが実現したり、非常に良かったです。
これからの物語にも期待です!