カーステン フレスドルフ 「ビスポークオンリー」コンセプトの新作 EI8HTを発表
By : CC Fan2019年のバーゼルでの衝撃的な出会いから始まり、ノーブルスタイリング葛西氏とワークショップ訪問など、様々な情報をお伝えしてきたカーステン フレスドルフ(Karsten Fräßdorf)。
ワークショップ訪問で意気投合した葛西氏がアレンジし、本来であれば今年の5月ごろには来日が実現しそう…と言う状況でしたが、まさかの新型コロナウィルスのパンデミックが発生、来日は仕切り直しになってしまいました。
そんな中でも連絡を取りつつ、「日本的な作品を作りたいので、日本の精神性を象徴するような文学を教えて欲しい」という無茶振りに怪しい英語で答えるなどの交流を続けてきました。
カーステンとしても、彼曰く「クレイジータイム」は耐えるしかない…と言う姿勢で、新しい作品をじっくりと温めてきており、今回、満を持して発表されました。
特徴的な高慣性モーメント・温度補正テンワを持つスピログラフ(Spirograph)の持ち味を更に活かしたムーブメントをベースに、すべてをオーナーと「共に」作ることができる「ビスポークオンリー」コンセプトの新作、EI8GT(エイト)です。
資料の抄訳ベースでブログという形でお伝えします。
作品の性質を表しているのはこのカットでしょう。
オーナーの好みに合わせ、以下のものが変更可能であると謳われています。
スピログラフもスポーツとクラシックというベースのコレクションはありましたが、かなりの個体がカスタマイズだったようで、それをさらに推進したと言えるかもしれません。
(そしてこの例の写真はよく見るとシングルバレルのスピログラフです)
変更可能とはいえ、「例」として写真が添付されていました。
エイト(8)という名前があらわすように、各部には8角形のモチーフが。
文字盤に用いられているのはラ・ショー=ド=フォンの伝統産業の一つである養蜂、カーステンの「ムーブメントは全ての部品が協調する蜂のコロニーであり、ひげゼンマイはそれを統べる女王蜂」という哲学を象徴するような蜂の巣を思わせるハニカム模様。
ムーブメントは強度を保ちつつ機構を堪能できるハニカム構造を採用したデザイン。
スピログラフはシングルバレルでしたが、今回はより安定したトルク供給を目指しダブルバレルが採用されました。
高度な工業力によってワークショップでハニカム構造を製造できるカーステンらしいスケルトンの形と言えそうです。
がっちり巻ける大きめのリュウズと、複雑な構造を持つ温度補正テンワを備えたトゥールビヨンです。
ムーブメントはスピログラフ同様2枚のプレートの間をピラー(柱)で支える構造。
スピログラフ同様に破損しやすい巻き芯部分は別ユニットとして取り外し交換可能になっています。
向かって右側の香箱は地板側に角穴車があって香箱真から巻き上げ、香箱外周から中央の2番車に出力しています。
向かって左側の香箱も地板側に角穴車があって香箱真から巻き上げ、文字盤側の香箱外周から出力して、中間車経由で右側の香箱にトルクが伝わる…と理解しました。
すなわち、二つの香箱が並列に接続される並列型ダブルバレルです。
右側の香箱にはゼネバストップを用いたストップワークが設けられ、トルクが低下する前に香箱を停止させます。
別アングルでは香箱を連結する中間車が見えます。
2番車からは3番車→トゥールビヨンのピニオンとオーソドックスなトルクデリバリーの構造です。
上側のプレートを被せ、3本のネジで固定します。
日の裏車相当の歯車が3枚で構成されており、筒カナと筒車が同じサイズの歯車で済むようにしてあります。
これにより、筒車がトゥールビヨン側に飛び出さないので、美観を損なうことがありません。
スピログラフでは結構派手に飛び出していたので、地味ですが大きな進歩です。
よく観察すると他のブランドでも、意外と飛び出しています。
ケースバック側から見ると二つの香箱の軸、巻き上げ輪列、逆転防止のコハゼ、二つの角穴車を連結する中間車が見えます。
2番車は地板に直接、3番車はブリッジを伸ばして取り付けられていることも分かります。
特許を取得したストップセコンドレバーも備えられています。
スピログラフに比べ香箱が増量された結果、パワーリザーブは巻き止めで66時間に伸びました(スピログラフは44時間)。
「いつもの」パワポ注釈資料を作りカーステンに確認、この理解で正しいという事が確認できました。
図中でWhat?と書いた部品はムーブメントをケースに固定するためのキドメで、回転させることでケースに対するムーブメントの傾きを調整する狙いだと思われます。
いくつかの特許技術が用いられています。
巻き芯にかかる衝撃をバネのサスペンションによって緩和するシステム。
緩み止め(3)を備え、祖調整(1)と微調整(2)を個別に行える慣性モーメント調整システム。
トゥールビヨン内のテンワを外部から止めるためのシステム。
具体的な動作は過去の記事をご覧ください。
そして恒弾性素材に残る「僅かな」温度特性をキャンセルするための温度補償テンワ。
温度一定時の緩急調整と、温度補正の効きを分離して調整できる(直交性が良い)メリットがあります。
この作品を日本で紹介できることを信じて…
なぜか現代アート風のカーステンの図…
関連 Web Site
Montres KF
https://montres-kf.com/
WCP(Watch Connaisseur Project)
https://www.wcp.swiss/
Noble Styling
http://noblestyling.com/
ワークショップ訪問で意気投合した葛西氏がアレンジし、本来であれば今年の5月ごろには来日が実現しそう…と言う状況でしたが、まさかの新型コロナウィルスのパンデミックが発生、来日は仕切り直しになってしまいました。
そんな中でも連絡を取りつつ、「日本的な作品を作りたいので、日本の精神性を象徴するような文学を教えて欲しい」という無茶振りに怪しい英語で答えるなどの交流を続けてきました。
カーステンとしても、彼曰く「クレイジータイム」は耐えるしかない…と言う姿勢で、新しい作品をじっくりと温めてきており、今回、満を持して発表されました。
特徴的な高慣性モーメント・温度補正テンワを持つスピログラフ(Spirograph)の持ち味を更に活かしたムーブメントをベースに、すべてをオーナーと「共に」作ることができる「ビスポークオンリー」コンセプトの新作、EI8GT(エイト)です。
資料の抄訳ベースでブログという形でお伝えします。
作品の性質を表しているのはこのカットでしょう。
オーナーの好みに合わせ、以下のものが変更可能であると謳われています。
- ムーブメント地板のパターン、「蜂の巣モチーフ」や「流星群」など
- 針の種類
- ダイヤル素材 (ワークショップ内製・天然石も可能)
- テンワの錘のパーソナライズ (イニシャル・モチーフ・スーパールミノバ・ジェムセッティング)
- ケース素材とデザインの変更
- パーソナライズされたレターとエングレーブ
- アワーマーカーのデザイン
- リュウズのデザイン変更
- ストラップの素材と仕上げ
スピログラフもスポーツとクラシックというベースのコレクションはありましたが、かなりの個体がカスタマイズだったようで、それをさらに推進したと言えるかもしれません。
(そしてこの例の写真はよく見るとシングルバレルのスピログラフです)
変更可能とはいえ、「例」として写真が添付されていました。
エイト(8)という名前があらわすように、各部には8角形のモチーフが。
文字盤に用いられているのはラ・ショー=ド=フォンの伝統産業の一つである養蜂、カーステンの「ムーブメントは全ての部品が協調する蜂のコロニーであり、ひげゼンマイはそれを統べる女王蜂」という哲学を象徴するような蜂の巣を思わせるハニカム模様。
ムーブメントは強度を保ちつつ機構を堪能できるハニカム構造を採用したデザイン。
スピログラフはシングルバレルでしたが、今回はより安定したトルク供給を目指しダブルバレルが採用されました。
高度な工業力によってワークショップでハニカム構造を製造できるカーステンらしいスケルトンの形と言えそうです。
がっちり巻ける大きめのリュウズと、複雑な構造を持つ温度補正テンワを備えたトゥールビヨンです。
ムーブメントはスピログラフ同様2枚のプレートの間をピラー(柱)で支える構造。
スピログラフ同様に破損しやすい巻き芯部分は別ユニットとして取り外し交換可能になっています。
向かって右側の香箱は地板側に角穴車があって香箱真から巻き上げ、香箱外周から中央の2番車に出力しています。
向かって左側の香箱も地板側に角穴車があって香箱真から巻き上げ、文字盤側の香箱外周から出力して、中間車経由で右側の香箱にトルクが伝わる…と理解しました。
すなわち、二つの香箱が並列に接続される並列型ダブルバレルです。
右側の香箱にはゼネバストップを用いたストップワークが設けられ、トルクが低下する前に香箱を停止させます。
別アングルでは香箱を連結する中間車が見えます。
2番車からは3番車→トゥールビヨンのピニオンとオーソドックスなトルクデリバリーの構造です。
上側のプレートを被せ、3本のネジで固定します。
日の裏車相当の歯車が3枚で構成されており、筒カナと筒車が同じサイズの歯車で済むようにしてあります。
これにより、筒車がトゥールビヨン側に飛び出さないので、美観を損なうことがありません。
スピログラフでは結構派手に飛び出していたので、地味ですが大きな進歩です。
よく観察すると他のブランドでも、意外と飛び出しています。
ケースバック側から見ると二つの香箱の軸、巻き上げ輪列、逆転防止のコハゼ、二つの角穴車を連結する中間車が見えます。
2番車は地板に直接、3番車はブリッジを伸ばして取り付けられていることも分かります。
特許を取得したストップセコンドレバーも備えられています。
スピログラフに比べ香箱が増量された結果、パワーリザーブは巻き止めで66時間に伸びました(スピログラフは44時間)。
「いつもの」パワポ注釈資料を作りカーステンに確認、この理解で正しいという事が確認できました。
図中でWhat?と書いた部品はムーブメントをケースに固定するためのキドメで、回転させることでケースに対するムーブメントの傾きを調整する狙いだと思われます。
いくつかの特許技術が用いられています。
巻き芯にかかる衝撃をバネのサスペンションによって緩和するシステム。
緩み止め(3)を備え、祖調整(1)と微調整(2)を個別に行える慣性モーメント調整システム。
トゥールビヨン内のテンワを外部から止めるためのシステム。
具体的な動作は過去の記事をご覧ください。
そして恒弾性素材に残る「僅かな」温度特性をキャンセルするための温度補償テンワ。
温度一定時の緩急調整と、温度補正の効きを分離して調整できる(直交性が良い)メリットがあります。
この作品を日本で紹介できることを信じて…
なぜか現代アート風のカーステンの図…
関連 Web Site
Montres KF
https://montres-kf.com/
WCP(Watch Connaisseur Project)
https://www.wcp.swiss/
Noble Styling
http://noblestyling.com/
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