モンブランの新任ウォッチ部門ディレクター、ローラン・レカン氏へのWATCH MEDIA ONLINE エクスクルーシブ・インタヴュー

 By : KIH


モンブランは、旧ミネルバ工房を擁し、時計作りの実力はリシュモングループ広しと言えども屈指の存在である(意外と知られていないかもしれないが)。ミネルバと、ル・ロックルの2つの工房のコラボや、時計作りの姿勢も統合の効果が出始めていることを
今年のW&Wでも感じたところである。

そんなモンブランのウォッチ部門新任ディレクターである、ローラン・レカン(Laurent Lecamp)氏とのヴァーチャルなインタビューの機会があったので(むろん、WMOだけがインタビューを許されたという意味ではなく、質問内容はWMOが投げたもの、という意味での「独占」)、今回はそれを皆さんにお伝えしたい。

まずは、Lecamp氏就任のリリースから。

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モンブランプレスリリース2021年1月5日

モンブランウォッチ部門ディレクターにローラン・レカンが就任

2021年1月1日付を以って、ローラン・レカン(Laurent Lecamp)がモンブランのウォッチ部門のディレクターに就任いたしました。ローランは、リシュモングループの外で新しい挑戦を追求することとなったダビデ・チェラートの後任となります。



元カールF.ブフェラーのインターナショナルセールスディレクターであり役員であったローラン・レカンが、モンブランの時計部門の新たな戦略、デザイン、開発を担うこととなります。ローランは、スイスのワイン&スピリッツのブランドマネージャーとしてLVMHでプロとしてのキャリアを開始し、それ以来、時計業界でさまざまな起業家的およびリーダーシップ的な役割を果たしてきました。

2010年には彼自身の時計ブランドサイラス(CyrusWatches)を共同設立。さらに、ローランは、2014年にセールス担当エグゼクティブバイスプレジデントとしてカールF.ブヘラに入社する前に、数多くの調査プロジェクトを実施し、書籍を出版してきました。

モンブランインターナショナルCEOのニコラ・バレツキーは以下のように述べています。「ローランがウォッチ部門のマネージングディレクターとしてモンブランに加わることを決心し、エキサイティングな新しいページを一緒に開くことできることを嬉しく思います。時計製造に関する幅広い専門知識で、メゾンの重要な柱のひとつである時計製造の未来を照らしながら、ルーツであるミネルバに深く根差したモンブランのウォッチ部門の綿々と続く成功戦略に生き生きした役割を演じてくれることでしょう。」

一方、ローラン・レカンは、「モンブランのウォッチ部門の成功は、その革新性と、お客様、プレスの皆様、時計愛好家の皆様との強いエモーショナルな絆があってこそと、私は確信しています。ミネルバの卓越した遺産、情熱的な協力者、比類のない職人技に頼りながら、これらふたつの大切な要素―革新性と皆様とのエモーショナルな絆―をさらに発展させるよう努めます」と述べています。

[ローラン・レカン経歴]

◆学歴
ジェモロジカル・インスティテュート・オブ・アメリカ(スイス)
ネオマ・ビジネススクール(フランス)
ヴィアドリナ欧州大学(ドイツ)

◆職歴
2001年~ LVMH – ワイン&スピリッツ: ブランドマネージャー
2005年~ MJL SA – Haute Horlogerie: マーケティング&セールスディレクター(中央東アジア、ヨーロッパ、アメリカ)
2008年~ FORUM Distribution – Haute Horlogerie: マーケットディレクター(東ヨーロッパ、中央ヨーロッパ、CIS)
2008年~ サイラス: CEO/共同設立者
2014年~2020年カールF.ブヘラ
2014年~2020年セールス部門エグゼクティブバイスプレジデント
2016年~2020年日本法人CEO
2021年~ モンブランウォッチ部門ディレクター(スイス)
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レカン氏は、日本で勤務の経験もあるようだ。そんな氏に比較的「直球」な質問をいくつか投げてみた。以下がその内容である。


ーー独立時計師とのコラボであったTimeWriterシリーズ3の予定はあるか?

『いいえ、「TimeWriter」シリーズの第3弾を発売する予定はありませんが、他のエキサイティングなニュースがまもなく発表されます。』

ーーミネルバとル・ロックルのバランスや役割分担は今後はどうなる? 価格差の大きさがどうしても目立つ。ミネルバの価値の高さはわかるが、それ以外の時計との価格差が正当かどうか、戦略的にも今後どうなるのか。

私たちの時計製造戦略の一部は、ムーブメントの種類ごとに製品を構成することでした。日常使いのベーシックなコンプリケーションを備えたスイス製インダストリアルムーブメントを搭載したコアコレクションがある一方、モンブラン マニュファクチュールによって完全に自社で考えられ開発されたモンブラン マニュファクチュール ムーブメントは、現代的な人間工学に基づき「スマート」で独特なコンプリケーションを提案しています。そして最後に、何世紀にもわたるスイスの伝統を反映したミネルバ ムーブメントは、ヴィルレのモンブラン マニュファクチュールで完全に考案、開発、製造されており、それぞれのムーブメントは、同じ時計職人によって最初から最後までヴィルレで組み立てられています。
価格の違いは、これら3つの異なるカテゴリを反映していますが、それぞれが等しく重要です。モンブランのお客様に、時計製造の愛好家でなくても、当社のブランドとそれが持つ伝統を発見し体験する機会を提供します。若い顧客はル・ロックル製の高品質の時計に投資したいと考えており、その中には、最終的にハイエンドに移行する顧客もいます。



ーーミネルバ工房をもっと前面に出して、高付加価値(でも手の届く値段)、かつ、実用的な(径の大きな時計だけでなく)魅力的な時計に集中していく戦略はアリか。現状、両極端な価格帯で、ミネルバを活かしきれていないという印象もあるが。

モンブランの時計製造には複数のエントリーポイントがあり、モンブラン マニュファクチュールの品揃えの機能性、信頼性、ヴィンテージデザインに対する高級時計製造の優れた点など、お客様にとって何が重要かによって、それをお客様に提供できることを嬉しく思います。私たちの時計製造のすべてを統合するのは、ミネルバへの焦点であり、私たちがすべてにわたって活用し続けている遺産です。そこには非常に多くの豊かさがあり、確かに探求され適用されるべきものはもっとたくさんあります。


ーー日本市場への思い・印象や意気込み、日本市場のニーズへの対応についてもコメントを。

この市場でいつも印象に残っているのは、時計製造に関する日本の皆さんの深い知識です。日本の時計愛好家は常に特別な形、色、機能を探しており、常に新しい物を求めていますが、同時に時計が語る物語のエモーショナルな側面に非常に敏感です。私は、日本の皆さんが時計製造の知識を真に理解し、常にさらに知識を深めようとする姿勢が大好きです。現状に疑問を投げかけ、さらに進んで学び、進歩しようという、日本文化の一部を垣間見るようです。
以前の仕事で日本市場を担当していた5年間で、この文化がいかに豊かでユニークであるかを知ったので、私は日本に非常に情熱を注いでいます。私が学んだ最も重要な3つの教訓は、日本で学んだもので、座右の銘としています。私が自分の著作本のリサーチをしているときに学んだ最初の教訓は、最も古い家業を見つけようとしていたときに得たものです。この研究は私を日本、より具体的には705年に建てられたホテルである西山温泉「慶雲館」と、717年に建てられたホテル(旅館)である「法師」(法師善五郎氏が46代目当主)とに、私を導きました。そして、法師善五郎氏を訪ねて、1300年以上の歴史を持つ事業の成功の秘訣を聞いたところ、間違いを犯すことが一番大事だと言われました。間違いを犯し、そこから学ぶこと、自分自身に疑問を投げかけること、そしてこれらの間違いを徹底的に分析して学ぶことが重要だと…。これ人を最も進歩させるものです。
この会話の中で、日本の養子縁組の95%は、家業を成功させ、継続するための、「婿養子」ことであることがわかりました。私は今日まで、個人のニーズではなく、家業を維持するために必要なことを行う日本の倫理と規律に深く魅了されていました。
私が学んだ2番目の教訓は、シルボセラピー(森林セラピー)と、木を抱き締めたり、自然に近づいたりすることで得られる巨大な大地のエネルギーについて知ったときです。そして、私が京都の龍安寺で学んだ3番目のレッスン。龍安寺には、山を象徴し、海を表す15個の石がある禅の石庭があります。15個の石は、同時に14個しか見えないように配置され構築されています。特定の場所から庭を観察し、庭を囲む縁側に沿って移動して、欠落している15番目の石を発見したとき、別の石を見失うこととなります。言い換えれば、私たちの世界の認識は決して完全ではなく、部分的なものです。龍安寺から私が得た重要なポイントは、物事の完全な真実と現実を見ることは決してなく、現実のさらに別の要素を見るために、常に視点を変え、別の角度から物事を見る必要があるということです。そして、なにか1つの要素が常に失われていることを知り、常に視点と自分の立場を変え、それを継続的に見つけだそうと努力することの大切さです。そのため、現在の視点に応じて、動き続け、目に見えない要素を常に探す必要があるのです。本当に私の心に残り、ビジネスを行う毎日の座右の銘としています。とよろしければ、日本人の友人から学んだことをお伝えしたいと思います。それは「早く行きたいなら、一番長い道を選んでください」(急がば回れ)…。私生活やビジネス生活に大きな影響を与えています。


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いかがだっただろうか。氏の日本に関する知識や、日本文化への傾倒には正直驚いた。日本市場としては非常に頼もしい限りであり、日本の時計好きの声に耳を一層傾けてくれる期待大だ。

是非、次回は来日していただき、直接お会いしてまたお話を伺いたいと思う。

アレンジしていただいたモンブラン ブランドコミュニケーションマネージャーの久井さま、ありがとうございました!



[モンブラン – 1858 年から続くスイスの時計工房]
モンブランの時計作りは、スイスのジュラ山脈にあるル・ロックルとヴィルレを拠点とする2 つのマニュファクチュールがひとつになったユニークな組織によって築かれています。モンブランの時計製造の歴史は、サンティミエ渓谷にシャルル=イヴァン・ロベールが時計工房を設立した1858 年に始まりました。これが、歴史的なミネルバ時代の幕開けとなりました。19 世紀末までに、彼らのポケットウォッチは、リューズ操作による手巻き式で知られるようになりました。ミネルバ マニュファクチュールの成功により、ミネルバは20世紀の間に、高精度でごく短時間の間隔を計測するためのプロ仕様ウォッチ(ストップウォッチおよびクロノグラフ)の第一人者となりました。現在、モンブランのタイムピースは、4 つの高級時計製造のプロダクトラインを通じて、ミネルバの160 年を超える伝統の旅を続けています。スターレガシー、ヘリテイジ、モンブラン 1858、そしてボエムは、すべてがデザインやスタイル、技術革新を通して過去と現在を結んでいます。

[モンブランについて]
優れたクラフツマンシップとデザインの代名詞であるモンブランは、1906 年に創業し、瞬く間に筆記文化に革命をもたらして以来、その革新性の境界線を押し広げて来ました。創意工夫とイマジネーションを原動力として、ラグジュアリーな筆記具や時計をはじめ、レザーグッズ、ニューテクノロジーやアクセサリーに至るまで、いずれのカテゴリーにおいても優れたクラフツマンシップの表現を進歩させています。
大胆なアイデアとアルチザンのスキルから生み出されるラグジュアリーな‘ビジネスライフスタイルパートナー’を作るという、果てしない使命を反映したモンブランの白い星形のエンブレムは、パフォーマンス、品質、洗練されたスタイルの象徴となっています。世界に足跡(そくせき)を残そうとする人々をサポートするという継続的な取り組みの一環として、モンブランは世界中の教育プログラムへの協賛と、人々に潜在能力を最大限に発揮させることを目的としたイニシアチブを継続的に実施しています。


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