Sequent シークエント - Elektron HR2.2: 初めて買おうと思えたスマートウォッチ
By : KIH
このサイトの読者のみなさんは、いわゆる「スマートウォッチ」をお持ちだろうか?
もはや特に新しい商品ではないが、ちょっと前には、「アップルウォッチ®」が出荷数世界一の腕時計、などというニュースを見た気がする。
筆者は、このサイトの多くの読者もそうかもしれないが、まったく興味がなかった。ただでさえ、携帯電話デビューが今世紀に入ってしばらくたってからだったし、スマホと呼べるものを持ったのも世間に比べるとかなり遅れていたと思う。携帯電話を拒否し続けていたのは、追いかけられるのが嫌だったからで、会社に持たされるようになるまで拒否し続けていた。今のスマホだって2年おきに機種変更しているのに、スマートウォッチはどれくらいの頻度で買い換えないといけないんだ?等々。。。
当然ながら、なんでスマートウォッチが必要なんだ? と自問し続けていたところだ。すべてスマホを見ればわかる情報だろうし、時間なら時計をいくつも持っている。それに、老眼が進んできているので、そんな小さな画面を読めるわけがない。と、この辺までは共感してくれる読者もいるのではないだろうか(いて欲しい・・・)。
まとめてみると、一般的なスマートウォッチに興味を持てない理由は、みんなでかい、小さい画面をタッチスクリーンとして使う・読むなど無理、毎日充電・・・と、「時計」として自分が買うかどうか考えた場合「ありえない」ことばかりであることがわかる。
というのが、私がいま市場に出回っている、いわゆるスマートウォッチを持たないし、持つ予定もない理由だ。スマートウォッチとは、スマホを腕に着けるようにした商品だ、という考え方の人はそれでいいと思うが、年寄りにとってそれは無理な相談だ。
が、今般、初めて「これならしてもいい」と思えるスマートウォッチのような「時計」を買ったので紹介したい。
* 筆者は、アフィリエイトでもなんでもなく、正規価格を払って買った1人のユーザーであることを強調しておく。
SEQUENT: Elektron HR2.2/ Supercharger HR2.2
Elektron HR2.2は、右と左。中央は、Supercharger HR2.2。筆者が購入したのは右。残り2つは借り物。
Supercharger HR2.2とElektron HR2.2(HR=Heart Rate、2.2=SrO2測定機能追加)の違い:
SuperchargerはSSケース、Elektronはサテン仕上げチタンケース。インデックスが大きめになりルミ注入されたのがElektron。Elektronの方が新製品であるが(やや値段も高い)、現在どちらも販売中。
ルミはなかなか強力
こちらはSupercharger。ルミ部分は少ない。
ルミはやはりElektronの勝ち。
さて、購入に至ったということは、何かが刺さったからである。何が時計好きの心に刺さったかを列挙していこう。
1.充電(ほぼ)不要
これは、時計としては当然と言えば当然である。もちろん、クォーツ時計は電池交換が必要だし、手巻きだろうが自動巻きだろうが、ゼンマイを巻く行為(すなわち、エネルギー補給)は必要である。それと「毎日充電」とどこが違うのか、という意見も、一般的な見地からは至極真っ当である。が、我々時計好きは一般的見地で時計を見ることはできない、極めて視野の狭い人間の集まりである。100歩譲って、クォーツ時計の電池交換は良いとしても、やはり手巻きあるいは自動巻きというのが、時計である条件なのである。
充電がほぼ不要な理由はまさにコロンブスの卵的発想で、「自動巻きローターが発電するから」。つまり、腕にしている間はまったく充電のことなど考える必要はない。もちろん、夜外しても問題ない。他ブランドの、文字盤が太陽電池になっているタイプもありといえばありだが、「時計」として捉えると、この自動巻ローターの存在はとても大きい。ちなみに、誤解を避けるために付言すると、アクティビティの多さや、アプリとの接続頻度等によって、消費電力は大きく異なる。したがって、ローターによる発電が間に合わなくなることも十分ありうる。その場合のために、充電器も同梱されている。めったに使う必要はなさそうだが。さらに、この時計は24時間動かない状態が続くと自動的に針が動かなくなり、そのまま18か月放っておいても内部は止まることはない。1年半後に腕に装着するだけで、すぐに動き出す(さすがにまだ試していないが)。
2.スイス製(Swiss Made、とは名乗れないが)
皆さんにとって「Swiss Made」(あるいは、Glashutte I/SAでも、Made in Japanでも)が、どれくらいの意味があるか知らないが、私にとっては、どこで作られたが、というのはとても大事である。特定の国のことを言っているわけでは決してないが、偽物づくりが上手な国でほとんどの部品が作られてます、組み立てられてます、なんて時計は避けたい。何をするにもいい加減だろう、と思ってしまうので。
以前、Furlan Marriというブランドを紹介したが、そのデビュー作はどこで作られたかを明らかにしなかった。しかし、GPHGを取ったということもあり、値段もリーズナブルなので買ってみた。特に不満があるわけではないが、やはり正体不明の原産国という時計はやや気色悪い。と思っていたら、私も書いたが、他にもそういう声が多かったのか、Furlan Marriは、次のモデルはSwiss Madeにする、と言っているようだ。
ちなみに、Sequentにも実際にはどこで部品は作られているのかを聞いてみたら、意外と正直にすべて答えてくれた。自分たちは、そういうことには全て透明性を持って答える、とのことだった。彼らによると、機械部品のほとんどはオランダ製(オランダにも立派な時計ブランドがありますね!)で、電子部品は台湾。デザインとWatchmaking(組み立て)はすべてスイス国内で行われているとのこと。「Swiss Made」と銘打つほどスイスでの付加価値が高いわけではないが、機械部品と組み立ては西欧先進国、ということでこれも合格!
3.大き過ぎない
直径42.1㎜、厚さ14.2㎜。小さくはない。厚さも一般のクロノグラフよりやや厚い。しかし、42㎜という大きさは日本人の手首にもそれほど違和感はない。厚さはどうにもならないが、センサーの厚みもあるし、許せる範囲と判断した。
従来のスマートウォッチと比べれば充電器の使用はほとんど必要ない。
という3つの点により、筆者は購入の判断をした(Kickstarterで見つけた)。何度もこのサイトでは触れているが、ここは「ユーザー目線」のウェブサイトなのだ。だから、ユーザーとして使ってみて、「良い!」と思ったので、この時計について書こうと思った次第である。
では、他にいわゆるスマートウォッチとしてはどのような機能があるのだろうか。この部分は、購入時に感心がなかったわけでなく、それまでスマートウォッチと呼ばれるものを実際に触ったことも経験したこともなかったので、比較のしようがなかったので判断基準としなかった。しかし、使ってみると意外と便利というか、こんなことまで! と思える機能や特徴もあった。
アプリの画面はこんな感じ。
www.sequentworld.com/oxygo
まずは、一般的であろう、万歩計や消費カロリー計算機能。ついでに、スマホのアプリで地図上でどこを歩いたかあるいは走ったかが表示可能(GPSはスマホ内臓のモノを使うので、スマホも持って歩く・走ることが必要)。次に、脈拍。そして、これは個人的には驚いたが、血中酸素濃度(SpO2、あるいはパルスオキシメーター)も測ってくれる。一般的には、病院で人差し指にはめられる、アレである。今般の感染症は、肺炎が多いことから、皆さんの中にも自宅用に購入された方も多いのではないだろうか。ちなみに、あれは意外と最近(1974年)の日本人による発明品である。日本人として知っておきたいことの1つ。興味のある方は、Google先生に聞いてほしい。それから最後に、どうやって計測しているのかわからないが、睡眠時間計測。眠りが浅い時間帯、深い時間帯まで教えてくれる。もちろん、それは寝る時もこの時計をしている必要があるので、毎晩やるモノかどうかはわからない。
このセンサーが脈拍、血中酸素濃度を測定する。
ざっと書くと以上のような機能だが、他のスマートウォッチと比べるとどうなのだろうか? 持ったことが無いので比較のしようがないが、私は十分な機能だと思うし、稼働時間(装着している限り充電はほぼ不要)や、アプリの使いやすさなどを考えると、立派な時計だと思う。実際、これはたまたまそういう機能もついた「時計」と自分の頭では整理している。メールを見たり、改札を通ったり、道を教えてくれたり、電話をかけたり、予定時間になったらブルブル震えて教えてくれるとかいう機能は、私は個人的には必要性を感じない。それらはスマホに頼ればいい。
感心すること
さらに、SEQUENTでは環境への配慮もしているようだ。まず、多くのモデルに標準でついてくるストラップは、漁網や釣り糸のゴミからできている。さらに、もっと別の作り方のエコフレンドリーなストラップも現在開発中とか。
また、ブランドの取り組みとして、1つ時計が売れるごとに(製造プロセスにおいて8.7gのCO2排出)、その10倍の90g分をオフセット(CO2削減)する規模の植林を実行している。ESGとかSDGsとか、仕事柄、個人的にはまったくアンチであるが、この取り組みは立派だと思う。気候変動だなんだにかこつけて商売しようとする輩の言っていることはまったくわからないが、製造過程で二酸化炭素を出して、それ以上吸収する分の植物を増やす、という単純ながら有効な取り組みは私でも理解できる。
さて、実機と使い方
こちらが、送られてきた箱と本体。
箱の底にはスペアで注文したストラップが入るスペース。
箱の1段目には時計本体
そして下の段には、いざという時の為の充電器(USBタイプC)。
ご覧の通り、パッケージングも良くできている。最近の新興ブランドはパッケージングが優秀だなあ、と思う。世代の違いだろうか。
使い方は、まず、スマホにアプリをダウンロード。英語だが、特に困るほどの英語ではない。ここで、Bluetoothで接続して、針合わせ。時刻を表示するようになったら準備はOK。
あとは、アプリに基本情報(身長、体重、1日の歩数目標など)を入れてすぐに使い始められる。
時計側での操作は、リューズのみ。自動巻き時計だが、リューズを回して発電することはできない。リューズの機能は「押す」のみ。何回押したら何が起きるか、は数種類あるが、それを覚えれば問題なし。例えば、スリープモードから起こす時や、スマホにデータを送りたいとき(接続し直す時)は、リューズを1回押すだけ。海外旅行に行って、飛行機が目的地についてスマホを機内モード解除したら、リューズを1回押せば時計はその場所の時刻に自動的に針が動く。あとは、運動時間に入るモード、脈拍を測りたいときのモード、残りのパワーリザーブを知りたいときのモード、血中酸素濃度を測るモード、くらいである。
操作方法の詳細は => www.sequentworld.com/oxygo
筆者は目標1万歩としているが、当然そこまで行くようなことはなく(まだほとんど在宅勤務中)、常時表示される歩数計は、たまに出社して帰ってきてもこんなもん(注意: インジケーターの数字は脈拍数・酸素濃度表示の為のものであり、歩数達成度やパワーリザーブは内側を見る ー つまり、100%のパワーが残っていれば針は一番右の「160」のところまで振れるし、1日1万歩を達成していれば同様に一番右まで針は振れ、5000歩なら針は真下を指すことになる)。
24時間放っておくと、直近の0分になって止まる。が、中身は動いているので、ちょっと動かしてローターが動いたら時計は目を覚まし、内部で記録している時刻を表す。さらに、そこでリューズを1回押せば、スマホとリンクするのでスマホの時間とシンクロする(つまり、正確な時刻になる)。
(動画)スマホと再接続
1人で動画を撮るのはしんどい・・・。ご容赦ください。
スマホと再接続して、データをスマホ側に取り込む作業は簡単。リューズを1回押すだけ。
毎日していたわけではないので、データがない日もあるが、過去のデータを確認するのも簡単。さらに、このデータは、iPhoneデフォの「ヘルスケア」アプリとも共有される。
筆者は、基本怠け者なので、きっちりと運動時間や、規則的に散歩に出かけたりしないが、面白い機能として重宝している。運動している時につけていると、脈拍の上下も記録してくれる。さらに、iPhoneのデフォアプリの「ヘルスケア」にもデータを送るのだ。習慣的に運動している人、健康に気を遣っている人や、よく眠れていない人にはとてもいいだろう。
しかし、何と言っても、私にとってはこれは、そういう健康に関するデータを蓄積する機能を持った「時計」なのであり、そういう目で見た場合の評価はどうかということになるが、コストパフォーマンスから考えても大満足である。大ブランドが、スマートウォッチを出すと、大きかったり高かったり、ということが多いと思う。しかし、機械としては進化を考えると耐用年数は短い。つまり、新たな機能を持ったモデルはどんどん出る。そんな時に、高いものを買ってしまうと買い替えるのに大変ではないだろうか。その点、アップルは値段を丁度良いところに設定していると思う。SEQUENTはそれよりは少し高いが、進化の速度はディスプレイを正面に据えたスマートウォッチと違って、遅くていい。確かに、脈拍や血中酸素濃度の測定のような場合にはハードウェアの進歩・買い替えが必要となるが、多少の機能の追加は、常にファームウェアのアップデートをアプリ経由でできるのだ。
公式動画
最後に、いろいろ質問に答えてくれたCEOのAdrian(エイドリアン)がこの時計について、とても面白い表現をしていたので紹介したい。
「我々はアップルやサムスンではない。我々は自分たちのアプローチで、一番Disconnectedな(スマホと常につながっている必要がない)スマートウォッチを作る。我々にとって『スマート』であるということは、充電がいらない、ということだ。18時間経ったら充電しないと使えなくなるような機器が『スマート』だとはとても思えない」
これを時計として見ている私のような人間にとっては、非常に納得感のある言葉だ。他のいわゆるスマートウォッチがどういう使い方をされているのか詳しくは知らないが、この時計は、スマホから離れていてもデータを内部に集積し続け、あなたの活動状況を見続けている。万歩計の歩数がインジケーターのデフォルトだが、パワーリザーブや心拍数なども表示できる。そして、自宅に戻った時にリューズを1回押せばすべてのデータがスマホに移動する。実際、同じ部屋にいたとしても、この時計とスマホの接続は一定時間が過ぎると自動的に切れ、電力消費を抑え、時計は独立した(Unconnected)時計として、時刻表示はもちろんのこと、活動状況のデータの集積に集中する。これは、「スマートウォッチはスマホを手首に乗せたもの」という感覚とは全く違う、健康や活動状況を記録する機能を持った独立した「時計」なのである。
おわりに
ちなみに、CEOのAdrianはチャペックの時計のほとんどをデザインしており、会長のHarryは、チャペックの創業メンバーの1人で同社の会長も勤めている。この事実を最後に披露する形になり申し訳ないが、それは私も買った後で知ったこと。道理で、と納得した。彼らも、これを「時計」と捉えている。健康と環境保全に力を入れた「時計」であり、もっとも進んだ「電子部品・テクノロジー」を組み込んだ「機械式時計」なのである。その哲学というか目標を聞く前に筆者は購入して、同じ感想を持った。この人たちが作っているのなら、やはり買ってよかったと思う。クラウドファンディングで売っているものは、欧米の会社だと言っていても、結局は某国の人たちがやっていて、モノが来なかったとか、来たけどすべて不良品で、クラファンのサイトも賠償金を払ってもらうべく交渉しようとしているがすでに行方不明になっている、とか多発している(私も経験済み)ので私は近づかないようにしていたが、これは当たりで良かった。「スイス製」という言葉が強かったとも思う。会社がどこにあるのかではなく、どこで作られた製品なのか、という方が重要な商品もあるのだ。
Adrian Buchmann - CEO, Harry Guhl - Chairman
購入は、SEQUENTのウェブサイトで簡単にできる。この値段の時計なら、オンラインでブランドから直接買うのが一番いいだろう。
www.sequentworld.com
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※ 匿名(ニックネーム可)での投稿も可能となっております。
おっしゃる通り、いわゆる活動量計と考えた方がいいでしょう。基本コンセプトは、「Unconnected(つながっていない)」です。すなわち、スマホとつながずにいくらでも使えます。もちろん、データを見るにはスマホにつなぐ必要があります。活動している時に使うエネルギーは装着している限り「自給自足」ですね。スマホとつなぐ時に使うエネルギーが充電池から使われていく、というイメージです。ですので、しょっちゅうスマホとつなげていれば、充電量は早めに減っていきます。
答えになっているかわかりませんが、これはズバリ活動量の記録をする時計、と言ってもいいでしょう。「手に乗るスマホではない」と書いたのは、そういう意味です。欲を言えば、電話がかかってきたらブルブルしてくれるとやや便利かも、とも思いますが、それを求めるのならアップルウォッチを買うのと同じかな、と。。
kickstarterなど拝見しても、ここまで詳細に読み取れなかったので、投稿記事が本当に参考になりました。
ありがとうございます。
初代を縁があり入手しましたが、ダメダメで直ぐに手放してしまったのですが、こちらの時計は入手欲を脇立たさせられます。
ご使用されたとの事でもう少し詳細をお聞き出来ればと思い、コメントの投稿失礼いたしました。
記事を拝見する限り、着信やメールといった通知を知らせてくれる機能などは無さそうなのですが、いわゆる活動量計に近い物になるのでしょうか?