ヴァシュロン・コンスタンタンのオートオルロジュリー②~ ブランドのシグネチャー、 レトログラード表示

 By : KITAMURA(a-ls)

「夏休みの自由研究」的に、ブランドのオフィシャルサイトのメディア用ページにひっそりと置かれているアーカイヴ資料的テキストを、自分の勉強も兼ねて掘り起こしてみようという企画。

前回はヴァシュロン・コンスタンタンのオートオルロジュリー①として「クロノグラフと精密性」という記事を紹介したが、今回もヴァシュロン・コンスタンタンから、同社の複雑機構の中でも"飛び道具"的な異彩を放つ「レトログラード表示」に関する記載をまとめてみる。

コンプリケーションの中でも、あまり突き詰めて語られることないフィールドなので、意外と興味深い内容になっていると思う。


ヴァシュロン・コンスタンタンのオートオルロジュリー ②
「 レトログラード表示」



ダイヤル上の表示を通常の輪列から切り離して行う特殊な機能を機械式ムーブメントの構造に取り入れることは、非常に早い時期からウォッチメーカーの関心の的になっていました。
ジャンピング表示やレトログラード表示を含むこうした複雑機構は、時の経過を示す新たな技術とデザインを発
想する可能性をもたらします。ヴァシュロン・コンスタンタンは19世紀初頭にジャンピング表示が備わる懐中時計の設計に取り組み、20世紀にはレトログラード表示が備わる時計を開発しました。
このような表示の複雑機構は、メゾンの技術とデザインを代表するものとなり、いくつかのコレクションに取り入れらました。

レトログラードやジャンピング表示は、回転するセンター針で時刻を表示したり、窓で日付を表示するといった伝統的なスタイルを超えることを目指すウォッチメーカーたちにとって、まず注意を引きつける複雑機構です。歴史の記録には、ある時刻表示やカレンダー表示を別の位置に移動させ、それらをダイヤルで実現する手段についての言及がすでに18世紀半ばに見られます。

ヴァシュロン・コンスタンタン初のジャンピング表示は、1824年に登場しました。しかし、メゾンが腕時計のレトログラード表示で名を高めるようになったのは、時計製造のスタイルが独創性を求める強烈な動きで弾みがついた、とりわけ1930年代半ば以降でした。

●「メルカトル」ホワイトゴールドの腕時計、バイ・レトログラード表示(Ref. Inv. 12055) 2001年


高度な精密機構
ある表示がレトログラードと呼ばれるタイプの場合、表示を担うものがダイヤルで完全な円運動を行うのではなく、扇状に区切られた目盛りの端から端までを移動し、終点に達すると始点に戻って再び動き始めるものを指します。この表示は通常円弧に沿って移動する針で行います。

時、分、秒の時刻表示や日付表示といった周期運動のレトログラード表示に加え、パワーリザーブ表示のように「スウィーピング」と呼ばれるタイプのレトログラードもあります。

レトログラードの機構には、厳格な精密さが要求されます。伝統的なスタイルの時計とは異なり、レトログラード針は、時刻表示用の歯車と直接噛み合っているのではなく、スプリングとカナが備わるオフセンターの軸に取り付けられています。
また、これを動かす歯車の上には切り込みの入ったスネイルカムが備わっています。
これら2つの間に置かれたレバーは、一方の端にある突起がスネイルカムをなぞって移動し、他方の端にあるラックの歯は、センタースイープセコンドカナと噛み合います。
スネイルカムの回転がレバーを介してレトログラード針を動かし、同時に復帰スプリングを巻き上げていきます。
そして終点に達すると、レバーの突起がスネイルカムの切り込みに落ち、針の軸に備わる復帰スプリングの力によってレバーが針を瞬時に始点へと戻します。

この種のレトログラードは、とくに耐衝撃や耐久性の点で機構に厳格な造りが求められます。部品によっては、指針が元の位置に戻るスピードが時速60kmを超えます。

ジャンピング表示にも同じように特殊な構造が必要です。その基本的な仕組みは、蓄積された動力を一定の間隔で放出する機構に対して歯車からの動力を伝達することにあります。ここでも通常用いられるのは切り込みを入れたらせん状のカムです。
このカムが1回転すると、レバーがカムの切り込みに落ち、瞬時にジャンピング式の表示を行います。例えば時間が切り替わるジャンピングアワーの表示です。
さらにこのジャンピング機構がいくつかの表示と組み合わされると、ジャンプの連鎖反応が起こります。

●ジャンピング・アワーによる時間とダイヤル下の針による分表示が備わる懐中時計 (Ref. Inv. 10152) 1929年


狂騒の20年代を振り返って
歴史的には、レトログラード式の日付表示が備わる寄木細工の天文時計が18世紀半ばにドイツで作られたとの言及があります。また同時に、6時から6時に目盛りを記した半円形のダイヤルをレトログラード針が移動して時と分を示すいくつかの置時計もありました。
また懐中時計では、1906年の『スイス時計ジャーナル』には、レトログラード式に日付と月を表示する1791年のモデルについての記述が見られ、同じ1790年代にはまた、パリに構えるメゾンのレピーヌがレトログラード式の1本の時針を備えた時計を製作しました。

しかし、時計製作が懐中時計の決まり事から解放され、特にレトログラード表示のような特殊な表示が人気の的になったのは、20世紀の初め、とりわけ狂騒の20年代以降でした。アールデコ運動が全盛を迎え、創造力豊かな人々が独創的なケースはもとより、レトログラードやジャンピング表示さえも備わるダイヤルを新たに生み出すために活躍しました。当時のヴァシュロン・コンスタンタンは、この芸術運動を完璧にスタイルに体現する時計では群を抜く存在でした。

時間が突然切り替わるジャンピングアワーを含むジャンピング表示は、新しい規範として時計製作に取り入れられました。まず18世紀半ばにジャンピングセコンドに採用され、続いてジャンピングアワーに採用されたこの表示スタイルは、1820年代に有名なウィンドウ・ウォッチで大成功を収めます。
この時計では、ジャンピングディスクによって時間の数字が12時位置に示され、分は針で示されました。この表示スタイルはレギュレーターを思わせます。ヴァシュロン・コンスタンタンの初のジャンピングアワーは1824年に記録されています。

●ジャンピング・アワー懐中時計 (Ref. Inv. 10388) 1824年

まもなく、窓で表示するジャンピングミニッツが続いて登場し、伝統的な時計に即したエレメントは、秒針を残すだけになりました。
腕時計の時代になると、ジャンプするディスクで表示する時をジャンピングアワーに常時回転するディスクによる分表示を組み合わせたものが人気を集めました。針がないので、こうした腕時計には衝撃への耐性があったからです。
機械式時計の復活にともない、ジャンピング表示は、回転セグメント、可動パレットストーン(爪石)、さらには回転プリズムによって飛躍的な発展を遂げましたが、ヴァシュロン・コンスタンタンの「サルタレロ」のように、ジャンピングアワーにレトログラードミニッツを組み合わせた例も忘れてはなりません。
同じことはレトログラード表示にも当てはまります。長らく姿を消していたこの種の複雑機構は、1990年代に機械式時計が新たに成功を収めたことで復活を遂げました。技術の点では、バイ・レトログラードやトリ・レトログラード、それよりもさらに複雑な表示を配してダイヤルがいっそう複雑なものになりました。


ヴァシュロン・コンスタンタンとレトログラード表示
特殊なレトログラード表示がヴァシュロン・コンスタンタンで最初の黄金期を迎えるのは、アールデコのデザイン理念を全面的に反映するスタイルによってメゾンの名を高めた1920年代以降です。
創作に弾みをつけた衝動がどこからやってきたのかを理解するには、ヴァシュロン・コンスタンタンがフェルディナン ヴェルジェと最初に提携した時期に遡る必要があります。
1880年、ヴァシュロン・コンスタンタンは、フランス各所で展開する販売の管理をパリのヴィクトワール広場に拠点を構えるこの若いウォッチメーカーに委ねました。ヴァシュロン・コンスタンタンの独占的な代理人を務め、メゾンから時計やムーブメントを仕入れる一方で、彼は1896年に時計のケースを製造する自身の事業を立ち上げました。1920年、フェルディナンの息子は、ヴェルジェ フレールという新しい名で事業を引継ぎ、ヴァシュロン・コンスタンタンとのパートナーシップも1938年まで続きました。

両者のコラボレーションによって、1910年から1930年に数多くの製品が生まれ、とりわけアールデコ期は、想像力が自由に羽を広げ、途方もない破天荒な創作へと突き進みました。
特別な形状のフォルム・ウォッチ(非円形時計)の数が増す一方で、窓で示す日付表示も現れ、ジャンピングアワーやレトログラードミニッツのような特殊な表示も増えました。

この時期にヴァシュロン・コンスタンタンを有名にした重要なモデルのひとつが、ダブルレトログラード表示が備わる1930年の懐中時計「ブラ・アン・レール (Bras en l'air)」でした。この時計は、10時位置のプッシャーを押すと、ゴールドとエナメルで作られた中国の手品師が両腕を上げて、時間と分を指し示します。
他にも注目すべきは1929年のモデルです。この時計は、ジャンピングアワーに加え、ダイヤルに覆われ先端のオニキスしか見えない針で60分を表示します。

●「ブラ・アン・レール」イエローゴールドとグレーゴールドによる2トーンの懐中時計、バイ・レトログラード表示(Ref. Inv. 11060) 1930年


伝説の腕時計「ドン・パンチョ」
注文した人物にちなみ、コレクターの間では「ドン・パンチョ(Don Pancho)」という異名をとるこの時計は、ヴァシュロン・コンスタンタンが1930年代に製造したものです。メゾンは1935年、マドリッドに構える正規ディーラーのブルッキングから顧客の注文を伝える手紙を受け取りました。そこには、当時はヴァシュロン・コンスタンタンの複雑懐中時計だけに搭載されるような機能が備わる腕時計を求める内容が書かれていました。
このモデルの製作は、第二次世界大戦やスペイン内戦の前夜という時期に地主の顧客フランシスコ マルティネス リャノがチリへ逃げてしまい連絡が困難になったことで厄介なものになりました。
社の保存資料に残る両者の間で交わされた手紙によって、この腕時計の製作過程をたどることができます。それによると、1940年以前にミニット・リピーター、カレンダーの表示とレトログラード針が備わるモデルとして作られた3本の腕時計の1本ということがわかります。

注文を満たすのに4年を費やし、今日ドン・パンチョとして知られるレファレンス3620は、1940年に納品されました。このイエローゴールドのトノー型腕時計は、12時位置にリュウズを配し、ケース右側のスライドボタンで作動するミニット・リピーターは弱い音を発します。
カレンダー機能については、スモールセコンドと同軸の針による曜日表示があり、これにダイヤル中央に軸を置くレトログラード針の日付表示が加わります。ケースバックには、フランシスコ マルティネス リャノのイニシャルがブルーのエナメルで記されています。
この時計には簡単に交換できる5本の同じストラップと、Vacheron Constantin Genève とBrooking Madrid のダブルネームを記した2枚のダイヤルが付属し、そのうちの1枚は、アラビア数字と針がラジウムの発光物質で強調されています。
フランシスコ マルティネス リャノは、1947年に亡くなるまで7年に渡ってこの腕時計を着用しましたが、その後は60年もの間、家族の貴重品を保管する金庫にしまわれたままになっていました。2010年に再び姿を現したとき、ヴァシュロン・コンスタンタンの1930年代の記録と照合し、それと完全に一致することが判明しました。

●イエローゴールドの腕時計「リファレンス3620 “ドン・パンチョ”」(Ref. 3620) 1935年

2019年にオークションにかけられた時、ドン・パンチョにまた新たなエピソードが加わりました。その時代の最も複雑な腕時計のひとつとして出品されたこのユニークピースに焦点を当てた重要なオークションで、オークショナーのフィリップスのカタログ(2019年5月)には次のように書かれています。
「この時計の歴史的な重要性を余すところなく強調するのは難しいかもしれない。複数の複雑機構を搭載する腕時計が存在しなかった時期に製作されたこの時計は、技術の偉業で人智の傑作であった。ミニット・リピーターとレトログラード針の日付表示は、それ以前の腕時計では見られず、これと似たような腕時計に我々が出合うには、その後60年も待たなくてはならなかった」。
ヴァシュロン・コンスタンタンの歴史的な時計に関する1990年代の出版物によって、この比類ない時計の存在が注視されていたことから、コレクターたちはたちまちドン・パンチョに興味をもち、オークションではヴァシュロン・コンスタンタンの腕時計では第2位の高値で落札されました。


デザインのシグネチャー
1930年代以降、特殊な表示の背景を成す旺盛な創作精神が影を潜めました。再びヴァシュロン・コンスタンタンに異例のダイヤルを熱心に追求する姿勢が現れるのは1990年代でした。それが発揮されたのが、1994年に発表された「メルカトル」です。
メゾンの設計者は、20世紀初頭の「ブラ・アン・レール」の表示スタイルから着想し、それをはるかに小さい腕時計に組み込みました。16世紀の地理学者ゲラルドゥス メルカトルに捧げて作られたこのモデルは、エナメルや彫金を施したダイヤルの上を移動しながら時と分を表示する2本のレトログラード針が特徴です。2本の針の軸を12時位置に置くことによって、メティエ・ダール コレクションに属すこのモデルに芸術的な表現をするのに十分なスペースを確保しています。

●「メルカトル」イエローゴールドの腕時計、バイ・レトログラード表示 (Ref. Inv. 12130) 1994年

それらから3年後の1997年にベルリンの時計展示会でヴァシュロン・コンスタンタンは、サンレイ模様のギヨシェ彫りを施したシルバートーンのダイヤルにジャンピングアワーとレトログラードミニッツを配した「サルタレロ」の限定モデルを披露して注目を浴びました。

「サルタレロ」イエローゴールドの腕時計、ジャンピング・アワーおよびレトログラード・ミニッツ(Ref. Inv. 10740) 1997年

新たなミレニアムが到来し、機械式時計が最高潮を迎えて、時計づくりの大胆な試みは、以前にも増して自由なダイヤルとなって表現されました。ヴァシュロン・コンスタンタンのレトログラード表示も、現在のコレクショ
ンの一部になりました。
その最初の例は「リファレンス 47245」と「リファレンス 47247」です。いずれの腕時計も6時位置に曜日表示を配し、日付がレトログラード針で示されます。後者にはまた、オープンワークのダイヤルが採用されています。
同じアプローチで作られた「リファレンス 47031」は、パーペチュアルカレンダー機能が加わりました。2000年代初期に発表されたこれらは、ヴァシュロン・コンスタンタンの1950年代のモデルから曲線のデザインを着想した現在の「パトリモニー」コレクションを予想させるものでした。このコレクションにおいて、現在の「パトリモニー・レトログラード・デイ/デイト」は、メゾンのデザインの特色が凝縮され、日付と曜日をレトログラードで組み合わせた珍しい複雑機構は、1920年代の特殊な表示を思い起こさせます。
このモデルは、技術がエレガンスに捧げるというヴァシュロン・コンスタンタン独特の時計づくりのスタイルが完璧に表現され、レトログラード表示がメゾンの遺産の一部になっていることに気づかされます。260周年を迎えた2015年に披露された「リファレンス 57260」の場合も、レトログラードの日付表示のみならず、オリジナルの新しい複雑機構のダブルレトログラード式スプリットセコンド・クロノグラフが特徴になっています。


主な代表モデル
1)「ブラ・アン・レール」
イエローゴールドとホワイトゴールドによる2トーンの懐中時計、バイ・レトログラード
表示 1930年
1930年に作られたこの2トーンのバイ・レトログラードの懐中時計は特殊な表示による自由なデザインを例証しています。この時計は、時刻を知りたい時に10時位置のプッシャーを押せば、中国の手品師の両腕が、サテン仕上げを施したシルバーダイヤルの左右に配された扇状の目盛りで時と分を指します。彫金とエナメルで仕上げたこの手品師のモチーフは、時間の経過とともに両手でさまざまなポーズを取り、当時流行していたオートマタを思わせます。


2)「ラ・カラベル」
ダイヤモンドをセットしたプラチナの懐中時計、バイ・レトログラード表示 1937年

「ブラ・アン・レール(Bras en l'air、英語 raised arms や arms in the air)」という特殊なスタイルで時刻を表示する時計は、1880年代に出現しました。このような時計の大半は、ダイヤルに時と分を指すために腕が動くフィギュアが配されていますが、時刻表示が連続して行われるのではなく、ケースに設けられたプッシャーを押した時に腕が動いて実際の時刻を指す仕組みになっています。1世紀のちの狂騒の20年代は、この独創的な「ブラ・アン・レール」表示がその後も生き延びる新たな命を付与しました。1937に発表されたこの「ラ・カラベル」と呼ばれる懐中時計がそうです。ダイヤモンドをセットしたカラベル船から2本の腕が突き出し、それぞれが時と分を指します。



3)テーブルクロック
イエローゴールドとオニキス、ロッククリスタル、ラピスラズリによるアールデコ スタイルの置時計 1927年

8日巻きムーブメントを搭載し、レトログラード アワー表示が備わるこの1927年の置時計は、アールデコのスタイルが純粋に表現されています。18Kイエローゴールドで作られ、オニキス、ロッククリスタル、ラピスラズリの装飾を加えたこの時計は、12宮を示す扇形の造りにも特色があります。正面にはロッククリスタルの口から水を吐き出す噴水のマスカロンが配されています。 


4)「メルカトル」
イエローゴールドの腕時計、バイ・レトログラード表示 1996年
人文主義者で学識豊かな地理学者のゲラルドゥス メルカトル (1512-1594年) を称えた「メルカトル」は、レトログラード表示には時と分をそれぞれ分離して並べた目盛りと2本の針が備わり、18Kイエローゴールドのダイヤルにはメルカトルの世界地図に基づく南北アメリカ大陸が描かれています。2本のレトログラード針の軸は12時位置に置かれ、時と分が一目で読み取れます。またこれらの針は、かの地理学者が生涯使い続け、彼のシグネチャーにもなった道具を模して、両脚が開くコンパス(デバイダー)の形をしています。


5)「サルタレロ」
イエローゴールドの腕時計、ジャンピングアワーおよびレトログラード ミニッツ 1997年

クッション型ケースの「サルタレロ」は、「classic with a twist (伝統的でありながら遊び心がある)」のアプローチで美観を追求する試みにひとつの答えを与え、エレガンスが一風変わった独創的なスタイルによって表現されています。サンバースト仕上げを施したシルバートーンのダイヤルにはアラビア数字よるミニッツ・トラックが配され、ダイヤルを囲むイエローゴールドのケースは、ケースバックが透明なシースルーになっています。


6)「サルタレロ」
ピンクゴールドの腕時計、ジャンピングアワーおよびレトログラード ミニッツ 2000年

1997年にベルリンの時計展示会で初めて披露された「サルタレロ」は、ホワイトゴールド200本、ピンクゴールド200本、イエローゴールド100本の計500本が限定生産されました。キャリバー1120を搭載して、窓で示すジャンピングアワーによる時間、レトログラード ミニッツ針で60分をそれぞれ表示するこの時計は、1920年代にヴァシュロン・コンスタンタンの世に名を知らしめた特殊な表示に敬意を表しています。これは、その200本限定のピンクゴールド モデルで、ピンクゴールドのダイヤルに手作業でギヨシェ彫りが施されています。


7)「メルカトル」
ホワイトゴールドの腕時計、バイ・レトログラード表示 2001年

クロワゾネとミニアチュール技法を用い、多色エナメルをグラン・フーで焼成したダイヤルには、16世紀フランドルの数学者で地理学者のメルカトルが作図した地図が再現されています。このダイヤルでは特にヨーロッパが中心に選ばれています。このコレクションのために特別に設計された、コンパス(デバイダー)を思わせるレトログラード針は、時針のほうはジャンプして進み、分針は連続して移動します。



[まとめ]
・18世紀に登場し、場合によってはジャンピング表示をともなうレトログラード表示には、極めて正確な機能が要求される難度の高い技術が表現されている。
・ヴァシュロン・コンスタンタンにおけるジャンピング表示は、早くも1824年の懐中時計に姿を現し、それから1世紀以上を経た後にレトログラード表示の腕時計が登場する。
・レトログラードはヴァシュロン・コンスタンタンを代表する複雑機構となり、今も現行コレクションの一部に取り入れられている。



【お問い合わせ】
Vacheron Constantin
0120-63-1755(フリーダイヤル)


【ヴァシュロン・コンスタンタン】
1755年に創業したヴァシュロン・コンスタンタンは、265年以上にわたり一度も時計づくりを中断したことがない、時計製造の分野で世界最古のマニュファクチュールです。何世代にも渡る名工たちによって培われた時計づくりの卓越した技術と洗練されたスタイルを途切れなく代々継承し、そこに根差す輝かしい遺産を守り続けてきました。
メゾンが創作する時計は、控えめで気品豊かなスタイルに高級時計の素晴らしい価値が体現されています。その一つ一つに、最高峰の職人技と仕上げを維持しながら、ヴァシュロン・コンスタンタンならではの技法や美意識が表現されています。
ヴァシュロン・コンスタンタンを代表するコレクション「パトリモニー」や「トラディショナル」、「メティエ・ダール」、「オーヴァーシーズ」、「フィフティーシックス」、「ヒストリーク」、そして「エジェリー」などでは、つねに比類ない伝統と革新の精神が一体になっています。さらにメゾンでは、時計に精通した顧客の方々の難しい要望に応え、“レ・キャビノティエ”部門を通じて特注によるユニークピースの提案も行っています。