ヴァシュロン・コンスタンタンのオートオルロジュリー①~ クロノグラフと精密性

 By : KITAMURA(a-ls)

ブランドのオフィシャルサイトのメディア用ページには、WATCH MEDIA ONLINEで日々紹介しているニュース以外にも、かなり貴重なアーカイヴ資料的なものが格納されていたりする。

お盆期間は各社のニュースも少ないので、今回は、そうした素晴らしいアーカイヴ記事を、自分の勉強も兼ねて「夏休みの自由研究」的に掘り起こして紹介してみようかと思う。

なかでも最も良く出来ていると思うのがヴァシュロン・コンスタンタンの「オートオルロジュリー」のテキストではないだろうか。機械式時計の主要機構をテーマとして、260年を超えるその長い歴史から、その実例や進化過程をピックアップしてまとめられている。

現行品の販売に気を取られがちなブランド・サイトが目立つ中、老舗ならではの余裕と自社の歴史に対する誇りを感じさせるヴァシュロン・コンスタンタンからの好企画。第一回目は、基本的機構のひとつである「クロノグラフとその精密性について」のテキストを取り上げる。



ヴァシュロン・コンスタンタンのオートオルロジュリー ①
「クロノグラフと精密性」



時計のクロノグラフ機能を用いた短時間の計測は、機構に正確さが不可欠で信頼性が求められるため、時計の複雑機能の中でも最も実現が困難なもののひとつです。
最初のクロノグラフは、19世紀の早い時期に「コントゥール・ドゥ・ティエルス」(1/60秒カウンター)として登場し、続いて1838年に導入されたのは、中間タイム(スプリットタイム)の計算ができる機構でした。
このスプリットセコンド機能を含むさまざまな革新によってヴァシュロン・コンスタンタンは、クロノグラフの開発に重要な役を演じ、その機能を充実させました。最初のクロノグラフとして知られるモデルは1874年に登場しました。

●シルバーとレッドゴールドによる2トーンの懐中時計スプリットセコンド・クロノグラフ (Ref.Inv.11092) 1889年


それ以来メゾンは、クロノグラフのみならず、時計製造のパイオニア精神と密接に結びつくグランド・コンプリケーションにこのクロノグラフ機能を取り入れて群を抜く存在になりました。このクロノグラフ機能にはオートオルロジュリーのまさに真髄が凝縮されています。

これらの時計の機能の目的は、時短時間を計測することにあるので、正確無比の精度、揺るぎない信頼性、過酷な環境にも常に耐える耐久性が求められます。クロノグラフが徐々に獲得し、改良によって得たこれらすべての特質は、ヴァシュロン・コンスタンタンのスペシャリティとなる計測機能が備わる時計にとって不可欠な特徴になりました。
また技術の点では、クロノグラフには動力の管理のみならず、作動中の円滑な動きや、操作の際の正確な動作が欠かせないメカニズムを構成するのにかなりの熟達した技術が必要です。時間の計算が重要になるにつれて、繰り返し計測できる決定的な機能が次第に導入され、それがスポーツ競技や科学的発見になくてはならないものになりました。


19世紀初頭に発明されたクロノグラフ
時間計測の誕生と進化は、それに先立つ天文学的研究を抜きにしては正しく理解することができません。時計に関する発明では最も近年の発明のひとつに数えられるクロノグラフの場合も同じです。
1816年に「コントゥール・ドゥ・ティエルス」を発明したのは、パリの科学者ルイ・モネでした。天文観測のために開発されたこの計測器は、2013年にオークションで再び発見され、現在では史上初のクロノグラフと考えられています。
毎時21万6000回(30Hz)という驚異の振動で時を刻むこの懐中時計型のストップウォッチは、センター針によって60分の1秒を表示し、独立したサブダイヤルで分と24時間式の時を表示します。

1821年、国王ルイ18世の御用達時計師のフランス人ニコラ・リューセックが製作した装置が、馬術競技のレース時間の計測を可能にしました。5分の1秒単位で正確に計測できるこの装置は、計測の開始と終了時に木製のケースに収められたエナメル製の回転ディスクの上にインクを垂らす仕組みでした。その後、クロノグラフの分野では、小型化と精度の点で進歩と革新が絶え間なく続きました。

1822年にはさっそく懐中時計型のストップウォッチが登場し、19世紀半ばにはスタート、ストップ、ゼロリセットという3つの機能が備わるようになりました。

中間タイムを計測するスプリットセコンド・クロノグラフは、1831年に発明されました。その際にオーストリア人のヨーゼフ=タデウス・ウィンナールが発表した最初の機構は1本のスプリットセコンド針を備え、この針は停止でき、再びスタートすると経過時間を測る位置に瞬時に追いつく仕組みでした。この機構は1838年に改良され、もう1本の針が追加されました。

最初の腕時計クロノグラフが登場するのは、1910年代に入ってからでした。これは懐中時計クロノグラフと同様に、1個のプッシャーによってスタート、ストップ、ゼロリセットの3機能を操作し、一般的にはこのプッシャーがリュウズの中に格納されていました。ゼロリセットに用いる2番目のプッシャーは、1934年以降に増えました。

それと同時に、冒険やスピード、スポーツ競技にますます関心を抱く顧客向けにスプリットセコンド機構が提供されるようになりました。これと並んで高振動の研究を進み、機械式クロノグラフは、10分の1秒から100分の1秒、さらには1000分の1秒を計測できるまで進化を遂げ、時計製造の世界では欠かせない複雑機構になりました。


複雑な機構
クロノグラフの発明は、これが初めて作られる以前のさまざまな技術開発に多くを負っています。それは、1750年代に完成されたデッドビートセコンド機構に始まります。その懐中時計では独立したデッドビートセコンドとクォーターリピーターが特徴になっていました。

ヴァシュロン・コンスタンタンにおけるこの種の機構が備わるまさに最初の時計は1819年に遡ります。時刻表示に影響を及ぼさずに秒針を止めたり再始動できる機構が備わる時計として最初に考案されたこのモデルは、やがて信頼性と精度に優れるクロノグラフの製造で名声を博すことになるマニュファクチュールにおける未来の業績を予告するものでした。

機械式時計では、1分間で1周する秒針が1秒を何回ジャンプして刻むかはテンプの振動数に依存します。テンプが毎時1万8000回振動する時計なら、秒針は1秒を5「ステップ」で刻みます。
秒数を正確にカウントできるように針を1秒につき1回ジャンプさせるには、ジャンプ力を蓄えて一気に放出する機構が必要になり、そのため「デッドビートセコンド」と呼ばれます。ウォッチメーカーは、秒針が独立して動くように歯列を追加して、クロノグラフの原型とされるものを開発しました。それ以来、作動中の時針や分針に影響を与えずに、秒針のスタートや再スタートなどが可能になりました。このクロノグラフ専用の秒針に加えて分積算計や時積算計が現れ、続いて1個のプッシャーや2個のプッシャーが腕時計に備わり、クロノグラフは私たちが現在知る姿になりました。

●エジプトのフアード1世国王陛下に贈呈された懐中時計 1929年

技術的な点では、クロノグラフ機構の作り方には2通りあります。ひとつは、クロノグラフ機能をキャリバー自体に組み込んだ一体型ムーブメントを設計するという、より高度で複雑な方法です。もうひとつは、既存のベース・ムーブメントにモジュールやプレートを追加する方法です。
これらの構造は作り方に違いはあっても、クロノグラフを操作する仕組み自体は同じです。プッシャーの操作によってカップリングクラッチが作動し、トランスミッションホイールを介してクロノグラフ機構と時刻表示のギアトレインとの連結や分離を行います。このクラッチには水平と垂直の2通りがあります。

その制御システムにも一般的に2種類があります。大半の構造に用いられているカム方式と、より精巧なコラムホイール方式です。ゼロリセットは、クロノグラフ針の軸に備わるカムをハンマーが叩くことによって行われます。
スプリットセコンド・クロノグラフの特徴は、2本のセンター秒針が備わることです。計測をスタートすると、2本がぴったり重なって動き出し、スプリットセコンド・クロノグラフ用のプッシャーを押すとスプリットセコンド針のみが止まり、中間タイムの計測ができます。再びプッシャーを押すと、スプリットセコンド針は、動き続けているもう1本のクロノグラフ針に追いついて一緒になります。止めたスプリットセコンド針と、クロノグラフ針を利用することによって、2つの時間計測が可能になるこの操作は、必要に応じて何度でも繰り返すことができます。

機構としては、この機能はシンプルなクロノグラフよりもはるかに複雑です。スプリットセコンド針が備わるクロノグラフの場合、当然ながら第二の制御システムがあり、そこに備わるクランプがスプリットセコンド車とクロノグラフ車との分離や連動を制御します。また、スプリットセコンド針は、クロノグラフ機構のバネによってもとのクロノグラフ針の位置に追いつきます。


2世紀に及ぶヴァシュロン・コンスタンタンのクロノグラフ
ヴァシュロン・コンスタンタンは、1755年の創設以来、これらの開発に絶えず取り組み、短時間を計測するクロノグラフの品質で名を馳せるウォッチメゾンとして、非の打ちどころがない機能性や複雑ムーブメントで知られる製品を作り、世に送り出してきました。
短時間の計測は、この分野での最初の開発以来ヴァシュロン・コンスタンタンにおいて特別な場を占めてきました。その一方で、1874年のハンター型ケースの懐中時計のように、ヴァシュロン・コンスタンタンの特徴を成すエレガントなデザインも表現してきました。メゾンのコレクションでは分積算計が備わる最古のクロノグラフです。

●ハンター型ケースの懐中時計で分積算計が備わるクロノグラフ(Inv.Ref.12090) 1874年

20世紀に入ると、ヴァシュロン・コンスタンタンはモデルを腕時計へと転換し始めました。製品の中で最古のものとして知られる腕時計クロノグラフは、1個のプッシャーと分積算計を装備した1917年のゴールド製モデルです。メゾンはそれ以来、「ミニチュア化」が到来した時計の分野で不動の名声を確立し、その実用性と機能性が、20世紀前半の計器としての時計に道を開きました。


●ゴールドの分積算計付きモノプッシャー・クロノグラフ(資料写真Ref.1441) 1917年

ヴァシュロン・コンスタンタンは、1930年代と40年代のモノプッシャー・クロノグラフをもってそうした時流と歩みをともにしました。これらは、スタンピングで作ったスティール製ケースの信頼性も称賛され、1970年代になっても製造が続けられました。とはいえ、デザインの探求がマニュファクチュールにとって最大の関心事であることに変わりはありませんでした。それを体現するのが「コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ」の名で1955年に発表された、初の防水および耐磁仕様のクロノグラフです。

●防水性と耐磁性を備えた初のクロノグラフ「コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ」(Inv.Ref.11056) 1955年

技術の点では、ヴァシュロン・コンスタンタンの評価はコレクターの間ですでに確立されていました。そのキャリバー1141と1142はとりわけ手巻きクロノグラフ・ムーブメントの中で最も重要でした。コラムホイールと水平クラッチを装備したキャリバー1141は、ヴァシュロン・コンスタンタンの「マルタ」や「パトリモニー」、「トラディショナル」コレクションのクロノグラフに搭載され、「トラディショナル・パーペチュアルカレンダー」にも引き続き用いられています。
ヴァシュロン・コンスタンタンが2016年に発表した「オーヴァーシーズ・クロノグラフ」に用いられた、ジュネーブシールの認証を取得する自社製自動巻きムーブメントのキャリバー5200は、5年に及ぶ研究開発の末に誕生しました。

●オーヴァーシーズ・クロノグラフ 2016年

このクロノグラフは、2021年に150本限定モデルの「オーヴァーシーズ・クロノグラフ・エベレスト」として復活しました。このモデルのチタンとスティールによるケースに搭載されたキャリバー5200/2は、NAC加工やエベレストのモチーフを刻んだローターが特徴になっています。

●オーヴァーシーズ・クロノグラフ ・エベレスト 2021年


スプリットセコンド・クロノグラフ
クロノグラフの分野で中心的な役を演じるヴァシュロン・コンスタンタンは、スプリットセコンド機構でも活躍しています。それを物語るのは、1889年に競馬の熱心な愛好家から注文を受け、ブエノスアイレスに送られたスプリットセコンド・クロノグラフです。この注文主は、酸化銀のケース裏蓋にジョッキーのエナメル画を強く要望していました。

●ジョッキーのエナメル画が施された懐中時計スプリットセコンド・クロノグラフ (Ref.Inv.11092) 1889年

当時ヴァシュロン・コンスタンタンの名は、スイス国外でもすでに知られ、卓越した専門技術や称賛に値する仕上げが駆使された製品と結びついていました。特にアメリカ合衆国においては、ジョン マグナーが北アメリカにおけるヴァシュロン・コンスタンタンの正規代理人として1831年に業務を開始しました。それ以来、このマニュファクチュールの機械機構が芸術家や資本家などを含むアメリカ人たちをとりこにしました。
1904年に実業家のジョン デイヴィソン ロックフェラーはヴァシュロン・コンスタンタンの懐中複雑時計を3点購入しましたが、すべてにクロノグラフが搭載されていました。ゴールドのスプリットセコンド機構が備わる2点と、ミニット・リピーターを組み合わせた1点です。

このように20世紀初頭から複雑時計や超複雑時計の専門技術に精通していたマニュファクチュールのヴァシュロン・コンスタンタンには、特別なモデルを製造する注文が繰り返し寄せられました。このような状況を考えた場合、思い出すべき重要な点は、グランド・コンプリケーションのモデルに短時間を計測するクロノグラフ機構はもとより、とりわけ高度なスプリットセコンドを取り入れることが必須であったということです。

エジプトに移住したスイス人コミュニティによって1929年にフアード1世国王陛下に贈呈された、重要な技術的快挙を盛り込んだ時計などは明らかにその例で、それらか17年後、彼の息子ファルーク王のためにヴァシュロン・コンスタンタンがスプリットセコンド・クロノグラフを含む14種類の複雑機構を組わせて作った時計もまさにそうです。

●エジプト国王ファルークのために製作された懐中時計 1946年

メゾンが260周年を迎えた2015年に誕生した「リファレンス 57260」は、このアプローチを推し進めた究極の成果です。その57種類の複雑機能にはダブル・レトログラード表示を採用するスプリットセコンド・クロノグラフが含まれます。2本の計測針がそれぞれ別の目盛りを移動して秒をカウントする時計産業では初の機構は、視覚的にも魅力的です。

●リファレンス 57260 2015年

ヴァシュロン・コンスタンタンの複雑時計における専門技術は1点製作の時計にとどまりません。極めて精巧な機構のスプリットセコンド・クロノグラフをムーブメントに組み込む例は、現行のコレクションにも見られます。メゾンの260周年を記念して2015年に発表された「ハーモニー」コレクションのモデルに初めて採用された技術的な傑作ムーブメント、キャリバー3500はまさにそれにあたります。


●キャリバー3500

2021年に発表された「トラディショナル・コンプリートカレンダー・コレクション・エクセレンス・プラチナ」は、キャリバー2460 QCLが用いられています。ペリフェラルローターをボールベアリング上にマウントした特殊な設計によってこの超薄型の自動巻きムーブメントは厚さが5.4㎜で、この種の複雑機構を搭載するものでは最薄のひとつに数えられ、時計全体の厚さも10.72㎜しかありません。偉大な時計製造の伝統に即して設計され、クランプと2個のコラムホイールが備わるこのムーブメントは、一方でマニュファクチュールで開発された最新技術が用いられています。クロノグラフ円滑に起動させるカップリングの仕組みや、ドラッギング式の針による60分積算計などです。ヴァシュロン・コンスタンタンによれば、時計製造の世界とは、研究と革新で成長を遂げるものなのです。

●トラディショナル・コンプリートカレンダー・コレクション・エクセレンス・プラチナ 2021年

この独自の専門技術はまた、2020年発表のユニークピース「“ラ・ミュージック・デュ・タン” レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション・ スプリットセコンド・クロノグラフ ― テンポ」にも発揮されています。このモデルでは、スプリットセコンド・クロノグラフがパーペチュアルカレンダーや数種類の天文機能、トゥールビヨン、ミニット・リピーターといった他のグランド・コンプリケーションと組み合わされています。このダブルフェイスの腕時計は、ヴァシュロン・コンスタンタンがこれまで製作した中で最も複雑なモデルで、1163個の部品で構成され、24種類の複雑機構を操る異例のムーブメントは、まさに機械式時計における真の傑作です。

●“ラ・ミュージック・デュ・タン” レ・キャビノティエ・グランド・コンプリケーション・ スプリットセコンド・クロノグラフ ― テンポ 2020年


ヴァシュロン・コンスタンタンと著名人からの注文
ヴァシュロン・コンスタンタンの1900年から1950年の注文台帳には、アメリカ経済の興隆やジョン デイヴィソン ロックフェラーのような業界のリーダーたちの活躍が明らかに映し出されています。彼らの関心は常にヨーロッパの一流品に向けられ、中でも顕著なのが時計でした。しかしながら、この台帳からはまた、世界の知的エリートたちが専門技術や伝統を体現する時計に心酔する様子も見て取れます。

1982年、ヘンリー グレーブス ジュニアは、ジュネーブ天文台が主催したコンクールで1位を獲得したヴァシュロン・コンスタンタンのトゥールビヨン・クロノメーターを手に入れました。また、エドガー ウォーレスは、グレーブスよりも何年か前の1922年に同様の機会を得ていました。
エドガー ウォーレスことリチャード ホラシオ エドガー フリーマンは、1875年に生まれ、大英帝国の絶頂時に指導的な役割を演じた作家で、常に自分の魅力を発揮して立ち直ることを知っている人物でした。ジャーナリスト、レポーター、作家、脚本家、映画監督として活躍した彼は、アングロサクソン系の作家の中で最も多くの作品を残した一人であり、エドガー ウォーレスというペンネームで30年足らずの間に170以上の作品を残しました。彼はハリウッドでキャリアに幕を閉じましたが、コナン ドイルの『バスカヴィル家の犬』の映画化や『キングコング』の脚本への参加でも有名になりました。1922年の冬、スイスのモントルーの高台に建つコー・パレス・ホテルに滞在中に、支配人がエドガー ウォーレスにヴァシュロン・コンスタンタンの時計を何点か見せました。目の肥えた本物の愛好家だった彼が選んだのは、ポリッシュ仕上げを施した18Kゴールドのバシン型ケースにスプリットセコンド・クロノグラフでした。


●エドガー ウォーレスと交わした書簡



主な代表モデル
1. クォーターリピーターおよびインディペンデント・デッドビート・セコンドが備わるレッドゴールドの懐中時計(Ref.Inv.12085) 1819年
ヴァシュロン・コンスタンタンは、1819年のこのクォーターリピーターを併せ持つモデルのように、19世紀の初頭からインディペンデント・デッドビート・セコンドを装備した初の懐中時計の開発に取り組み始めました。エナメルダイヤルに Vacheron Chossat & Co の銘が記されたこの時計は、サーペント型の時針と分針で示される時刻の流れに影響を与えることなくセンター秒針のスタートと際スタートが可能な機構が搭載されています。この種の時計がクロノグラフの原型と考えられています。



2. シルバーとレッドゴールドによる2トーンの懐中時計スプリットセコンド・クロノグラフ (Ref.Inv.11092)
1889年
積算計のないシンプルなものや30分積算計付きのモデル、スプリットセコンド機構が備わる最も精巧なモデルなど、さまざまなタイプの懐中時計モノプッシャー・クロノグラフは、馬のブリーダーやある種の実業家の期待に応えるために5分の1秒や10分の1秒、100分の1秒さえも計測が可能でした。19世紀に馬術競技を熱心に愛好家するアルゼンチンの顧客が注文したこのスプリットセコンド・クロノグラフは、ケースバックにエナメルでジョッキーを描いてパーソナライズされています。これは、ヴァシュロン・コンスタンタンのプライベートコレクションにおいては、最古の2トーンのモデルです。



3. 18Kイエローゴールドの懐中時計クロノメーター、スプリットセコンド・クロノグラフ (Ref.Inv.11528)
1913年
天文学や医学における進歩、スポーツや交通の発展に歩調を合わせた日常生活の向上などにともない、時計製造の分野でも改良が進みました。そこには計時機器の精度に対する要求も含まれます。ヴァシュロン・コンスタンタンは、特に30分積算計やスモールセコンドを装備した懐中時計スプリットセコンド・クロノグラフによってこのような需要に応えました。このクロノメーター認定モデルは、時計のケースバックに刻まれているように、ジュネーブおよびテディントン天文台よりAクラスの歩度証明が授与され、ジュネーブ天文台コンクールでも第3位に輝きました。このモデルは1913年に製作され、1921年にパティアラのマハラジャに販売されました。




4. プラチナ9 5 0 のハーモニー・クロノグラフ・グランド・コンプリケーション・エクストラフラット、2 6 0 周年記念モデル (Ref.5400S/000P-B057) 2016年
ヴァシュロン・コンスタンタンは、260周年を記念して2015年に「ハーモニー」コレクションを発表しました。クッション型ケースのモデルは、1928年に遡る初の腕時計クロノグラフのひとつから想を得ています。新しいコレクションのフラッグシップモデルに収められた超薄型グランド・コンプリケーション・キャリバー3500は、7年に及ぶ研究開発を経て完成され、厚さがわずか5.2㎜という自動巻きムーブメントとしては抜群の薄さが特徴です。プラチナ950のケースに搭載されたこのムーブメントは、スプリットセコンド・クロノグラフ機能をはじめ、60分積算計やスモールセコンド、51時間パワーリザーブが備わります。キャリバー3500は、設計はクラシカルでも、マニュファクチュールの最先端技術が投入されています。





【まとめ】
・クロノグラフは19世紀の初頭に発明され、続いて短時間の計測機能を高度化したスプリットセコンド機能でさらに充実した。
・短時間の計測は、分積算計を備えたハンター型ケースの懐中時計クロノグラフを1874年に発表して以来、ヴァシュロン・コンスタンタンで特別な場所を占めている。
・マニュファクチュールの現行コレクションにも、クロノグラフやスプリットセコンド・クロノグラフ、他の複雑機構と組み合わせたムーブメントが含まれる。




【お問い合わせ】
Vacheron Constantin
0120-63-1755(フリーダイヤル)



【ヴァシュロン・コンスタンタン】
1755年に創業したヴァシュロン・コンスタンタンは、265年以上にわたり一度も時計づくりを中断したことがない、時計製造の分野で世界最古のマニュファクチュールです。何世代にも渡る名工たちによって培われた時計づくりの卓越した技術と洗練されたスタイルを途切れなく代々継承し、そこに根差す輝かしい遺産を守り続けてきました。
メゾンが創作する時計は、控えめで気品豊かなスタイルに高級時計の素晴らしい価値が体現されています。その一つ一つに、最高峰の職人技と仕上げを維持しながら、ヴァシュロン・コンスタンタンならではの技法や美意識が表現されています。
ヴァシュロン・コンスタンタンを代表するコレクション「パトリモニー」や「トラディショナル」、「メティエ・ダール」、「オーヴァーシーズ」、「フィフティーシックス」、「ヒストリーク」、そして「エジェリー」などでは、つねに比類ない伝統と革新の精神が一体になっています。さらにメゾンでは、時計に精通した顧客の方々の難しい要望に応え、“レ・キャビノティエ”部門を通じて特注によるユニークピースの提案も行っています。