【連載】WATCH MEDIA ONLINE スイス時計製造現場視察ツアー レポート②~アクリヴィア(レジェップ・レジェピ)ワークショップ訪問

 By : CC Fan


WATCH MEDIA ONLINE主催の海外工房を巡るツアーのレポート、連載第2回目をお送りします。
連載第一回:https://watch-media-online.com/blogs/7669/ 


ツアー2日目の今回は、第1回目の最後にチラ見せしたアクリヴィアのレジェップ・レジェピ氏のワークショップを訪れます。



氏の工房はジュネーブの丘の上、宿泊したホテルから近いエリアにあります。



元々のアクリヴィアの工房として使っていたスペースだけではなく、ハグマン氏のケース部門や、会社としての応接スペースなどを近隣の建物に広げており、成長していることを感じます。
レジェップ氏を含め8人の時計師、4人の設計エンジニア、2人のマイクロメカニシャン、2人のケースメーカーをはじめとし、事務や管理を含めると20名弱の従業員を雇用、最終的には年産50本を目指すというチームとしての時計作りを行っていると伺いました。



工房と同じ建物内に現在準備中の「サロンスペース」、カスタマーやコレクターを招待し、直接のコミュニケーションをとることを目指しています。



ミーティングスペースには時計が…?



GPHGのトロフィーも飾られています。



レジェップ氏の愛用のビアンキのロードバイクが飾られています。



サロンスペースから階段を上った半屋根裏部屋のようなスペースがレジェップ氏のスペース。
まだ引っ越したばかりで整理が終わっていない、という大量の時計関係の書籍が。



氏の机は色々秘密のものもあるので撮影NG…と言う事で、これだけを。
東京イベントで撮影されたレジェップ氏(中央)、アワーグラスのマイケル・テイ氏(向かって右)、「アンクル・モモイ」と呼んでいるアワーグラスジャパンの桃井氏(左)との記念撮影を、フォトスタンドに飾っておられました。



風景も最高!
遠くにレマン湖が見えます。



振り子を外して輸送されてきたと思われる高精度なレギュレータークロック、組み立てられて再び時を刻むのでしょう。



そして、サロンスペースのさらに奥、「4人のエンジニア」が勤務する設計室にも入ることができ、エンジニアから直接話を伺うことができました。

設計者ごとにムーブメントを担当しており、クロノメーター コンテンポランIIとクロノメーター アンチマグネティックの設計について話を伺います。

写真はNGでしたが、クロノメーターコンテンポランは通常では見ることのできない文字盤下の構造を見ながら解説してもらい、発振用と表示用の輪列がどのように収まっているかの解説を受けました。

そして、アンチマグネティックはいまいち「ふんわり理解」だったリセットメカニズムについて、4番からセンターセコンドへの伝え車がクロノグラフの水平クラッチのように外れ、秒針へのトルク伝達を遮断したのちにレバーがハートカムを叩くことでリセットする、と言う仕組みだそうです。

この仕組みだけだとコンテンポランIIとあまり変わらないように聞こえますが、リセットの際にストップレバーがテンワを押さえて停止させていたものを、アンチマグネティックでは停止させずテンワは発振(振動)を続ける設計に変更したそうです。

テンワを停止させるタイプのストップセコンドの場合、停止を解除してからテンワが定常状態に到達するまでしばらく時間がかかり、これが誤差の原因になります。
テンワを停止させなければこの誤差は発生せず、水平クラッチを繋げれば即座に定常速度で回転を始めるためより正確な時刻合わせが実現でき、発想として理に適っていると感じます。



CAD画面は撮らないから、作業環境だけ「証拠」に撮らせて、とお願いして撮影します。
マウスやキーボードはそれぞれの好みのものを使っているようで、それに加えて、3Dconnexion社の左手(利き腕の逆)で使ってCADの操作を補助するSpaceMouseも使われていました。
こちらは各種ショートカットや修飾キーに対応したスタンダードなSpaceMouse Proのようです。

三次元設計はSOLIDWORKS、二次元設計と機構の機械的な検証はTELL WATCHを使っているそうです。



しばし時計を拝見しながらティータイム…



続いて、メインのワークショップの向かい側にあるケースなどを手掛けるワークショップへ。

ケースメーカーのハグマン氏!



伝統的な手動工作機械を使ってクロノメーターコンテンポランIIやアンチマグネティックのケースを手掛けています。



機械自体は年代物ですが、デジタルで座標を読み取るデジタルリードアウトや、モーターのインバーター制御化などが行われており、より使いやすく高精度に加工を行うことができるような工夫が行われていると感じました。



こちらの工房の壁にもバイクが、こちらはトラック競技などで使われる直結で変速ギアがない(シングルスピード)のピストバイクのようです。



卓上旋盤で加工が行われていました。



光源と顕微鏡付きの旋盤で加工を行うケースメーカー。

さて、最後は「8人の時計師」が作業を行っている時計師の部屋…なのですが、こちらも「機密」があるため撮影はNGとのこと(今考えるとルイ・ヴィトンコラボ…?)。

こちらにも「レジェップ席」が設けられており、自ら組み立てを行ったり、直接指導も行えるような体制が構築されていました。



あまり良く見えませんが、外からせめてものイメージを…



2日後にアメリカへ向かうという忙しい所を、スケジュールを変えて駆けつけてれたレジェップ氏。
評価と共に成長していくアクリヴィアの勢いが感じられた見学となりました。


この後バス移動で、ジュウ渓谷へ。
ローマン・ゴティエの工房を目指します。

(2日目午後に続きます)