クレヨンの カミネ「クレヨン トランクショー」速報レポート、お手伝いも

 By : CC Fan

去年末にカミネさんから告知された創業者 レミ・マイヤ氏を招いて行われる「クレヨン トランクショー」
が1月20日・21日に行われました。



WATCH MEDIA ONLINEとしてイベントの様子を取材するだけではなく、2018年のエブリウェアからずっと取材し、個人的にも応援している立場として是非お手伝いしたい、とプレゼンテーションに対して「解説」として主に機構面などを説明する形で参加させていただきました。
機構面、とくに「緯度・経度・UTCからの時差・日付情報から日の出と日の入の時刻を機械的に算出する」、ユニバーサルサンライズ・サンセット・コンプリケーションがどうなっているか?と言う事をできる限り平素に説明する、と言うことを心掛けました。
プレゼン後の質疑応答からも「その視点はなかった」という新しい疑問も生まれたため、追って検証して記事を書こう!と言うモチベーションが生まれました。

今回は神戸から戻ってきたテンションのまま、「速報」として持ち込まれた作品群・プレゼンを深夜レポートしたいと思います。



一番注目を集めていたと感じたのは、色々あって「延期」となっているONLYWATCH2023オークションに出展されるはずだったエニィウェアのアートピース。

チタンケースに加え、ベルギーの画家、テオ・ファン・レイセルベルヘの技法からインスピレーションを受けた点描画の技法を使って水面をイメージした文字盤を作成しています。

このイベントのためにレミが香港でピックアップして持ち込まれました。



もう一つのチタンケース採用、グリーンの文字盤を備えた25本限定のAURORA、そしてレギュラー(限定なし)のローズゴールドケースとホワイトゴールドケースもそろい踏み。

ジュネーブで拝見した、アートピース「アズール」は既に完売とのこと…



会社設立が2013年で、なんと去年で10周年!
おめでとうございます!

最初は主にコンプリケーションの製作や検証を受け持つエンジニアリングスタジオとしてスタートしたクレヨン、クレヨンと言う名前はフランス語で鉛筆を表すクレヨンから名付けられ、芸術・技術の創造は鉛筆のスケッチから始まること、鉛筆のようにシンプルながら複雑な機能を使いやすく実現するという精神性を表しています。

ブランド運営のほか、いわゆるコンサルティングとして複雑機構の製作にもかかわっているそうです。



複雑性とシンプルな美しさを両立させたムーブメント、レミのこだわりとしてブリッジを止めるネジがブリッジ上に現れないデザイン、ディスクの時間修正(経度・時差に相当)を行うネジとヒゲ持ち・ガンギ石のカバーを止めるネジ以外のネジはケーシング状態では見えません。

また、ムーブメントに書いてある各種文字(レター)はいくつかの着色処理やインク、色のパターンを試した結果、彫るだけ、無着色に落ち着いたそうで、角度によってはほとんど文字が見えず独特の表面処理、「クレヨン・ウェーブ」を遮られることなく堪能することができます。



このウェーブはクレヨンの故郷、ヌーシャテルの北緯45度における日の入時間の変化のグラフをそのまま模様にしています。
この複雑な形状の仕上げを行う為に専用の工具を開発、人間とコンピュータ制御の協業によって仕上げを行います。

全ての波目がズレることなく滑らかに繋がるよう、全てのブリッジを専用の治具に固定した状態で一括で模様を入れます。
一括で加工したブリッジのうち、入れ替えたら模様が繋がらないという考えから、一つでも傷をつけてしまうとセットで交換、という徹底した品質管理を行っています。

この写真ではレターが黄色で仕上げられていますが、実際には無着色です。



光の当たり方でレターが浮かび上がります。
使われているフォントは懐中時計時代に活字をハンマーで叩いて刻印するフォントを基にレミがデザインしたもの、仕上げが終わった後に専用治具とCNC制御のダイヤモンド工具を使った切削機でレターを彫りこみます。
固定のスペック情報だけではなく、各々がユニークなムーブメント番号も同時に彫りこまれます。

このフォントや板バネ式のコハゼ、ガンギ石のカバーなど古典的な懐中時計のディティールに対するリスペクトが込められています。

通常状態の巻き上げ、一段引きの日付合わせ、二段引きの時間あわせ、どのポジションでもリュウズの操作感覚は素晴らしいです。
特に板バネ式コハゼの巻き味は毎日巻きたくなる、と感じるほど、「ぜひ巻いてみたり、操作をして直接感じてください」と言うレミの自信も納得です。



内包する複雑性を感じさせない直径39mm、厚さ9.5mmのケース。
私は軽く載せただけですが、尾錠を止めて装着された方は装着の快適さを感じているようでした。



先程アートピースが載っていたのは、クレヨンのトレイ!
こちらも、レミが今回持ち込み、ブティックとしてカミネさんで使われるそうです。
4つだとさすがに狭いので、残り3つは別のトレイに…



機構の解説とともに、今までの取材で感じたことの総括として、「この時計は毎日使うデイリーウォッチとして使って欲しい」という思いを伝えさせていただきました。
少しずつ日の出日の入の時刻が変化し、季節が移り変わっていく様子をエニィウエアと共に感じてほしい…と言う気持ちです。

ただ、日常的に使うのはなかなか難しいのも理解しており、合わせるのが容易で感触も良いシンプルカレンダー、巻き止めのおかげで少し巻けば動き出す香箱…とたまに使う時計としても優秀な作りになっています。
これに関しても関口氏の時計と同じく、思い入れからかなりエモーショナルになるので、余り客観的ではない、とは思います…



今回、いくつかご縁があったようで、良かった!と自分事のようにうれしいです。
今回は非常に貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました!

説明することで、自分自身も理解する、と言う事から疑問も生まれましたのでそれはまた別の記事に…
アートピースなどはレミと共にスイスに帰ってしまいますが、少なくとも1本は実機がエスパス ド カミネに展示されていますので、是非ご覧になり、腕に巻いてみてください。

KRAYON(クレヨン)ウォッチコレクション
https://www.kamine.co.jp/watch/krayon/



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