セイコーミュージアム with チャペック CEO ザビエル・デ・ロックモーレル氏

 By : CC Fan
三越ワールドウォッチフェアで、大盛況だったトークショーの翌日、チャペック CEOのザビエル・デ・ロックモーレル(Xavier de Roquemaurel)氏がスペシャルピースのオーナー氏と久しぶりに再会、オーナー氏の海外のお友達と共にセイコーミュージアムを伺うイベントを行うということで、ご一緒させていただきました。

セイコーミュージアムは予約制、不覚にも今まで訪れたことはなかったので良い機会をいただけました。
あまり写真を撮れなかったのと興味のあるものを重点的に紹介しますので、公式サイト展示物紹介もあわせてご覧ください。

まずは1階の時計の歴史から。



機械式時計以前、条件が同じならお香が燃えるスピードはほぼ一定という現象を利用した線香時計。
現在のタイマーのような使い方をしていたとのこと。



ウェストミンスター宮殿の時計台(ビックベン)の機械のプロトタイプ。





振り子を制御する脱進機は二重三脚重力脱進機(Double three-legged gravity escapement)という方式。
調整により日差1秒と言う高精度を実現できるそうです。

これは動力源からトルクによって直接振り子を駆動するのではなく、衝撃のエネルギーを定力化するコンスタントフォース機構になっており、特に大型の時計で問題となるむき出しの文字盤の針が受ける風や雨といった外乱が振り子まで伝わらないからです。

定力化に使っているのは位置エネルギー、位置エネルギーは重力加速度と質量、高さに比例するため、高さが一定であれば蓄えられているエネルギーも一定です。
動力源からのトルクが片方の三脚を一定の高さまで持ち上げたのち、ロックされ停止します。
振り子がロックを解除すると三脚が落下して振り子に追いつき、振り子に当たって振り子を駆動します。
同じ位置から落下すれば同じエネルギーなので、定力化されています。
"二重"の意味は、三脚が二つあり、片方が駆動されている時にもう片方は位置エネルギーの蓄積を行っています。

言葉で説明してもわかりづらいので、Wikipediaの脱進機の記事にある図を見てみると理解しやすいかもしれません。

公式の動画も。



停止用の星型歯車が三脚の突起に引っ掛かって止まり、振り子が三脚のレバーを押すことで解除されて回転する様子がわかるかと思います。



航海(天測航法)を支えたマリンクロノメーター。
こちらも機械式ながら機構と適切な運用により、月差数秒レベルを実現します。



機械式掛け時計。

2階は日本の和時計とセイコーの歴史、まずは和時計を。



江戸時代は日の出と日の入りを基準とし、日が出ている昼と日が沈んだ夜をそれぞれ6分割した不定時法が使われていました。
そのため一日の長さを均等に分割した定時法をベースとした洋時計とは異なる仕組みが考案されました…ということを説明するオーナー氏とそれに聞き入るザビエル氏。

これは日の出・日の入りのタイミングで棒テンプを切り替えて時計が進むスピードそのものを変化させる二挺天符という方式。
更に、1週間ごと棒テンプの錘も調整する必要があります。



徳川家の三つ葉葵はチャペックのNo.3430と同じバランスではないか?とプラス・ヴァンドーム(Place Vendôme)と比較するザビエル氏。
言われると確かに似ています。



最先端テクノロジーだった時計は錦絵として芸術にも取り込まれています。



時計を調整する?武士。

続いてはセイコーの歴史。



電気を使うようになりクォーツ以前の電気式振り子時計。
先ほどのビックベンと同様振り子の駆動を定力化するために、接点と電磁石を使っています。

最近、この方式を採用したクロックを元モリッツ・グロスマンのイエンス・シュナイダー氏が自身銘で発表したことで注目を集めました。



10振動/秒(5Hz)による高精度を実現したロードマーベル36000。





高精度の極地、天文台クロノメーター。



効率に優れた両方向自動巻き、マジックレバー。



タイムリーに未来技術遺産に登録されたクオーツアストロン 35SQ。



本業で自席の隣に置いてあり、個人的になじみ深いタイムレコーダー。

そのほかにも大量の展示がありとてもすべては紹介できません、是非ご自身の目で…

さて再び1階に戻り、スポーツとセイコーのかかわりというテーマの部屋へ。





1964年の東京オリンピックの計時のために開発された高精度スプリットセコンドクロノグラフや各種競技用のクロノグラフ、卓上サイズだったクオーツクロノグラフなど貴重なものが展示されています。

ザビエル氏の後ろに移りこんでいる写真の黒に黄色いデジタル数字を表示するセイコースポーツタイマーは数多のスポーツ大会で使われ、普遍的なアイコンになっています。

それを日常生活に取り入れたのが…



SEIKOタイマークロック!
スペシャルピースのオーナー氏もデスクで愛用しているという逸品、ザビエル氏も気にいってお買い上げです。
左側の砂時計は時計ケースなどに使われるステンレスを加工した砂を使っています。



お土産を購入し、ご満悦のザビエル氏、銀座の和光時計塔の文字盤のレプリカの前で記念撮影。



この後、浅草でお昼、ザビエル氏の5人のお子さんのお土産を買うためGINZA SIX巡り、そして再び三越とかやっていましたがあまり時計に関係なくなってきたのでこの辺で…

最後に見学を終えたザビエル氏の感想を引用します。

« Two different worlds, the same passion. »
二つの異なる世界、同じ情熱。

とのこと、セイコーとチャペック、時計作りに対する世界観は異なるかもしれませんが、情熱はどちらも同じです。

ちなみにアンティークピースは三越に行った時に見せていただきました。

関連 Web Site

セイコーミュージアム
http://museum.seiko.co.jp

CZAPEK Geneve
https://czapek.com/

Noble Styling
http://noblestyling.com/