15407STレビュー ロイヤルオーク小話とともに

 By : Ay&Ty Style

ステンレススチールで高級時計に革命を起こしたロイヤルオーク。

1stモデルRef.5402の発表は1972年4月15日、ジェラルドジェンタ師がデザインを起こした翌年のバーゼルのことと記録されている。

特徴的な八角形ベゼルを備えた39mmの防水ケースの厚さは僅か7mmであった。
これを可能にしたのは3.05mmの薄型自動巻ムーブメントCal.2121。ジャガールクルトが設計し1967年に発表されたCal.2120(JL920)にデイトを付加したもの。JL920はオーデマピゲのほかパテック、バシュロンの出資により開発されたという経緯も含め今も語られることの多い名機だ。

このスポーティかつドレッシーなステンレス時計は"ジャンボ"の愛称で呼ばれ、A~Dのシリーズで総数4千数百本(A2000,B1000,C1000,D数百)が作られた。
そして、その後1980年代にいったん姿を消すが、誕生20周年を迎えた1992年にはトランスパレントバックの1000本限定モデルRef.14802”Jubilee”が発表され、さらにその系譜は1999年発表のレギュラーモデルRef.15202へと引き継がれる。このほか1990年代にはソリッドバックの復刻モデルRef.15002も僅かに製作された。


ジュビリー以降のジャンボの魅力はCal.2121を観察できるトランスパレントバックであるが、それと引き換えにケース厚が1mm増すことを見逃してはならない。
装着感を求めるとRef.5402(25402)またはRef.15002なのだ。
さらにいうと、Ref.15002は文字盤上のAPロゴが12時位置にある。オリジナルは6時上位置だ。
従って、「ソリットバックかつ6時ロゴ」を求めるとRef.5402にならざるを得ない。B/Cシリーズにも6時位置の個体は存在するが、コレクターに人気なのはAシリーズの初期1000本、所謂"First A"である。

他方、ケース厚の点を除けばジュビリーは非常に魅力的なモデルであることを強調してきたい。
特に文字盤12時下のAUDEMARS PIGUETのフォントや非常に細かいタペストリーは、現在のエクストラシンでも得ることはできないヴィンテージテイストを提供する。


2005年、オーデマピゲは創業130周年を記念して自動巻の基幹ムーブメント Cal.3120を発表。同時にこれを搭載したロイヤルオーク Ref.15300を送り出す。
Ref.15300の直径はジャンボと同じ39mmながら、堅牢なCal.3120が4.25mmと厚く、またセンターに秒針を備えたことから、ケースやブレスレットも厚くしっかりしたものになった。ジャンボの系譜とは異なる新世代のロイヤルオークと位置付けられるのはそのためだ。

Ref.15300はそれ自体ベストセラーモデルであるが、それ以上に魅力的なのは2010年発表のRef.15305だ。Cal.3120からデイトを外し、美しくスケルトナイズされたCal.3129。日本の愛好家の中では、このムーブメントが日本人時計師、浜口尚大氏(ルノー・エ・パピ→オーデマピゲ→ヴォーシェ・フルリエ)によるものと広く知られている。
ところが、先日のディナーでこの話題をしたところ、意外にも本国のスタッフは浜田氏がCal.3129に関与した事実を知らなかった。複雑時計の印象が強く残っているのかもしれない。




スケルトンのロイヤルオークはRef.15305の前にもいくつか発表されている。Cal.2121に永久カレンダー機構をオンしたRef.25829は1996年に発表され最近まで続いたロングセラーだ。また、ごく僅かな限定数でジャンボのスケルトンも作られていたようだ。
しかし、Ref.15305に搭載されたムーブメントCal.3129の、有機的な曲線による構成とアンスラサイトのガルバニック仕上げは、それまでとは一線を画する美しさであった。


ロイヤルオーク40周年にあたる2012年、Ref.15202が"エクストラシン"としてリファインされ、憧れのモデルに相応しいプティタペストリーと6時位置のAPロゴが与えられた。Ref.15300が41mmへとサイズアップしたRef.15400に承継されたのも周知のことである。これに対し、同時に発表されたRef.15202のスケルトンモデルRef.15203は記憶に薄いかもしれない。40本限定のプラチナケースだった。このタイプは2014年にRGケースがRef.15204(ムーブメントは同じ Cal.5122)として発表されたが、残念なことにSSは出ていない。




そして今年、SIHH2016では、Ref.15305とRef.15204がカタログから姿を消し、新型スケルトンが発表された。
(エクストラシンでなく) Ref.15400のスケルトンであることは、センター秒針の存在とリファレンス番号から直ぐに理解できた。しかしよく見ると単なるサイズアップではない。
大きなRG製のテンプ受けの向こう側には、2つのテンプが垂直に連なっていたのである。






オーデマピゲによると、ダブルテンプは30%の精度向上に資するという。
この点の検証は専門家に譲るとして、ここではダブルテンプの採用によるスペック上の影響を2つ挙げておこう。
1つめはケース厚。Ref.15305と比べると0.52mm増して9.9mmとなった。ケース径が5%大きくなっているためバランスはほとんど変わらない。全体的に一回り大きくなった印象だ。
2つめはパワーリザーブが60hから45hに減少した。ダブルテンプに見合うトルクを得るためと思われる。

しかし何はともあれ、Ref.15407のテンプ周りのデザインは格別である。
スケルトナイズされたテンプ受けはピンクゴールドで、柔らかに立体を描く。この見せ方は2011年発表の、奇しくも浜田氏が設計を担当したミレネリー4101で獲得されたノウハウだろう。これに合わせて、時分針、秒針、アワーマーカーもピングゴールドが奢られ、ダイヤルのスレートグレーと見事なコントラストだ。

ベースモデルであるRef.15400は、ケース径に対してムーブメントが小さいことがデイト位置に表れてしまうことが時にネガティブに語られるが、デイトがなく文字盤の立体処理が秀逸なRef.15407は、(表から見る限り)ムーブメントサイズを意識させない。

というわけで大変に満足しております!





ROYAL OAK DOUBLE BALANCE WHEEL OPENWORKED


Ref# 15407ST.OO.1220ST.01
CASE Stainless steel case, glareproofed sapphire crystal and caseback, screw-locked crown, water-resistant to 50m
CASE WIDTH 41.00 mm
WATER RESISTANCE 50 m
CASE THICKNESS 9.90 mm
DIAL Slate grey openworked dial, pink gold applied hour-markers and Royal Oak hands with luminescent coating.
BRACELET Stainless steel bracelet with AP folding clasp.

CALIBRE Selfwinding Calibre 3132
TOTAL DIAMETER 26.59 mm (11 ¾ lignes)
FREQUENCY OF BALANCE WHEEL 3,00 Hz (21'600 alternances/hour)
NUMBER OF JEWELS 38
POWER RESERVE 45 h
NUMBER OF PARTS 245
FUNCTIONS Hours, minutes, centre seconds


(この投稿の本文は、拙ブログ Ay&Ty Styleからの転載です)