モンブラン2016新作イベント: その2 - ジェローム ランベール CEOとの独占インタビュー
By : KIH昨日の、今年の新作 + ヴィルレ コレクション等の展示会に続いて、今朝はランベールCEOとの朝食インタビューに招待されましたので、以下の通り報告します。時計不況がスイスを席巻していると言われている今年ですが、ランベールCEOは淡々と、「このビジネスはそういうものだ」と答え、さすがモンブランCEOも3年目となりますし、いつも通り安心感というか安定感のあるインタビューとなりました。
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KIH: ランベールさんがCEOになられてから、モンブランの時計部門の2つの対極にある製品群- すなわち、いわゆる普及品を作る、ル・ロックル工房と、高級複雑時計を手掛ける旧ミネルバのヴィルレ工房の製品 - のギャップを埋める商品がどんどん出てきたように思います。時計愛好家としてはうれしい限りですが、具体的にはどのような改革をされてきたのでしょうか?
ジェローム ランベール氏("JL")「現在、ヴィルレ工房では毎年30から40の高級複雑時計と、約100のクロノグラフを作っています。ル・ロックルの工房では約90,000の時計を作っています。ヴィルレ工房は現在では46人の人員がおり、いわばモンブラン時計部門のR&Dセクションのような役割も持つようになりました。ル・ロックル工房はヴィルレで開発されたムーブメントの組み立てや、ケースデザイン等を手掛けるようになり、そういう協力関係が確立されることにより、おっしゃるような、その間を埋めるような商品を作りやすくなったと言えるでしょう。」
KIH: 今年は、時計業界は全般的には過去数年と比べて決していい状態ではないと聞いていますが、モンブランはいかがですか? また、ランベールさんはどのようにお考えですか? この先がよく見えない景気の中で、どのような経営をされるよう心がけていますか?
JL: 「この業界はもともと5年から7年の周期で好不況がやってくる業界です。まさに景気に左右されやすい業界です。ですので、業界は過去の経験をもとに、新たなものを作り出し、そこからまた何かが生まれる、というサイクルを繰り返してきました。我々は、グローバルに同じ製品を売っています。したがって、この業界における周期は、業界の構造的なものというよりは、その時に購買力のあるマーケットがどこなのか、またそこではどういう趣向のモノを欲しがるか、ということにより左右されやすいのです。アメリカが強い時もあれば、直近のようにアジアや中国が強くなることもある。日本は昔から非常に成熟したマーケットになっていたので、今も最も安定したマーケットの1つです。5年から7年周期で、この業界では何か新しいことが起こる、と申し上げましたが、今度は我々モンブランの時計という「新しいもの」が大きく世の時計ファンに受け入れられる、ということが起こってもおかしくないと思っています。業界は、今の周期から抜け出す方法を見つけようとしているようですが、今は特定の地域が業界を救ってくれるという時代ではないと思いますよ。多くのブランドが、商品の値を上げ、数も多く作り、過去数年良い年を過ごしてきたようですが、中身やニーズと合致していなければ、周期には勝てないですね。我々はと言えば、周期に関係なく、常に価格以上の中身を備えた製品を、売れる分だけしか作りません。ですから、もし今、大雨が降っている状態だとしたら我々は晴れてるときからレインコートを着ていた、と言えます。」
KIH: モンブランのラインナップを昨夜見させていただきましたが、2015年のSIHHで最初に驚いたことでもあるのですが、どうやって、トゥールビヨンの入った時計をあの価格で実現できるのですか? 我々の間では業界の価格破壊をしようとしているのか、と言う人もいます。一方、ヴィルレで作られた、トゥールビヨンを含む複雑時計は20万から30万スイスフラン(2000万から3000万円)ですよね。
JL: 「いえいえ。我々のマーケットシェアでは、そんな価格破壊なんてできないでしょう。モンブランは万年筆を作り始めた時から、卓越した機能性を求めてきました。皮革製品についても同じです。ですから、その哲学を時計にも当然のように課しています。トゥールビヨンは美しい機構であることはご存じのとおりで、我々はそれを美しく作る能力があるということです。卓越した機能性を持った製品を作って世に送り出すことは我々にとって至上の悦びです。」
KIH: しかし、コスト管理は一体どうなっているのですか?
JL:「昨日見ていただいたトゥールビヨン ムーブメントを作った時、我々はそのムーブメントに20もの機能を入れようとは思いませんでした。例えば、アニュアルカレンダーとか、永久カレンダーとか、ミステリーダイヤルとか。比較的シンプルながら、いつも通りに高い機能性を持った時計を作ることを目指しました。そして我々には素晴らしいデザインや、精密なパーツを作る能力があります。我々は、単にターゲット価格内で、美しいトゥールビヨンをマイクロローター付きのムーブメントに入れることができた、ただそれだけのことです。毎年のように、中身がほとんど変わらないのに、5%とか10%値上げするブランドがありますが、理解できません。売り上げで評価することは良しとしません。どれだけのお客様に喜んで買ってもらったか、が大事な評価指標であるべきです。お客様が喜ぶ商品を作る能力があるかどうかが大事なのです。モンブランは、我々の能力の中で最大限の努力をしてお客様に喜んでもらえる製品を提供したいと思います。それが、先程の比較的手の届くトゥールビヨン、にもつながっています。」
KIH: 流行りの「スマートウォッチ」についてはどうお考えですか?
JL:「はっきり言って、私は新しいもの好きです。2015年に発表した、ストラップにその機能を入れた、第一世代の製品は大成功でした。他のブランドがその種の商品を作ろうと躍起になっていたころで、我々は発表から発売開始を約半年で実行しました。あれは、私にとっても面白かったですね。クラシックな機械式アナログ時計に、モダンなデジタル機器がストラップについているという発想でしたから。もちろん、現在その第二世代を開発していますが、喜ばれそうなものはまだできていません。とは言え、私は後悔することが大嫌いですので、その開発においては、どんどんテストやプロトタイプを作り試してはいます。今日、売られているスマートウォッチは、私の目から見れば今一つです。文字盤と言うかスクリーンは機能も限定的ですし、老眼のユーザーも多いだろうということを考えれば、視認性も決して高いとは言えません。言い方は悪いですが、20世紀の製品のように思えます。500ユーロ未満であれば、買う人はいるでしょう。しかし、それ以上となると、皆さんのiPhoneの方がよほど性能が高い。我々は、モンブランの社是として、自分たちが納得のいく卓越した商品ができるまで、決して諦めません。スマートウォッチは、クォーツのように、ずっと時計業界の商品の一部となるでしょう。」
KIH: 就任されてから3年ほど経ちましたが、この大きな組織をどのように経営するよう心がけていますか?
JL:「私は常に、今日は昨日より楽しい、と思うようにしています。私は、非常に実務的に考える人間です。と言っても、決して夢がないという意味ではありません。取れるリスクはきちっと取って、夢のある製品を作るのです。当たり外れがあるのは当たり前の業界です。それから、スピードが重要なので、過去をあまり振り返らないことも大事ですね。また、自信過剰にならないことです。そうすると前に進めなくなることがありますから。もう1つ、経営計画や製品計画には、短期、中期、長期があります。長期のモノは始めるのが遅れてもいい、と思いがちですがそうではありません。すべて、今日はじめないといけない、と自分にも、チームにも言い続けます。待っていていいことはありません。」
KIH: SIHH 2017の予告編を少しいただけませんか?
JL:「そうですね。1858シリーズはまた出しますよ。今度は、素材も色も、またムーブメントも新しいものを考えています。デザインは今年のモノとほぼ同じになると思います。あともう1つ、大きなのがあるのですが、これ以上は今は言えません。皆様の想像に今日のところはお任せします。」
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いかがだったでしょうか。ランベール氏がジャガールクルトにいた時からこういう関係を続けさせてもらっていますが、彼はいつも正直に答えてくれ、決してがっかりさせません。そして、SIHHなどできちんとその通りの結果を出してきます。モンブランはまだまだ時計ブランドとしての認知度は低いですが、旧ミネルバの工房も手に入れ、ストラップもフィレンツェの自社皮革工房で作らせるという、非常に質が高く、コストパフォーマンスの高いモノづくりをしていることは間違いありません。
来年のSIHHでの新商品発表が楽しみです。
KIH
www.montblanc.com















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