世界最速実機レポート! グルーベル フォルセイ GMT クアドラプル トゥールビヨン

 By : CC Fan
この記事の1分前にニュースとして掲載されているであろうグルーベル フォルセイ(Greubel Forsey)のバーゼルシーズンの新作、GMT クアドラプル トゥールビヨン(GMT Quadruple Tourbillon)、薄々気づいている方もいらっしゃいましたが、"フレンズ" ディナーの席で"ステファンが席を外している隙"に、エマニュエルから見せてもらっていました(お約束的な展開)。
もちろん、"メディアの仁義"としてエンバーゴ(解禁時間)を守るのは当然なので、その後に参加した神戸のイベントでは素知らぬ顔、同席されたメディアに公開されたかも知りませんが、藪蛇かもしれないので何も聞きませんでした。
ただ、実機を体験し、撮影したからには世界最速で公開できるよう記事をセットしてバーゼルに向かうわけです。

というわけで、プレス用ではないリアルな実機写真をまず掲載します。





一見するとトゥールビヨンが増えたGMTという印象ですが、今までのピースに無かった以下の2つの特徴があります。
  • 初めてのトゥールビヨン24セコンズベースではないコンプリケーション
  • 1年前のクアドラプル トゥールビヨン ブルーで行われた"サイレント"な大幅アップデート
前者から見ていきましょう。

以前お話を伺った時に、”ダブルトゥールビヨンは精度を最優先し、公的なコンクールでも結果を残しているが、機構そのものが大きいためあまり拡張の余地がない。トゥールビヨン24セコンズは充分な精度を持ち、サイズが小さいためコンプリケーションのベースとして使うことができる(GMT,QE,グランドソヌリ)。"と伺い、実際に時分表示(とパワーリザーブ表示)以上でトゥールビヨンを用いたコンプリケーションは全て24セコンズベースでした。

今回、初めてクアドラプル トゥールビヨンに時分表示以上のコンプリケーションが与えられ、しかも"グルーベル フォルセイらしい"ミニチュア地球儀によるGMTです。
クアドラプル トゥールビヨンだけでも十二分に魅力的ですが、GMTと組み合わされ、"地球の周りを2つのダブルトゥールビヨンがゆっくりと回る"という対比は非常に美しいと思います。

デザインは発明を称える、インベンションピース(Invantion Piece)っぽいかもと思いました。



真ん中がクアドラプルトゥールビヨンのインベンションピース、インベンションピース2。



GMTの特徴である光を取り込み、地球儀を眺めるためのケースサイドの窓も設けられています。
開口部中心が12時(昼)、逆サイドが24時(夜)で太陽に照らされる地球を取り込んでいます。

トゥールビヨンが2つ並んでいた部分に重心が集まっている印象のクアドラプル トゥールビヨンに対し、トゥールビヨン-地球儀-トゥールビヨン、地球儀の逆サイドがスモールダイヤルとすることで構成要素の配置のバランスがよくなったと感じます。

さて、後者の方です。
去年の時点で行われていたのですが、あまりにもサイレントで1年間の間、全く気が付かず、自分の目の節穴さ加減に嫌気が差したのでTwitterで挑戦的なクイズにしました。
この記事を書いている時点で反響があるのか不明ですが、回答編です。

回答のために、先ずは文字盤側から見てみましょう。





ピンぼけてるので微妙ではありますが…何か違和感がありませんか?
トゥールビヨンのあたりです。

ムーブメント側からも…





どうでしょう…?



はい、片方のトゥールビヨンが上下逆になっていますね!
先ほどのTwitterの写真も載せましょう。



はい、こちらも左側のブラックADLCのモデルは両方の軸に軸石しかないのに対し、右側のブルーは左側の軸に固定4番車が見えます。



ブルーを裏面から見ると片方の軸(向かって左)にだけ固定4番車を止めるネジが見えます。



インベンションピース2も同じ、下側にだけ4番車を固定するビスが見えます。

というわけで、もともと片方が上下逆になっているものが、サファイアクリスタルのブリッジを使うために両方が同じ方向になり、金属のブリッジになったことでまた片方が逆になった…と言う経緯ではないかと考えられます。

片方が逆な理由はもちろん姿勢差のキャンセルのためでしょう。
ダブルトゥールビヨン30°は通常のトゥールビヨンと比べれば傾いた第2軸により、12時・3時・6時・9時上と文字盤上・下の差は少なくなっていますが、文字盤上と下では差があるようです。
これに対し、片方が上下逆になった二つを組み合わせれば、片方が文字盤上の時、もう片方は文字盤下相当になり、二つの特性が揃っていれば、文字盤上と下で同じ結果になるはずで、インベンションピースの構成からそもそものアイディアはこれだったと思われます。

ムーブメントを更新する際に元のアイディアに立ち戻り、更にGMT クアドラプル トゥールビヨンにも引き継がれた…という事でしょう。
姿勢差のキャンセルという目的を考えると今の形の方がよいと思います。
これについてはインベンションピースの例も出しながら、バーゼルでステファンに質問する予定です。

さて、話がだいぶそれましたが、GMT クアドラプル トゥールビヨンに戻ります。



スモールセコンドとセカンドタイムゾーン表示を統合することでトゥールビヨンが増えた分のダイヤルをすっきりさせています。
GMT操作プッシャーは4時位置に配置。



ぶ厚い地板を大胆に削りこんだ3D構造。
こうやって見ると片方のトゥールビヨンは黄銅の6時位置に配置されているのもバランスが良いと感じる要因かもしれません…



圧倒的な高低差…



リストショット。
大きめなのは間違いないですが、オフセットしたダイヤルのおかげで袖口から出た時計をチラ見した時の視認性は良さそう。
ただ、これを腕につけていたら四六時中眺めていたくなるでしょう。



こうやって見るとトゥールビヨンはまさに浮いているように見えます。
ケージ自体に歯を切って噛み合う構造なので、駆動用の歯車がなく一見するとどこにも繋がっていないのに回っているように見えます。
部品のバリエーションを作れば歯車の高さも任意に設定できる構造なので歯車の高さを変えるためだけの中間車も不要です。



色々と述べてきましたが、結局は素晴らしいの一言です!

他のクアドラプル トゥールビヨンとの比較や、答え合わせも含めた新作レポートもバーゼルからお送りします!
さて、バーゼルに出発するためのパッキングだ…

関連 Web Site

グルーベル フォルセイ
http://www.greubelforsey.com/en/

カミネ旧居留地店
http://kamine.co.jp/shop/maison/