来年のクリスマスには、あなたの欲しいと思っている時計は3Dプリンターで作られているかもしれない!?

 By : KIH
....という、時計好きとしてはちょっと気になるニュースが流れてきました。

まあ、大げさなタイトルに聞こえるかもしれませんが、3Dプリンターの性能はどんどん向上しており、来年とは言わずとも、そのうち可能になると思うよ、というお話です。

このニュースの主人公は、Michael Sorkin氏が社長を務めるFormlabという会社。

米国マサチューセッツ州のサマービルというところが本社。その他、ドイツのベルリンにも子会社があるようです。



ユーチューブより


筆者もこの技術の存在、ずいぶん前から認識して気にはしていましたが、ここまで進んでいたか、という思いです。

現在、スイスのネスレや、スイスといえばチョコレート、と言われるほどのチョコレート業界が将来のチョコレートの作り方での応用を検討しているとのこと。


時計業界はどうでしょう?

過去16か月間、スイス時計の輸出量は減り続けています。当然効率化、コストカットが叫ばれています。


ブルームバーグより。


では、時計業界の実際の現在の利用状況についてはどうでしょう?

あるリサーチ会社が今年調べたところによると、50以上の時計ブランドの経営陣のうち、64%がすでにプロトタイプを作るのに3Dプリンターを使っている、と回答したとのこと。スウォッチグループは、3Dプリンターは様々な用途に使っている。タグホイヤーは、バックルやリューズの製造にすでに使っている。ローマン・ジェロームは、3Dプリンター業者に、プロトタイプのケース、ダイヤルやブレスレットを作らせているとのこと。

リシュモングループは、ローザンヌのポリテクニカル大学での、3Dプリンティングを含むマイクロ製造技術リサーチをスポンサーしています。リシュモングループのモンブランは、この技術をすでに3年間プロトタイプ制作に利用していますが、もうプリンターを新しいものに買い替える予定です。技術はそれだけ猛スピードで既存のものを「時代遅れ」にしてしまっているということですね。

タグホイヤーのCEOであるジャン・クロード・ビバー氏は、この技術による製造方法の変遷は、まだまだ始まったばかり、と言います。「今日では、まだアクセサリーの一部と言った方がいい。しかし、我々はこの技術を発展させていく。技術の進歩をバカにしてはいけない。誰もが不可能だと思っていたことを技術が可能にしてきたことを歴史は示している。月面を人が歩くなんて、その昔誰が可能だと思っただろう。」 マーケティングや、将来を見据えた経営をしてきたビバー氏の意見は、非常に重たく聞こえますね。

実際に、時計全てを3Dプリンターで作るなんて日は、相当遠いかもしれません。まだまだ装置や素材は高価な部類に入ります。それに、個人的には手作りの良さを知っている機械時計好きは抵抗を示すだろうと思います。ローマン・ジェロームのCEO、マニュエル・エムヒ氏は「顧客は、どんどんユニークピース、カスタム仕様の時計を求めている。まだまだ、早く安価にできてしまう3Dプリンター製の時計は、手作りの良さを競う世界では苦戦するだろう」と言っています。

しかし、前述のFormlabs社は、こういった考えを一蹴しようとしています。ベルリン子会社を通して、時計ブランド、ジュエリーブランド、そして歯科関係業者に、毎年何千台という3Dプリンターを売っています。彼らにとって、スイスは欧州内の5番目のマーケットであり、時計ブランド・ジュエリーブランド宛では、世界最大のマーケットだそうです。



 

Formlabs社ホームページより



個人的には、こんな方法で作られた時計は欲しくありません。まだまだその時が来るのは遥か先だと思います。しかし、ちまたの安価な時計はより安価な方法で作られるようになるでしょうね。しかし、いくら技術が進んでも、決して人間の手でやらなければならないことは残ります。

絵だってそうですよね。絵を楽しみたければ、その絵のポスターを買ってきて飾っておけばいいわけですし。でも、高いお金を出してオリジナルを買いますよね。技術の進歩で、機械式時計で我々が最も愛する部分が取って代わられる、とは考えたくないです・・・。

時計業界は今は苦しいかもしれませんが、きちんとした「モノづくり」をしているところは、きちんとやっています。そういった、「良識」のあるブランドや、独立時計師たちに期待しましょう。

KIH