グルーベル フォルセイ バランシィエ S スポーツライン第二段 傾斜テンプによるクロノメトリースポーツウォッチ

 By : CC Fan
良いことは重なるといいますか、偶然って怖いといいますか、今日は興味深い作品が相次いで発表されました。
1分前に発表されているであろうグルーベル フォルセイ(Greubel Forsey)のスポーツライン第2段、バランシィエ S(BALANCIER S)ケース形状を活かした傾斜テンプによってクロノメトリー性能を強化したという作品です。



シグニチャ―1で取り入れられた自社製造の大型テンワをベースに、傾斜して取り付ける構造により姿勢差(平姿勢と縦姿勢)の影響を小さくし、クロノメトリー性能を改善しています。
このテンワはトゥールビヨンに使われているもの(直径10mm)よりも大きく(直径12.6mm)、慣性モーメントが大きいので同じ振動数でもより多くのエネルギーを蓄えることができ、スポーツのような外乱が多い環境でもクロノメトリー性能を維持することを狙っているようです。

GMTスポーツ同様、実機が見たい!と思える作品ですが、昨今の状況ではそれも難しく、次善の策としてオンラインによるプレゼンテーション(ライブ)と質疑応答(TV会議)をアレンジしてもらい、その片鱗を掴むことができたのでレポートします。



お馴染み、ステファン・フォルセイ氏。
本館のソファーから中継しているようです。

スポーツシリーズは他のグルーベルフォルセイの作品同様、既存の限界を押し破り、新たなる基準を確立することを目指した作品とのこと。
装着感に優れ、スポーティーなのは見た目だけではなく、実際にスポーツ時に使っても大丈夫な堅牢性も備えているそうです。



ステファンの腕にはブルーのストラップを備えたGMTスポーツ。



デカ厚なサイズに見えますが、ムーブメントまでチタンを多用し軽いこと、ラグレス構造でケースに急な角度でストラップが取り付けられているため手首への収まりは良いと考えられます。



ラバーストラップは急な角度で可動しないように固定されているため、時計の本体が過度に暴れず装着感が良くなります。
ベゼル直径は45mmですが、バンド取り付け部に相当する部分の直径は42mm、更に急な角度で取り付けられているため通常のばね棒固定よりも装着感が良いかもしれません。
これは是非試してみたいところ。



一通り装着感について説明したところで、バランシィエ Sについてのプレゼンテーション。
斜めから見ると各部の曲線が単純な円や直線ではなく、複雑な三次元形状を持っていることが何となくわかります。
ベゼルは円形なのに対し、ケースは少し内側に凹んでおり、これが透過的にラグを内側に寄せたのと同じ効果を生んでいます。



ムーブメントの立体構造と、風防の曲線を感じる角度。
アシンメトリーケース同様、実機を見ないとなかなか魅力が伝わらなさそうと感じました。



サイドから見ると風防がわずかに凸になっていることが分かります。
リュウズにはショック吸収用のラバーが埋め込まれ、同様にケースサイドにもラバーが埋め込まれています。

100m防水を実現していますが、手巻きの巻く感触を良くするためと利便性のためにねじ込みではなく通常のリュウズです。
これもグルーベル フォルセイの哲学で、リュウズも他のタイムピース同様実用的な大きさです。




風防の形状が分かりやすいショット。
真ん中が盛り上がっています。



GMTスポーツと同様の湾曲した時分針ブリッジと時分針。
ムーブメントの7時側が大胆に削られ、そこに斜めになったテンワが収められていることも分かります。



斜めになった「脱進機プラットホーム」にはテンワと脱進機のほか、スモールセコンドも備えられています。
プラットホームに着けられた30度の角度は腕上での姿勢変化に対し、効率よく打ち消せる角度とのこと。



テンワの上部はプラットホームから飛び出し、ダイナミックな印象を与えています。
ケースの厚みを使い、大径のテンワを30度傾けて配置していることが分かります。



斜めのテンワをどのように収めているか、分かりやすい角度。
斜めにすることで厚みは出ますが、上から見た面積は小さくなっていることが分かります。



可視化され、グルーベル フォルセイの銘が刻まれた1回転3.2時間の高速回転、同軸直列二重香箱。
香箱に銘を刻むことで、逆にそれ以外のプレートにはレターを入れていません。



再び正面から。
要素が散らばっているようで全体としては調和している…という不思議な感覚はいつものグルーベルから感じるものと共通しています。



ブリッジはかなり前衛的なデザイン。
グルーベル フォルセイが得意とするインダイレクト(時分針と計時輪列が別)の構造のようです。
シリアルナンバーはムーブメントに刻まれ、18分の1と刻まれています。
この輪列は解析してみたいところ。



複雑な形状の風防ですが、斜めから見ても視認性は良好です。
また、「テンワを横から眺める」というなかなか普通の時計ではできない体験も。



もちろん各部の仕上げは言うまでもなく完璧、バランシィエ Sの部品の仕上げは1人で行ったとすると3か月かかるそうです。
他のグルーベルフォルセイの時計同様、「芸術作品だからこそ精度も充分でなければならない」という考えから6姿勢での調整と検査が行われるほか、衝撃試験はスポーツ用途に合わせ、ドレスウォッチよりも厳しい条件を通過してから出荷されるとのこと。



最初にも述べたように、他のグルーベル フォルセイの作品同様、既存の限界を押し破り、新たなる基準を確立することを目指していると感じます。
実機を拝見したいですね…

最後に複雑な形状を実感できる公式の動画を。



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