チャペック ケ・デ・ベルク 再設計されたSXH1 V2ムーブメントを「読む」

 By : CC Fan

ジュネーブウォッチデイズにて、「リコシェ」ギョーシェ文字盤を備えた新しいケ・デ・ベルクを発表したチャペック。



文字盤だけではなく、搭載されたムーブメントSXH1も「SXH1 V2」と名付けられた再設計ムーブメントに更新されました。
このムーブメントについては、WMO最初期に色々あって購入、「推測」としてデザインソースとなった「初代」チャペック名義の懐中時計No.3430との比較を行っていました。

今回、新しいブリッジデザインになったことでこの「推測」の答え合わせができる!という事に気が付いたので、オリジナル(以下V1と呼称)との比較も含めて見ていきましょう。


まず、これが以前のNo.3430との比較記事で製作した各部の名称を入れた図です。
設計上の「見どころ」としては7日以上のパワーリザーブを実現する並列ダブルバレルを連結する伝えピニオンをムーブメント中心に置いて分針の軸とし、本来の加速輪列の2番車はオフセットさせることで重なりを減らした構成、そして7時30分位置のスモールセコンドを「ダイレクト」に駆動するために同じサイズの4番車を2個用意し、その間を4番車連結ピニオンで繋ぐ構成でしょうか。
歯車は増えていますが、輪列トルクがかかっているために伝え車で軸位置を動かすインダイレクト(間接)方式と違い、バックラッシによる針の遊びが起きず規制バネなどは必要ありません。



V2で大胆に透かし彫りで抜かれたプレートを見ると歯車の大部分が見える為より確認しやすくなります。

赤い矢印がメインの加速輪列のトルクデリバリーで、向かって右側の香箱に噛みあった2番車から3番車、4番車1、4番車連結ピニオン、4番車2、ガンギ車と加速していく様子がV1のプレートと違いダイレクトに確認できます。

黄色い矢印が二つの香箱が伝えピニオンによって接続されている様子で、今までは見えなかった伝えピニオンが新しく設けられた三角形の開口部から確認できます。


SXH1 V1は「初代」チャペックのNo.3430のムーブメントをモチーフとしたデザインで、オリジナル同様に幅が広いブリッジとオープンラチェットの香箱を現代風に落とし込んだ、と言うようなデザインでした。



そして今回のV2のデザインはニュースでも述べられているように、大成功を収めたアンタークティックに搭載されたSXH5の「スケルトンブリッジ」をSXH1をの設計を活かしながら再解釈したものと見ることができそうです。
SXH5でチャペックとしての「俺のやり方」が見つかったのでそれをSXH1にも反映させたかったのでしょう。


「ミグラス」ルビーや、フリースプラングテンプへの変更もありますが、やはり一番大きな変更と言う得るのはブリッジのデザイン変更ではないでしょうか。

逆に、軸位置や歯車の構成は変更されておらず、SXH1の高い信頼性はそのまま担保されそうです。
この信頼性を実現できたのは、CEOのザビエル自身のビジョンと最初のムーブメント量産パートナーにChronode(ジャン=フランソワ・モジョン)を選んだ、と言う選択で、これはチャペック成功の要因の中でもかなり大きな割合を占めているのではないか、と個人的に思っています。

「小回りの利く」独立系のメリットを活かし、様々な提案を行っているチャペック。
今回のSXH1 V2がどのような評価が得られるか、楽しみです。



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