Place Vendôme Event

 By : CC Fan
当サイトでも告知いたしましたチャペック(CZAPEK)の新作でサスペンデッド・トゥールビヨンを備えたコンプリケーションウォッチ、プラス・ヴァンドーム(Place Vendôme)などの新作発表イベントに参加したレポートです。
チャペックは考え方(特に水平分業を隠すことなく公開する姿勢)に共感し、個人的にもケ・デ・ベルク(QUAI DES BERGUES)No.27のオーナーとなり応援しています。



イベントはChairmanのハリー・グール(Harry Guhl:右)氏とCEOのザビエル・デ・ロックモーレル(Xavier de Roquemaurel:左)氏の挨拶からスタートし、ザビエル氏によるプレゼンテーションが行われました。
プレゼンテーションの後、実機を拝見するという流れで、まずはプレゼンテーションの様子をお伝えいたします。
今回はチャペックの成り立ちなどは省略し、今年の新作の紹介のみとなってました。



日本的には最も注目されていると思われる38.5mmケースを持つケ・デ・ベルクのセカンド・エディション、エテルニテ(«Éternité»)です。
これは"懐中時計の腕時計化"と言うコンセプトで比較的大きめの42.5mmケースを持っていたケ・デ・ベルクをケースの変更によって38.5mmまで小さくしたものです。
おそらく、小さなケースを好む愛好家が多い日本では好意的に受け入れられると思います。

ネーミングは紆余曲折があったようですが、42.5mmケースのNoにsをつけたものに決まったようです。
ローズゴールドケースのNo.33sとXOスチールケースのNo.25sがそれぞれ100本限定で作られます。
世界的にはNo.25sはシルバー文字盤で作られますが、既報の通り、日本向けの数十本はNo.33sと同様のグラン・フーエナメル文字盤を使った特別仕様となるそうです。



続いてはリコシェ(Ricochet)と呼ばれるギロッシェを使った42.5mmケースのケ・デ・ベルクの新バリエーションの紹介です。
これは"初代"チャペックが1850年代に製作した文字盤のギロッシェからインスピレーションを得たもので、ザビエル氏が指さしている写真のように水面におこる波紋の干渉を再現しています。
チャペックの特徴となっているナポレオン三世の時計(No.3430)のデザインを模した低い位置(4:30と7:30)のサブダイヤルがそれぞれの波紋の中心となり、それらが干渉する様を手作業のギロッシェとして彫り込んでいます。



最後に新ムーブメントSXH2を持つプラス・ヴァンドームです(ケ・デ・ベルクはSXH1)。
こちらも低い位置のサブダイヤルというデザインコードはそのままで、それぞれにスモールセコンドを兼ねるトゥールビヨンと、新しいGMT機能を配置しています。
時分表示は12時位置のサブダイヤルになり、リング状のグラン・フーエナメルの文字盤を持ちます。
この文字盤はシャンルペの手法で作られ、ケ・デ・ベルクの大きなエナメル文字盤よりも製作が難しいそうです。

次に実機を拝見しました。



ケ・デ・ベルクのエテルニテです。
スモールセコンド・パワーリザーブインジケータの軸位置は42.5mmケースに合わせて設計されていますが、針のレイアウトを調整することで38.5mm向けにしています。
流石にミニッツレールは一部切れてしまいますが、42.5mmケースと比べても充分な存在感があります。



ムーブメント側はギリギリまで詰まった感じの迫力があります。
今回はXOスチールバージョンは来日していませんでしたが、ザビエル氏曰くXOスチールもローズゴールドケースと同様の伝統的なケースで、サイドに溝を持つ"REVOLUTION"ケースではないとのことです。
予想した通り、REVOLUTION構造ではどう考えても入りません…


再掲:CZAPEKジュネーブイベントで拝見したREVOLUTIONケースの分解図

SXH1ムーブメントは直径が32mmあるため、38.5mmのケースに収まっていると迫力があります。



真正面からです。
全体的な印象を変えずにうまく38.5mm化していることがわかります。

続いて、リコシェギロッシェの3バリエーションです。



左から、シーソルトグレイ(WGケース)、エンペラーブルー(RGケース)、アクアブルー(XOスチールケース)という名前が付けられています。

ギロッシェに使っているのはゴールド・シルバー・パラジウム・プラチナを混合した"特別な合金"だそうで、この合金のそのものの色がシーソルトグレイ文字盤の色だそうです。
エンペラーブルーはCVD(Chemical Vapor Deposition:化学蒸着)にてナポレオン三世のアイコンカラーだった青色に着色し、RGのケースと合わせ、エンペラーに相応しい高貴な感じに仕上げています。
時計業界でもPVD(Physical Vapour Deposition:物理蒸着)はよく使われていますが、CVDはあまり聞かないので珍しいと思いました。
アクアブルーは同じくブルーですが、ガルバニック処理(電解メッキ)によりまた別の表情に仕上げています。



シーソルトグレイです。
これぐらい拡大すると、写真でも"干渉"の様子が伝わりますでしょうか。
技術的にはすごいのですが、ぱっと見で自己主張するタイプではなく、ゆっくり眺めて良さが分かる印象でした。
インデックスはポリッシュされたアプライドインデックスで、視認性は良好です。
逆に、ブランドロゴはエングレーブやアプライドではなく、プリントで作られており、ザビエル氏曰く"古典と現代の融合"を表したとのことです。



エンペラーブルーです。
このピースに関してはベルトも専用のパティーヌが施されたものになる予定だそうです。
こちらもインデックスはアプライドインデックスで、ポリッシュの反射により視認性は良好です。



角度を変えてみました。
ピンぼけ気味です…
RGケースも相まって高貴な感じと色気がすごく、着けこなすのはなかなか難しいのではと思いました。



そして、アクアブルーです。
以前の記事で"REVOLUTIONケースではなく、貴金属と同じケース?"と書きましたが、ザビエル氏に確認したところ通常のXOスチールと同様のREVOLUTIONケースで作られるとのことです。
処理方法の違いによるものかエンペラーブルーよりも控えめな青とスチールケースで普段使いしやすい印象です。



ムーブメント側も。
38.5mmを見た後だとかなりゆったりしているように見えます。

(カンタロスが速攻里帰りしているので)ケ・デ・ベルクをほとんど毎日使っており、詳細には見ていませんが一週間に一回巻き、パワーリザーブさえ切らさなければ1ヵ月無調整で問題ない程度(±1分程度)の精度は出ています。
このことをザビエル氏に伝えたところ、以下のような回答が得られました。
  • 部品点数が多いこと自体がリスク、SXH1も2もなるべく部品を減らした
  • SXH1は100本以上出荷したが、扱いを間違って破損したことはあるが、自然故障はない
    • 落として壊してしまった
    • 磁気帯びもある、しかしXOスチールでは問題なく、チタンと貴金属だけで発生した
    • 巻きすぎてゼンマイを切ってしまった
  • SXH2も同様にトゥールビヨンGMTとしてはかなり少ない部品数
クロノード製のムーブメントの信頼性は個人的に未知数でしたが、約半年使って問題ないのでかなり信頼しています。

ちなみに今回のバリエーション追加について、チタンケースは?と聞いたところ、"(生産性が)ナイトメア"とのことであまりやりたくないようです。
聞いたところによると、ケースだけではなく、カーボンダイヤルの歩留まりもなかなかだとか…



別角度から。
同じギロッシェでも文字盤の仕上げとケースによってかなり表情が変わります。



聞くところによると、この文字盤のコストはグラン・フーエナメルより高く、数もあまり作れないそうです。
ケ・デ・ベルクのファーストエディションはコレクション全体で188本という限定数が設けられていますが、その中でもエンペラーブルーとシーソルトグレイは各3本、アクアブルーは19本、合計25本の生産を予定しているそうです。
もちろん、他が売れて合計が188本に到達した場合はその時点で終了です。

最後はプラス・ヴァンドームです。



横から見ると高低差をつけているデザインなのが分かります。



ムーブメント側です。
シングルバレルで、輪列はコンパクトにまとめられています。

ムーブメント全体の厚みに対し、トゥールビヨンケージは薄く作られています。
また、ケージに歯を切ってそこから駆動することで、トゥールビヨンの半分を覆ってしまう駆動用の歯車をなくしています。
これにより、トゥールビヨンケージが浮いているように見えるため、これを"サスペンデッド・トゥールビヨン"と呼んでいるそうです。



サブダイヤルの最外周がわずかにベゼルに食い込むデザインです。



ケ・デ・ベルクに比べると、厚めです。



こちらはプラチナバージョン(の試作のWGバージョン)です。
4:30位置のセカンドタイムゾーン表示はディスクで、ブリッジがインジケータを兼ねるデザインです。
調整は下側のリューズガードがプッシャーになっており、押すことで1時間ずつ調整することができます。
6時位置のデイ&ナイトインジケータはセカンドタイムゾーン側に同期していました。



トゥールビヨンケージのネジが一つだけ青いのは秒針の代わりです。



プラチナバージョンは10本、ローズゴールドバージョンは15本の限定で製作され、年内には各数本のデリバリーを予定しています。



実用的なセカンドタイムゾーン機能を備え、ケ・デ・ベルク同様"使うための"時計だなと感じました。



こちらはまだ試作品のため、デリバリーまでには調整が入る可能性があるとのことです。

実は最も"レア”で二度と見られないかもしれなかったのがGPHGのトロフィー(本物)です。



受賞したNo.33 BISとGPHG Public Prizeのトロフィーです。



ちょっとピンボケですが、GPHGのロゴとジュネーブの紋章。



Prix du Public 2016

今回のイベントに合わせ、チャペック公式の什器も完成したそうです。



時計のボックスと同じ木を使った什器で、ポルトガルで作っており、かなり重いそうです。
シンプルなボックスだと思っていましたが、実はかなりコストがかかっているとか…





最後にあまり関係ないネタを。



#MakeSwissMadeGreatAgainの帽子



ミッレ ミリア2017の帽子

ありがとうございました!

関連 Web Site

CZAPEK Geneve
https://czapek.com/

Noble Styling
http://noblestyling.com/