モンブラン: Kyoto Artistry - 京芸術へのオマージュ

 By : KIH
先日、モンブランに招かれ、京都での新作ペンの発表イベントに行ってきました。もちろん、モンブランは筆記具のブランドとしての方が長いですが、このサイトでは大手マニュファクチュール時計ブランドとしても地位を確立しています。

では、そもそも、「ペン」のモンブランがどうして「時計」を作るようになったのか、からお話をしましょう。ここで重要な役割を果たすのが、二コラ・リューセックという人物です。

彼が作った「クロノグラフ」(レプリカ)がこちら:


クロノグラフ ・・・ すなわち、「クロノ(時)」を「グラフ(描く)」。上の写真ではわかりにくいかもしれませんが、上下のダイヤルは一定速度で回ります。それぞれが秒だったか分だったか忘れましたが、その間にあるものは「針」でして、そこに「インク」が入っているのです。スタートボタンを押すと、ダイヤルの紙が回り始め、インクで輪が描かれるようになっていて、ストップボタンを押せば、そこで止まります。このようにして、いわば最初のストップウォッチができたわけです。

この「二コラ・リューセック」は、モンブランの最初の本格的なクロノグラフのモデル名にもなりました。

もうお分かりだと思いますが、この「グラフ」というところに、モンブランの筆記具との関係を見出し、リシュモングループはミネルバの工房をモンブランに託したのです。それが今日のモンブランの時計を作る工房の1つになります。


そこで今日の話題ですが、今度は逆にモンブランの本領発揮の分野である、筆記具の特別限定版をご紹介します。

今回、モンブランとしても、滅多に外部のブランドとは組まないのですが、特別に日本発のアイデアで、京都で1555年から着物を作り続けている(創業来462年!)、「千總(ちそう)」というブランドと組んで、源氏物語をモチーフに素晴らしい万年筆が出来上がりました。

まずは見ていただきましょう。



デザインは千總、製作は10,000KM以上離れたハンブルグのモンブラン本社工場。どちらも筋金入りの職人たちです。

千總は、京友禅の女性用の着物を主に作り続けています。デザインは無数にありますが、やはり源氏物語は昔から使われている図柄であり、今回、女性用の着物を作る千總、そして主に男性用のアクセサリーを作るモンブランのコラボ、ということで、男女関係が表に出てくる源氏物語がふさわしいのでは、ということでこの図柄となりました。




今回、万年筆はベースがスターリングシルバーで、ローズゴールドも使われており、キャップのトップには、マザーオブパールのロゴが象嵌細工で埋め込まれています。

そして、同じ図柄の着物がこちら。



染物あり、刺繍あり、とても手間のかかる工程を経て作られる着物です。また、着物は平面、それを万年筆には立体的に彫っていく、という発想。これも職人同士が協力してできる技でしょう。

デザイン画はこちらです。4種類ものペン先を使ってモンブランの万年筆で描かれています。




そして、順番が逆になりましたが、今回の発表イベントの場所に選ばれたのは、「清水寺」の中の「成就院」という建物で、まず滅多に入れるところではありません。




そんな中、インタビューに答えていただいた、モンブランジャパンのアラール社長と、千總の磯本常務。



何がきっかけでこのプロジェクトを?
→ アラール社長: このプロジェクトは2年前に始まりました。昨年もここ京都でイベントを行ったのですが、その時にもこの素晴らしい日本文化と西洋文化を合体させるような作品を作るべきだ、と思ったのです。
→ 磯本常務: 我々は450年以上も京都で京友禅の着物を作り続けています。全て手作りです。モンブランは、その手作りの心、職人の心をわかってくれてるブランドだと思ったのです。


今までの、「アルチザンシリーズ」の万年筆とは違いますね?
→ アラール社長: このモデルは、日本文化への尊敬の念を込めて、着物文化のいわばパイオニアのようなブランドと共に作りました。ですので、コンセプトは文化そのものなのです。今までは、特定のアーチストの、あるいは、特定の技法を用いたシリーズでしたが、今回はもっと広いコンセプトで作られているのです。このモデルは、モンブランにとっても、アーチストでも技法でもなく、「アート」を前面に押し出した初めての作品となります。


着物は大きく、万年筆は、比べると小さいですよね?
→ 磯本常務: もちろん、大きな着物のデザインを万年筆用に作るのは簡単ではなかったです。しかし、それは挑戦であり、我々が常にやっていることなので、逆に楽しかったです。これぞ、職人冥利に尽きる、といった感じで皆張り切ってやっていました。


着物は非常にカラフルですが、なぜ、万年筆には銀を?
→ アラール社長: ペンはどちらかというと、単色のものが多いです。しかし、我々は着物という芸術を万年筆に落とそうとしている。しかも、平面ではなく、立体的に彫り、また象嵌細工まで使って。着物の図柄はストーリーです。それを表そうと考えたら、銀、ローズゴールド、マザーオブパール、という組み合わせはむしろ非常に自然な結論でした。ついでに申し上げると、箱の内側には京友禅が貼られていますので、開けた時には着物の芸術を楽しむことができますよ。


限定55本ですが、日本への配分は10本とか?
→ アラール社長: これは日本の文化を世界に知らしめる機会だと思っています。日本の職人技を世界に広めるチャンスです。我々はペンを売るだけではなく、日本文化の素晴らしさ、美しさを世界にメッセージとして伝えていくのです。ですから、日本のものではありますが、むしろ日本以外への配分を多くすべきなのです。

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いろいろ話は続きましたが、モンブランジャパンのアラール社長、千總の磯本常務、本当にありがとうございました。
その他、モンブランジャパンの中さん、久井さん、本当に素晴らしい作品をありがとうございました。

お問い合わせは、モンブランブティックまで。
限定55本(内、日本国内は10本)。定価300万円(税抜き)。