ウルベルク Naissance d’une montre2 チャプター2 可能な限り本物に(AS AUTHENTIC AS POSSIBLE)

 By : CC Fan

チャプター1
をお伝えしたウルベルクとTime ÆON Foundation(タイム イオン ファウンデーション:永遠の時財団)による次世代の時計師の育成を目指すNaissance d’une montre2(時計の誕生)、チャプター2では古典的な工作機械による部品製造、そして腕時計にあまり用いられないゼンマイ自体がコンスタントフォース(コンスタントトルク)機能を持つ珍しい 定トルクゼンマイについての説明です。

例によって英語のみなので抄訳(むしろ意訳)で…
まずはプレスリリース部分。

Naissance d’une montre2プロジェクトをできる限り本物にするために、David Friedliの指示のもと、Dominique BuserとCyrano Devantheyはプロジェクトチームの厳格な視線の下で時計を組み立てる必要がありました。

この委員会は、精通したマーケティングマネージャーの集まりではなく現時点で最も洗練された時計を製造する3人の熟練した時計職人でした。
グルーベル フォルセイのロバート・グルーベルとステファン・フォルセイがムーブメントのスタイルと輪列レイアウトを担当し、ウルベルクのフェリックス・バウムガートナーがムーブメントの構造を監督、同じくウルベルクのマーティン・フライがケースをデザインしました。



パワーリザーブインジケーターを備えたこのユニークな手巻き三針時計の製造には、それぞれが発言権を持っています。
「それはすべて、Dominiqueと私との間のちょっとした冗談として始まりました」とCyrano Devantheyは説明します、「時計製造学校で、Dominiqueは完全に手作業で時計を作ることは可能であると主張しましたが、私はそれがほとんど不可能であると信じていました」挑戦が始まりました!

Naissance d’une montre 2プロジェクトの基準を満たすため、時計は伝統的手法を用いて手作りされ、革新的で、美しく仕上げられている必要がありました。
かなりの挑戦です!

BuserとDevantheyのムーブメントの構造には、いくつかの珍しい注目すべき機能が備わっています。
1つは、2つのドラム間でコイル状になる定トルクゼンマイです。
香箱は、一定の力を提供する遊星歯車に巻き付けられています。これは、世界で初めて腕時計です。
フリースプラングテンワは、蝶ネクタイの形で2つの慣性ネジを備えたユニークなものです。

ムーブメントはアップサイドダウン構造で、文字盤側にテンプが配置されたことを除いて、すべてが非常に簡単に見えました。
これは、輪列を反転させなければならなかったことを意味しました。
作業の中で、Buser、Devanthey、およびチームは、時計のデザインが対称的すぎると判断し、一部のブリッジのレイアウトと形状が変更されました。

プロジェクトの目的は1950年代と同じツールで時計を作ることでしたが、現代のテクノロジーが登場しました。
今日のすべての高級時計がそうであるように、Naissance d’une montre 2はバーチャルな時計として始まり、コンピューター画面上で構築され、動力学的にテストされました。
しかし、データをCNCプログラミングコンソールに送信する代わりに、各部品の図面と仕様書が印刷されました。

BuserとDevantheyは、104の異なる部品と合計で約200の部品で構成される20の必須コンポーネントを作成するために必要なタスクとツールのリストを作成し、部品を製造しました。
Dominiqueは完全に手作業で時計を作ることは可能であるという自分の主張を証明し、賭けに勝ったのです!

プレスリリースここまで

設計したデータを印刷し、部品を製造するのに使われるのはパンタグラフと呼ばれる工作機械です。
手順を見ていきましょう。



まず、大きく拡大された部品のひな型を作ります。
これは15:1、すなわち15倍に拡大した大きさの部品の形状です。



印刷した形状データを真鍮の板に張り付け、糸鋸で形に沿って切り出します。



作った形状をパンタグラフ彫刻機と呼ばれる工作機械で「なぞり」ます。
この機械は一種のリンク機構になっており、なぞった軌跡を15分の1に縮小して金属板表面にケガくことができます。
これにより金属表面に加工するためのケガキ線が彫り込まれるので、あとはそれを沿って削ればよいことになります。



旋盤による加工。



糸鋸による加工。



肉眼では見えないような微小な加工を手先の感覚で行っていきます。



出来上がった部品が必要な精度を実現しているかはどのように確認するのでしょうか?



部品に光を当ててできた影を光学的に拡大して図面と重ねる投影機を使って形状があっているかを確認します。



ネジの仕上げもひとつづつ手作業で行います。

まさに1950年代の紙ベース資料と手作業での加工がおこなわれていた時を再現したような作り方になっています。

そして、手作業と同じか、それ以上に注目に値するのは定トルクゼンマイです。
Twitterでちょっと書きましたが、改めて。



一見するとダブルバレルに見える香箱ですが、実際には解放時は文字盤側から見て右側に巻かれているゼンマイが巻き上げに伴って左側に逆回転で移動する構造になっています。

ゼンマイメーカーによる分かりやすい解説動画を引用します。



一般的なゼンマイが巻き上げと開放によって連続的にトルクが変化するのに対し、定トルクゼンマイは一定以上でトルクが一定になっています。
これは厳密に理解するのは難解ですが、イメージとしてはチェーンフュゼのような変速によってトルクを一定にする作用がゼンマイ自体で行われてトルクを一定にしている感じです。
しかもチェーンフュゼのチェーンのような複雑な構造の部品は不要で、ゼンマイの巻き方を変え、適切に設計するだけで同じことができます。

目立たない機能ですが、身近に使われており、掃除機などの巻き取り式リールに使われています。
掃除機のコードを引っ張り出すとき限界まで引き出すまで常に同じ重さで引き出せるのはこのゼンマイによるものです。
他にもゼンマイで巻き取るUSBケーブルなどにも使われています。

さて、動画でわかったかもしれませんが、この定トルクゼンマイもチェーンフュゼ同様、巻き芯(相当)は固定で、巻き上げと出力を同じ場所から行わなくてはいけない問題があります。
そのため、Naissance d’une montre 2では遊星歯車を使ったワンウェイクラッチを使い、巻き上げ時の逆回転は計時輪列に伝わらないようになっています。

逆に、特徴的なパワーリザーブインジケーターは巻き量と開放量の差を計測しなくても良くなるため、ゼネバ帰国によって香箱の回転数を読み出すだけのシンプルなものになっています。
これは、連続的に動くのではなく、1回転ごとに半ステップ的に動くクロノグラフ積算計のような動きをするようです。

この時計自体は2019年のSIHHで実機を見ているのですが、定トルクゼンマイはノーマークでした。
次こそ色々聞きたい!

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