【速報】ウルベルクをアワーグラスジャパンが取り扱い開始、ローンチイベントをレポート

 By : CC Fan

2024年11月5日:オフィシャルの紹介動画を追加しました

特徴的な「ワンダリング・アワー」と「フライバック(レトログラード)ミニッツ」を組み合わせたユニークな時刻表示で唯一無二の作品を作り続けるウルベルク。

今回、アワーグラスジャパンが取り扱いを開始することになり、ローンチイベントが行われました。



早速駆けつけてレポートします。

WMOの初期にもレポートした、と思って探ってみるとなんと2016年…



プレゼンテーション前に、共同創業者でデザイナーのマーティン・フレイ氏(左)と時計師のフェリックス・バウムガルトナー氏に「(日本では)7~8年ぶりですね」と、一応バーゼルや旧SIHHでブースにお伺いしていたことは認識されていたっぽく、「昔見てもらった時計(カンタロス)はまだ動いてないですよ!」というジョークを交えて…



プレゼンテーションの準備が行われていました。
席数の多さが注目度を表しています。



アワーグラスジャパンの桃井社長と創業者のお二人。



現在のコレクションの他、既に完売しているヒストリカルピースも持ち込まれました。



もっともベーシックなUR-100。
特徴的なワンダリングアワーとフライバックミニッツ。
3つの時ディスクが自転しながら公転することで数字(上の写真では9)で時刻を表示、それに重なるように分を表す針が重なっています。
分の針は60分に一回、正時ごとに120°帰零(フライバック)し、次の時ディスクに重なりまた0から分を表示する…という表示です。

この構造を基本とし、時刻の数字の表現をキューブにしたり、分の針を工夫したり…と様々な表現に取り組んでいます。



プレゼンテーションがスタートします。



お二人も待機中。



まず、ブランドの成り立ちから。
アワーグラス作成の動画が流されました。
動画は可能であれば後ほど掲載いたします。



2024年11月5日、動画を追加しました。
素晴らしいので是非ご覧ください。



フェリックス・バウムガルトナー氏は三代続く時計師の家系に生まれ、自身も時計師を目指して時計学校に進学します。
家業はクロックの修復を主に行う時計師だったそうですが、様々な要因があり腕時計の時計師になることを決めたそう。

フェリックス氏は古典的なコンプリケーションの永久カレンダーやミニッツリピーターも手掛け、修復も制作もすることができていましたが、「200年前に完成していた」その機構を改めて作るのではなく、新しい表現を模索、現在のウルベルクの基礎となるワンダリングアワーを応用した表現にたどり着きました。



マーティン・フレイ氏はアートとデザインのバックグラウンドを持ち、フェリックス氏のいとこを通じて知り合ったそう。

共同創業で二人とも同じようなバックグラウンドの時計師というブランドはありますが、デザイナーと時計師という異分野の組み合わせで、それぞれの主張を活かす、というのは珍しいと思います。



現在はジュネーブにフェリックス氏、チューリッヒにマーティン氏が拠点を構え、それぞれに時計師が在籍するというシステムで運営されています。
チューリッヒではマーティン氏のデザインの他部品の製造を行い、ジュネーブで最終的に組み立ててるという分担で、「たとえ家族であってもいつも一緒にいるより適度な距離があった方が良い」と語り、電車で3時間程度のジュネーブとチューリッヒという「適度な距離」で良い関係を保ってきました。

現在は年産250本ほど、8年前からは増加していますが、会社を大きくすることが目標ではないと語ります。



URWERK、という名前は現在の時刻系(60進数と12進数)を発明したメソポタミアの都市UR(ウル)とドイツ語で仕事・創造・進化・形・情熱…という意味をもつWERKを組み合わせて決められました。
シンプルで覚えやすい名前と作品自体のユニークさが組み合わさったアイコニックな名称だと思います。



過去の作品も、フェリックス氏がクロックのワンダリング・アワーから発想して腕時計で表現したUR-101。
今は亡きバーゼルワールドで発表。



個人的に好きなEMC、発電機によるオンデマンド起動(バッテリーレス)の歩度測定器(タイムグラファー)を内蔵し、ユーザーが任意のタイミングで日差を測定することができます。
測定した日差を基に使い方を工夫するほか、ケースバックの調整ネジを使って緩急調整を行うこともできます。
ワンダリング・アワーが目立つウルベルクですが、EMCにも搭載されたユーザー調整可能な歩度調整機構や自動巻きの巻き上げ効率を調整する「タービン」、使用時間を算出してメンテ時期を知らせる「オイルインジケーター」などユニークな提案も行っています。

これは2018年のルビジウム原子時計の親時計と機械的に同期するAMCに繋がりました。



「2日前に発表」された新作を紹介するために再びお二人が前に。

ウルベルクの大きなマーケットであるアメリカとシンガポールで「同時発表」で、アメリカではマーティン氏が、シンガポールにはフェリックス氏が、プレゼンテーションを行い、その後日本で再びお二人が集結、という事のようです。
それぞれ地球を半周、と考えるとなかなか…



新作、UR-150 Scorpion(スコーピオン)。
今までは120°(1/3回転)だったフライバックミニッツの稼働範囲を倍の240°(2/3回転)まで大きくし、そのダイナミックな動きをサソリが毒の尾を獲物に刺す動きになぞらえてスコーピオンと名付けられました。
一時間に一回のダイナミックな動きがオーナーにも目が離せなくなる魅力という毒を注入する、とのこと。

チタンとチタンにアントラサイトPVDの2バリエーション、各50本の限定です。



実機もすでに到着、アワーグラスで拝見できるそうです。
この動きはやはり実機を見てこそ、と思うので是非実機でご覧ください。

また、仕組的に見るとフライバック(レトログラード)は回転運動をカムとレバーで往復運動に変換する方式が多いですが、カムを使っている関係で逆回転させるとカムの落下点が引っかかってしまう事があり「逆回転不可」となっているものが多いです。
ウルベルクは両方向の矢印が書いてあるように、公式に逆合わせも問題ない、としています。



これはフェリックス氏が付けていたスコーピオンで「狼藉」を。
戻していくと分針とディスクとの重なりが外れ、更に戻すと次のディスクに重なるように動くため、カムのプロファイルを工夫して逆回転時にも引っかからない、順回転時にはちゃんとレトログラードするようなカム形状(プロファイル)になってる、レバーの読み取り部にバネ性を持たせて力を逃がす…とふんわり理解しました。

これはスコーピオンだけではなく、ウルベルクのワンダリング・アワーには標準的に備えられている安全機構です。



ヒストリカルコレクションに混じって3Dプリンターを活用しているのも見逃しません。



バーゼルやSIHHの思い出…



GPHGも複数回受賞しています。



もっとも複雑なアニュアル・ワンダリング・カレンダーを備えたUR-1001、懐中時計としても腕時計としても使えます。



ピンぼけてしまいましたが、裏蓋をあけると5年ごとにオーバーホールを推奨するオイルインジケーター、100年で1周する円形の100年表示、100年からの位上がりで動作する直線状の1000年表示というとてつもないスケールの表示も備えます。
また、通常見ることが叶わないワンダリングアワーの「舞台裏」も見ることができます。



光速を表現したUR-100 LS(ライトスピード)や可視光と紫外線の境界を表現したUR-100V(ヴァイオレット)も!

ライトスピードは太陽から放出された光が水星(3.2分)・金星(6分)・地球(8.3分)・火星(12.6分)・木星(43.2分)・土星(79.3分)・天王星(159.6分)・海王星(4.1時間)までに到達する時間をプロットし宇宙のスケールを感じることができます。

ヴァイオレットは紫の風防に加え、PVDも紫で統一されています。
こちらも天体表示を備え、地球の自転速度(20分で地球が回転した距離)と公転速度(20分で地球が移動した距離)を表示します。



空気の粘性を利用し、自動巻きローターの過度の動きを抑制する「タービン」、外周の内歯車に噛みあったタービンがローターの回転に合わせて動くことで抵抗を発生、加減速をマイルドにします。



発表会の後のディナーではフェリックス氏と同席、様々なお話を伺うことができました。
この時は既に飲んでいましたが、改めてインタビューを行う予定ですので、追って報告します。