アンジェラス - シチズンのグループ会社、さらなる飛躍のポテンシャルは高い; U40の限定カラーバージョン U41を発表

 By : KIH


またまた、よく知らないマイナーなブランドを持ち出して、と思われているかもしれない。が、趣味も仕事も常に広い視野で世界を見ていかなければもったいない時代である。メインストリームの大ブランドについては、多くのプロの方たちが書いてるし、情報を得るのに困ることはない。しかし、こういった日本からは遠くて「隠れた地上の星」のようなブランドを日本の皆さんに紹介する「ユーザー目線」のブログがあってもいいだろう。

今日紹介したいのは、アンジェラス(Angelus)。ブランド自体の歴史は約125年と古いが、2011年にラ・ジュー・ペレ(La Joux-Perret, SA)に買収され、その後2012年にLa Joux-Perret自体が(正確にはさらにその親会社のPrototecという部品製造会社が)シチズン Citizenに買収されたようだ。ビンテージ時計に凝っていたころ、アンジェラスの60-70年台のクロノグラフはとてもよくできた、魅力的な時計だなあと思っていたことを思い出す。

しかし、このブランドがシチズンの子(孫)会社ということはあまり知られていないと思う。私も知ったのはしばらくあとのことである。というのは、例えば宣伝などに”Angelus"とか、”Arnold & Son"というブランド名を書くが、そこがどこかの子会社である場合には、その下に”A Citizen Company”と入れることが多いのであるが、それもなく、Citizenからの積極的な宣伝もなく、このブランドは一体何者? と思っていた。このあたり、シチズンは世界戦略的にはこういう先手を打っていたことはわかるが、グループ本体を隠さなければいけないくらい、独立性を重んじるような契約だったということだろうか。そこまでいくとちょっと理解に苦しむが。戦略ではなく、ただの純投資だったということ?? 

その答は外部の者にはわからないが、最近になってようやく、GINZA SIXでのブティック展開は、シチズンアーノルド & サン、ブローバ等を含めての品揃えをするようになったが、アンジェラスはまだ別扱いのようである。今後の日本での展開は時間をかけてのIntegrationなのだと理解しよう。

さて、前置きが長くなって申し訳ない。それでは、今回の新作についての、まずはプレスリリースと写真をご案内しよう。



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Angelus U41/アンジェラス41



大胆な構造
アンジェラス41は強く視覚的に訴える大胆なムーブメントがそのスタイルを形作っています。直径42ミリのチタン製ケースの中に独特なムーブメント構造を見ることができます。黒のパーツとスケルトンで構成することで、シンプルでグラフィカルな強さを演出。人間工学に基づいて設計されたU41は、技術の高さと美しさの双方を兼ね備え、剛性そしてデザイン性に優れています。従来のプレートとブリッジを置き換えたオープンワークは、U41のアイデンティティそのものです。




技術開発とスタイルへのこだわり
アンジェラスは長年にわたり複雑式そしてスケルトンムーブメント設計および開発において、膨大な知識を積み重ねてきました。その一方で、快適性と着け心地への飽くなき追求も忘れませんでした。立体的なデザインのラバーストラップ、ベゼルのノッチ、チタンケース、メタリックな“メッシュ”デザインのムーブメントなどの独特のフォルムからもわかるように、U41はスポーティな時計です。








柔軟性と剛性の要求
アンジェラスは軽くて丈夫な腕時計を追求してきました。腕時計の強度を向上させるためには、ムーブメント自体に高い耐衝撃性と衝撃吸収性が求められます。アンジェラスは衝撃を受けても壊れたり、変形しない柔軟性と剛性を兼ね備えたムーブメント構造を研究してきました。歯車、香箱などの主要なパーツを2枚のプレートで挟み込んで固定することで、最大限の剛性を確保しています。


デュアル・ビーム
キャリバーA-300シリーズは、スケルトンデザインにするために開発されました。構造強度と繊細なスケルトンデザインの完璧なバランスを実現するために、 プレートとブリッジには“デュアル・ビーム”方式が採用されています。二つのビームタイプのブリッジを支える受けの間には石が埋め込まれ歯車の軸を支えています。これらのパーツをブラックADLCコーティングすることにより、ブラックとシルバーの美しいコントラストと質感の違いを演出しています。


振動数とパワーリザーブ

アンジェラスのムーブメントは、振動数3 Hzで駆動時間が90時間を超えることも珍しくありません。A-300シリーズの周波数は4 Hz、パワーリザーブは60時間に設定されています。ムーブメントが衝撃を受けても高い精度が保てるように周波数が高く設定されていますが、そのぶんパワーリザーブは短くなります。A-300シリーズの流れを汲んで、U41の周波数とパワーリザーブも同様の設定になっています。


カラー・バリエーション(2モデル展開)

U41にはオレンジとブルーの二つのカラー・バリエーションがあります。ブルーを基調としたモデルは分針とインデックス(分)のイエローがアクセント・カラーになっています。インデックス(時)と分針には白色スーパールミノバ® 夜光塗料仕上げ。ラバーストラップにはメインカラーであるオレンジ、またはブルーが使用されています。


技術とデザイン性の両立

高度な技術を搭載したスポーティなデザインですが、U41のケースの直径は42mm、厚さは10mmとコンパクトなサイズになっています。技術の高さとデザイン性の完璧な調和を追い求めて生み出されたのがU41です。



U41

スペック
機能
:時、分、表示

ムーブメント

 キャリバー:A-300、手巻、1分 フライング トゥールビヨン 
 石数: 23石
 直径: 32.80 mm
 厚さ: 4.30 mm
 パワーリザーブ: 60時間
 振動数: 4 Hz、28,800振動
 仕上げ加工: メインプレート:面取り、艶出し研磨、ブラックADLC加工
 ブリッジ: 面取り、艶出し研磨、ブラックADLC加工
 歯車: 面取り、艶出し研磨
 トゥールビヨン・キャリッジ: 面取り、鏡面仕上げ

文字盤
フランジ:
 上部フランジ: アンセラサイト、オレンジまたはイエローのインデックス(分)
 下部フランジ: オレンジまたはブルー、インデックス(時)にはスーパールミノバ®を塗布
針: オレンジ、またはブルーおよびイエロー。スーパールミノバ

ケース
材質: チタン(Grade 5)
直径: 42.00 mm
厚さ: 10.00 mm
風防ガラス: ボックス型サファイアガラス、ガラスの内側は反射防止加工
裏蓋: サファイアガラス
防水性: 30 m

ストラップ
材質: ラバー(オレンジ、ブルー、またはブラック)、Angelusの刻印入り
バックル: ピンバックル、チタン(Grade 5)

限定版  
 各色25本

品番 
 オレンジ U41: 0TSBT.O01A
 ブルー U41: 0TSBT.U01A

国際小売価格
 ¥3,804,000(本体価格)(価格は予告なしに変更されることがあります。)

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という今回の新作であるが、このベースモデル(色は黒で、針先が白か赤か、という2種類、限定版ではない唯一のカタログモデル、ベゼルにもU41に見られる「刻み」はない)であるU40に比べるとやや高めの値段設定にはなっている。が、にしても、安いから良いという意味では決してないが、これは「トゥールビヨン」であることをお忘れなく。

筆者は、U40をこの暑い夏、すでに3週間以上連続で腕に着けているが、チタン製ということで軽く、またラバーストラップも悪くない。そして、意外とチクタク音は大きく、存在を忘れるということもない。いまのところ精度は、3週間で1分以下の進みだ。

42㎜ということで、スペック上は「大きそうだな」と思ったが、軽さもあってか、腕に着けても大きいとは感じない。スポーツウォッチということで頭が理解しているからだろうか。筆者は、この暑さの中スポーツするわけではないが、外で会議するときも、オフィスに行くときも普通に着けて行っている。着けている人が思うほどには自己主張が強い時計ではないようだ。用途が広くなっていいことだ。

「高いポテンシャル」と書いたが、ここからはシチズンとLa Joux-Perretが決めることなので、単なる筆者の希望的な私見である。La Joux-Perretの独立性を重んじたアレンジというのは、スイスブランドとして残すのであるから、スタートラインとしては賢明な選択だったと言えよう。海外の会社を買うことが趣味、あるいは買うことに意義がある、と「買ってどうする?」とか、高い値段を後先考えずに払うような勘違いをしている世界を知らない日本企業、買った会社に騙されて粉飾されていた、あるいは好き放題されて崩壊してしまいタダ同然で再度手放すことになるか、買った会社を逆に滅茶苦茶にしてしまうナイーブな日本企業が多い中、まずは世界戦略と合致した買収案件という評価はできるだろう(値段が適正だったかどうかにはコメントできないが)。ここからいくらでも、シチズングループ全体の世界での存在感・立ち位置を作る戦略を考えることができる。今はまだそれをお互いが考えている最中だと思いたいが、とは言っても、シチズンの得意分野 - 例えば、日本製の操作性における「カッチリ感」 - を今から利用しない手はないと思う。時計作りにどちらが優れているか、ではなく、協力できるところは協力して、より良い時計を作ればいい、と単純に思う。それで「スイス製」ではなくなる、というものでもあるまい。実際、スイスで働いている時計師にスイス人以外は大勢いる。「カッチリ感」については、以前のブログでも書いたことがあるので、私にとっての「時計のカッチリ感、こうあるべし」については、そちらを参照されたい。今は、水平分業が多くなってきている。部品製造会社を手に入れたシチズン、どんどんスイスでシチズンの技術も使ってその分業の一角に入っていく、という世界戦略もありだろう。世の中、2つの顔を持ったブランドは独立系に多い。時計も売ってるけど、実は別の会社では部品製造販売、文字盤製造販売などなどで稼いでいるブランドだ。そういった戦略も大いに今後さらに注力してシチズンとして切り込んでいって欲しいと、個人的には思う。で、そういう中で、このLa Joux-Perret傘下のAngelusもさらに飛躍するポテンシャルがあると思うのだ。


U40
こちらが、針先が白のU40である。現状のアンジェラスのラインナップの中では、唯一、限定版ではないモデルで、アンジェラスにおいてはエントリーレベルのモデルである。それでも生産数は少なく、受注生産とまでは行かないが、待ちは入っているようだ。しばらく筆者が装着していたので感想も含めてご紹介する。

こちらは針もスケルトン。


本体の軽さに加え、ラバーストラップも心地いい。


ラグ横の穴のデザインと上部のサテン仕上げが見た目のスポーツ性を高めているようだ。


炎天下での見え方はこんな感じ。白い針先のおかげで、視認性は良いと思う。


軽くて薄い。リューズ頭にはなつかしのアンジェラスのロゴマーク。ラグ横のデザインがこのアングルからわかる。リューズがねじ込み式で防水能力がもう少し深くまでだったら、とは思う。スポーツウォッチだし。また、操作性については、リューズを引くときも、時刻合わせも、自分好みではない。もうちょっと「カッチリ感」が欲しい。それゆえ、シチズンのグループ会社なのだから、良くなる「伸びしろ」は大いにあるのだ。
とは言え、この薄さ、スケルトン構造、耐衝撃性も十分の様子。よくできていると言っていいと思う。盛り上がったサファイヤガラスがちょっと昔風でいい感じだ。


トゥールビヨン部分。今や「デザイン」の一部となった感はあるが、とは言え、「見てて飽きない」というタイプのトゥールビヨンではないかもしれない。ちなみに、ストップセカンドではない。


総合的には、最初に写真を見て思った通り「かっこいい」。仕事にもカジュアルにもいいだろうし、薄いから夏でなければシャツの下にきちんと収まる、「控え目」なスポーツウォッチだと思う。つまり、私好みということもあるが。今はまだ知っている人が少ないブランドの時計なので、時計好きにもあまり注目されない。私はそれでまったく構わないが、注目されたい人には物足りないかもしれない。だが、今のアンジェラスのこのスケルトンデザインは、すでにトレードマークのようなものになっている。とはいえ、「U」ライン、すなわち「Urban」コレクションだけがラインナップになっているわけで、今後は、昔のような、スケルトンではなくて、真面目なクロノグラフなども見てみたいと思うが、ブランドの方向性はどうであろうか。


さて、というわけで、新作のニュースと、そのベースモデルをしばらく使った上での簡単なハンズオン レビューだったが、コスト/ パフォーマンスや、スタイリッシュな面、実用的なデザイン・堅牢な構造を考えると、かなりお買い得感があるモデルである。またこのブランドについては書きたいと思うが、とりあえずは満足のいく時計だ。


アンジェラス(残念ながら日本語ページはない - このあたりもシチズンが助けてもいいと思うのだが・・)
http://www.angelus-watches.com/