FP ジュルヌのOnly Watch作品「FFC Blue」~時計の概念を揺るがすような時刻表示法を提示

 By : KITAMURA(a-ls)

Only Watch2021出品作品


先日、Only Watch2021の出品作が発表されたが、参加54ブランドが様々に趣向を凝らした作品の中にあって、特に目をひいたのは、時計の概念を揺るがすような時刻表示法を提示したFP ジュルヌの作品「FFC Blue」ではないだろうか。

まず特徴的なのは、文字盤を覆い隠すような"手"のオブジェだ。
英語では時分針のことを"hand"と呼ぶが、これはまさにホントの意味での"ハンド"が時計に組み込まれた最初のパターンといえるだろう。

 

出品名義が「F.P.JOURNE x FRANCIS FORD COPPOLA」となっていることからも推測されるが、この時計の誕生には、映画『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』などの監督で知られる、フランシス・フォード・コッポラが大きく関与しているという。

ジュルヌ氏は次のように語っている。
「この時計は、ナパバレーにあるフランシス・フォード・コッポラ氏の家で夕食を共にした 2012 年に生まれました。 彼は、『手を使って時間を伝えることができるか?』と私に尋ねました。 そのアイデアは非常に興味深く、しばらく考える 時間を下さいと答えました。 しかし、5本の指で 12時間を表示するにはどうすればよいか?  それは簡単なことではな く、この複雑な挑戦は私に刺激を与え、製作意欲を掻き立てました。
その後、私がこのアイデアを実現する目途がついた事を伝えると、フランシスはすぐに指の位置のスケッチを送ってきました。 最初にこのアイデアを聞いてから 2年以上が経ち、ようやく「製作(Fecit)」に集中できるようになりました。 7年間の開発期間を経て、FFC(フランシス・フ ォード・コッポラ)プロトタイプを発表できることを誇りに思います。」


コッポラ監督から送られたというスケッチは、フランス王室公式外科医としてまた近代外科の発展に重要な功績を残したアンブロワーズ・パレ(1509-1590)によって作成された機械的な手から着想を得たもので、1から12を次のように表現するものだ。


シンボル化されたこの手の形が、文字盤上で時を表示するのだ。
つまり、記事頭の時計は5時を示している。さらに画像では12時位置にある青い△のマークが、回転ディスクの分を差し示すことになる。
5本の指が、一連のカムやホイールによって制御され、現れたり隠れたりオートマタとして可動することで、それぞれの位置に応じた時間を表示するという、今までに類を見ない表現方法を現出している。
ちなみに、全ての指が表示されている時刻が5時、一本も表示されない時刻が10時となる。

プレスリリースにはこう記されている。
『2021年、F.P.ジュルヌが初の自動巻きキャリバー1300を発表してから20周年迎えた事を記念して、この革命的なオクタ・キャリバーを搭載した全てのモデルを祝います。今回発表された最新作はまさにその究極の表現です。
オクタムーブメントに組み込まれたゼンマイの力だけで作動するオートマタの製作は、難易度の高い作業を必要としました。
時刻は12時位置のディスクを回転させることで読み取られ、モバイルフィンガーは瞬時に表示または非表示となり、位置に応じて時間を示します。』


ぜひとも、実際の「手」の動きを見てみたいところだ。

ご存知のように、FPジュルヌは、ブランド・ロゴにも自身の作品にも、ラテン語で“Invenit et Fecit(発案し、製作した)"という言葉を刻んでいる。


今回の作品のプレスリリースでは、タイトルが『On an original idea from Francis Ford Coppola “Invenit” and “Fecit” by François-Paul Journe』と記されている。
まさに、『フランシス・フォード・コッポラの「発案("Invenit ")」をオリジナル・アイデアとし、フランソワ=ポール・ジュルヌが「製作 ("Fecit "」)した。』という訳文どおり、作品名である「FFC Blue」の"FFC"が発案者であるコッポラ監督のイニシャルなのも頷ける。


なお今回のこの特別モデルの、ユニークなレアメタルであるタンタルケースにブルースティール針という仕様は、FP ジュルヌが過去のオンリーウォッチでも守ってきた仕様と同仕様である。



【仕様】
FFCブルー
特徴:オンリーウォッチ出品の為に開発されたユニークモデル。
リファレンス: FFC
ケース: オンリーウォッチの為に特別製作されたタンタルケース
ケースサイズ: 直径: 42 mm / 全高: 10.70 mm
ダイヤル: オートマタによってブルーの針で表示されるデジタルジャンピングアワー。分は回転ディスク表示。
キャリバー: 18Kローズゴールド製ムーブメントFFC 1300.3
部品点数: ムーブメント: 396
片方向巻き上げの自動巻き22K5Nゴールド製ローターに、アンブロワーズ・パレ(1509-1590)とフランシス・フォード・コッポラの名前を刻印
複雑機構: 2
ブレスレット: オレンジアリゲーターストラップ
落札予想価格: CHF 300,000 - 400,000


【参照】
https://www.onlywatch.com/