カンタロスの帰還と1ヵ月動き続けた!という話

 By : CC Fan

W&Wから早くも1か月以上が経過、色々あってまだ終わっていないことも多いのですが、おおよそ3年ぶりのスイスで個人的に重要だったカンタロスの受け取りと会期中と帰国後、ずっと「検証」して問題が(今のところ)発生していないことについて、軽くまとめていきたいと思います。

ご存じ、Kantharos(カンタロス)は色々「ネタ」にしてきましたが、今回、何度目かのimprovement(改良)プロジェクトが行われ、最も複雑な箇所である脱進型コンスタントフォースに対して大幅な改良を入れる、そしてそれをW&Wで受け取れるようにする、という目標でクラーレ社にて作業が行われてきました。

ジュネーブへのフライトの直前、担当者からメッセンジャーで「手首周りのサイズを教えてくれ」(クラーレ社のベルトは専用のギロチンでカットする方式で事前にサイズの情報が必要)という問い合わせがあり、「本当に完成したんだな」と言う気持ちと共にジュネーブへ。

「初日の朝一番」で「W&W会場(空港近く)」で受け取る、と確認したにもかかわらず、担当者が「シティに居る」「シティには来ないのか(行かないよ!)」「今から車で持って行く」「会場外に出てくれ」となり、既に会場入りしていたところから急遽外へ。


会場の外(イメージ)

電話しながら探しているうちに転倒し、スマホの画面が割れ、カメラが削れたり、担当者と会場の警備員がフランス語で喧嘩してたり色々ありましたが…


転倒現場(真ん中に見える段差を踏み外した)

そして、何とか合流し、メッセンジャーではさんざん話したものの、リアルでは初顔合わせになる担当者から「受け取りとしてこの書類をにサインしてくれ」とフランス語で書かれた書類を渡され、「大丈夫かこれ、外泊証明書じゃないよな…」と思いつつサイン、すると時計を渡され、車に乗り込み、風のように去って行きました。

初日からクライマックス感があり、スマホが壊れたりしましたが…



カンタロス帰ってきたから全て許す!!!!
と、言うわけで、カンタロス帰還!

「動くまでやれば動く」の信念のもと、色々ありつつ、8年近く付き合ってきましたが、結果的に最長の期間となりました。
改善はコンスタントフォーススプリングをより適切なものにすること、それに合わせてメイン香箱のゼンマイも更新するという大掛かりなものになりました。


コンスタントフォーススプリング(改善前)

新しいコンスタントフォーススプリングが完成した、という知らせがあったのが今年の1月で、そこからクラーレ社での耐久試験を経て3月に受け取り、と言う形です。
ここまで遅くなったのはやはりコロナ禍によるサプライヤーの遅れが最も大きい原因だったようです。

コンスタントフォーススプリングの改変はほとんど新キャリバー設計並みの作業量で、初期設計とはかなり設計の方向性が変わっているようです。
前回(2016年?)のimprovementプロジェクトの時に自信満々だった設計担当のアイツは何だったのか…と思わなくもないですが、より適切なパラメータになったからヨシ!としました。



W&Wは「カンタロスが帰ってくる」前提で時計を選んだので、W&Wの会期中もずっとカンタロスで行くことにし、基本的にずっと着けていました。

自動巻きがちゃんと巻き上げるか、の評価も行う為手巻きなし、定期的にコンスタントフォース脱進の「音」を聞いて調子を見るという方法で確認を行いました。
かなり主観的ですが、今まで場合によっては「怖かった」コンスタントフォース脱進の音が改善後は非常に安定したことを確認でき、これは期待が持てるぞ…とワクワクします。



ホテルでも常に動いている!と思いながら原稿を書く日々…
クラーレ社が付けてくれたケースも汎用品っぽいですが良い感じです。

「会期中に止まったらそのままル・ロックルのファクトリーに凸する」と言う覚悟で挑みましたが、幸い止まること(主な原因:コンスタントフォースのロック、自動巻き巻き上げ不良)はおきませんでした。



クラーレ社在籍時からいろいろご協力いただき、カンタロスの行く末を気にかけて下さっていた関口陽介氏にも「完成して良かったですね!」と良い笑顔をいただけただけ、感無量です。
そして、シモナン翁との再会と、例のピボットデテントが掲載されているスクールウォッチ本を購入なども…



ジュネーブには日曜日(4月2日)まで滞在、AHCIイベント会場から、素でフライト時間を勘違いしてて空港ダッシュしたりもしましたが、何とか予定のフライトには乗れました。



クロノグラフの動作テスト、ジュネーブからドバイへのフライト時間を測定します。
30分積算計だけではなく、12時間積算計側の動きも見ます。

この時はまだ気が付いていませんが、転倒したせいでカメラレンズが割れた?らしくiPhone12の標準側で画面に放射状の傷が出るように…
ツインカメラなので、広角側にすれば消えるのですが…



アラビア語のロレックス!とかやっていたら放射状の線が入ることに気が付きました。

フライトが少ないせいか、帰りのドバイ国際空港での乗り換えが20時間(行きは8時間)だったり、色々アレなスケジュールではありましたが、何とか…



アラビア語の空港サイトを見るとドバイに来た!って感じがします。
今回、乗り換えが長い分、空港ホテルを手配してもらえたので初めて入国しました。
シモナン翁の本屋にて、三条ネジさんおススメの脱進機歴史本を購入したのでとりあえず図表だけ眺めてます。



ドバイから成田へのフライト時間も測定。
疲労なのか、ほとんど寝てました。

受け取ったのがW&W初日の3月27日、帰国が4月4日、そして日本でほぼ毎日つけていて今のところ非常に安定して動いています。
精度はそこまでちゃんととっていませんが、感覚的には進みなので週初めにストップセコンドで1分程度止めて調整すればいいかな?と言う長期メンテナンス前と同じ戦略で行こうと思います。
記憶がもはやあいまいではありますが、カンタロスは時合わせが逆回り(ゼンマイを巻き上げる方向と逆に回すと針が進む)だったっけ…?と思って担当者に聞いたところ初めから逆だったとのこと。

まだ、「多少」気になる点はまだあるのですが、とりあえず動き続けているという事を素直に喜びたいと思います!

関連 Web Site (メーカー・代理店)

CHRISTOPHE CLARET
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